Wizardry#1(SFC)
プレイ記録07 魔術師


狂王の試練場地下4階、石壁に囲まれた狭く暗い玄室の中で、2組の集団 が対峙している。共に人数は6人で、20メートル程の距離で睨みあったまま互いに一歩も動かない。片方の集団は、全員がローブで頭から全身を覆っているた め、その素顔は分からないが、フードの奥からは眼が赤く輝き、低い唸り声と共に白い牙を覗かせている。
もう片方の集団には、先頭にずんぐりとした男が立っている。緑色の法衣を着てはいるが、その顔は岩石のように節くれだっており、巨大な金棒を片手で地面に 突きたてながら窪んだ目で相手をジッと見ているため、暗がりで見るとまるで鬼のようであった。その隣には、法衣を胸甲の上に羽織った赤い髪の女と、ギョロリとした目を落ち着きなく動かしてい る猫背の男が立つ。彼らから少し離れた後方には、魔術師の衣装を着た者が3人、一列に並んで手を前に掲げている。中央に立つ茶色い髪のエルフの魔術 師が手をかざすと、3人は一斉に手で印を切り詠唱を始めた。
時を同じくして、対峙していたローブの集団が皆、一直線に走り出す。その体は次第に膨れ上がっていき、ついには着ていたローブを内側から破り去ると、中から黒い毛皮に覆われた熊のような巨体が身を露にした。
「ワーベアよ、グリドルト」 赤い髪の女は盾を構えて一歩退くが、グリドルトと呼ばれた鬼のような顔の男は、金棒を地面に突いたまま微動だにしない。
ワーベアがあと2メートルほどの距 離にまで迫り、鋭い爪でグリドルトを捉えようとした時、後方のエルフの魔術師の両手から豪火球が発射された。火球はグリドルトの目の前で向けて 大きく炸裂し、6体のワーベア達を包み込む。その後を追うように、エルフの隣で詠唱していた小柄なノームの女も同じ火球を放ち、業火に焼かれ咆哮するワー ベアの集団に向けて落とした。二重に覆いかぶさった魔法の炎の渦は、中で動く者全てを焼き尽くす。グリドルドは未だ金棒を地面に突いたまま一歩も動かず、焼け焦げるワーベア達を見下ろしていた。 後方で詠唱をしていたもう1人の魔術師は、それを見て呪文の詠唱を途中で止めて手を降ろす。

炎が消え、炭のようになったワーベアの残骸を見て、猫背の男が足音も無く玄室の奥に向かった。部屋の奥には宝箱が置かれており、それを目指して軽やかに石床の上を跳ぶ。
「フィラベル、まだ奥の暗闇に何かいるぞ」 グリドルトが低い声で呼び止めると、猫背の男はビクッと動きを止めて、キョロキョロと辺りを見回す。
「冗談だ」
グリドルトが、ぶ厚い頬を持ち上げ二カッと笑う。
「よしてくれよ、心臓に悪いじゃねえか」 猫背の男はホッとして、宝箱に向かって再び駆ける。
「フィラベルをあまりからかうのは止めてくださいよ。一度死んで以来、本気で暗闇を怖がっているんですよ」
エルフの魔術師がたしなめた。このノーム族の盗賊フィラベルは、以前にニンジャの集団に暗がりから奇襲を受けた際、カタナで首を刎ねられた挙句、カント寺院での蘇生に失敗し、まさに生死の境を彷徨っていたのだ。


「すまんな、退屈な戦いだったものだから、ちょっと面白味が欲しくてな」
低く潰れたような声で、グリドルトはまた笑った。

エルフの魔術師ユーレントは、訓練所を出て以来雇われの魔術師としていくつかのパーティーの下で修行を積んでいたが、数週間前に同期生の盗賊フィラベルと 魔術師リトセスと共に自身のパーティーを組んだ。このグリドルトも、その際にスカウトした僧侶であった。彼はこの国から遠く離れた異国から来た者で あったが、すぐにこの国の習慣にも馴染み、パーティーの中でも上手くやっている。
グリドルドの隣に立つ、法衣を着た赤い髪の女は、後方の魔術師の男に向かって言った。
「ガル、何で途中で呪文を止めたの?前衛が敵の攻撃を守備している間に後衛の3人が呪文で一斉攻撃するのが、この戦術の基本だったはずでしょ。もしあれで仕留められてなかったら、誰かが大怪我していたかもしれないのに」
そう言われた魔術師は、落ち着いた様子で悪びれもせずに答えた。
「あの2発で敵は間違いなく全滅したと思ったから、無駄撃ちを控えて温存しておいたんだよ」 魔術師はそう言ってローブのフードを降ろすと、法衣を着た女と同じ赤色の髪の、瓜二つの顔が現れた。まるで双子のようであったが、その声は法衣の女よりもやや低い。
「そんな勝手な判断が惨事につながることもあるから言っているの」
「はいはい、分かったよ。以後気をつけます」
魔術師は、分かったのか分からないのか、気のない口調で返事をした。
隣にいる、もう1人のノームの女魔術師リトセスが小声で囁く。
「アルは相変わらずきっついね。あんたも少しは反省した素振りを見せなよ。私にまでとばっちりが来ちゃうでしょ」
「姉さんは周囲に染まりやすいからね。昔は僕にも優しかったのに、すっかりこの町の殺伐とした空気に影響されて厳しくなってさ。まあ、格好だけだから大丈夫だよ」
この二人、僧侶アルゼティと魔術師ガルフローネは姉弟であり、訓練所を卒業した後に、パーティーメンバーを集めていたユーレントの元に加わった。弟のガル フローネは、まだ少年といえる年齢でありながらも訓練所修了時には15という平均より遥かに高いスコアを出し、その才能が期待される魔術師であった。
「まあまあ、何にせよ皆が無事でよかったです。ここも問題は無さそうですから、先に進みましょう」
魔術師ユーレントが皆に声をかける。グリドルトが先頭を歩くと、一同は奥の扉に向かって後ろに続いた。
「ま、待ってくれよ!」 フィラベルも手早く開錠を終えて、箱の中に入っていた宝を掴んで後を追う。この男は臆病ではあるが、罠の開錠にかけては随一の実力を持っていた。
「地下4階は危険だとか言われてたけど、今のところ全然大したことないよな」
「あんたはさっき何もしてなかったでしょ。今度は私の代わりに戦いなさいよ」
ガルフローネとリトセスが歩きながら言葉を交わす。少し大人びた者の多いパーティーの中で、年の近いこの2人は話が合うようであった。

ユーレントは現在のパーティー構成には自信を持っていた。十分に修行を積んだ魔術師が後列から3人で魔法を放てば、いかなる大軍であろうと一方的に殲滅で きる、と彼は以前より考えており、そこに丁度良くそれを実現できるメンバーが見つかったため、彼の戦略は身を持って実証された。本当であれば、魔法が通用 しない相手と対峙した時のために、パーティーの最前線で盾となり剣となる戦士を1人は加えたいところであったが、このグリドルトという男が十分にその代役 を果たしてくれる。この岩のような肉体を持つ外来種ドワーフの僧侶は、戦士に匹敵するパワーと耐久力に加え、術法の腕前もかなりのものであったため、 今や無くてはならない存在であった。
「このメンバーならば可能だ。アミュレットを奪還し、この国の英雄になってやる。 ―」
ユーレントは確信めいた思いを秘め、狂王の試練場の薄暗い石床を歩く。







第2パーティーは非常に強く、地下3,4階で経験値稼ぎをしていても、出てくる敵はことごとくラハリト・ダルトの連射で圧勝できた。
だが、上で書いたように盗賊フィラベルがレベル3ニンジャのクリティカルを受けて死に、さらに蘇生に失敗して灰になったため、復活費用を貯めるのに苦労した事もあった。




宝箱を開けられるフィラベルが死んだため、金を稼ぐために延々と地下4階のアラームを鳴らて敵を呼び寄せる。
前衛に魔術師の誰か1人を出さなくてはならなかったため、雑魚相手でも予期せぬダメージを受けたりしたものだった。





あと、このパーティーにとって脅威だったはプリーステスとガスドラゴンの組み合わせ。
後衛にまでブレスでダメージを与えてくるガスドラゴン(場合によってはドラゴンフライも付いてくる)、モンティノで呪文を封じてくるプリーステスは、まさに天敵と言えるパーティーであった。






だが、フィラベル灰化以外は特に大きな問題も起こらず、魔術師達が次々とレベルアップして新たな呪文を覚えていく。
マカニトを覚えたら、このフロアは全て一発でケリがつくので、戦闘は更に楽になっていった。








魔術師達がレベル10になったところでモンスター配備センターに挑む。
今度は先手を取ることもなく通常の戦闘となった。


前衛は全員防御して、ユーレントがマカニト、リトセスがハイプリーストにマダルト、ガルフローネがハイニンジャにマダルトを唱え、1ターン完全勝利を目指す。


しかし、最初に動いたのは敵のレベル7メイジであった。
モリトを2連で唱えてきて、あえなくユーレントが死亡。



リトセスとガルフローネは辛うじて生き残り、続いてマダルトを放ったため、ハイニンジャだけは倒すことができたが、頼みのマカニトを放つことができず、最も危険なレベル7メイジが残ってしまった。
ハイプリーストもマダルトを喰らったのに2人とも生きており、非常にまずい状況となる。



僧侶2人はモンティノを使っておくべきだったと詰めの甘さを後悔。
次は魔術師2人がマカニトを使い、僧侶2人はリトカンでハイプリーストを攻撃する。
こうなってしまっては、もう全員全力でいくしかない。


緊張の第2ターン目、一番最初に動いたのはガルフローネだった。
初撃のマカニトで、レベル7ファイターとレベル7メイジを塵にする。
続いてアルゼティが唱えたリトカンで、手負いのハイプリーストを2人とも倒し、何とか勝利できた。
メイジがモリトじゃなくてラハリトを唱えてたら全滅だったなー、これ…。


そして、奥の部屋でブルーリボンを入手して町に戻る。



勢いで死の指輪も持って来てしまったが、鑑定できる者がいないので酒場で捨てた。誰かが拾ったら大変なことになるでしょうな。



こうしてプライベートエレベーターが使用できるようになったので、稼ぎの場を地下5階以降に移す。
第1パーティー救助は近づいてきている。




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