Wizardry#1(SFC)
プレイ記録12 凱旋
城内の大広間で行われた叙勲式が終わり、サーマインとユーレントは城門から出て帰路に着いた。式のために登城したのは正午頃であったが、2人はパーティー
のリーダーということで、他のメンバーが先に帰った後にもしばらく残り、今後の仕官日程などについての細かな説明を親衛隊長から受けていたため、すっかり
辺りも暗くなりかけていた。
サーマインは、授かったばかりの親衛隊の記章を手にとって眺め、歩きながらユーレントに尋ねる。
「俺達がアミュレットを手に入れた後、お前達のパーティーも、あの部屋でワードナと戦ったんだってな」
ユーレントは、閉ざされていく城門の跳ね橋を振り返った。
「ええ、壮絶な戦いでしたよ」 あの時の戦いを思い起こしながら、彼は腕をさすった。――
数日前、ユーレント達のパーティーは迷宮の地下10階でワードナと戦った。
彼等がワードナの部屋に入ると、サーマイン達の時と同じように、中で待ち構えていたワードナと、召喚されたバンパイア達とが襲い掛かってきた。
熟練のスペルユーザーが揃ったユーレント達のパーティーは、各々が身に付けた究極の呪文を一斉に唱え、部屋の中はたちまち光と轟音によって何も見えないほどの大爆発に包まれた。この絶大な火力により、彼らのパーティーは、これまでも一瞬のうちに戦いを終わらせていたのだ。
しかし、勝利を確信したユーレント達のパーティーを、不意に黒い障壁が包みこんだ。自分達が放ったものと重なるようにして同じ規模の爆発が起こり、全員が吹き飛ばされる。
これまでに、このティルトウェイトを直に受けたのは彼らも初めてのことであり、いったい何が起こったのか誰も把握できていない状態であった。
いち早く意識を取り戻したグリドルトが、壁に叩き付けられて全身の骨を砕かれていたアルゼティにマディを唱え、辛うじて一命を取りとめた。しかし、傍では半身が千切れ飛んだガルフローネが即死しており、その隣には、ユーレントのものと思われる腕も落ちている。
この惨状を見ても、アルゼティは怯むことはなく、呻き声を上げているフィラベルの元へ駆けてマディを唱えた。まだ肉体が残っており、魂も離れていない状態
であれば、彼女の使うカドルトの呪文で蘇生させることができるからだ。そのためには、何としてもこの大魔術師を倒さなくてはならない。
「フィラベル、あなたの手裏剣で、早くあの魔術師を…!」
アルゼティがフィラベルを抱え起こし、硝煙の中に見える人影を向いた。フィラベルは傷が治ると同時に跳ね起き、疾風のような速さでワードナに飛び掛かる。しかし、手裏剣の一撃は正確にワードナの首筋を斬ったものの、ワードナは悠然と杖を振りかざす。
そして、呪文の詠唱を始めたかと思った直後に、凍えるような暴風が吹き荒れる。
ワードナが唱えたマダルトにより、辛うじて生き残っていたグリドルトとリトセスの命が尽き、アルゼティとフィラベルも、再び重傷を負った。
今まで、決して自分達の力を驕っていたわけではないが、ワードナは自分達とはまるでレベルが違う強さであった。グリドルトとリトセスは、薄れる意識の中
で、この老人が大魔術師と呼ばれている理由を知った。残されたアルゼティとフィラベルは、絶望の中で最後の力を振り絞って立ち上がる。――
「…そうして、無我夢中で武器を振るって戦ったそうです。気付いた時には、ワードナの姿は無くなり、後にはあのアミュレットが落ちていた、と聞いています」 とユーレントは語り終えた。
彼がローブをめくって腕を見せると、爆発で吹き飛んだと思われる継ぎ目の跡が、まだ生々しく残っている。
「そうか、ギリギリのところだったんだな…。神の御加護があった、ってやつかな」
サーマインは微笑んだ。
トレボー王が盗まれたアミュレットは1つだけだったが、このたびサーマインとユーレントのパーティーは、それぞれがアミュレットを持ち帰っており、どちら
も全く同じ魔力を秘めていた。何故同じ物が2つあるのか分からず、互いのパーティーは真贋を主張し合ったが、王宮の学者が調べたところ、どちらが持ち帰っ
たアミュレットも本物に相違なかったため、両者のパーティー全員に親衛隊の称号が与えられたのであった。
「俺達が戦ったワードナも、最後は死体も残さずに消えてしまったんだ」
サーマインがあの時の戦いのことを思い起こすと、まだその手にはワードナの心臓を貫いた時の感触が残っているかのように感じた。
「そして、再び甦ってお前達と戦った。あいつは一体何者なんだろうか」
ユーレントは、しばし思慮に耽った。
「ワードナは、この城で一番の大魔術師でした。そして、魔術の研究にも余念が無かったと言われています。アミュレットを盗み出したのも、その研究が目的
だったとか。彼は迷宮の奥底で、肉体が死んだとしても必ず復活するような魔術を生み出したのかもしれませんね。数あるアミュレットも、ワードナが複製した
物…かもしれません」
聞いたところによると、彼らの前にもアミュレットを持ち帰ったパーティーはいるそうだ。事実はどうであれ、トレボー王からすれば元のアミュレットと同等の
力を秘めた物が手に戻り、ワードナを倒せるほどの力を持った冒険者達も親衛隊として取り立てられるので、損はないということか。
「俺達には想像も及ばないような事なのかな。…ともあれ早く街に戻ろう。今日はお前達もギルガメッシュの酒場で祝賀会をやるんだろう?」
「ええ、久々にご一緒できそうですね」
2人は、明かりが点々と灯り始めた城下街へ向かって歩いていった。
彼らはその後、親衛隊としてトレボー城塞に召抱えられ、それぞれの道を歩むことになる。
・サーマイン
城塞の主力部隊に配属され、以降各地の戦場を転戦する。彼の率いる小隊は数々の勲功を上げ、トレボー王の領地拡大に大きく貢献した。
・ロミニ
王宮の魔術師として任官され、魔法の研究や後進の育成に尽力する。しかし、迷宮での過酷な戦いが元で身体を壊し、病に伏せりがちとなる。
・ブノム
当初はサーマインと同じく主力部隊に配属されたものの、すぐに辞官して元の冒険者生活に戻った。たびたび迷宮に入り、独り剣の腕を磨いている姿がよく目撃されている。
・ラコルフェ
近衛兵として取り立てられ、以降は城塞内の警備を中心に任務を与えられる。身に着けていた聖なる鎧は、ワードナとの戦いの後にその魔法の効力が無くなり、再び古びた鎧に戻った。
・リンパリス
仕官はせず、迷宮で得た金と授かった褒章とで城下町に住まいを構え、気楽な生活を送る。やがて、すぐに金を使い果たしてしまい、ブノムと共に迷宮に潜って日銭を稼ぐようになる。
・オータブ
念願の店舗を構えるには、まだ資金も経験も不足しているということで、再びボルタック商店で下働きを始めた。時折リンパリスが迷宮で宝を見つけて換金に来るも、買い叩いているようだ。
・ユーレント
ロミニと共に王宮の魔術師として任官された後、戦略眼や指揮力を見込まれ、部隊の参謀として抜擢された。
・グリドルト
王宮に仕えることはせず、しばらくはリルガミンの街で暮らし、ブノムやリンパリスらと迷宮に潜る日々を送っていたが、やがて何処かへと消えた。
・フィラベル
城塞の隠密部隊に配属される。彼の臆病で慎重な性格と卓越した諜報技術は、この職として天性のものであり、着実に任務をこなして昇格していった。
・リトセス
訓練所の教官補佐に任命されるも、その待遇に不服を感じて辞職する。以降は、街で暮らしながら時々迷宮に潜るような生活を送る。
・アルゼティ
弟のガルフローネと共に辺境方面軍に配備される。几帳面な性格から仕事の評価も高く、後方支援や補給などの任務を主に務めることとなる。
・ガルフローネ
本人は嫌がっていたが、姉のアルゼティに無理矢理連れられて辺境方面軍として配備される。仕事にはあまり熱心ではなく、よく暇を貰っては城下街に行っている。
FC/SFC版のワードナは非常に耐久力が高く、倒すのに少なくとも3ターンはかかる上、相手のティルトウェイトを一発でも喰らったらパーティー
はほぼ壊滅してしまうため、これまでPC版に慣れた身には、非常に厳しい戦いに感じました。
まともに戦うにはレベル20以上まで上げるか、ハマンを使うのが、このバージョンでの正攻法のようですね。
さて、これでシナリオ#1狂王の試練場は終了です。
当初はもっと気楽にささっとプレイしようかと思っていたのですが、何気なく書いた小説もどきが意外と長くなってしまいました。
そっちの方がメインになってしまって、プレイ記録の方は中途半端なものとなってしまったのが少々心残りですが、たまにはこういうのもいいかなと。
このSFC版は同一ソフト内でキャラクターの転送ができるので、また次のシナリオも考えてみることにします。
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