Wizardry#1(SFC)
プレイ記録11 アミュレット


サーマイン達6人は、狂王の試練場の地下10階奥深くまで来てい た。ここに来るまでに、同じような玄室の中で何度もワープしているため、既に位置感覚は失っていたが、ここが目的の部屋だということを皆が感じ取ってい た。その不思議な文字が彫られた扉の前にサーマインが立つ。
「この扉…何か書いてあるのかな」



魔法の文字のようであったが、サーマインには何て書いてあるのか全く読めなかった。代わりにオータブが目を凝らして一文字ずつ解読していく。
「ここが魔術師ワードナの居所…と書かれているみたいです。おそらく、彼と契約している悪魔達に向けてのメッセージかも…」 オータブは自信無さげに答えた。
「じゃあ、我々には関係のない話だな。話し合いが通じる相手であればいいが、そうでない場合には戦うことになるだろう」 ラコルフェが剣の柄に手をかけると、彼女の身に付けている聖なる鎧がうっすらと光を発し始めた。
「俺達の目的はアミュレットとやらを取り返すだけだから、なるべくなら穏便にいきてえな。まあ、難しい話だがよ」 リンパリスもそう言って扉に触れ、全員が緊張した表情でその挙動を見守る。
だが、リンパリスが扉を勢いよく押し開こうとした時、その手が触れている箇所 に、ほんの小さな亀裂があることに気付いた。
「これは…この魔法の文字を彫った時に削れちまったのか?」
亀裂はほんの小さなものでありながら、扉の向こう側まで穴が開いているようであった。リンパリスがそっと亀裂を覗くと、かすかにではあるが中の様子が見て 取れる。薄暗い部屋の中には人影が1人、椅子に座って書物か何かを読んでいる様子であった。リンパリスは息を殺し、角度を変えながら何 度も亀裂を覗き込んだ。
「中に入って正面奥にいる奴が多分ワードナだ。こっちには気付いていないみたいだぜ」 背後で見守っていた仲間達に向かって、ぼそぼそと告げる。
「話し合いのチャンスは無くなるだろうが、今なら奇襲をかけられそうだ。どうする…?」
思わぬ事態に皆が顔を見合わせた。



一介の冒険者である自分達は、決してトレボー王に忠誠を誓っているわけではない。ワードナがどういった事情でアミュレットを盗み出したのかは分からない が、ここで不意を突いてまでして奪い取るほどのことなのか、皆が躊躇した。
数十秒間の沈黙が流れた後、ロミニが小声で言う。
「ワードナが持っているアミュレットは強大な力を秘めていて、トレボー王はその力を使って隣国を次々と征服していったと聞いている。そんな物を持っている 者を相手に、一瞬でも隙を見せたらこちらが危ない。妙な希望を抱かずワードナを討ち取るべきだ」
確かにその言葉の通りであり、主導権がこちらにあるうちに、少しでも安全を確保しておくべきだというのは、この迷宮での長い冒険の間で、身に染みて分かっ ていた。そして、思い起こせばこの迷宮内で何度となく見たメッセージから、ワードナは侵入者にとっては敵対的であった。
「俺も同感だ」 とブノムも呟く。この好機を逃すべきではない、と続けて言った。
それを聞き、全員の決意が固まったようであった。リンパリスが再び扉に手をかけると、皆は 音を立てないように武器を手に取り、小さく頷いた。
「いくぞ!」 リンパリスが扉を押し開けると同時に、サーマイン、ブノム、ラコルフェが中に飛び込む。床に巨大な魔法陣の描かれた部屋の中には、リンパリスの言った とおり、荘厳な白髭を蓄えた老人が椅子に座っていた。老人は手にしていた書物から目を上げ、この突然の来訪者を見てゆっくりと立ち上がった。
3人が部屋の中央の魔法陣のあたりまで走った時、ワードナの前に大きな人影が現れる。人影は優雅な衣装に身を包んでおり、その金色の髪と整った顔立ちは、 人間とは思えない怪しげな美貌であった。彼は駆け寄る3人を見て瞳を赤く輝かせ、青白い唇からは牙を覗き出してうっすらと笑った。男が指を鳴らすと、コウ モリが 一羽現れた。コウモリは次第に大きくなっていき、人間のような形に変形していく。
「バンパイアか!こいつらは私に任せろ。ワードナを頼む!」
ラコルフェが、この貴族のような男、バンパイアロードに飛び掛かる。聖なる鎧の紋様が輝き、手にした真っ二つの剣が光に包まれた。バンパイアロードは軽や かに ジャンプして、振り下ろされるラコルフェの剣をかわし、そのまま上空に跳び上がった。そして、そのまま崩れた柱の上に跳び乗ってラコルフェの方を向き、ま たうっすらと牙を出して笑った。ラコルフェは、その動きを目で追うことができず、空振りした姿勢でしばらくバンパイアロードを探していた。しかしその時、 バンパイアロードの衣装の袖から、どさりと何かが落ちた。白い煙を立てながら落ちた塊は、バンパイアロードの左腕であった。ラコルフェの剣刃は避け られたように見えたが、聖なる鎧の光がバンパイアロードを斬っていたのであった。バンパイアロードは笑いを止め、憤怒の形相でラコルフェを睨んだ。
それと同時に、コウモリから変身したバンパイアは、オータブが唱えた解呪の法によって既に蒸発して灰になっていた。このディスペルは、呪文のように長い詠 唱や印を組む必要もないため、修行を積んだ僧侶や司教であれば、即座に行うことができる。

一方で、ワードナに斬りかかったサーマインは、その手応えに違和感を感じていた。その刃は確かにワードナに届いていたはずなのだが、ワードナは見るからに 傷を負っておらず平然として いる。彼の持つカシナートの剣は、ただ斬るだけでなく、その螺旋状の刃を回転させて捻じ込むことで対象物を削り取るように貫く剣であり、たとえ甲 冑を装着した戦士が相手であっても、容易く装甲を貫いて致命傷を与えることとができる名刀であった。しかし、渾身の力で斬りつけたはずのワードナの首は、 何かの障壁にでも守られているかのように刃を弾いた。これがアミュレットの力なので あろうか。ブノムも同様の手応えを感じたようで、斬りつけた自分の剣を見ながら、じりじりと下がる。



ラコルフェが体勢を立て直して後退すると、柱の上に立っていたバンパイアロードが跳び立ち、斬り落とされた腕を拾い上げて袖口に着けた。白い煙を上げなが ら腕が再生し始める。
バンパイアロードは、くっついた腕が指先まで動くことを確認すると、そのまま印を組んで呪文の詠唱を始めた。
「そうはさせん!」 ラコルフェは再び剣に光を纏うと、瞬時にバンパイアロードの目の前まで踏み込んで斬りかかった。光の太刀筋は剣刃よりも遥かに長く伸び、後方に跳び上がっ たバンパイアロード の胴を一文字に斬る。腰から上を両断されたバンパイアロードは、そのまま吹き飛んで柱に当たり、鈍い音を立てた。
「まだだ、頭を完全に潰すんだ!」
背後でリンパリスが叫ぶ。ラコルフェが柱の方を見ると、上半身だけとなったバンパイアロードは、空中に浮遊しながら詠唱を続けている。そして、その切り離 された下半身も操り人形にように起き上がり、再び剣を構えて駆け出そうとするラコルフェの前に立ち塞がった。次第に上空へと浮遊していくバンパイアロード の両手は青白い凍気を帯びはじめ、韻律を唱える口はうっすらと笑いを浮かべている。
その時、周囲に黒い影が立ち昇った。バンパイアロードは異変に気付き、空中で体を操り影から逃れようとするが、黒い 影は球体を形作り、その体を包み込む。中に閉じ込められたバンパイアロードは、ラコルフェの後方で杖を降りかざしているロミニを見て獣のような声 で叫んだ。ロミニがそのまま最後の韻律を唱えると、黒い球体の中心から眩い光が発せられ、強烈な爆風が降り注ぐ。



ロミニが杖を降ろすと黒い球体は収束していき、その跡にはバンパイアロードの肉片が白い蒸気を立てながら飛散していた。
「ワードナは異次元空間に入れることができなかった。ティルトウェイトは全く効いていない」 そう言って、ロミニはワードナの方を向いた。いつの間にか、ワードナも呪文の詠唱を始めていた。
サーマインとブノムが再度ワードナを斬り付ける。しかし、また先ほどと同ように、その剣はワードナに当たりはするものの、まるで手応えが無い。アミュレッ トの強力な障壁は、ワードナの全身を包み込んでいるかのようであった。
「な んて奴だ、まだ動いてるぜ!」 リンパリスがバンパイアロードの肉片を指差した。肉片は白い煙と共に床を這い動き、1つに集まろうとしている。オータブが 肉片を見て言った。 「高位のアンデッドは決して死ぬことがありません。どれだけ細かく引き裂かれても、いずれ必ず復活します…!」
さすがにティルトウェイトの直撃を喰らって四散してしまっては、復活するのにしばらく時間がかかりそうではあったが、このおぞましい不死の怪物を見て全員 が戦慄した。
バンパイアロードの肉片に気を取られているうちに、ワードナの持つ杖が白く輝く光を発した。全員がその眩しさに目を閉じ、身を伏せる。
「この光は…ジルワン…?」 ロミニがローブで光を遮りながら言った。
ジルワンは、僧侶のディスペルをも上回る聖なる光でアンデッドを確実に解呪する呪文であり、高位の魔術師しか使う こと ができない。だが、生ける者である自分達に何故この呪文を…?ワードナの不可解な動きにロミニは戸惑った。やがて光が消えると、すぐにパーティー全員の様 子を 確認したが、皆無事のようである。そう、この呪文が効くはずがないのだ。
しかし、柱の影を見て分かった。先ほど白い煙を立てて這いずっていたバンパイアロードの肉片が全て灰となっていたのだ。ワードナの唱えたジルワンは、この 不死者に向けて放たれていたものだった。
「なぜこんなことを…」
失態を犯した従者に対する罰なのか、その真意は分からないまま、ワードナは杖を振り上げて次の呪文の詠唱を始める。その韻律は、サーマイン達も何度も耳に したことのあるものであった。ワードナの杖に青い光が集まり、その周囲の空気が凍っているかのようにキラキラと輝く。
「何という早さだ!もう呪文を唱え終わったのか!」 ロミニが驚愕の声を上げると、ワードナは杖から青い光を放った。光はパーティーを覆い、吐く息も凍るほどの極低温の風が八方から吹き荒れる。



風を浴びた箇所が凍結してしまいそうなほどの冷気、鋭利な刃物のごとく体を刻む氷塊、このマダルトの呪文を受けた者は、その猛烈な吹雪が止むまで、ただひ たすら身を縮めて耐える他になかった。目も開けられないほどの凍りついた大気の中、サーマイン達は身動きひとつできないまま吹雪に巻かれていく。
その刹那、杖をかざすワードナの周囲が暗くなった。光を遮断するかのように現れた黒い障壁は、球体を形作ってワードナを覆い、その中に完全に閉じ込める。 そして、マダルトの吹雪の中でかすれるような声で韻律文が唱えられると、ワードナを閉じ込めた黒い障壁の中で、先ほどバンパイアロードを粉々にした破壊の 光が降り注いだ。
「今度は捉えた。これで終わりだワードナ」 凍りついた氷雪に埋もれて壁に張り付いているロミニは、ほとんど何も見えない目でティルトウェイトの閃光を見つめていた。やがて爆炎は収束し、吹き上げら れた石の破片がパラパラと舞い落ちる。
「みんな、大丈夫か」 盾と聖なる鎧で風雪を凌いだラコルフェが仲間を見回す。サーマイン、ブノム、リンパリスが、氷を振り払いながら返事をする。どうやら、軽い凍傷を負った程 度のようであった。しかし、凍った壁に埋もれているロミニは、その右半身が凍結して崩れかかっており、すぐにでも治 療をしないと間もなく死んでしまいそうなほどの重症であった。オータブも全身の体温を激しく奪われ、立つことができない状態である。
「ワードナは…?」
サーマインとブノムが爆発の中心部を見ると、硝煙の中に人影が浮かび上がった。やがて姿を現したワードナは、爆発の前と同じように悠然と立っており、その 身体には一切の傷を負っていない。そればかりか、その衣服すらほころびていなかった。
「そんな…」 サーマインは絶句した。あの究極の呪文をもってしても、ワードナを倒すことはできないのか。ワードナが再び腕を上げ、呪文の詠唱を始めた。
その時、ワードナは大きくよろめいて石床に膝を着く。そして、腹の底からこみ上げてきたかのように血を大量に吐いた。あらゆる攻撃からワードナを守ってい たアミュレットの障壁は、ティルトウェイトの爆撃を受けてついに崩れたのであった。
「ワードナは無敵ではない。やるなら今しかない!」
よろめくワードナを見て、サーマインとブノムが咄嗟に斬りかかる。ワードナは攻撃を防ごうと杖を構えるが、ブノムの短剣に弾き落とされ、そのまま腕を斬り 付 けられた。これまでに何度斬っても傷ひとつ付かなかったワードナの身体から鮮血がほとばしる。間髪入れず、サーマインのカシナートの剣がワードナの胸を突 いた。返り血がサーマインの鎧に跳ねる。ワードナは血を吐きながらも、その胸に刺さった刃を掴み押し返そうとするが、サーマインは剣の柄を力の限り捻じ込 んだ。そして、カシナートの剣の螺旋状の刃は 回転を加えられて押し進み、ワードナの心臓を完全に抉り抜いた。



ワードナは剣に押されるままに数歩後ざすりし、そのまま仰向けに倒れた。サーマインもその勢いのままワードナを押し倒し、一緒に石床に転んだ。
「やったか!」 すぐさまブノムがサーマインの前に回り込み、短剣を床に向ける。だが、そこには倒れているサーマインの他には誰の姿もなかった。
「これは…?」
周囲を見回しても、先ほど斬りつけたワードナの血の跡すら無い。確かに先ほど、この目でワードナが倒れていくのを見たのだが、その姿はまるで蒸発したかの ように消えて無くなってしまっていた。
「いったい、どういうことだ…?」
サーマインが剣を見て不可解に言った。その手には、まだワードナを貫いた感触が残っている。しかし、ワードナを貫いたカシナートの剣には血の一滴も付いておらず、代わりに、その切っ先には、紐に吊るされた護符のような物がぶら下がっていた。







こうしてサーマイン達のパーティーはワードナを撃破した。


先手を取った1ターン目で前衛3人が攻撃し、オータブがバンパイアをディスペル。
2ターン目にロミニのティルトウェイトでバンパイアロードを撃破するも、ワードナには無効化される。(ワードナが唱えた呪文は無意味なジルワンであったた め、ここまで無傷)
3ターン目の最初にワードナがマダルトを唱えてロミニが瀕死となるが、直後に放ったティルトウェイトでワードナにダメージを与える。
そして前衛の攻撃でワードナを撃破、といった内容であった。



攻撃回数6〜7回の戦士達が先制攻撃し、かつティルトウェイトまで通じたのに倒すのに3ターンもかかっており、ワードナが唱えたのがジルワンとマダルト じゃなくてティルトウェイトだったら、まず負けていただろう。
FC/SFC版のワードナはHPが非常に高いことを知っていたのでレベル15〜16まで上げてから挑んだものの、まだまだ十分とは言えなかったようだ。



さて、今回は結果的に僧侶無しのパーティーでノーリセットプレイという、なかなか厳しい条件となってしまったが、戦闘による全滅は0だった(ほぼ全滅状態 となって遭難したのは1回だが、ピットの罠によるものである)。
他のバージョンと違って戦士の攻撃がかなり強かったのと、カシナートの剣や聖なる鎧といった強力アイテムが比較的あっさりと手に入ったことが大きい。
それでも地下10階はさすがに厳しいものがあったが、全滅だけは何とか回避できた。






さて、せっかくなので第2パーティーでもクリアを目指してみる。
こちらは魔法攻撃が中心のパーティーなので、雑魚との戦いに関しては第1パーティーよりも遥かに楽である。



レベル13となったらマリクト×2、ティルトウェイト×3で、どんな敵も1ターンで倒せるし、呪文の効かない強敵の代表格であったポイズンジャイアント も、今回はマカニトで瞬殺できるため、勝てない敵はほぼいない。



とはいえ、やはり地下10階は危険が多いため、ちょっと攻撃が遅れるとすぐにやられてしまう。
幸いなことに魔術師のリトセスの生命力が18まで上がってHPもかなり高くなったため、余程のダメージを受けないかぎりは生き残ってティルトウェイトかマ ロールを使えるのだが、他の魔術師2人は結構よく死ぬ。



しばらく地下10階で戦っていると、またしてもここで手裏剣が見つかった。



後を追うように、この短刀も手に入る。



この2つのアイテムが意味するところは1つ。
パーティーに欠けている直接攻撃力を補うために、いっちょやってみますか。



ということで、しばらくのレベル上げの後、盗賊フィラベルを忍者にクラスチェンジさせる。



フィラベルは力と生命力が結構伸びてくれたので、忍者になって手裏剣を装備すると相当な強さとなった。



このSFC版では攻撃回数の関係で、手裏剣はカシナートの剣とほぼ同じくらいの強さであるため、三種の神器と呼ばれるアイテムとしては、少し格が落ちるか なといった感じだが。

ともあれ、これで第2パーティーもワードナ戦に必要な直接攻撃力が大幅に上がったから、そろそろ挑んでみましょうか。


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