Wizardry#1(SFC)
プレイ記録01 訓練生


トレボー城塞の大通りに面したギルガメッシュの酒場、昼時で人影もまばらな店の片隅 で、2人の男がテーブルに向かい合わせに座り酒を飲んでいる。
「パーティーに加わってくれそうな奴、見つかったか…?」
赤茶色の髪の戦士が尋ねると、向かいに座っている黒髪の魔術師は首を振る。この2人は訓練所の同期生で、名前はそれぞれサーマインとロミニという。つい2 週間ほど前に王立訓練所で訓練課程を修了したばかりの新米冒険者で、こうして日々ギルガメッシュの酒場でパーティーのメンバーを探していた。
”街外れの迷宮に篭る魔術師ワードナを倒し、盗まれたアミュレットを持ち帰った者を親衛隊に取り立てる―” というトレボー王からの通達が出てから5年、この町にはひっきりなしに冒険者達が訪れ、王立の訓練所で訓練を受けて迷宮に旅立っていった。

「同期の奴らでまだ迷宮に入ってないのは、俺達くらいのものかな」 ロミニはサーマインの方を見ることもなく、ぼんやりと言った。
本来は長い期間を要する王立訓練所の訓練課程も、トレボー王の勅令により修了要件が大きく縮減されているので、今ではほぼ誰でも短期間で卒業できるように なっている。だが、そうして登録された冒険者は危険な迷宮に挑むにはまだ圧倒的に力不足であり、一人前と呼べる実力になるには更なる実戦経験を要する。加 えて、サーマインとロミニは、訓練修了時のスコアが両名ともに最低点の5であった。最低点とはいっても、他の同期生も大半が似たり寄ったりなスコアなの で、さほど目立つものではなかったが、彼らにパーティーメンバーが見つからないのは、やはり少なからずこのスコアの影響があるのだろう。逆に、スコアの優 秀な者や、ドワーフ族の戦士、ノーム族の僧侶といった、その職業に天性の素質を持っている者達はパーティーメンバーとして人気が高いため、訓練修了と同時 に冒険者パーティーからスカウトされることも珍しくない。

もう、いっそ2人パーティーで迷宮に行ってしまおうか― 2人がそう思い始めた時、酒場に1人のホビットが入ってきた。彼はオーダーをすることもなく足早 に歩き、一直線に2人のテーブルに向かってくる。
「一緒に迷宮に行くパーティーを探してるらしいな」
ホビットはテーブルの前に立つなり、挨拶も無く2人にそう言った。一見して子供のような背丈と声であるが、どことなく陰がある顔立ちである。サーマインは、この不躾なホビットに見覚えがあった。
「おまえは確か訓練所の同期生の…」 サーマインが言いかけると、ホビットはすぐさま名乗った。
「ブノムだ」
ホビットという種族は一般的に愛嬌があってお喋り好きで、グループ内でのムードメーカーのような存在になることが多いが、このブノムはいつ も無愛想な表情で、同期生の中でも話をしたことがある者がほとんどいないような者であったため、サーマインも妙に記憶に残っていた。さらに印象深いこと に、このブノムが修了の認定を受けた際に選んだクラスは戦士であった。最初は侍を希望していたが、スコアが足りないということで渋々と戦士を選んでいたの を、よく覚えていた。
ホビットはその小柄な身体から戦士には最も適正が無く、通常は俊敏さを活かした盗賊か、あまり身体能力を要求されない魔術師などを選ぶものだ。このブノム のスコアも特別高いわけではなかったので、さほど優れた戦士とはならないだろうことは誰の目にも明らかであったが、何故彼が戦士にこだわっていたのかは誰も知らない。
「パーティーメンバーがいないんだろう?俺を連れて行ってくれないか?」 と、ブノムは切り出した。
「たしかにメンバーを探してはいるけど、俺達は2人しかいないんだ。おまえが1人加わったところで…」
「それなら心配はない、こちらでも、あと2人心当たりがあるから、あんた達がよければ一緒にどうだ?」
サーマインが言い終わらないうちに、このホビットはすぐさま付け加えた。
この唐突な申し出に2人は即答しかねていたが、なかなか悪くない話である。ブノムに加えて2人のメンバーが加われば、自分たちと合わせて5人、パーティー としては十分な人数となる。あぶれ者の彼らからすれば、なかなか巡ってこないような話だ。
「そういうことなら、とりあえず話を聞かせてくれないか」
魔術師ロミニが答えると、ブノムは2人を外に出るように促した。


ギルガメッシュの酒場から出て、下の階にある宿屋『アドベンチャーズイン』に入ると、ロビーには色白で痩せたドワーフと、背の高い褐色の肌の女が武具の手 入れをしていた。2人はブノムの姿と、後ろに立つサーマインとロミニに気付いたのか、作業の手を止めて立ち上がった。
「このお二人が話していた奴らかい、ブノム?」 ドワーフは神経質そうな人相と裏腹に、明るい声でブノムに尋ねる。
「ああ、彼らもパーティーメンバーを探しているそうだ。戦士のサーマインと魔術師のロミニだ」
ほとんど話をしたこともないブノムから紹介を受けたサーマインとロミニは、どう答えたものかと戸惑ったが、とりあえず簡単な自己紹介をした。
「サーマインだ。クラスは戦士、ブノムとは、その…同期生だ」
「同じく魔術師のロミニと言います」
細身のドワーフはニッコリと笑い、手を差し出した。 「俺の名はリンパリス。クラスは盗賊だ。よろしくな」
ドワーフの盗賊、と聞いてロミニは少し驚いた。通常ドワーフは屈強な肉体と精神力を活かして戦士か僧侶を選ぶ者が大半なのだが、ブノムといい、このリンパ リスといい、大層な変わり者だ。
もう1人の褐色の女も2人の前に来た。
「私も訓練所で同期生だったのを覚えているか?戦士のラコルフェだ」
ロミニは全く覚えていなかったが、サーマインには覚えがあった。 「名前までは知らなかったが、覚えているよ。戦士志望の訓練生の中では優秀な方だったはずだ」
このラコルフェは、女ながらに剣の腕も確かで礼儀正しく、性格も穏やかであったため、訓練生の中でも人気があった。なので、すぐに他のパーティーからスカウトを受けているものだとサーマ インは思っていた。
「光栄だ」 ラコルフェがお辞儀をする。並んで立つと、背の高いサーマインとほぼ同じくらいであった。サーマインは付け加えた。
「一応断っておくけど、俺達のスコアは最低点だぜ。その辺のことはいいのかい?」
「卒業時のスコアのことを言っているのか?あんなものは大して参考にはならないさ。現に今この町で活躍している冒険者達は、スコアが高い者ばかりではな い。低い者も同程度にいると聞く」
ラコルフェの言うとおり、訓練所でのスコアが全てを決めるということはなく、むしろその後の経験の方が重要だというのは、熟練の冒険者達は皆分かっている ことであった。
「私も、あんなずさんな訓練が全てだとは思っていない。それに、良い点を取るためだけに、わざと何度も試験を受け直すような連中に嫌気がさしていたんだ。 ああいった事をしようとしない君達の方が気が合いそうだ」 ラコルフェが微笑みながら手を差し伸べた。
「まあ、そんな上等なものじゃないんだけどな」 サーマインも、それに答えて手を出す。
「決まりだな。これで5人、なんとか迷宮で戦える人数だ」
ブノムは無表情で言った。


5人は再びギルガメッシュの酒場に戻り、冒険支度を始めた。この町の冒険者達は、酒場の中でミーティングをすることが通例になっている。サーマインもロミ ニも、旅立ち前の高揚からか、先ほどまでの鬱屈とした酒場の光景が心なしか活気に溢れているかのように見えた。
ふと、酒場の隅に目をやると、先ほどはいなかった細い眼をしたエルフの女が1人テーブルに座っている。
「あれは…同期生のオータブじゃないか?」 ロミニがサーマインに尋ねた。
「オータブ?覚えてないけど、確かに訓練場で見たような顔だな」
オータブは他の冒険者とは違い、このリルガミンの町に冒険者向けのアイテムを販売する店を出すのを夢見てやってきた者で、そのために訓練所で基礎を学んで いたエルフであった。訓練修了後は司教のクラスに就き、その鑑定能力を活かすために、卒業してすぐにボルタック商店で働いていると聞いていた。
「オータブ!久しぶりじゃないか」
ロミニが声をかけると、エルフはハッと顔を上げた。
「えっと、あなたは…ロミニさん…でしたっけ?お…お久しぶりです」
「最近見ないと思っていたら、こんなところで何してるんだ?今日は店は休みなのかい?」
オータブは悲しそうな顔をした。 「それが…ボルタック商店はクビになってしまったんです…つい先ほど…」
「ええ!?な…なんでまた…」
「冒険者のパーティーが持って来た指輪を私が鑑定したら、それが呪われていて外れなくなってしまったんです…。仕方なく呪いを解いたら指輪は壊れてしまっ て、店がその代金を弁償する羽目になって巨額の損失を出してしまい…」
ロミニは気軽に声をかけたものの、予想とは違った重い話をされてしまい、しどろもどろになっている。
「そ…そうか。それは災難だったな…。まあ、まだ新米なんだし仕方ないさ」
司教というクラスは、本来は高レベルの僧侶や魔術師が更なる高みを目指すために就くものであり、その名に見合った力になるには膨大な経験が必要となる。決 して訓練を終えたばかりの新米が名乗るべきクラスではないが、おおかた無知な教官がオータブに勧めたのだろう。
「私…これからどうしたらいいか…もうボルタックさんの所には戻れないし…」
オータブは思いつめた表情をしている。ロミニも思いがけぬ近況を聞いて返答に窮してしまい、ちらちらと目を泳がせる。そこに、サーマインが口添えをする。
「なあ、それなら俺達と一緒にパーティーを組まないか?迷宮で見つけた宝を沢山識別すれば君の修行にもなるし、俺達もあと1人メンバーが欠けているところ だ」
「え?め、迷宮にですか…?」
「こんな所に新米が1人で居たら、他の冒険者パーティーから都合のいい荷物番にされちまうぜ。行く所が無いなら、悪い話じゃないと思うけどな」
サーマインがオータブに向かって言った後、残りのメンバーの方を見た。
ブノムは黙って頷き、リンパリス、ラコルフェも賛同した。
「分かりました…その…迷惑じゃなければ、よろしくお願いします…」
彼女は押しに弱いタイプのようだ、と皆が思った。








こうしてパーティーを組んだ6人で、早速迷宮に潜る。
まずは最初の玄室で、にんげんがたのいきもの達と戦って経験値稼ぎだ。


こちらは魔術師ロミニと司教オータブがカティノを使えるし、前衛は全員戦士なので、最序盤に限ればかなり安定している。
このバージョンは盗賊が後列から身を隠して攻撃できるし、B1Fで敵が1グループしか出てこないようなので、特段の危険も無さそうだ。
ダメージを受けたら宿屋で治すしかないが、この段階ならまだ問題ない。

手強いのはカティノの効果が薄いアンデッドコボルドだが、こいつも戦士達が3人で戦えば、魔法主体のパーティーよりは安全である。





と思っていたら、盗賊リンパリスがスタナーに引っかかり麻痺する。
素早さが12しかないだけあり、全く信用ならない腕前だ。



レベル1なので治療費も安く済んだが、それでも現状ではかなりの痛手。
この金で兜が買えた…。






その後も何度か戦闘を重ね、前衛戦士がレベル2となった。
ここまで来れば、取りあえずは安心だ。
戦士達のHPは全員10以上になり、命中率も若干高まったため、敵から攻撃を受ける機会も減る。
このフロアで死ぬ可能性もグンと減っただろう。


と思っていたら、またしてもリンパリスが罠に引っかかる。
よりによって今度は爆弾で、全員が大ダメージを喰らってしまった。


幸い死人は出なかったものの、この傷を治すための宿泊料は結構な額になる。
ちまちま稼いだ金が、またしても減ってしまった…。


失った金を取り戻そうと宝箱を開けていると、今度は毒針に引っかかるリンパリス君。
わざと作動させているとしか思えないくらいの成功率だ。


迷宮内でのHP回復手段は今のところ無いため、城に戻る前に力尽きる。
はいー、今度は復活料金750GP…。


リンパリスを生き返らせる金はもう無いので、カント寺院にぶち込んでしばらく放置しておく。
そこでしばらく反省しなさい。





リンパリスの復活料金を稼ぐために玄室以外のランダムエンカウントで戦って金を稼ぎ、ついでにレベルも4に上がる。


やはり序盤は宝箱を開けない方が安全だ。


これで金ができたのでリンパリスも復活させておく。
この金で鎧が買えたなぁー。



続いて司教オータブもレベル4となり、待望の僧侶呪文を習得!
…したのだが、 カルキしか覚えなかった。



これでようやく宿に泊まらなくても回復できると思っていたが、もう少し先のようだ…。


これで戦力はかなり安定したので、最初の玄室以外のエリアの探索を開始し、近場から順にマップを埋めていく。
基本的に出現する敵は同じなので、特に問題も無く進んでいけるのだが、この『回廊の終わり』と表記された場所では、これ以上先に進むことができなかった。


PC版だと、その先にあるダークゾーンを抜けてエレベーターまで行けたのだが、あまりに便利すぎたからか変更されてしまった箇所である。



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