Wizardry#1(SFC)
プレイ記録05 目的
日が西に傾き光がオレンジ色になってきた頃、町外れの訓練場の近く
の丘の上で、ブノムは剣の素振りをしていた。ホビット族の小さな体からは想像も付かないほどに鍛えられた腕から振り下ろされる剣は、目にも止まらぬ速さで空を斬っている。
彼が手にしてい
る剣は、冒険者達から『良い短剣』と呼ばれているショートソードで、ボルタック商店にも高額な値段で飾られている物であった。こう言うと普通の短剣が良
くない物であるかのようだが、あくまで比較としてである。冒険者登録をした者に対する割引価格で売っている安物と違って、本来の(あるいはそれ以上の)価
格で売られている高位の武具は、よほど金を持っている者でないとまず手が出せないため、それぞれ敬意を込めた愛称が付けられているのだ。
ブノムは普通の長剣も十分に使いこなせる膂力があるが、やはり自分の体格的にも、このくらいのサイズの方が使い易いと感じていた。
「やあ、元気がいいなブノム。その剣の調子はどうだ?」 丘の下には、いつの間にかサーマインが来ていた。
ブノムは素振りを止めて汗をぬぐうと、サーマインの方を向いた。子供のような顔立ちではあるが、相変わらずの無表情ではある。
「悪くはない。しかし、まだ体の動きが戻らないな」
地下5階を探索している時に、得体の知れない不死の怪物に体を触れられてからというもの、どうにも体の調子が悪かった。
「不死のモンスターの中には、生命エネルギーを吸い取ってしまう奴がいるって、オータブが言ってたぜ。吸い取られた方は、どんな治療をしても失ったエネルギーは元には戻らないそうだ」
サーマインが丘の下から語りかけた。その言葉を聞いてもブノムが表情を変えることはない。
「そうか…。ならば、もう一度鍛え直すだけだな」 そう言って、再び素振りを始めた。このホビットの戦士は、何故ここまで強さに固執するのかサーマインは尋ねてみたくなったが、どうせ答えてはくれないだろうと
思い、そのまま手を振って町の方向へ歩いて行った。
ギルガメッシュの酒場の片隅では、オータブとリンパリスが2人でテーブルを囲んでいた。
「いいですかぁ、リンパリスさん?昨日作動させた爆弾の罠で、ロミニさんが死ぬところだったんですよ?私がちゃんとカルフォで識別したのに、あなたは何で
普通に解除できないんです?」
オータブは片手で酒をあおりながら、細い目でリンパリスを見据えて説教をしている。一方のリンパリスは、いかつい顔を涙で歪ませて咽び泣いていた。「面目ねぇ、面目ねぇ…!俺は…ダメな男なんだ…!」
リンパリスは相変わらず開錠が不得意で、地下5階を探索している時にも何発か誤作動させている。その度に、ペアで罠開錠をしているオータブからギルガメッ
シュの酒場で説教を受けているのだった。それぞれが怒り上戸と泣き上戸であるため、このようなやり取りが飽きもせず続く。
「それだけじゃないですよ?テレポーターを作動させた時なんか、魔法が使えなくなるエリアに飛ばされましたよね?あの時だって運悪く強敵に襲われてたら全滅するところだったんですよ?」
「俺が…俺が不甲斐ないばかりによう…!でも、あの時は確かカルフォの識別も間違って…」 リンパリスが泣きじゃくって訴えると、オータブは手にしていたジョッキをテーブルに強く叩き置いた。
「何か言いました?」
再びオータブがリンパリスに説教を始める様子を、少し離れたテーブルからロミニとラコルフェが眺めている。
「相変わらず酒癖の悪い奴らだな。今度は何を説教してるのかな」 ロミニは誰に対してでもなく呟く。
「いつ命を落とすか分からないような状況では神経が磨り減るばかりだからな。たまにはいいんじゃないか」 ラコルフェは髪を撫でながら言った。以前は背中まであった長いブロンドの髪は、ハイニンジャに首を貫かれた時に同時に切り落とされてしまったため、肩の上くら
いまでの長さに切り揃えられていた。「まあ、それもそうだな…」 と、ロミニもぼんやりと答える。
2人が口数少なく酒を酌み交わしている所へ、町外れから戻ってきたサーマインが姿を現した。
「よう、お2人さん、こんな所にいたか」
あまり会話が続かなくて困っていたところに丁度よく来てくれたため、ロミニは少しホッとした。
「オータブとリンパリスも奥にいるぞ」 ロミニが顎で店の奥のテーブルを指すが、泣きじゃくるリンパリスと目の据わったオータブを見て、サーマインは首を振って席に着いた。
「この先のことなんだけど」 サーマインは飲物を注文した後に話を続ける。
「みんな、このまま迷宮の探索を続けてて…それでもいいのか?」
「どういうことだ?」 ラコルフェが聞き返した。
「い
や、俺達のような冒険者なんてのは、本気で国王のためにアミュレットを取り返しに行こう、なんて思ってる奴はほとんどいないはずだ。金か名誉か地位…そん
なところだろうけど、ここから先の冒険に、それに見合うものなんてあるのかな、と最近思ってきてさ」 サーマインはテーブルに届いたグラスを一息に飲み干
す。
「それに、俺達の中でもオータブなんかは、自分の店を持つのが目標だとか言ってたから、この前に地下4階で見つけた指輪を売った金で、それはもう十分なんじゃないのか」
あのモンスター配備室の中にあった宝物庫には、持つ者の生命を蝕む呪われた指輪が安置されており、それをオータブとリンパリスが命がけで持ち帰ったのだ。
呪われているとはいえ、骨董品としての価値は相当なものであったため、ボルタック商店では高額の売値が付き、6人で売価を山分けにしても十分な財産となっ
た。
「私はこの城の近衛兵となれれば、それでいい。だから、王の命令通りにワードナを討伐するさ」
ラコルフェは貧しい農家の出身であり、口減らしのために町に追いやられたという経緯があるためか、近衛兵という身分に付くことを己の使命と感じていた。
ロミニも続けて言った。
「俺も金はどうでもいいな。訓練を受けて冒険者になったのは、自分を試すためだ。俺はこの冒険で、自分でも思ってもいなかったほどに魔術を使いこなせるようになってきたから、この先にどこまでいけるか試してみたい…」
珍しく自分のことを語るロミニの言葉は、訓練所からの付き合いであるサーマインも初めて聞くものだった。
「オータブとリンパリスも、金だけが目的だったらとっくにパーティーから抜けているさ。まあ…店を開くとなったら、もっと沢山の金が必要なのかもしれないけどな」
ロミニは奥のテーブルで相変わらずのやり取りをしているオータブとリンパリスの方を見て言った。 「おまえはどうなんだ、サーマイン。そんな事を聞くのは、おまえが一番迷っているからじゃないのか?」
ロミニの質問は本質を突いていたようで、サーマインは思わず考え込んでしまった。しばらく黙っていると、もう一杯のグラスがテーブルに届いた。サーマインはグラスを握って言う。
「俺は…確かに金も欲しいし近衛兵にもなりたい。だけど、皆のように、どうしても必要だというほどの理由は無い。それに、ブノムやロミニみたいにストイック
な気持ちも無い。だけど、この冒険が嫌になったわけじゃないんだ。最後までやり遂げてみたいとは思っている。逆に、大した目的も無く命を賭けた冒険をする
のに、自分の中で何か理由が欲しいだけかもしれない」
サーマインの話を聞き、ラコルフェが頷いた。
「そうだな、目的や信念は確かに必要なものだ。だが、その最後まで冒険をやり遂げてみたい、という気持ちだけでも十分なんじゃないのか。そのうち自分の目的などが見つかったら、その時にまた考えればいいさ」
サーマインはラコルフェの言葉を頭の中で反芻する。 「ああ、そうかもしれないな…」 そして、半分くらいは納得しつつも、人生の目的を見つけられた者に対する羨望を感じた。
「ともあれ、明日も早いんだし、今日はあまり飲み過ぎないうちに宿屋に戻ろうぜ。あいつらも、この調子だとまた一晩中やりかねないしな」
サーマインは相変わらずの問答を続けている奥の2人を指差し、手に取ったジョッキを口にした。
地下5階以降は特段イベントも無いフロアなので、本来であればわざわざここに降りる目的は無いのだが、最初に課したルール上、全てのフロア、全てのマップを埋めるために順次攻略していきます。
何も無いくせに、このあたりから敵が強くなってくる。
気を付けるべきは、呪文攻撃をしてくるレベル7メイジとスピリット。
こちらの行動が遅れると、マハリトやラハリトを一斉に撃たれて後衛がすぐに死んでしまう。
特にスピリットはACも低く呪文無効化能力もあるため攻撃が当たりづらく、一度全滅しかけたこともあった。
幸いエレベーターの近くであったため、すぐに逃げ帰ることができたが、そろそろ事故が起こってもおかしくないような感じだ。
地下5階は中心部にある魔法禁止エリアが危険なだけで、あとは特に仕掛けも無く、配置されている部屋も大き目なため、マッピングはすぐに完了した。
続いて地下6階、出てくる敵はそんなに変化は無い。
しかし、マップの方は結構厄介だ。
オリジナルのPC版では行く意味の無いフロアだったからか、FC版ならびにSFC版では、この地下6階からマップが作り変えられており、なかなか手強いものになっている。
今までにFC版をやったことがないこともあり、先の読めない箇所である。
探索する上で特に厳しいのは、30以上のダメージを食らうことのあるピット。
マップを埋めるためには必ず一度は踏まなくてはならないため、わざと自殺するようなものである。
一度間違ってピットの上でキャンプを開いてしまい、2回連続で落ちた時には本当に全滅するかと思った。
ピットのダメージはあまりにもキツイものがあるから、ここだけは無理にマップを埋めなくてもいいかなぁ…とも思う。
また、ここらで敵から得られる宝も充実してきて、切り裂きの剣や忍耐の兜などの上級装備と合わせて、最強の短剣ことショートソード+2も手に入った。
本来は盗賊用の武器であるが、このバージョンでは装備した武器の攻撃回数が、職業の攻撃回数に加算されるようになっているため(PC版では武器か職業で多
い方の数値のみが適用される)、攻撃回数が3回の最強の短剣を、デフォルトで3回攻撃できるレベル10の戦士に装備させると、何と最大で6回攻撃となるの
だ。
よって、剣の威力自体はそこまで高くはないものの、この攻撃回数のおかげで戦士が非常に強力になっている。
また、ここでレベル11となった戦士ラコルフェがロードへの転職条件を満たした。
ここからどんどん厳しくなっていく中、僧侶呪文をどうしようかと悩んでいたところであったが、ラコルフェをロードにすることで、ある程度は解決しそうだ。
他の選択肢としては、オータブを僧侶にするというのもあるが、ここはせっかくラコルフェが要件を満たしてくれたので、ロードを使ってみようではないか。
あとはラコルフェのレベルを上げつつマップを埋めて、地下6回も攻略完了。
ピットで計3回ほど後衛が死んだが、まだ灰にもならずに無事復活している。
回復が大変だったところでロードが加わったので、今後に期待である。
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