五つの試練プレイ記録 ノッキーの井戸
エンディング・感想









以上で、ノッキーの井戸は終了いたしました。

ご覧のように、非常にメッセージ性の強いシナリオだったので、プレイ記録を書くにあたっても色々と考慮するところが大きく、結局、ほぼシナリオの原文をそのまま載せてしまう形となってしまいました。
なので、プレイ記録としての面白味には欠けたとは思いますが、メッセージや雰囲気を齟齬なく伝えるには、それが一番だったかなと思います。



では、以下に簡単な感想を書いていきます。

まずは、何と言っても、この奇妙な世界観でしょう。
アイテムやモンスターのネーミングが、どれも非常に面白く、次はどんな奴が出てくるのか楽しみでした。
しかも、妙にグラフィックや世界観とマッチしていたし、フロアごとの個性も際立っていましたし、こういった表現方法もあるんだなぁ、と素直に感じ入りました。

一方で、戦闘バランスは、やや厳しめだと感じました。
特に第2迷宮以降のボスが強く(特に最後のあいつ)、ノーリセットは非常に困難だと思われます。
実質的な打開策がレベルアップしかないのに、やけにエナジードレインをしてくる敵が多いのもキツかったです。

謎解きも難しめで、ヒントを見ずにエンディングまでは辿り着けませんでした。
まあ、結局クリアはできたので、このあたりはプレイする人の根性の問題でしょう。
紙マッピングしてれば、もう少し簡単に解けたかもしれないし。



そして、次にストーリーですが……

非常にデリケートなテーマであり、かつ様々な主義主張が存在する事柄と思われますので、書くのを憚られることではありますが、感想を書くにあたっては、このストーリーに関することは、やはり外せないでしょう。
あくまで私個人の感想として、大らかな気持ちで読んでください。
剃刀・銃弾・その他危険物の郵送は禁止ですよ!


この「ノッキーの井戸」のメインテーマは、主に近代日本に端を発する軍国主義と2つの世界大戦、そして敗戦後の日本の在り方に置かれています。
中でも、安保問題から今日の東アジア問題まで、長々と続く憲法9条・自衛隊の問題が主題となっていたと思います。
シナリオ中では、日本が憲法を改正し、再び東アジアに対して戦争を起こしたことになっており、かなり緊迫した状況となっています。
2011年時点での情勢では、尖閣問題や竹島問題などで、あながち架空の物語とも言い切れなくなってきてはいますが…。

そんな中で、シナリオのキーパーソンであるノッキーは、一貫して戦争反対のスタンスを取っています。
第1ダンジョンの最後で出てきた、1970年市ヶ谷駐屯地でのイベントでは、三島由紀夫の主張(憲法改正・自衛隊独立)と、おそらく逆のことをノッキーが述べていたのが印象的です。
このイベントと、上のエンディングの内容に見られるように、『ノッキーの井戸』では、「第9条・戦争放棄」に、日本並びに、核時代となった世界情勢の解決の糸口を見出しているようでした。
第9条と言っても、このシナリオでは、「世界に平和を根付かせよう…」というような安っぽい主張ではなく、「戦争の悲惨さを再び繰り返すのは愚かなことだ」という観点でイベントが進んでいくため、この点では非常に説得力があります。
現在の日本で、憲法改正を唱えている人達の中で、自身で戦争を体験した人は、いったいどれほどいることでしょうか…。


さて、そんなシナリオ背景ですが、私個人の意見としては、憲法9条は即刻改正すべきだと思います。
あ、脅迫メールとかはダメですよ。
この国には思想・言論の自由がありますよ!

まあ、よく言われていることですが、9条があるからといって、そいつが直接的に核や軍事力を防いでくれるわけではないと思いますし、この戦争放棄というのは、世界の全ての国々が一斉に行わないと意味がないと思います(その点は、このシナリオのエンディングでも述べられていると思いますが)。
現実的に、お隣さんが「戦争放棄」とか、お構いなしに攻めてきたら、多くの日本人が成す術もなく死ぬことになるでしょう。
侵略戦争を肯定するというわけではなく、自衛に徹するにしても9条は大きな足枷となっていると思うわけです。

仮に、お隣さんを含め、全世界が一斉に戦争放棄したとしても、相手を牽制しつつ外面上での平和を維持するかのような状態となりかねず、何かの間違いで武力衝突でもしようものなら、一気に憲法改正論へ傾くような、理想とは遠くかけ離れた状態となるでしょう。
要は、現代の情勢で世界から戦争が無くなるというのは、それこそファンタジー世界でないと無理ではないでしょうか。

かくいう私も、戦場で戦った経験などはありませんので、実際に憲法が改正されて戦場に駆りだされたら、こういった発言を後悔しつつ戦死することになりかねません。
戦争は、お話の中では心躍るシーンもありますが、実際に身に降り注いできたら、たまったものじゃないと思いますよ。
軍事費に国の予算を注ぎ込んだら、他からその分が削られることになりますしね。

世界中が平和だったらいいけど、そうもいかないから何とかしなくちゃな…というのが、自分が感じている現代世界です。


…と、まあ、このように色々書きましたが、私個人の意見がコレだから、このシナリオは楽しめなかったとか、そういうことではありません。
むしろ、このシナリオで述べられていたことは、圧倒的に正しいと思いますし、まさかウィザードリィをやって、こんな事を考えるとは思ってもいませんでしたので、逆に違った刺激となりました。
プレイ日記のネタバレテキストまで読んでしまった人は、シナリオの大部分を知ってしまったこととなりますが…プレイしてみて損のない作品だと思います。

緊迫した東アジア情勢の中、こんなことを考えてみるのも、いかがでしょうか。

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