気が付くと・・そこは、前線の野戦病院だった。 (↓以下、ドラッグで反転) 大きな野外テントの中で負傷した国防陸軍の兵士たちが簡易ベッドに横たわっている。 中国東北部、遼寧省「瀋陽」 ここは、20XX年現在、中国との戦争における最前線だ。 いづれ君たちは、ここにやってくる。ノッキーの井戸での練兵期間を終えれば・・ ”・・お前さんたち新入りかい?” 目の前で寝ていた兵士が君たちに話しかけてきた。男は頭に包帯をぐるぐる巻きにして薄汚い無精ひげを生やしている。 ”俺は、もう、ここで四年戦っている。北朝鮮のバカどもが起こしたクーデターからこっち・・ずっとだ・・・・・・ なあ・・一体、俺たちは・・何をやってるんだ。こんな、見知らぬ・・誰ひとり知り合いもいない街で・・他人様の土地で・・命をほおりなげてさ・・ なぁ・・なんでだ・・なんで・・こんなことに・・なっちまったのかなぁ・・・・・・チクショウ!!・・ ・・・・・・・・ それっきり、男は暗い虚ろな眼に涙をためて口を開かなくなった。 男に与えてやれる”答え”を持たない君たちは、やりきれない思いのまま、うなだれる男の前から立ち去った。 |
1936年 2月26日 東京 永田町 (↓以下、ドラッグで反転) そこには、数人の身分の高そうな老人たちが立ち尽くしている。 老人たちの頭上からは、はらはらと粉雪が舞い落ちて・・そして、どこからともなく幾十もの軍装の靴音が近づいてくる。 老人たちは震える声で呟いた。 ”なぜ・・このような事になったのか?” 全ての時代に潜む魔性の仕業にするのは無責任というものだ!!現象は、暴かれ!!糾弾され!! そして・・真実の道を歩む我々の糧とならねばならない・・ 思えば、我々の脆弱な政治力が軍の中に化学変化を起こしたのかもしれん。そう・・劇的な化学変化を!! 我々はいつの間にか袋小路に追い詰められ、気づいたときには成す術を失っていた・・しかし・・いまや全ては詮無きこと 真実の究明は、後事に託すとしよう。 もう、時間がないのだ もう・・彼等がそこまで来ている・・ |
1931年 9月18日 満州 (↓以下、ドラッグで反転) 目の前に現れたのは和服姿でたくましい腕を組んだ坊主頭の初老の男だった。 「王道楽土」か・・こうも、惨めな結果になろうとは・・結局、俺たちの夢は・・文民統制を破り前線総軍の暴走という、ただ・・邪まなる前例を創っただけなのか? |
1945年 3月10日 東京 (↓以下、ドラッグで反転) 大都市の夜空を、鋼鉄の魔物がゆっくりと鈍く不気味な音を立てて走ってゆく・・ やがて、夜空からは、炎の種が落ちてきて、種は、あちこちの地面に落ちると小さな炎の怪物を生んだ。 炎の怪物は、瞬く間にそこらの木造家屋を食い尽くして肥え太り、烈風と共に攻城を焼き尽くし、学校や病院を吹き飛ばし、逃げ惑う人々を飲み込んで・・その勢力を広げていく。 ・・そして、いつしか、夜の大都市は紅蓮の悪魔(イフリート)の支配するところとなった。 |
1945年 春 沖縄 (↓以下、ドラッグで反転) なめし革の航空帽を被り、上下つなぎの飛行服に身を包んだ青年が現れ、君たちに向かって敬礼すると、口を真一文字に結びながら、何も言わずにじっと君たちを見つめた。 ・・空の特攻隊のパイロットは −器械に過ぎぬと −友人が云った事は確かです。 操縦桿を握る器械、人格もなく感情もなく、勿論理性もなく、只敵の空母艦に向かって吸いつく磁石の中の鉄の一分子に過ぎぬのです。 理性を以って考えたなら、実に考えられぬ事で強いて考えれば、彼らが云う如く自殺者とでも云いましょうか。 精神の国日本に於いてのみ見られる事だと思います。 −器械である吾人は、何も云う権利もありませんが、唯願わくば愛する日本を偉大ならしめん事を、国民の方々にお願いするのみです・・ |
闇の中の小さな光に近づくと、そこには小さな台座があり、台座の上には、頼りなげな光をはなつ一振りの”折れた杖”が安置されていた。 (↓↓以下ドラッグで反転) 君たちが台座に近づくと、台座の背後で杖を見守るように佇んでいる燕尾服の老人に気づいた。 老人は、いわゆるチャップリン髭を生やし、度の強い丸眼鏡をかけている・・ そして、なぜか君たちには、その老人の容貌に見覚えがあるのだった。 老人は、まるで蝋人形のように無表情だったが、分厚い度の眼鏡の奥のその黒い瞳は、深く暗い底知れぬ悲しみを湛えており、それでいて、怒気を含んだ激しい祈りのような感情が複雑に瞬いている。 君たちは、老人が気味悪かったが、意を決して台座の杖に手を伸ばした。 なぜなら、君たちは、その杖を見た瞬間から直感していたのだ。 目の前の”折れた杖”が、自分たちのこの長いたびの終わりに”答え”を与えるものに違いないと。 君たちがそっと、杖を手に取ると・・杖は幽かに放射する光を僅かだが増したように思えた。 その表面は、暖かく不思議と手の中にしっくりとなじんでいる。 その時、燕尾服の老人が、うつむいた顔をあげて驚いたように君たちを見つめた。 老人は、やがてなにか”一言”呟くと、ニコッと笑い、満足そうに頷いて奥の暗闇へと消えてしまった・・ 君たちは老人が何者であるかを知ったが、いまは、ただ、杖を手にした高揚感のみが君たちの心を満たしていた・・ |