Wizardry#1(SFC)
プレイ記録10 英雄


玄室の中で金属がぶつかる音と詠唱の声とが重なって響き、青白く発光する壁に照らされた石床の上には、いくつもの淡い影が激しく動き回る。
「気を付けろ…このサムライ、かなりの腕だ」
振りかぶった剣を弾かれてラコルフェが一歩退く。彼女が対峙している東方の装束を着た者は、大魔術師ワードナが異世界から呼び出したハタモトという身分のサムライであり、絶対の忠誠を誓った主君のため、死をも恐れず戦場で槍を振るうと言われている乱世の武将であった。



ラコルフェが下がると同時に、サムライの後方にいる、牛の姿をした魔獣ゴーゴンが甲高く吠え、その口から灰色に煙る火炎を吐き出した。火炎は瞬く間にパーティーを包み、その身を焦がしていく。
「ロミニ、相手の魔術師達の詠唱が終わる。早くティルトウェイトを!」
サーマインが盾で半身を防ぎながら叫んだ。火炎の触れた腕の部分が石のように硬化している。石化したのは表面の皮膚のみなので、特別な治療をしなくとも動 かすことはできるが、無理に動かすことによって硬化した皮膚がひび割れて、中の肉から血が滴り出している。ロミニも血を流しながら詠唱を続けているが、ま だしばらくはかかりそうであった。
その時、今にも呪文の詠唱を終えようとしていた魔術師達の声が止んだ。
「モンティノを使いました。効果はあったはずです…!」 オータブが硬化した掌をゆっくりと下げて言った。魔術師達は韻律を唱えようとしているが、声を封じられた喉からは呻き声のような音しか出なかった。
「好機だ!」 サーマインとブノムは、それを見てハタモトに斬りかかる。このサムライは、仲間の魔術師達の呪文が封じられても動揺することなく槍を構えた。2対1であっ ても、その動きに迷いは無いようだ。ハタモトは2人の動きを冷静に見定め、左右にステップを踏んでフェイントをかけながら走ってきたブノムに向かって槍を かざした。ブノムは短剣の切っ先を向けたまま体当たりするかのように突進してきたが、ハタモトは槍の柄を回転させてそれを払いのけ、そのままの勢いで殴り つけるかのように石床に叩き付ける。この強烈な一撃によってブノムは昏倒してしまい、手足を小刻みに痙攣させながら石床に這いつくばってしまった。
だが、同時にハタモトも倒れているブノムに槍を向けながら、床に膝を付いた。ハタモトの背後からは、サーマインのカシナートの剣が具足もろとも心臓を切り 裂いていた。2対1では敵わぬと見たハタモトは、相打ちとなっても片方だけでも仕留る覚悟をしていたが、僅かに及ばず無念の表情で倒れ込む。
「ブノム、大丈夫か。ロミニがティルトウェイトを唱える。早く下がるぞ」
サーマインは意識を取り戻しかけているブノムを抱え起こして素早く後方に下がった。ロミニはそれを見て、杖の先に集まった黒い光を放つ。黒い光は大きな球体の ような障壁を形を作り、呪文を封じられた魔術師達と魔獣ゴーゴンを包みこんだ。そしてロミニが最後の韻律文を詠唱すると、球体の中に閃光のような眩い光が輝 き、轟音と共に大爆発を起こした。爆炎は魔術師達とゴーゴンを一瞬にして消し飛ばし、渦を巻く。やがて爆炎が収束し、黒い球体が消えた後に は魔術師達とゴーゴンの僅かな破片のみが残っていた。
ロミニが唱えたティルトウェイトは小規模な核爆発を起こす呪文で、その爆発に包まれた者は、どれほどに強大な生命力を持っていようと、まず生き残ることはできない。あまりにも威力がありすぎるため、魔法の力で擬似的に異次元空間を作り、その中で爆発を起こさないと唱えた者にも危険が及ぶ究極の呪文であった。


「この地下10階は、やっぱ一筋縄じゃ行かなそうだな」 宝箱の開錠を終えたリンパリスが言った。「入口にあった看板からして、この階にワードナがいるってのは間違いなさそうだけど、どこをどう進んだもんか、さっぱり分からねえぜ」



ロミニも険しい顔で言った。 「ここはデュマピックも効かないから場所の確認もできないし、玄室の中には必ずワードナの召喚した魔物が待ち構えているみたいだ。簡単には奥まで辿り着けないだろう」
パーティーは先月より、ワードナの居所である地下10階に足を踏み入れたものの、強力なモンスターと不思議な仕掛けに手こずり、探索は難航していた。ここまで辿り着いた冒険者パーティーもほとんどいないため、彼らも先のことが分からず苦慮していたのだ。
「ともあれ、今日はもう街に戻ろう。こうやって、地道に少しずつ調べていくしかないさ」 サーマインが皆に呼びかけると、ロミニとリンパリスは話を止めて立ち上がった。ラコルフェも、ブノムに唱えていたディアルマの詠唱が終わったようだ。
「どうした、オータブ。早く行こうぜ」
オータブは、リンパリスが開いた宝箱の前で何か呟いている。 「これは…いや、まさか…」
その手には、くすんだ色の甲冑のような物を持っていた。各部位のプレートに奇妙な紋様が掘られており、何かしらの魔法がかかっているかのようであった。
「その鎧、何か価値のある物だったのか?」 ロミニが興味深そうに尋ねる。
オータブは、慎重に鎧の紋様を指でなぞりながら小声で答えた。 「この鎧は、修行を積んだ高位の騎士が身に着けるために、特殊な魔法を施された希少な物です。通称『聖なる鎧』…だと思います」
「なんだって…!?」
ロミニも、その名前は聞いたことがあった。聖なる力の加護により着る者を守り、悪魔や不死の怪物をも軽々と斬るほどの力を与え、更には受けた傷をも癒して くれると言われている、まさに魔法のような鎧であった。無論、そのようなパワーを宿した鎧など、王宮の鍛冶屋や魔術師でも造ることができないため、ある種 の伝説として語り継がれていた物であり、ロミニにはとても信じることができなかった。
「こんなパッとしない鎧が?」 冗談だと思って聞き返したが、オータブの表情は真剣であった。



サーマインも、茶色く変色している鎧を手に取って見ている。
「確かに、何か得体の知れない魔力のようなものが溢れ出ているのは感じるが…。しかし、こんな薄いプレート、俺の着ている鎧よりも明らかに劣るぜ。ただ古いだけの鎧なんじゃないのか?」 そう言って、半信半疑の様子でオータブを見た。
「この鎧は別名ガーブ・オブ・ロードと呼ばれています。身に着けることができるのは、ロードとして修行を積んだ者のみです。ラコルフェさん、これを着てみてください」
オータブから呼ばれたラコルフェは、サーマインから鎧を手渡された。すると、鎧に刻まれた紋様が、うっすらと輝き出した。
「なんだって…!それでは、これは本当に…」 ラコルフェは身に着けていた白銀の鎧を外し、光を帯び始めた聖なる鎧を恐る恐る装着していく。ラコルフェが身に着けた部位の紋様が次々と金色に輝き、茶色 くくすんでいたプレートも、次第に色を取り戻していく。全ての部位を身に着けたラコルフェは、全身が光に包まれ見るも神々しい姿となっていた。
「これは凄い…身が軽くなったかのようだ」 ラコルフェは手や足を動かしながら、その効果を確かめている。握った剣の先にまで光を帯びており、悪魔や不死者をも倒すことができると言われていた伝聞は、今や疑いようが無かった。
「こんな鎧が実在するだなんて…ワードナが集めていた財宝なのでしょうか…」
伝説と言われていた秘宝を目にすることができ、オータブは少し興奮しているようであった。そして、金色に輝くラコルフェの姿は、英雄物語の登場人物であるかのように幻想的であり、あたかもこの大迷宮の最深部へと導く者であるかのように映った。






地下10階で早くも聖なる鎧が手に入ったことで、この先の探索がかなり楽になった。
圧倒的な防御性能に加えて、ヒーリング、倍打、そしてクリティカルと、これ1つで一気にパーティーの戦力が上がる。



たまたまロードがパーティーにいた中で、本当にここ一番というタイミングでこの鎧が見つかってくれたものだ。
先般手に入ったカシナートの剣と合わせて、前衛の攻撃力はこれで大幅に増加し、マイルフィックをも一撃で倒すことができた。



お供のポイゾンジャイアントも、このSFC版だとマカニトで一発なので楽勝である。
まあ、ブレスだけは怖いが。


他にも、回復の指輪や



破邪の指輪



銀の小手など、レアアイテムが次々と手に入る。



どうやら、今回はアイテム運がかなり良いようだ。
この激レアな指輪2つなんて、どちらもそうそう手に入る物じゃないだろうに。







その後、しばらくは地下10階の第1玄室で経験値とアイテムを稼いでゆく。




このSFC版は武器攻撃が強いため戦士が非常に役立っているが、やはり基本はティルトウェイトとマカニトである。



魔術師が先制すれば勝てるし、ちょっと出遅れたら痛い目に遇う。





痛い目に遭う程度ならいいが、全滅すると大変なので、やばい敵が出た時には戦うか逃げるかをちゃんと見極めなくてはならないところ。

できれば高位の攻撃呪文を使える者は2人欲しいが、オータブがマカニトやマダルトまで覚えるのはレベル17からなので、このままでは多分クリアまで到達しないだろう。
誰かを魔術師か僧侶に転職させようにも、前衛は安定して強いから、転職するとしたらオータブ自身しかいないんだよなぁ。
HPが低くてすぐ死ぬ中で、転職して生命力を下げるのは悩ましいところ。

そうこうしながらも、パーティーのレベルは15になり、戦士達の攻撃回数が更に上がる。
HPは全員低めながらも、戦力としてはワードナに挑むのにそろそろ十分なところであろうか。



そして、なんとここで更にもう1つ聖なる鎧が手に入る。



もう装備できる者はいないものの、ヒーリング効果だけでもありがたい。
いっそ、サーマインもロードにしてしまおうか、とも思うが、ワードナ戦には彼の攻撃力が欠かせないので止めておく。


さらに、三種の神器のもう1つ、手裏剣まで手に入る。



こいつも装備できる者はいないから無用の長物で、どちらかと言えば力と体力の高い盗賊リンパリスを忍者にするための盗賊の短刀が欲しかった。
まあ、前衛は充実してるので、彼は盗賊のままでも良いかな。
しかし、ここまでアイテム運が良かったのは、今までプレイした中で初めてかもしれない。



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