Wizardry#1(SFC)
プレイ記録08 強き者


城下町の大通りに面したボルタック商店は、この商店街の中で もとりわけて大きい店舗を構えており、ワードナ討伐のための冒険者達が町に集い始めて以来、客足が絶えることなく繁盛していた。往来の人々で賑わう昼下が り、ボルタック商店から1人出てきた僧侶アルゼティは、表通りで待っている仲間達と合流する。
「ずいぶん時間がかかったな、アル。何をそんなに買い物して いたんだ?」
「鑑定に時間がかかったの」 フィラベルの問いかけに、アルゼティは手にしたメイスを目の前に突き出した。この武器は通称『力のメイス』と呼ば れる鉄鎚で、先日迷宮の中の宝箱からフィラベルが見つけた物である。その由来は、重量のわりに持ちやすい重心設計により、持つ者の力が増したかのような感 覚になるためであろうか。
「へえ、いい物を見つけたもんだな。俺は、どちらかと言うと頑丈な防具の方が欲しかったけどなぁ。」
このパーティーの魔法攻撃を成り立たせるためには、フィラベルは盗賊でありながら前衛に立たなくてはならなかった。彼は、あまり恵まれた体躯でないこともあり、攻撃よりも身を守ることを第一に考えているようだ。
「グリドルトなら、このメイスを使いこなせると思うわ」 そう言ってアルゼティがグリドルトの姿を探していると、リトセスが横から口を挟んだ。
「グリドルトはカント寺院に行ったよ。お祈りの時間だってさ」
「またお祈り?私も見習わないといけないくらいの熱心さね」 アルゼティは仕方なく、力のメイスを布に巻いて自分で担いだ。
「あいつ、やっぱ変わってるよね。毎日何をそんなにお祈りしてるんだろう」
「自分が殺したモンスターにでも祈りを捧げてるんじゃねえのか」 と、フィラベル も冗談めかした。グリドルトは街にいる時は必ず毎日カント寺院に足を運んでおり、故郷でもそのようにしていたと聞いていた。このフィラベルとリトセスの2人のノームも、本来は信仰深い種族であるが、あまりそういった面は感じられない。
「ガルの姿も見えないけ ど、どこかに行ったの?」 アルゼティが傍らで黙って立っているユーレントに尋ねた。
「彼もグリドルトと一緒に寺院へ行きましたよ」
「カント寺院に?昔から 寺院は大嫌いだったのに、何でまた…」 アルゼティは思わず聞き返す。
「単にグリドルトに興味があったんじゃないのですか。男というのは皆、ある年頃に なると、強い者に憧れるものですよ」
ユーレントの答えアルゼティはあまり納得がいかないようで、まだ怪訝な顔をしている。いつの間にか、またリトセスが割って 入ってきた。
「ふーん、強い者に憧れるって、あんたもそうだったの?ユーレント」
「もちろん、私は今でもその憧れは捨てていません」
ユーレントは迷うことなく笑顔で答える。この物腰 柔らかな細身のエルフからは似つかわしくない言葉を聞いて、リトセスは冗談と捉えるべきかどうか迷った。


カント寺院の礼拝堂では、グリドルトが巨岩の塊のような体で胡坐をかいて石床に座り、目を瞑っている。礼拝堂の隅ではガ ルフローネが並んでいる石像を眺めたり椅子に座ったりと、退屈そうにしていた。
やがてグリドルトが身を起こして立ち上がると、ガルフローネに声をかけた。
「待たせたな、ガル。おまえはもういいの か?」
「ああ、僕は別にお祈りするようなことも無いよ」 ガルフローネは礼拝堂の壁に描かれた儀礼的な壁画を眺めながら言った。小さな窓から差す薄明かりが顔に当たり、白い肌がより青白く光っている。
「ずいぶん長いこと祈ってたね。グリドルトみたいに強くても、そうやって神様にお願い事とかするのか い?」
グリドルトは、少し考えて言った。「いや、俺は願いや懺悔をするために祈っているのではない」
「じゃあ、何をそんなに祈っているのさ」 ガルフローネは興味深 そうに聞いた。
「俺が祈るのは自分の中の神に対してだ。神というのは天上世界に居るものではなく、各人の中にある。こうして毎日自分の中に語りかけることで、神を呼び起こして教えを請うのだ。ひいては、それが己の成長につな がる。そのために俺は毎日祈っている」
「なんだか、カントの僧侶が言ってる事とは少し違うね」
「本質は、さほど変 わらないさ」
グリドルトは窪んだ目で遠くを見る。ガルフローネは、その言葉の意味を考えようとしたが、すぐにそれを止めた。
「ああ、やっぱり僧侶の言うことは回りくどくて分からな いよ。姉さんもそうだけどさ。僕は僧侶にはなれないな」
そう言ってガルフローネは礼拝堂の正面扉を開けた。明るい日差しが、礼拝堂の中にも差し込む。
「ガル、おまえはその年齢 でありながら大した魔術師だ。上級の魔術師でも、お前に敵う者はそうはいないだろう」 グリドルトが薄暗い礼拝堂の奥から言う。
「だが、いつかおまえも分かる。おまえの力だけでは解決できないことが起こった時、最後におまえが頼ることができるのは、自分の中の神だ。覚えておくんだな」
先に礼拝堂から外に出ていたガルフローネは、両手を広げて背伸 びをしている。グリドルトの言葉が聞こえていたのかは分からないが、彼はグリドルトに向かって、にっこりと笑った。


2人がカント寺院の礼拝堂を後にして表通りへと向かった頃、一足先にギルガメッシュの酒場に入っていたユーレント達は、そこである噂を耳にする。
「サーマイン達……から……戻らないそうだ」
「地下7階……行くと言っていたが……」
喧騒に紛れて聞こえてきた声に、ユーレントは飲物を運ぶ手を止めた。戦士サーマイン達のパーティーは、かつては寄せ集め隊などと呼ばれていたが、今ではこ の町でもすっかり有名になったベテランのパーティーであった。短い期間ではあったがユーレントもそこに加わっていたことがあり、まだ訓練所を出たばかりの 頃に、彼らから様々なことを教えてもらったことがあった。
「どうしたの、ユーレント?」 突然黙ってしまったユーレントに、リトセスが尋ねる。
「いえ、少し気になる話が聞こえましてね…。皆さんはここに居てください。私はもう少し詳しく聞いてきます」
そう言ってユーレントは席を立ち、先ほどの噂話が聞こえた方へと向かって行った。







ブルーリボンを手に入れた第2パーティーは、まずは地下7階周辺でレベル上げをした。
このバージョンは戦士以外の職業でもレベルアップすると攻撃回数が増えるようで、力のメイスを装備させた僧侶グリドルトは驚異的な攻撃力となった。



このシナリオは僧侶もそこそこの重装備ができるため、強くて頑丈で回復呪文も使えるグリドルトがいれば、もう戦士が要らないのでは思う。


地下7階のマップを埋める途中、またしてもピットを踏んでしまい、HPの少ないフィラベル、ユーレント、ガルフローネが死んでしまったこともあった。


今のところ両パーティー合わせて死因ナンバーワンがピットによるものである。
レベル7メイジより、ゴーゴンやキメラより、ピットが恐ろしい。


だが、そうこうしながらも地下7階のマッピングが完了する。
このあたりで全員がレベル11となった。


第1パーティーが遭難しているのは、地下7階から8階に降りる階段の辺りだが、ここに行ってしまうと、また戻れなくなってしまうため、先に地下8階のマッピングを済ませてエレベーターへの道を確保しから救助に向かうこととする。
僧侶2人がマディとロクトフェイトを覚えたので、もう余程のことがなければ全滅・遭難はしないだろう…。





地下8階は、大きく4つの区画に分かれているようで、それぞれダークゾーンや一方通行、魔法禁止エリアなどで構成されている。
各区画には、地下7階に上がる階段がある部屋からワープできるようだが、何も知らずに飛び込んだら即迷子になるような複雑な構造なため、デュマピックを使えない第1パーティーは、下手に動かなくてよかったと言うべきか。



玄室戦闘こそ少ないものの、ここで出現したレッサーデーモンとレベル8ニンジャのパーティーと戦った時に、グリドルトとアルゼティがクリティカルを受けて、かなり危険な状態になった。



僧侶が死ぬと回復ができなくなるばかりか、虚弱な魔術師達が前衛に出てしまうため、一気に全滅率が高まってしまう。

その他にも、バディを唱えてくるハイプリーストなどが厄介である。



だが、厄介な奴ばかりでなく、ありがたい奴も出てくる。
この界隈での経験値の友、アースジャイアントだ。


探索中に何度か出迎えてくれたため、みんな美味しくいただきました。





アイテムでは、真っ二つの剣、豪華な革鎧、窒息の指輪、などが手に入った。
もともと、そんなに大したアイテムは手に入らないフロアなので、過度には期待しなかったが、そこそこの成果だ。

また、『呪いの兜』と思われる、売値25000Gの兜も手に入った。


値段こそ高額だが、他の呪われた装備と同様のゴミアイテムである。
悪パーティーは金が無いから鑑定もできず、かといって捨てるのも勿体ないから、未鑑定状態でアイテム欄を圧迫している。本当に邪魔である。





そんなところで、地下8階のマップも全て埋め終える。
アースジャイアント先生のおかげもあり、レベルも比較的早く12に上がった。


ここでグリドルトのHPが大きく上がった他、魔術師リトセスも生命力が18となってHPが60以上になった。
この先、魔術師が生き残りやすくなることは、パーティーが全滅する可能性が減ることに直結するため、リトセスの成長は非常に大きい。


地下8階は、魔術師3人分のデュマピックを駆使しても結構時間がかかった大迷宮であった。



だが、これで地下7階に昇る階段のエリアからエレベーターのある区画へとワープするポイントは把握したので、もう第1パーティーを救助に行ける。

あるいは、第1パーティーの生き残りが自力でエレベーターまで行くこともできるであろう。
彼らのいる所からエレベーターまでは、ダークゾーンはあるものの玄室戦闘が起こらないため、運が良ければエンカウントせずに戻れそうだ。



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