Wizardry#1(SFC)
プレイ記録09 救援隊
ユーレントらのパーティーは、狂王の試練場地下8階に来ていた。
パーティーの人数は5人、皆手慣れた様子で迷宮の通路を歩いている。
「この次の扉の先がワープポイントだったはずよ。上に昇る階段の部屋に行けばいいんだよね?」 リトセスがデュマピックの地図を指差す。グリドルトがそれを覗き見て頷いた。 「ああ、カンディで調べた限りでは、おそらくはここの階段を昇った先、地下7階だろう」
その言葉と共に、皆が迷宮の天井を見た。
彼らは、3日前に消息を絶った戦士サーマイン達のパーティーの捜索に来ていた。ユーレントがギルガメッシュの酒場で聞いた話だと、地下7階の探索を
しに行くと言って酒場を後にしたのが、彼らの最後の目撃情報らしい。
通常、迷宮に挑む冒険者達は、朝早くに街外れを出発して迷宮に入り、遅くともその日の夜には引き上げて街に戻って来る。どんな屈強なパーティーであれ、モ
ンスターの闊歩する迷宮の中で、敢えて一晩過ごすような行為はしたがらないため、もし翌日になっても戻らなかった場合には、全滅したか遭難したかと相場が
決まっていた。そうなった場合の捜索及び救助は、手の空いているパーティーが行くか、有志で捜索隊を結成するかが冒険者達の間での暗黙の了解となってい
る。迷宮でのパーティー全滅や遭難は、誰にとっても明日は我が身ということで、お互いに持ちつ持たれつの関係を築いていたのであった。もっとも、ただ救助
するだけでなく、救助賃とでも言うかのように、どさくさに紛れて遺品をいくつか奪っていくような輩もいたが。
しばらく後、ユーレント達は地下7階へと上がり、カンディの呪文が指し示したエリアへと到着した。アルゼティがロミルワの光球で部屋の隅から順番に照らして
いくと、石壁の破片やモンスターの死骸、折れた剣、骨、そういった物が点々と光の中に現れる。全員がその動きを目で追っていると、不意にリトセスの後ろに小さ
な影が立った。影はリトセスの背に短剣を突きつけており、リトセスが悲鳴を上げるまで誰もその気配に気付かなかった。
「―奇襲か!」
グリドルトが咄嗟に後方を向いて身構える。アルゼティとガルフローネも退がって呪文の詠唱を始めた。リトセスは腕の関節を押さえられて身動きが取れなく
なっており、抵抗もできずに悲鳴を上げ続けている。小さな影がリトセスを盾にしたまま後方に少しずつ下がり始めると、ユーレントが両手を上げて全員の前に飛び出した。
「待ってください、我々は救助に来た者です。あなたは、サーマインさんのパーティーメンバーではないですか?」
小さな影は、足を止めてユーレントを見た。 「おまえは…」
「以前あなた達のパーティーに加わっていた魔術師のユーレントです。あなたは戦士のブノムさんですね」
小さな影は剣を構えたまま、かすかに頷いた。
ユーレントは、ブノムがカント寺院に預けられていた期間にパーティーメンバーに加わっていたため直接会ったことは無かったが、その姿を見てすぐに分かっ
た。
「この辺りには、ワードナの手下の僧侶や魔術師が数多く徘徊しているようですが、我々は違います。サーマインさん、ロミニさんらを探しに来た者です」
ユーレントが再度説明すると、ブノムは黙って剣を下ろした。リトセスはすぐさま手を振り切ってガルフローネの元に走り、ブノムを睨み付ける。
「すまなかった、他の連中はこっちにいる」 ブノムは後ろを向き、そのまま暗闇の奥へとに歩いて行った。ユーレントらもそれを追う。
ラコルフェとリンパリスは、崩れた壁にできた小さな空洞の中で身を潜めていた。先にブノムが駆け寄って声をかけると、ラコルフェが慎重に出てくる。
「おまえは…ユーレントじゃないか、助けに来てくれたのか」
「ええ、お久しぶりですね、ラコルフェさん。よくぞご無事で」
ラコルフェは、数日ぶりにロミルワの明るい光を照らされて、眩しそうにユーレントらを見る。少しやつれてはいるが、まだ体力は残っている様子であった。
「ずいぶん久しぶりだな。まさか、こんな形で再会することになるとは…。だが、お陰で助かった」
「全滅したかと思っていましたから、生きていただけでも良かったですよ。ともあれ、傷の治療をしたら、ここから出ましょう。」
ユーレントがアルゼティの方を向くと、彼女はラコルフェに近づいて手をかざした。
「今マディをかけますね」 アルゼティが詠唱を始めると、ラコルフェの傷がみるみる癒えていく。
「かたじけない。向こうに、もう1人重傷の者がいるんだ。私は後でもいいから、そちらを頼む」
そう言って、自らが出てきた空洞の方をを指すと、その中には重症を負ったリンパリスと、死体が入った3つの袋が横たわっていた。
「なるほど、死んだのはサーマインさんとオータブさん、そしてロミニさんでしたか…」
ユーレントは、このパーティーに加わっていた頃、ロミニから魔法の基本的な手ほど
きを受けたことがあったため、彼に一番の敬意を感じていた。ギルガメッシュの酒場で情報を聞いてすぐに捜索に繰り出したのも、そのためであった。
「ロミニとオータブが死んで、魔法を使える者がいなくなり、進むも退くもできなくなってしまったんだ。携帯して来た食料も尽きそうになって、もうダメかと
思っていた」
ラコルフェは、これまでのことを思い出すかにように宙を見つめた。この暗闇の迷宮の中、来るか来ないか分からない救援隊を待ち続けるのは、精神的にもかな
り消耗した様子であった。
リンパリスも、グリドルトから治療を受けてゆっくり立ち上がり、深々と頭を下げた。「すまねえな、この恩は必ず返すぜ」
マディを唱え終えたグリドルトがニッと笑って応える。「こういう時は、どんな戒律の者でもお互い様だ。いずれ自分に返ってくる事だからな」
一方でリトセスとガルフローネは、奥から死体袋を持ち運んでいる。
「お…重い…。これを地上まで運ぶの?姉さんがここでディの呪文を使えば生き返る
んじゃないの…?」 ガルフローネは息を切らして訴えた。
「ディは成功率が低いから、余程の事がない限り使えない呪文なの。男なんだから、文句を言わないで
担ぎなさいよ」 かく言うリトセスも、額に汗を浮かべながら辛そうな表情で担ぐ。
「あのホビットの仲間だと思うと、あんまり気が進まないけどね」
そう言っ
て、アルゼティから治療を受けているブノムを睨むと、ブノムは決まりが悪そうに目を逸らしてしまった。
こうして、迷宮内でメンバーを入れ替えつつ死体を運び、第1パーティーの救助は無事に成功した。
全滅は何とか免れたものの、この地下7-8階の探索は非常に苦労させられたなぁ…。
どうせ何も無い所だろうと甘く見ていたフロアが、こんなに難しくなっていたとは、完全に油断していた。
だが、第2パーティーの尽力のおかげもあり、ここのマップも埋まったので、もう後はマッピングで苦労するような場所も無いだろう。
蘇った第1パーティーで、続く地下9階を探索する。
マップ自体は狭いため、すぐに埋めてしまうが、今までとは違って玄室戦闘が多く、経験値と宝を稼ぐのに絶好のポイントである。
一番奥まで行ってもエレベーターからはさほど距離は無いので、仮に全滅しても救助はさほど困難ではないはず。
敵は基本的にはマカニトとマダルトで大抵片付くが、ここでは稀に地下10階の敵も出現することがある。
破格の経験値を持つフロストジャイアント君やウィルオーウィスプ君とも、ここで安全に稼いでいるうちに出会えることもある。
もちろん、他のヤバイ奴等に出会う可能性もあるが、前述の通り全滅しても大丈夫なポイントであるので、ひとまずはここで力を蓄えることにしよう。
ということで、しばらくエレベーター付近で経験値を稼ぐうちに、特段の事故も事件も無いままレベル13まで上がった。
無事にティルトウェイトとマロールを習得し、ひとまずマスターレベルというやつだ。
出る敵はティルトウェイトでほぼ全て一掃できるし、危ない時にマロールで逃げることもできるようになったため、全滅の確率は格段に下がるだろう。
まあ、危ない時というのはロミニが死んだ時になってしまうから、後者はあまり使わないだろうが。
そして、ここで戦っているうちに、このシナリオでの戦士の最強武器、カシナートの剣が手に入った。
攻撃回数4回にダメージ10~12と、これまでの切り裂きの剣、真っ二つの剣とは次元の違う強さに、多くのプレイヤー達が驚嘆の声を上げた名剣である。
特に、このSFC版では攻撃回数=職業の攻撃回数+武器の攻撃回数となる仕様のため、本来の4回攻撃でも十分な威力だったのに、このレベル12時点でも最大7回攻撃のリーサルウェポンとなる。
力が18のサーマインに装備させると、そのダメージは(10~12+3)×7と、実にPC版のムラマサにも匹敵する。
これがあれば、もはや肉弾戦で倒せない敵はいないであろうが、地下10階に挑む前に、もう少しレベルを上げておく。
いかんせん、魔術師ロミニのHPが低いため、少しでも高めておきたいところである。
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