Ultima 7 プレイ記録 39 不死者の王

次は、リッチとなったホランスの居所であるダークタワーへと行ってみることにした。




「スカラブレイの北にあるという塔…こいつのことかな」







「いかにも危険そうな感じだが…まあ、とにかく入ってみるか」









「いた…!あの玉座に座っているのがホランスか…!?」


 ホランス

君が、その悪しき姿をした者の前に踏み出すと、彼はゆっくりと君に顔を向けた。
彼の激しい視線が君の姿を捕らえると、君は、そんなに勇気がなければよかったのに、と思った。

「アバタールよ」
冷笑した表情が、アンデッドの顔に浮かんだ。

「ようこそ、何かお困りかね?」
君は、その言葉から、まったく異なった印象を受けた。
それをリッチから受け取ったら最後だろう。


 シャミノ

シャミノが君の近くに踏み出して、囁くような声で言った。
「奴を信じるな、アバタール。俺が思うに、奴は悪しき事しか生じさせないだろう」


 スパーク

「うう…アバタール、逃げる準備はできてるよ…?」
彼はアンデッドの姿に怯えながら、君に言った。




「久しぶりだな、ホランス…俺を覚えているのか?」


 ホランス

リッチは乾いた容貌で不遜な態度を取った。
「ロード・ホランスと呼ぶのだ。慎ましやかなものだ、いつの日か、私がブリタニアの王となるからな。驚きましたかな、アバタール?きっと君も、ロード・ブリティッシュが私の邪魔をするとは思っていないのだろう。私は、彼の一族の扱い方を分かっているからな」




「ロード・ホランスだと…?偉くなったもんだな」


 ホランス

「ああ、アバタールから、そのような敬礼を聞くのは良いものだな。我が『新たなる秩序』の中に、君も入ることになるだろう」
リッチは、悪意と滑稽の間にあるような表情で君を見た。




「おまえは何を企んでいるんだ?新たなる秩序とは何だ?」


 ホランス

熱意の表情が、リッチの死の顔を明るくした。
「そうだ、アバタール。死者こそが法となるのだ!私が、それらの王となり、君が私のための…アバタールとなるのだ!」




「死者の国を創ると言うのか…!そんなことはさせんぞ!」


 ホランス

「そうか、アバタール。理解してもらえると思ったんだがな。君が死の世界へ入門するのを、喜んで手助けしたのに」




「さっき言っていた、ロード・ブリティッシュがおまえに手を出せないとは、どういうことだ?」


 ホランス

リッチが口を崩して嘲笑する様は、"悪"という言葉も生易しかった。
「最近、ブリタニアの地表で発見された、とある鉱石を、適切に組み上げたならば、ご自慢のロード・ブリティッシュを破滅させることができるだろう。私は以前、その鉱石を別の用途で使用したことがあるのだ。あの王と呼ばれる者を滅ぼすために、今一度、それを使おう」




「ある鉱石とは…まさか…」


 ホランス

彼は塔の壁を指差した。
「エーテルが私の魔法にもたらす破壊的な影響を、どうやって、この塔が防いでいると思うかね?」




「ブラックロック…!エーテルの波動を防ぐことができるのは、あの鉱石だけだ…!」


 ホランス

彼は、クックッという不快な笑い声を乾いた喉から発した。
「私は輝かしき、死者の王だ。じきに、ブリタニアの王となる。数多くの死者や死の生物が、世界に溢れる様を想像できるかね?私は、かつての死者達を呼び出し、操ることができる。愛する祖先の墓は、その中身を群集の中に吐き出すだろう。我がアンデッドのモンスター達は、生者を特別に可愛がってくれるだろう。決して殺すことのできないドラゴンの骸骨を想像してみたまえ。私を永遠に楽しませてくれるであろう、不死の魔術師達の秘密結社について、考えてみたまえ。そして、生者がこの戦いで死ぬと、彼らはアンデッドの勢力を増すことになるのだ。私の計画の最も美しい部分だ。私は最高の統治者となる…死者の世界のな!」




「ロード・ブリティッシュをも滅ぼす不死者の王…こんな奴が世界を支配したら終わりだ…!」


 ホランス

彼の言う、恐ろしく病的で歪んだ未来を瞥見し、君は僅かに身震いした。
「そして私は女王を娶るだろう。愛しのロウェナだ」


 ロウェナ

「はい、ご主人様。私は、この国で一番幸せな女性です」
彼女は、リッチの恐ろしい顔から、決して視線を逸らさなかった。




「この女の亡霊は…?」


 ホランス

「君が出会った中で、最も美しいと思わないか?彼女は私の傍で、永遠の美を保ち続けるだろう。我らは、共に世界を治めるのだ」


 ロウェナ

黒く長いガウンを着た、幽霊の女性だ。
彼女の視線に何か奇妙なものを感じたが、それが何かは分からなかった。
沈黙の後、彼女は言った。

「ご機嫌よう、アバタール。私はロウェナ、この不思議な塔の貴婦人です」
彼女は崩れ落ちた壁や蜘蛛の巣だらけの梁を指差しながら、部屋の周囲を示した。




「塔の…婦人…?」


 ロウェナ

彼女は少しの間、空虚に見つめた。
そして、何かの合図があったかのように言った。

「私は、この塔の夫人でございます。ロード・ホランスのご要望にお答えし、この場所をしっかり見守っています」
彼女は服従させられて、反応が遅れているかのようであった。




「もしや、ホランスに操られているのか…?」


 ロウェナ

彼女は一度瞬きし、言った。
「ホランス…なんて素敵な名前でしょう。彼は、孤独に迷っていた私を、ここに連れて来て貴婦人にしてくださいました。彼こそが、本当に無類なる王ではありませんか?」




「……」


 ロウェナ

彼女は止まった。
「アバタール。私達の栄光の塔を楽しんでいただけましたか。いつでもお越しになってください」
君は、石像と話していたかのような感触を覚えた。




「…ホランスを倒せば、彼女やスカラブレイの亡霊達の呪縛も解けるのか…?」




「油断している今なら、やれるかもしれないな…。おい、アルカディオン、おまえの出番だ!」


 アルカディオン

「はい、ご主人様。このしもべに何をお求めですか?」
アルカディオンは、深く、調和の取れた声で尋ねた。




「前に不死のドラゴンを倒した時みたいに、おまえの力を使って、あのリッチを滅ぼしてくれ!」


 アルカディオン

剣は、恐怖したかのように怯んだ。
「この者は、私の力を陵駕しています。可能であれば、あなたが細切れにして、その破片を焼き払ってください」
アルカディオンは助言をした。




「え…?おまえの力でも無理なの…?」


 アルカディオン

「お役に立てることを探しておきます」




「……じ、じゃあ、ちょっと出直すとしようかな…」


 ホランス

「行ってしまうのか、実に悲しいな」
彼は冷笑した。


 デュプレ

「へっ、その通りだぜ」


 ホランス

「私の慎ましやかな住まいを、お気軽に探索してくれて構わない。だが、気をつけるのだ。私の守護者達には知性が無く、すぐに生きている者を襲うからな」
彼は、その死の顔でニヤリと笑った。


リッチとなったホランスは、その姿と同じく、完全に邪悪な存在となっていた。
何としても、彼を倒す必要がありそうだ。

ちなみに、試しにホランスと戦ってみたが、シェイド・ブレードの力を駆使しても勝つことができなかった。
不死者の王と言うだけあって、おそらく不死身なのだろう。
正攻法で倒すことは不可能なのかもしれない。









ホランスを倒す手がかりを探すため、引き続きスカラブレイの町の亡霊達と話す。







「この建物は、かつての市庁舎かな。無残なものだ…」


 フォーシーズ

中年の幽霊が、焼け残った部屋の隅でうずくまっている。彼は頭から爪先まで震えており、君が近づくと、飛び上がって君の顔の前にアンクを振りかざした。
「ケダモノめ!これで近づけないだろう!さがれ、さがれ!徳の御名において、さがるんだ!」




「な…なんだ、こいつ?」


 フォーシーズ

彼はしだいに、これが君を驚かせる他に何の効果もないことに気付き、君をより間近で見た。
彼は君と、壁に掛けられている君の肖像画を見比べた。
後ろを見て、前を見て、彼は対象が見えなくなるほどに目を細めた。

「ああ、来てくださり、ありがとうございます!ついに、ロード・ブリティッシュが、我らを助けるために、あなたを呼んだのですね」
明らかに、彼は妄想に憑かれているようだった。

「私は市長のフォーシーズと申します」




「こいつが、スカラブレイの市長か…!」


 フォーシーズ

「あなたがリッチを退治するのには、やはり時間がかかりますかね?」




「ああ、色々と手がかりを探しているんだ。あんた達も、かつてホランスを倒そうとしたらしいな」


 フォーシーズ

「ええ、そうです。リッチは、私の哀れなる町における、恐ろしき悪なのです。最初に、彼は死者を呼び起こし、訪れる人を全て追い払いました。その時に、彼を阻止しようと試みましたが、町は恐ろしい炎によって滅びました。これは厳密には彼のせいではありませんが、彼に関する出来事です」
フォーシーズは、やや興奮しているようであった。




「事の顛末は少しだけ聞いた。何でも、リッチを滅ぼすための秘薬を作ろうとしていたらしいな」


 フォーシーズ

彼は君の肩に腕を回して囁いた。
「ヒーラーのモルドラ婦人が、ホランスを駆逐する方法を見つけたみたいなんです。我らがやるべき事は、金の籠を造ることです。もしくは古い籠ですね。ええ、とにかく、その籠を造って、誰かを…」
彼は君に微笑んだ。

「魂の井戸の中に降ろして、何かをするんです。そうしたら、夜中遅くにリッチが無防備になっているところを捕まえて、そいつに閉じ込めるんです。何だか、簡単そうに思いませんか?それで、そうした後に、リッチに錬金術師の作った魔法の液体を注ぐのです」
彼は少しバツが悪そうに、そこで言葉を止めた。




「単に秘薬を使うだけじゃなくて、色々と手順があったんだな」


 フォーシーズ

「私は、錬金術師に製法のことを話した際に、その分量を少々間違えてしまったのです。もう随分前のことだから、ほとんど覚えていないのですが。回復のポーションを少々と、不可視のポーション、そして…そう、確か、マンドレイクの根の抽出液を"1トン"ですね!」




「(たしか、マンドレイクの抽出液は"1つ"だったはず…。秘薬が暴発した原因は、これか…)」


 フォーシーズ

「とにかく、それは文書にできるほど簡単なものです。では、ただちに行動に移ってくださった方がいいと思います。モルドラ婦人なら、この事について、私よりも詳しく教えてくれるでしょう。ですが気をつけてください。彼女は危険な老婆ですからね」




「モルドラ婦人か…。顔は怖かったけど、いい奴だったぞ」


 フォーシーズ

「彼女は道の向こう側に住んでいます。あなたがリッチを退治するために必要な全てを、手助けしてくれるでしょう。本当にどうもありがとうございます。あなたと話ができてよかったです。それでは、さようなら」
彼は部屋の隅にちょこちょこと戻り、身を守る姿勢でアンクを掲げた。




「既に死んでしまった身なのに、何とも臆病な奴だな…」



続けて、南にある鍛冶屋へ行く。





 トレント

炎の中に幽霊の人影が見える。
巨大で、筋骨隆々としており、口ひげを一杯に生やしている幽霊だ。
彼は君が近づいても気付いていない。




「おーい…」


 トレント

太い眉によって強調された深い皺が、疲れた額に刻まれた。
彼は仕事から目を離さずに言った。

「俺はトレントだ。仕事に集中させてくれないか」
彼は奇妙な形の鉄の籠にハンマーを振るい続けた。




「その…何をしているんだ?幽霊なのに…」


 トレント

「おまえは目暗か!?俺が鍛冶屋には見えないのか?」
彼は、その種の無駄な会話をしたくないようだった。




「籠のような物を造っているように見えるが…」


 トレント

巨大な幽霊から、実体化しているかのような怒りが放たれた。
彼が籠から顔を上げると、炎の光は鍛冶炉から来ているのではなく、彼の目から来ていることに気付いた。
「あの忌々しいホランスを滅ぼすために、この籠を造っているのだ。奴は、俺の妻をさらって行った」

彼は君を攻撃するつもりなんじゃないかと、その時、君は思った。
そして、彼は大きな溜息をついて、握り締めた拳を離し、仕事に戻った。




「そいつが、ホランスを倒すのに必要な籠なんだな。市長から聞いたぞ」


 トレント

君が話をすると、彼の全身が張り詰めた。
「ホランス…」

その言葉は、呪いのごとく響いた。
「奴の忌々しい魂は、俺の目の前で焼き払ってやるさ。奴が哀れに泣き叫んで命乞いをしても、俺は笑ってやるね」
どういった理由かは分からないが、君は、その笑い声を聞かないようにしよう思った。




「凄まじい怨念だ…。この男、ホランスに妻をさらわれたのか…。そういえば、クエントンからも少し話を聞いたな…」


 トレント

一筋の熱い涙が幽霊の目から、鉄の籠の熱した部分に落ちた。
それはジュッと蒸発し、彼は柔らかな声で言った。
「ロウェナは、俺の命だった。この世界で、ただ1つの俺の喜びだった」

しかし、その時、彼は再びしわがれた声に戻った。
「奴が彼女を殺し、俺から喜びを奪い去ったのだ。今の俺は、復讐に燃えるだけの、ただの抜け殻だ」




「ロウェナ…!ホランスの塔にいた、あの操られた女性のことか!彼女は、あんたの奥さんだったのか!」


 トレント

君が彼の妻の名を言うと、片手を突き上げた。
「どうか、その名を言わないでくれ。俺の憎悪を呼び起こすんだ。今の俺には、それしかない。あんた、俺を生かし続けている唯一の物を奪おうって言うのかい?」

その言葉は、彼は既に死んでいることに、気付いていないかのようであった。
彼の顔に不思議そうな表情が浮かんだ。
「俺達が結婚した時、彼女にオルゴールをあげたんだ。今ある彼女の思い出の品は、それだけさ」

彼の声が変わった。
「あんた、何をしたか分かっているのか!?彼女のことを考えていたら、俺は仕事ができないじゃないか!」
彼は情熱を一新して、再び仕事に戻った。
君は、彼の話していたオルゴールが、傍に置いてあることに気付いた。




「不憫なものだ…。200年経っても、自分が死んだことにすら気付いていないとは…」


 トレント

「あの悪しき輩は、アンデッドの下僕を使って俺の元から彼女を奪い、ダークタワーに連れ去ったのだ。あの心無い生物は、あがく彼女を殺したのだ」
幽霊は、怒って君に振り向いた。

「俺は彼女を救うことができなかった…。彼女の命が奪われた時、俺は大勢の骸骨戦士達を相手に押しやられて地面に突っ伏していた」狂気の決意が、巨大な幽霊の目に浮かんだ。「このことは、決して許さない、決して忘れない」




「こりゃダメだ、怒りに我を忘れて、話にならない…」









次は、『苦悶する者』錬金術師ケインに会いに行った。
彼から『生と死』の答えを聞きだすことが、ここに来たそもそもの目的である。







「彼が錬金術師ケインの亡霊だな。このスカラブレイの町を滅ぼした張本人の…」


 ケイン

幽霊の男は、苦痛に満ちた表情をした。
「俺は」

彼は喘ぎながら言った。
「ケインと呼ばれている。だが、町の人からは…別の名前を付けられている。彼らからは、"苦悶する者"として知られている」
彼は手を払うような仕草をしたが、何かを示しているわけではなさそうだった。

「あなたにも、何故かは分かるだろう」




「苦悶する者…その名の通り、今もなお苦しみ続けていると言うのか?」


 ケイン

君のコメントに、彼はニヤッと笑った。
「俺の仕事を知りたいのかい?教えてやろう!」
彼は叫んだ。

「俺の罪を償うため、ここで終わりなき炎を燃え盛らせるのだ。素晴らしきスカラブレイのためにな!」
彼は強調するために言葉を止めた。

「それが、俺の仕事だ!」

しばらく後、彼は落ち着いた。
「すまない、アバタール。あなたは、俺を苦しめるつもりで質問したのではなかったはずだ」
彼は溜息をつき、君から顔を背けた。

「かつては、俺は錬金術師だった」




「自分が町が滅ぼしてしまったことの責苦を、永遠に受け続けているのか…」


 ケイン

彼は地面を見下ろし、良心の呵責に苦しんでいる表情を顔に浮かべた。
「炎は俺の罰だ。ずっと昔、悪しきリッチが、スカラブレイに死による支配を及ぼし始めた時のことだ。ヒーラーのモルドラが、あの忌まわしい輩を駆逐しようと計画を立てた。彼女は、リッチを構成する魔力の結合を破壊する調合薬を編み出した。その製法は、市長から知らされた。しかし、」
彼は顔をしかめた。

「俺が薬の準備をした時に、何かが間違っていたんだ。比率を間違って混ぜたのか…いや、俺には分からない!」
彼は拳を握り締めて叫んだ。

「俺が覚えているのは、店が爆発したこと、そして、炎!あの炎だ!皆が死んだ…俺のせいで…俺が失敗したせいで…」




「(市長が配分を間違って伝えたのが原因だから、本当は彼のせいじゃないんだよな…)」


 ケイン

「スカラブレイは栄えた町だった…俺が滅ぼす前までは!」
彼は顎を引き締め、ギュッと噛み締めた。

「何故?何故、何故、何故なんだ!?」
彼は再び苦痛に喘いだが、すぐに平静を取り戻した。

「ここには、罪も無い人が大勢居た」
彼は真っ直ぐに君を見つめて言った。

「彼ら全員の死が、俺の責任だなんて、信じられないことだ」




「この町の亡霊にも何人か会ってきたが、皆、あんたのせいだなんて思ってなかったぞ。鍛冶屋のトレントなんて、死んだことにすら気付いてなかったほどだ」


 ケイン

「俺の慰めの1つは、彼にある。少なくとも、彼に死に勝るものが1つあると思うんだ」
彼は素早く息を吸った。

「悲しいことに、それも残っていないがね。彼はかつて、金属製品の達人だった。彼は今、ひたすら呪われた籠を造っている。終わり無き仕事だ!」




「…そうだ、あんたが『苦悶する者』ならば、『生と死』の答えを知っているはずだ。そいつを教えてくれないか?」


 ケイン

幽霊は、楽しげに君を見た。
「あなたは、生と死の答えを探しているのか?」
苦悶する者は、君を厳しく見つめた。

沈黙の後、彼は言った。
「あなたが俺を助けてくれると言うなら、俺が知っている事を教えよう。俺を解放してくれ。俺達を解放してくれ。あの悪しきリッチから」




「リッチ…ホランスのことか」


 ケイン

「奴は、ホランスの死体に巣食った邪悪な魂だ。奴は、この町の全てを牛耳っている…俺でさえもな。奴は、俺達の魂に残された生命の力を吸い取っているのだ。俺達を奴の力から解放してほしい。どうか、やってくれないか?」




「いいだろう、どのみち、あのリッチは何とかして倒すつもりだ」


 ケイン

苦悶する者の目が輝いた。
長く暗いトンネルの終わりに光を見たかのようだった。
「あなたは、俺に希望をくれた。まずは、モルドラ婦人に話すのだ。彼女は、この偉業を成し遂げるための方法を教えてくれるだろう」




「そのことは、もう既に話してあるんだ。リッチを倒すには秘薬が必要なんだろ?必要な材料や製法を教えてくれよ」


 ケイン

「製法のことを俺に聞くだなんて!俺が、この町にしてしまったことを知った上でか?あなたは狂っているのか?少なくとも、正しい比率について、モルドラに確認した方がいい。分かったか?」




「そういえば、前にモルドラと話した時に、必要な材料について教えてもらったな…。ちょっと探してくるか」









モルドラの家の中を探すと、調合材料のポーション類が全て揃った。
これを、正しく調合すれば、今度こそリッチを滅ぼす秘薬が手に入るであろう。







「ほら、見つけてきたぞ。こいつをどうすればいいんだ?」


 ケイン

「まず、3つのポーションが必要だ。そして、それぞれを結合管の下に置くんだ。順番はどうでもいい。次に空の瓶をノズルの下に置く。空の瓶は、この研究室にも1つあったはずだ。そしてバーナーを点火する。数分後に混合物が出来上がり、空き瓶に一杯になるだろう」




「結合管とバーナーってのは、これのことか?」






「…これを使って俺が調合するということか…。でも、この秘薬を作るのに失敗して町が滅んだろ…?」



ケインに言われた通りに、連結管の下にポーションと空瓶を置き、バーナーに火をかけると、ポーションの蒸留液が連結管を経由して、空瓶に溜まっていった。
これで、モルドラ婦人の計画していた秘薬の完成のようだ。


  




「ふう、どうやら完成したようだな…。さすがの俺も緊張したぞ」




「で、こいつをどうするんだっけ?さっき話に出た、トレントの造った籠が必要と聞いたが…」


 ケイン

「その中にリッチを閉じ込めるために必要だということしか知らない。俺のポーションを、彼に使用する前にな…」




「そうか…。ならば、何としても彼に籠を完成させてもらわなくてはな」


 ケイン

「リッチはトレントから、彼の人生で最も美しいものを奪った。彼の妻、ロウェナだ。彼が死んだことで、彼の苦しみには打ち消されたことを望む」
彼は嘲笑した。

「そう、話の上では、彼の苦痛は終わったんだ。しかし、彼は代わりに怒りに取り憑かれてしまった。あの愚か者は、自分が死んだことにも気付いていないんだ!彼は怒りによって身を保っているのだ」




「ああ、彼にも会ってきたが、尋常な様子じゃなかったぞ。まあ、幽霊の時点で尋常じゃないが…」


 ケイン

「彼女は、トレントの人生の全てだった。リッチが、彼女をトレントから奪い去った時、トレントは、彼女の死による空虚感で憔悴してしまった。しかし、トレント自身が死んだ後、」
彼は君を真っ直ぐに見つめた。

「彼の憎しみの感情は、一層悪化した。他に推論は無いと思うよ」




「籠を完成させるためには、リッチに囚われたロウェナを救い出す必要があるってことかな…」









何とか秘薬の調合に成功したので、これをどのように使用するのか、再びモルドラ婦人に尋ねに行った。 


 モルドラ

「また、お会いしましたね、アバタール」

彼女は腕を上げた。
君は、その片方にアンクが握られているのを見た。
漠然と認識できる言葉が、彼女の唇から流れ出て、アンクが輝いた。




「おお、体力が回復した!さすがヒーラーの亡霊!」


 モルドラ

彼女が詠唱を止めると、アンクの光は弱まった。
君の検査を終えた後、彼女は言った。
「ああ、素晴らしいことです、世界があなたを祝福しています。徳高き者よ、何のご用でしょうか?」




「リッチを滅ぼすための秘薬を作ったぞ。こいつを、どうすればいいんだ?」


 モルドラ

「魔法の調合品を作ったようですね。では、ホランスを滅ぼすために、魂の籠と共に、それを使うのです」




「魂の籠ってのは、鍛冶屋トレントが造ってる籠のことか?でも、あの様子じゃ完成させるのは期待できないぞ。死んでから200年間、ずっと造り続けてるんだろ?」


 モルドラ

「嗚呼、彼は妻のロウェナを失ったことにより、正気を失ってしまったのではないかと思います。彼を駆り立てている憎しみを、打ち破ることができないのです。いつの日か、彼は消耗し尽くして、永遠に魂を失ってしまうでしょう。おそらく、ロウェナならば、助けになれると思いますが…それもダメです。彼女自身に助けが必要ですから」
モルドラは首を振った。




「そこなんだよな。多分、トレントは奥さんが戻ったら、正気を取り戻して籠を完成させてくれると思うんだが…」


 モルドラ

「ロウェナをリッチの呪縛から取り戻す方法を探さなくてはなりません。たとえ僅かな間でもです。私が思うに、彼女がトレントを以前の姿に戻す鍵を持っています。おそらく、彼女の個人的な物…トレントから貰った物などを、彼女の元に持っていってみてください。彼女の呪縛を壊すことができるかもしれません」




「彼女が夫から貰った物か…そういえば…」


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