Ultima 7 プレイ記録 40 解放

ロウェナの思い出の品と言えば、夫のトレントが彼女のために作ったというオルゴールのことだろう。
これは、トレントの廃屋にまだ残っており、ちゃんとメロディも流れる。









これを持って、再びダークタワーに向かった。


 ホランス

リッチは、何か笑いに似たような動作をし、嘲りながら言った。
「おお、素晴らしきアバタール殿が、またやって来られた。このような名誉を受けるような事を何かしましたかな?」

"名誉"という言葉は、このアンデッドの舌には見合わなかった。




「よし、ロウェナもいるな。では、このオルゴールを…」





 ロウェナ

小さな箱から流れる音楽が、ロウェナを君の方に振り向かせた。
彼女は夢から醒めたかのように、数回瞬きをした。
この場合は、悪夢であろうか。
彼女はリッチを見ると魅了されそうになったが、リッチが彼女から目を逸らすと、すぐに君に向かって、近くへ呼び寄せる動作をした。




「効果あったか…?こっそり話しかけてみよう…」


 ロウェナ

「私は、ずっと精神を操られていました。どれほどの時間操られていたのかは分かりません。外で何が起こったのかを教えてくださいませんか?」
君は、町で聞いた出来事を彼女に述べた。




「……という事があったんだ」


 ロウェナ

「可哀想なトレント、彼が私達の愛を忘れてしまうほどに傷ついてしまうなんて、考えたくもありませんわ」
彼女が悲しみのあまり手を強く握り締めると、その中にある物に気付いた。

「お願いです、アバタール。この指輪を彼の元に持って行って、私が今も彼を愛しているということを伝えてくれませんか。これで、彼が以前に私が愛したトレントに戻ってくれるかもしれません」
彼女は細い指から指輪を抜き取り、君の手の上に置いた。

君は、それがすり抜けてしまうのではないかと思ったが、掌の上にきちんと残っていた。




「この指輪は…ウェディングリングか?分かった、その言葉、しっかりトレントに伝えよう」


 ロウェナ

「ありがとうございます、ご親切なお方。何と御礼を言ってよいか分かりません」

ロウェナの目が少しボンヤリとし、あたかも深い催眠状態に入り込むように、ゆっくりと瞬きをした。




「おい、大丈夫か?」


 ロウェナ

彼女は、ゆっくりと瞬きした。
「なんて綺麗な音楽でしょうか。旦那様…ホランス様、が以前にこのようなオルゴールをくださいました」
ロウェナは、注意を失って行ってしまった。




「完全に呪縛が解けたわけじゃなかったのか…。だが、この指輪があれば…」








 トレント

炎の中に幽霊の人影が見える。
巨大で、筋骨隆々としており、口ひげを一杯に生やしている幽霊だ。
彼は君が近づいても気付いていない。




「相変わらずだなトレント。おまえに渡したい物があるんだ」


 トレント

君はトレントに指輪を差し出した。
最初、彼は君を無視したが、その指輪が何なのか気付くと、君から指輪を受け取って目の前に握り締めた。
彼の中の何かが音を立て、巨大な炎が急速に衰えた。
しばらくの間、君は泣いている幽霊をそっとしておいた。
そして泣き止んだ時、彼の容貌は目覚しく変わっていた。




「彼女は今でも、おまえを愛していると言っていたぞ」


 トレント

彼の目の中に燃えていた炎は今は消え、深い青色の影が代わりに浮かんでいた。
彼は、別の人間…いや幽霊だったかのようだ。

「俺の行いを許してくれ、アバタール。自分の身に何が起こったのか分からなかったんだ。あの炎のことは覚えているが、それよりも、俺自身の憎しみの方が熱かったんだ」
彼は苦しげに思い出した。

「あなたは彼女に会ったんだな?ロウェナに会ったんだな?そして、彼女はまだ俺のことを気にかけてくれていた。ええ、それが、この魂の籠を完成させるための全ての理由だ。俺達は、ホランスの卑しき魔術から、彼女を解放しなくてはならないんだ」




「よし、自我を取り戻したようだな。あんたがその気になれば、彼女を救うこともできるぞ。リッチを倒すために必要な『魂の籠』とは、どんな物なんだ?」


 トレント

「これは、人の形に合わせた特別な籠だ。モルドラ婦人が言っていたが、一度これを魂の井戸に降ろせば、リッチのホランスを捕らえられるのだ」
彼の声は、以前よりも大分柔らかになっていた。




「じゃあ、とにかく完成させないといけないな。あとは何が必要なんだ?」


 トレント

「ああ、愛しのロウェナを取り戻すために、どうか手伝ってほしい」
彼は懇願した。

「籠を完成させるには、鉄の棒が必要だ。町の共同墓地で、いくらか見つかるだろう」




「鉄の棒か…分かった。じゃあ、探してこよう」


ということで、町の共同墓地へと向かった。
墓地の周囲に張られた鉄柵の付近には、元は柵の一部だったと思われる棒がいくつか落ちていたので、これを拾う。







「ほら、この棒で大丈夫か?」


 トレント

「これがあれば、すぐに完成させられるだろう。籠を造ってる間、そこで待ってな」




「……」


 トレント

トレントは強烈に睨みつけ、その態度を君の脳裏に印象づけた。
「あんたが逃げ出すと思っていたら、あんたには、俺の手助けをしてほしいなどとは頼まなかったさ。さあ、これの籠を持って、モルドラの所へ行ってくれ。彼女が、これをどうやって使うか指示してくれるだろう」

彼の態度が軟化した。
「再びロウェナと出会える唯一のチャンスを、あんたの手に託す」




「お、もう完成したのか。これまでの200年間とは、いったい何だったのか…」


 トレント

「どうか、急いでくれ。俺の妻は忌々しいホランスの面前で耐えているんだ。こうしている間にも、俺の心はナイフで抉られるようだ」
彼は店の周囲をウロウロと歩き始めた。




「分かった、じゃあ行ってくる…っと、なんと重い籠だ…!STRが60もある俺でなくては、こんな物を持ち運ぶのは不可能だぞ…!」





ついに、トレントが籠を造り上げた。
この籠と錬金術師ケインの元で調合した秘薬の使い方を、モルドラ婦人に聞きに行く。


 モルドラ

「魂の籠は、死者の力によって鍛えられなくてはなりません。これを完成させるためには、ダークタワーの魂の井戸に戻り、籠を井戸の中に降ろすのです。そこに囚われた魂が、身を削って、必要な力を与えてくれるでしょう。無慈悲なことに聞こえるかもしれませんが、彼らを解放するための必要悪なのです」
彼女は君を鋭く見つめた。




「なるほど…。井戸の中に籠を入れればいいんだな。それで?」


 モルドラ

「次の手順は、真夜中まで待つのです。そして、横たわった姿勢のリッチの上にその籠を打ちつけるのです。その時間は、彼が暗黒の奉仕によって、町の人々から魂を吸い取っている時間です」
ちょっとの間を置いて、彼女は続けた。

「最後に、魔法の処方箋を、籠の中のリッチの上に注ぐのです。この調合物は町を滅ぼしたものと同じ物質です。それを錬金術師ケインから入手する時には、気をつけてください」




「勝負は真夜中か…。分かった、では準備をしておこう」









塔の奥には、話に聞いた『魂の井戸』があった。
モルドラからの指示通り、この井戸にトレントの造った籠を沈めると、井戸に囚われた魂の力により、籠が青く輝いた。
これで『魂の籠』が完成した。








そして、深夜0時過ぎ…ついに決戦の時。
町中の亡霊達はダークタワーへと向かい、リッチの暗黒の儀式が始まる。






「石の祭壇のような物の上に横たわっているのは、町中の亡霊達だ!そして、真中で眠っているのがホランス!ここで彼らの魂の力を吸収しているのか…!」




「モルドラもクエントンもホランスも、話しかけても何の反応もない…。だが、今やるしかない!よし…この籠を寝ているホランスに…!」








「捕らえたぞ!これで身動きができなくなったはずだ!最後にケインの秘薬を浴びせる!これでどうだ!」





 ホランス

魂の籠は塵となり、リッチに目まぐるしい変化が起こった。
悪しき魂が閉じ込められていた者の中で、見覚えのある姿が見えた。

ホランスだ!
彼は霊体であったが、恐ろしいアンデッドではなく、人間に似た姿であった。




「ホランス…?元に戻ったのか…?」


 ホランス

「ありがとう、アバタール。私は悪しき霊によって意思を抑留されていた。あまりに長い時間だったため、私がかつて何をしていたのか、あまりよく覚えていない。汝はスカラブレイと私を、そして全ブリタニアを救う偉大なる業績を成し遂げたが、汝のような者にとっては、些細な事柄なのだろうな。心から感謝する」
彼は深くお辞儀をした。




「200年前の姿のままだ…。ホランスがリッチになったのではなく、ホランスの死体にリッチが取り憑いたってのは本当だったんだな」


 ホランス

「アバタールよ、汝に頼みがある。この塔の底には『魂の井戸』というものがあり、そこにスカラブレイの苦悶する霊魂達が囚われ、この島に縛り付けられている。これを破壊しなくてはならないのだ」
ホランスは熱烈に君を見つめた。

「彼らを解放できるのは汝だけだと、私は思っている。どうだろうか?」
彼は期待して君を見た。




「魂の井戸を破壊しちゃうのか!?まあ、必要とあらばやるが…どうすればいいんだ?」


 ホランス

ホランスは、しばらく考え込んだ。
「井戸が破壊されれば、中に囚われている魂は開放されて、当分はエーテルの上を当て所なく漂うだろう。また、私はロウェナ婦人と彼女の夫に対しても、悪しき事をしてしまった。これも正したいものだ。どうか彼女を、この邪悪な場所から連れ出して、トレントと再会させてやってくれないか。そうすれば、解放された時にも2人でいられるだろう。汝がこの任務を終えれば、井戸を破壊することができる」




「そうだな。トレントも、死んでも死にきれないような思いで200年間過してきたんだ。是非とも再会させてやりたいもんだ」


ということで、ロウェナを連れてトレントの元に向かう。
このロウェナ、一時的とはいえパーティーに加わり、ステータス画面まである。




戦って経験値を稼げばレベルも上がるのだろうか。
ちなみに、ペーパードールはジュリアと同一…。





トレントは、焼け残った彼の店の周りをウロウロしていたが、君が戻って来たのを見て駆け出した。
彼の愛するロウェナを見つけたのだ。
悲運の恋人達は、お互いに走り寄り、幽霊の体を抱きしめた。
しばらくの間、どちらがどちらの霊なのか見分けるのも難しかった。
君は辛うじて、ロウェナの指輪を指に嵌めている亡霊の方がトレントだと見分けられた。
そして2人は、ゆっくりと君の方を向いた。

「あなたは、私達のために尽くしてくださいました。私達を助けたことが、あなたの探求の助けになっていれば幸いです」
トレントは君にお辞儀し、愛する妻を見つめた。




「町はこんな有様になってしまったが、これで彼らの魂も救われるだろう…」








 ホランス

「よし、これで、残ったスカラブレイの者達を解放できる。魂の井戸は、霊の自己犠牲によってのみ、破壊することができる。魂が肉体に縛り付けられている生者では駄目なのだ。町中を捜し、スカラブレイのために犠牲となってくれる魂を見つけるのだ」




「霊を犠牲にするだと…?」


 ホランス

「まずは、フォーシーズ市長に尋ねてみるのが良いだろう。他の者よりも先に、この事を考える権利があるからな」
君が立ち去ると、彼は思慮深げに顎をさすった。




「そうか…じゃあ、とりあえず聞いてみるかな」










「…ということで、スカラブレイの魂を救うには、誰かの霊が犠牲にならないといけないそうだ。あんた市長なんだから、ちょっと考えてみてくれないか?」


 フォーシーズ

「おお、なんですって!私は、そのような仕事に適した人物だとは思いませんよ。ええ、思いませんね。そうだ、まずは他の町の人々に聞いてみるのが良いでしょう。もし誰もやりたがらないのだったら、その時に考えましょう。そうです、それがいい。他の人に尋ねた後に、また戻って来て、どなたが哀れなる魂なのかを教えてください」
彼は知恵負けして笑った。




「まあ、自分の魂を犠牲にしろなんて言われたら、普通はそうだわな…。仕方ない、他の誰かを探すか…」



犠牲になってくれる者をさがすため、スカラブレイの住人達の全員を説得して回る。





「なあ、モルドラの婆さん。恐縮な頼みなんだが、魂の井戸に飛び込んでくれないかい?」


 モルドラ

彼女は、まずは微笑んだが、すぐに真面目な表情になった。
「私の魂は、この生者の世界の領域を超えた力で繋ぎ止めています。もし私が魂の井戸に入ったら、この島全てと、大陸の一部分が、魔力の放出によって滅んでしまうでしょう。あなたは、このスカラブレイの町を永遠に失わせるつもりですか?」




「え、そうなのか?でもホランスは、そう言ってたしなぁ…。ともあれ、この様子じゃ彼女は井戸に飛び込んでくれそうにないな…」









 マーカム

君は、魂の井戸に入るために犠牲が必要なことを話した。そして、マーカムは、長く、深く考え込んだ。
「じゃあ、あんたは、俺が3月ウサギのようにトチ狂って、その…魂の井戸ってやつの中に飛び込んでほしいってワケだな?」




「頼むよ、ここで飛び込んだら英雄だぜ!」


 マーカム

彼は疑い深く君を見た。
「まあ聞け。俺はガキの頃から、そんな勇気は持ち合わせてねえんだ。その頃から敏感だったんだよ。その犠牲には、別の奴を探すこったな」




「ふぅ…。そりゃ魂ごと消滅しちゃうってんだからなぁ…」








 ポーレッテ

「あなた、私に…井戸の中に飛び込んでほしいって言うの?」
彼女の目が驚き見開いた。




「うん、いや、痛くないからさ、ちょっとだけ!」


 ポーレッテ

「ええ、あなたなら池にだって飛び込めるでしょうね!」
彼女は、ピチピチした胸の前で腕を組み、怒って行ってしまった。




「やれやれ、無理もないか…」











「ええっと…お取り込み中のところ、すまない」


 ロウェナ

2人は再会した時から抱擁を止めず、君が話しかけられないほどであった。
そして、この先に止めるという素振りも見せなかった。




「実は……というワケで、魂の井戸に飛び込んでくれないか?ほら、もう再会したし、現世に悔いはないだろ?」


 トレント

「だめだ、アバタール。彼女は俺の命だ。彼女を連れて行くということは、俺の心を奪うということだ」
トレントが、妻を強く抱きしめた。


 ロウェナ

「主人がこう言っているので、私は行けません。分かってください、アバタール」




「ですよねぇ…」











「やはり、おまえしかいない!悲劇の男クエントン、スカラブレイを救ってくれ!」


 クエントン

君は、魂の井戸に入り、それに破壊をもたらすためには、霊魂が必要だと説明した。
クエントンは、しばらく考えて返答した。
「どうか、分かってください、アバタール。私は、そのような勇気ある者でありたかったと、心から思っています。ですが、マーニーを破壊してしまうかもしれないような事は出来ないのです。思い出してください、彼女の魂は、墓地の死体と共に安らかに眠っているのです」




「くっ…彼もダメか…!」











「苦悶する者ケイン…町を救うために犠牲となり、その魂が救われる時が来たぞ!」


 ケイン

「すまない、アバタール。俺は、自分が滅ぼしてしまった人達のことを思いながら、ここで永遠に過さなくてはならないんだ」




「こいつもダメとは…いったい誰が犠牲になってくれるって言うんだ!?」











「誰も犠牲になってくれないぞ。やっぱ、あんたが責任を取って…」


 フォーシーズ

君が市長に、住民のために犠牲になるように頼むと、市長はあちこちに目をキョロキョロとした。
「あなたは、まだ尋ねていない人がいますよ。その人を探して尋ねてみてください。その後に、また来てくださいよ」
彼の額から、幽霊の汗が滴り落ちた。




「まだ尋ねてない人…?他に誰かいたかな…」








 


 フェリーマン

スカラブレイのフェリーマンが幽霊の船に立ち、胸の前にポールを握っている。




「まさか、おまえだったとはな…。現世にありながら、死の世界にいる者…。得体の知れない奴だったが、スカラブレイのために犠牲となってくれ!」


 フェリーマン

少しの間、フェリーマンの骸骨の顔に儚い期待の表情が浮かんだかのように見えたが、それはすぐに消えた。
「私には永遠の終焉まで続く義務がある…。解放の望みなどで、私を愚弄しないでくれ…」




「……違うの?」











「ダメだ…。誰も犠牲になってくれない…。もうスカラブレイを救うことはできないのか…」


 フォーシーズ

町の住民の誰もが、ために犠牲になる意思がないことを知ると、フォーシーズの目に奇妙な光が走った。
彼は顎を強張らせ、肩をいからせた。

「分かった、よく分かった!勇敢なる魂が現れないということならば、私が真の勇気というものを、彼らに見せてやるしかないだろう」
彼は領主のように大股で足を動かして歩いた。




「え!?市長、あんたが行ってくれるのか…!?」


 ホランス

「素晴らしい、それでは、市長を井戸に連れて行き、彼の意思で中に入ってもらうのだ。そうすれば、この島と井戸の魂達は、運命から解放されるであろう。だが不幸なことに、フォーシーズ市長は永遠に消失してしまう」
彼は、悲しそうに亡霊の紳士を見た。




「町の皆の魂に安息をもたらすために、自分は完全に消滅する…。これこそ、真の自己犠牲だな…。フォーシーズ市長…あんた、男だぜ…!」


 フォーシーズ

「私を井戸まで導いてください。そうすれば、私は責務を果たしましょう」彼は、自身の運命に従っているようであった。


なんと、あの臆病なフォーシーズ市長が、自ら志願してくれた。
彼なりに、この町が滅んだ責任を感じているのだろうか。
しかし、間もなく魂が解放されるというのに、ただ1人だけ跡形もなく消滅してしまうというのは、あまりに酷な話である。


ちなみに、このフォーシーズ市長も、ロウェナと同様にステータス画面を見ることができる。



ペーパードールはセントリと同一ですが…。








 

 モルドラ

「あら、こんにちは、フォーシーズ市長。ついに、私達の町を救済する手助けをすることを決意したのですか?」
彼女はフォーシーズを、じっと見つめた。




「モルドラ婦人…」


 フォーシーズ

「そうさ、私はもう、ケインに間違った製法を渡した愚か者ではない、そうだろう?」


 モルドラ

「ですが、あの愚かな製法で、まさにホランスを駆逐したのですよ」
モルドラ婦人は、噛み締めて言った。


 フォーシーズ

「フン。ご婦人、あなたも十分長生きしただろう。では、私は井戸に飛び込みに行きます」


 モルドラ

「この大バカ者!」


 フォーシーズ

「しわがれた雌鶏め!」


 モルドラ

「なんだと、このヒキガエル!後悔させてやるわ」
彼女の目の奥に炎が揺らき、髪に電撃が走った。
彼女は、あたかも恐ろしい呪文を唱えるかのごとく腕を上げた。

しかし、フォーシーズはすすり泣いて君の後ろに隠れた。




「おいおい、こんな時までケンカするなよ…」


 モルドラ

彼女は君の顔を見て、ゆっくりと腕を下げた。
炎と雷は消えた。
「無礼をお許しください、アバタール。井戸のことで、いったい何が起こったのです?」




「実は、かくかくしかじか…ってことで、やはり誰かが井戸に飛び込まないと、みんなの魂は解放できないみたいなんだ」


 モルドラ

君は、フォーシーズが他の者の魂のために、自身を犠牲にすることを志願したことを説明した。
彼女はフォーシーズの目を見た。
彼は赤面し、真っ直ぐに起立した。

「市長、あなたが、そんな事をするとは思っていませんでした。あなたに借りができましたね」


 フォーシーズ

「ああ、どういたしまして」
あたかも彼の威厳が継ぎ足されたかのように見えた。


 モルドラ

「あなたは自身に打ち勝ったのですね。お気をつけてください、フォーシーズ。エーテルの中を彷徨うのは、悪いことばかりではありません。少なくとも、あなたはそれに慣れていますしね」


 モルドラ

彼女は君に向き直った。
「さようなら、アバタール。もし、あなたが成功したら、私達は二度と会うことはないでしょう」




「ああ、モルドラ婦人、あんたにも色々と世話になったな。あの世に行っても達者でな」


 モルドラ

「あなたに幸運があらんことを」




「じゃあ、そろそろ行こうか、市長」














「フォーシーズ市長、これが魂の井戸だ」


 フォーシーズ

彼は、囚われた魂達が渦巻く井戸を覗き込むと、新たなる決意も薄れていったようだった。
「その、これは、そんなに良い方法ではないんじゃないか。本気で、この中に飛び込めと言うのか?」




「そうだ」


 フォーシーズ

君は頷いた。
彼は再び決意を固めた。
「分かった。君は正しい。お喋りしている時間はない。そして、怯んでいる時間もないな。そして、…」


 フォーシーズ

彼は、君が呆れていることに気付いたようだ。
「分かったよ。じゃあ、行くよ…」
彼は井戸に向かって進み出た。




「やれやれ…大丈夫か…?」


 フォーシーズ

「私は生きていた時、そんなに良い市長ではなかったと思う」
フォーシーズの顎がうなだれた。

「だが、せめて死ぬ時は、私は名を残したい。正しき事をしたいのだ」
その言葉と共に、彼は飛び出した。




「いった!」




「…うわっ!爆発が…!」




魂の井戸は、その幽閉者を解き放ち、後には黒ずんだ遺物が残った。




「魂の井戸が消えた…。フォーシーズ市長…やったな…」









魂の井戸が破壊され、スカラブレイの亡霊達は解放された。
モルドラの霊もクエントンの霊も、皆いなくなっていた。
ダークタワーの中には、ホランスの霊のみが残る。





 ホランス

「アバタールよ、汝は再び、ブリタニアの守護者であり、無垢なる者だという証を立てた。私には感謝の言葉も表せないが、これを御礼の印として受け取ってくれ。汝の探求の旅に役立ててくれればと思う」
彼は持っていた杖を君に手渡した。
どうやら魔法の品のようであった。




「この杖は…ファイアドゥームスタッフ!」


ファイアドゥームスタッフは、ホランスが装備している魔法の杖であり、手に持って戦うと強力な火球が発射される。
彼と戦うと、その破壊力を存分に体感することができる。


 ホランス

しばらく、ホランスは黙り込んでいた。
「私は、この町で起こった出来事に責任を感じている。私は宇宙の真実を解き明かすために研究をしていた時、この町を滅ぼした悪しき魂を、無意識に呼び起こしてしまったのだ。私は自分に残された時間を費やし、ここをかつての素晴らしい町に復興しようと思う。
輝かしき『霊性』の事例となり、善良なる人々が平和と調和をもって暮らせるような町と神殿を創りたい。私にこのチャンスを与えてくれたことに、再度礼を言おう。さらばだ、アバタール」




「じゃあな、ホランス。たった1人になってしまったが、是非とも頑張ってスカラブレイを復興させてくれ!」




「ん…?たった1人…?」



解放されなかった魂は、もう1人いた。







「ケイン…。まだここで苦しんでいたのか…」


 ケイン

「こんにちは、アバタール」
ケインは深く息を吐いた。苦悶を抑えつけているかのようだ。

「あなたは、俺達をリッチから解放してくれた。あなたには取引をする資格がある。では、生と死についての答えを知りたいか?」




「そうだ、『生と死』の答え!それを知るために、この町へ来たんだった!消える前に、それを教えてくれ!」


 ケイン

苦悶する者は、君を厳しく見つめた。
そして、微笑んで首を振った。
「愚かなる友人よ、俺には何の秘密もない。あなたは愚かだ。答えなど無い。問いがあるだけだ」

ケインは、苦痛に泣いているように見えた。
そして、彼は立ち去った。




「え…?何だって…答えがない…?そんな…」


 ケイン

「行くのだ。俺を永遠の責め苦に取り残しておいてくれ」




「ケイン…」


こうして、200年前の因縁を断ち切り、スカラブレイの彷徨える魂達は解放された。
残ったのは町を滅ぼした2人、ホランスとケインのみとなった。
ジプシーの占いに端を発した、タイムロードやウィスプについての重要な手がかりである『生と死』についても聞いたので、いよいよ本編も大きく動き出す。


この町のクエストは、色々な意味で印象深かった。
基本的に平和な時代のブリタニアにあって、この町のみが深い絶望に支配されていたため、久々に悲壮な気分になった。
また、かつて出会った人物や、未解決だった事件についても回顧されたため、シリーズを通してのつながりを感じられて何となく嬉しかった。

あと、英語がとにかく難しかった。
何とかチグハグな訳はできたけど、あまり精度には自身が持てません…。



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