Wizardry#1(SFC)
プレイ記録03 魔法の彫像
「地下2階といっても、さほど恐れるような所ではなかったな」
ロミニは崩れた石壁の破片に腰を下ろして一息ついた。彼らの前に立ち塞がったウサギのようなモンスターの群れは、ロミニが習得したばかりの強力な火炎呪文
ラハリトで跡形もなく焼き払われ、迷宮の床や壁からはま
だ硝煙が立ち昇っている。
飛びかかってきた一匹にサーマインが腕を噛まれたものの、そのまま怯むことなく一刀で斬り捨て、後衛で呪文の詠唱をするロミニを守った。
周囲の安全を確認した後、全員がその場で体を休め始めると、オータブがすかさずサーマインの腕の傷に治癒の呪文を唱える。彼女もつい最近になり、ようやく
ディオスの呪文を覚えたため、こうやって戦いの後に
キャンプを設営して休息することで、より長い時間迷宮を探索することができるようになった。
ラコルフェが兜を脱いで髪を手で払った。鮮やかな金色の髪と褐色の肌がコントラストとなっており、遠目でも非常に目立つ。
「サーマイン、おまえはやはり強いな。実戦では訓練の成績など当てにならないものだというのが、よく分かったよ」
サーマインは確かに訓練所の修了認定
では最低点のスコアであり、他の戦士達との模擬試合でも明らかに技量が劣っていたのだが、迷宮では見違えるように鋭い動きを見せた。さらに実戦を重ねるう
ちに、単純な腕力やスピードだけでなく、斬り合う際の駆け引きや相手の動きを読む洞察力なども身に付いてきて、剣技だけなら今やラコルフェを凌ぐようにも
見えた。
「どうかな、俺は根性が無いからな」
サーマインは赤茶色の髪を掻き上げ、笑いながら濁す。
「いやいや、大したもんだぜ。ドワーフの戦士なんかは力だけはあるけど、
テクニックがまるでなってねえからな」 リンパリスもそう言って、座っているサーマインの肩を叩いた。
このリンパリスも盗賊というクラスに就いてはいるもの
の、戦闘の際には巧みに身を隠しながら敵に奇襲をかけ、細身でありながらも力やスタミナはかなりのものであった。代わりに罠開錠などの繊細な作業はあまり
得意ではなく、どちらかというと以前に出会ったブッシュワッカーのように、追い剥ぎのような盗賊に近いものがある。
「ブノム、次は地下3階に行ってみようか」 キャンプの隅で独り座っているブノムに、ロミニが声をかけた。
ブノムは少し前にこのフロアで手に入れた2つの
彫像を手に取ってじっと見つめている。
「ああ…そうだな。この彫像も、もう必要無さそうだから置いていくか…」
彼が手にしている彫像は、片方は熊、もう片方は蛙の
形をしている。それだけだと普通の置物なのだが、奇妙なことに蛙の置物は『イェイ!』と声を発しながら体を動かし踊っているのだ。おそらく魔法で生命を吹
き込まれたのだろうが、よりによってこんな物に生命を与えるとは、これを造った者は何を考えていたのであろうか…?とブノムは踊る蛙を見つめながら考え
る。
この彫像が置かれていた部屋に続く通路は、それぞれ魔法の霧で遮られており、地下1階で見つけた青銅の鍵と銀の鍵を持っていないと中に入ることができな
かった。鍵
というからには、てっきり扉に挿して使うものかと全員が思っていたが、この鍵の持つ魔力によって行く手を塞ぐ霧が消え、中に入れるようになっていたのだ。
同じように、この奇妙な彫像にもある種の魔力が込められており、どうしても開くことができなかった扉を開き、先にあった金の鍵を手に入れることができた。
しかし、それならば何もこんな気の抜けるような造形でなく、同じような鍵にでも魔力を込めればよかったのではないか。
そんなことを思いながら、愉快に踊る蛙の白い腹を指でさすってい
ると、いつの間にか背後にオータブが立っていた。
「あの…このカエルの置物、要らなくなっのなら頂いてもいいですか…?」
ブノムは蛙をさする指を一瞬止めてオータブの方を振
り向く。 「こんな物、大した価値は無いと思うぞ。ボルタック商店に持って行ったが、買取りを断られてしまったしな」
「いえ、いつかお店を開いた時に飾っておきた
くて…」 と、彼女は物欲しそうな表情でじっと蛙の像を覗き込んでいる。
しばらく沈黙した後、このような奇妙な像を
造ったのは、あるいはオータブのような者だったのかもしれない…と思いながら、ブノムは頷いた。
地下2階は、特にこれといった問題も無く攻略し、マップも(現状で行ける場所は)全て埋めた。
PC版だと何の効力も無かった金の鍵は、このバージョンだと地下1階のエレベーターへのショートカットとなっているダークゾーンを通過できるようになるた
めのアイテムとなっているのだ。
青銅の鍵・銀の鍵・クマの置物・カエルの置
物、と4つのキーアイテムを使って入手する鍵だというのに、どこにも使う場所が無いというのは、むしろPC版の方が設定忘れをしていた可能性が高いと思
う。
そのままマップを埋めるために歩き、ピットの箇所もきっちり落ちる。
まだリトフェイトの無いシナリオでは、これがキツイと
ころだ。
戦闘の方も順調で、このフロアではまだ特段苦戦するような敵は出てこない。
毒攻撃をしてくるクリーピングクラッドが少し怖かった
が、幸い階段から近い場所でしか毒にはかからなかったため、ギリギリ歩いて城に戻ることができた。
オータブがラツモフィスを覚えるのはレベル16なので、金が貯まったら毒消しを買っておいた方がよさそうだな。
続いて、悪名高い回転床とピットの地下3階に突入。
普段であれば通り過ぎるだけの、いやむしろ通ることすらしないフロアであるが、今回ここはかなりの難所である。
その最大の理由は、マップを埋めるために各所に配置されたピットを全て踏まなくてはならないからだ。
ディオス5回しか使えないパーティーでは、一度踏んだらすぐ町に戻らないとならないような痛手を負ってしまい、非常に効率が悪く、さらに出現する敵も結構
強いため、弱っているところを奇襲されたら大惨事になるだろう。
大抵の敵はダルトやラハリトで壊滅できるものの、毒攻撃・クリティカルを仕掛けてくるレベル3ニンジャや、耐久力の高いワーベアあたりが手強い。
そんなわけで、一回の探索で2~3の玄室で戦い、最後にピットを踏んで城に戻る、というセットを地道に行わなくてはならなかった。
ここでオータブがレベル8になりカルフォを習得したため、これでようやく宝箱を開けられるようになった。
素早さが低いリンパリスは、罠の開錠自体はそこそこできるのだけど、肝心の識別の精度が低すぎる上に、触れただけでも罠を作動させてしまうことが多いた
め、この呪文が必須なのである。
ということで、玄室で倒した敵の宝箱を早速開けてみると、
いきなりカルフォの判定が違っており、ガス爆弾を喰らってしまった。
5%の確率を最初に引くとは、オータブさんもなかなかお茶目なことしてくれる。
出口までの距離が遠いため、普通に歩いて帰ったら毒のダメージで死ぬところであったが、幸いエレベータールームの近くだったため、即座に地下1階に移動
し、マピロマハマディロマトのおやじの所へ駆け込み、一命を取り留めた。
まあ、そんな不幸な出来事もあったけど、次からはそうそう判別をしくじることもなく宝もちゃんと入手でき、ここで『良い短剣』も手に入る。
平仮名で『よいたんけん』と表示されるとパッと見て何のことだか分からなかったが、ショートソード+1のことである。
今回は盗賊も後列から待ち伏せ攻撃ができるからリンパリスに装備させてもよいが、この剣は高額で売却できるため、いざという時の保険としても助かる。
他にも、固い杖や鉄の杖などの使うことのないアイテムも手に入り、資金がかなり潤った。
地下3階自体には特別何かアイテムがあるわけでもないので、ひたすらマップを埋めるだけではあったが、途中、ピットのダメージでロミニが2回死んでしまっ
た。
ここのピットは20ポイント以上のダメージを受けることもあり、ダメージを負っている時に嵌るとかなり危険である。
モンスターとの戦いで死ぬことはなかったが、やはりこいつが一番の難敵だったなー。
金はある程度余裕ができたので、サポートメンバーを出すことなく復活できるが、決して生命力は高くない連中ばかりなので、やはり死なせないようにするのが
第一だな。
こうして、地下3階もマップを全て埋めて攻略完了した。
ピットを2回通らないと埋めることができない場所もあり、大変な苦労だった。
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