Ultima 7 プレイ記録 25 真実の図書館

ゴールデンアンク号に乗って、ベスパーから東へ漕ぎ出す。
ムーングロウは、大陸の東端のベスパーからは、最も近くに位置する町だ。
ほどなく東に島が見えたので、上陸してみた。








「さーて…じゃあ、町を探すとするか…」




「お、さっそく家を発見!やっぱ、ここがムーングロウで間違いなさそうだな」





 エラド

男が、微笑んだ目で君を見つめてきた




「やあ、見たところ、ここは…ヒーラーかな?」


 エラド

「エラドと申します、アバタール。私は、この地域の住民達のヒーラーです」




「ここはムーングロウなんだよな?」


 エラド

「ムーングロウは、私の故郷です。人生の全てを、この町で暮らしています。しかし、ここでの生活にも疲れてしまいました。もう移住しようかと思っています。ああ、こんなに強く引き止められていなければ」
彼は悲しげに溜息をついた。




「なんだ?この町にイヤなことでもあるのか?」


 エラド

「ここムーングロウには、患者がいます。私がいなくなれば、誰が彼らを助けるのですか?」




「なんだ、そういうことか。てっきり、また町の住民やフェローシップとかとイザコザがあるのかと思ったよ」


 エラド

「ムーングロウは多くの人々がいます。かつて私の父が話してくれたのですが、この町は、父の時代には、とても小さかったらしいです。父は、ムーングロウはライキュームとは分離していたと言っていました!話が変わってしまいましたね。あなたは、ここの人々について尋ねていたのでした。私は、ここの多くの人々について知っています。ライキューム、天文観測所、フェローシップ、農民、トレーナー、酒場、どれについて知りたいですか?」




「へー、ライキュームの図書館はムーングロウと1つになってしまったのか…。じゃあ、この町について、一通り聞いておこうかな」


 エラド

「ライキューム :
ライキュームは、ネルソンという親切な男が運営しています。彼のアドバイザーがゼルダです。彼女の決めたルールを破ってはいけません、鋭い叱責を受けることになりますよ!そこではまた、ジリアンが学んでいます。彼女は色々な事を教えてくれるでしょう。そして、マリアのことは心配要りません。彼女は、そのままにしておけば安全です。


天文観測所 :
そこの所長はブリオンです。彼はライキュームの館長と双子なのです。2人とも、少々突飛ですが、彼の事は好きですよ。


フェローシップ :
彼らのことは、あまり良く知りません。約5年前に、ランキンという男の指導の下、ここに支部所が開設されました。そして数ヶ月前、彼の所に書記が加わりました。彼女の名前はバライナです。


農民 :
キュボルトは農園を持っています。彼は弟のトレマックと、友人のモルツと共にそれを経営しています。確かではありませんが、トレマックは最近フェローシップに加わったのではなかったかと思います。


酒場 :
フェーシーは酒場をやっています。町の人々について聞くのであれば、とても適した人です。しかし、彼は噂好きで、ちょっと一本気過ぎますね。


トレーナー :
トレーナーはチャドという名前です。彼は、ナイフやソードを使った、迅速で技巧的な戦闘の専門だったと思いますよ。技を磨きたいのなら、彼を訪ねてみると良いでしょう」




「なるほど…。フェローシップの他にも、行く所が色々とありそうだ。どうもありがとう、じゃあ、そろそろ行くとするよ」


 エラド

「もう行ってしまうのですか、アバタール?分かりました、良き旅でありますように」
彼は溜息をついた。

突然、彼の顔が輝いた。
「待ってください!私も、あなたの仲間にしていただけませんか?」




「え!?な…なんだって!?」


 エラド

彼は急に立ち上がって微笑んだ。
そして、また突然、彼の笑みは消えていった。
「いや、私にはできない。私には、やらなくてはならない事が数多くある。診なくてはならない人が大勢いる。それでは、この先は?」

彼は努めて笑った。
「アバタール、次に私達がお会いした時、あなたの仲間となることが出来ればと思います。それでは友よ、良き旅を」




「そ…そうか(仕事で疲れてるんだろうなぁ…)」


ムーングロウは、かつてのライキューム図書館と併合して1つの町になってしまったらしい。
ユーとエンパス・アビーの関係と同じだ。
とりあえずは、エリザベスとエイブラハムの行方を聞くためにフェローシップの支部所に行ってみることにした。










「着いた着いた。まあ、どうせ、あの2人はいないだろうけどな…」





 ランキン

男が嬉しそうに微笑み挨拶した。
「ランキンとお呼びください、アバタール。ここムーングロウのフェローシップ支部所の、新しい所長です」




「新しい?」


 ランキン

彼は恥ずかしそうに笑った。
「申し訳ありません。支部所が開設されたのは数年前ですが、ここがブリタニアで一番新しい支部所なのです。だから、私は自分のことを、新しい支部所長だと思っています」




「そうか…。ここに、エリザベスとエイブラハムという2人組が来なかったか?」


 ランキン

「親愛なる者達よ!彼らは、私にトレーニングを施すために、ちょうどここへ来ました。そして私は支部所長に任命されました。あなたもご存知の通り、ここは新しい支部所です。ともかく、エリザベスとエイブラハムは、ガーゴイルの島、ターフィンへと旅立って行きました」




「まあ、そんなことだろうと思ったよ。次はターフィンか…。じゃあ、お邪魔したな」


 ランキン

「3つの力が、あなたの人生を導きますように」




「ん?奥の部屋にも誰かいるぞ…?」


 バライナ

非常に真面目そうな女性だ。

彼女は、いかがわしそうに君を見た。
「バライナと申します。フェローシップのムーングロウ支部所の書記です。ミーティングの記録を残したり、支部所の決定事を処理するのが、私の仕事です」




「ああ、そういえば、最近ここに書記が加わったって、さっきヒーラーから聞いたな」


 バライナ

「ここは…支部所を開設するのに相応しい場所だと思いますわ。ここムーングロウには、良い人が大勢います。
ええ、多くの人は、強い意思と個性を持っていると思います。彼らはまさに、フェローシップが求めている種の人々で、導きと繁栄をブリタニア中に広めてくれますわ」




「導きと繁栄ね…」


 バライナ

「フェローシップは、人間の潜在能力の高次な段階に到達するために努力する、魂の探求者のための組織です。私達は、『内なる3つの原理』を通して、新・現実主義を支持しています。さらに、私達は多くの祭典を催したり、貧しき者のための救貧院を運営したりしています。 ランキンが、ここムーングロウの支部所の所長です。彼が質問に答えてくれるでしょう。
人は、3つの基本原理を調和して取り入れることで、人生における創造性、満足、成功を、より得られるようになります。
3つの原理は、『協会に努めよ』、『兄弟を信頼せよ』…または姉妹ですね…、そして『報酬は後から得られる』です」




「(う…また、この手の話か…)」


 バライナ

「『協会に努めよ』、このことが本質的に意味するのは、人々と協力することが、人間の潜在能力に到達するための望ましい方法であるばかりか、あらゆる事の過程を容易にするものだということです。
『兄弟を信頼せよ』、この教義は、人間は皆、我々と同じであるから、他人に対して憎悪も恐怖も生じることはない、ということを説明しているものです。
『報酬は後から来る』、この原理が意味するのは、人は人生において欲するような価値あるもののために、努力をするべきだということです。これは、しばしば"受けるに値する者であるから受けられる"というように間違って引用されます。しかし、これは否定的な意味を持つ傾向にあります」




「ええっと…この町には、フェローシップのメンバーは多いのかい?」


 バライナ

「私は仕事で忙しいので、ここの人々については、ほとんど知りません。バーテンダーのフェーシーと、農民のトレマックは、この地域では著名なメンバーです。トレマックの友人、モルツも、恥ずかしがり屋ですが、話の分かる方です。また、モルツには兄弟がいます」
彼女は上を見て考え込んだ。

「彼はトレマックの兄弟だったかしら?どっちだったか確信が持てませんが、彼については、よく知らないということは、知っていますわ」
彼女は鼻で笑った。




「ここはブリタニアで一番新しい支部なんだろ?割と多くのメンバーが居るものだな」


 バライナ

「この支部所は、だいたい5年前にムーングロウで開設されました。ランキンは、ずっとここにいますが、私がこの支部所に来たのは、ほんの数ヶ月前です。




「そのわりには、所長のランキンよりも、ずっと落ち着いて見えるな」


 バライナ

彼女は用心深く周囲を見回した。
「あなたは町々を旅しているというのは本当ですか?もしかしたら、別の都市…ブリテインに行くことはありますか?」




「え?ああ…ブリテインには何度も行くだろうけど…」


 バライナ

彼女は、また周囲を見た。
明らかに、何かを確認しているようであった。
そして、彼女は前に体を傾けて小声で囁いた。
「私は、ランキンは今の地位に相応しくないのではないかと思っています。私は、彼が新しいメンバーのトレマックと話しているのを聞いたのです。ちょうど、ランキンが彼の加入を認める前のことです。ランキンは、フェローシップに疑問を持っている事を認めていました。彼はトレマックに、思っていることを話しました。たしか、フェローシップはメンバーを子羊のような人間にするよう助長しており、彼らが本当に"預かるところ"は、単に金のためのペテンだ…というものでした。あなたは、このことについて、どうお考えですか?」
彼女は後ろに戻った。




「……」


 バライナ

「さようなら、アバタール。私がお話ししたことを忘れないでください」




「(ランキンにも、それとなく聞いてみるか…)」




「なあ、ランキン…」


 ランキン

ランキンが微笑んだ。
「何かお手伝いできることがありましたら、お申し付けください、アバタール」




「バライナのことだが…」


 ランキン

「シーッ!また後でお話ください」

彼は遠まわしにバライナの方を指して囁いた。
「彼女が傍にいない時に」




「(こいつは、何かあるな…)」


バライナがホールに居る時は話してくれないようなので、少し時間を置いてから、また尋ねてみることにした。
次は、ライキューム図書館へと向かう。














「ここが、かつて真実の原理を司っていたライキューム…昔より小さくなってしまったが、雰囲気は変わってないな」




「やあ、勉強しとるかね?」


 ジリアン

賢そうな物腰の若い女性だ。
「ご機嫌よう、アバタール。やる事が多いのですが、必要でしたら、しばらく時間を割きましょう」




「…ああ、どうも…」


 ジリアン

「私のトレーニング料金は35ゴールドですが、お支払いになりますか?」




「え?いや…」


 ジリアン

「それでは、私は自分の研究に戻ります」




「ああ…じゃあ、別の人とお話ししようかな…」


 ジリアン

「お気をつけて、アバタール」
彼女は、先ほどやっていた事に戻りながら言った。




「ふう…これだから学者って奴らは…。そういえば、ここにはマリアがいるらしいから、ちょっと探してみようかな」







「えーと、この部屋は…」


 ネルソン

親しげな表情の、学者風な男だ。




「やあ、こんにちは」


 ネルソン

「ネルソンとお呼びください。ここ、ムーングロウのライキュームの館長です。しかし、」

彼は君に向かって体を傾けた。
「私の助手のぜルダが、ほとんどの仕事をやってくれています」




「あんたが館長さんか。ゼルダってのは?」


 ネルソン

「彼女は優秀な助手です。ライキュームは、かつてなく素晴らしくなりました。彼女は少しばかり厳しすぎると思いますが、」

彼は再び体を傾けた。
「とても美しいと思います」




「そ…そうか」


 ネルソン

「あなたも、そう思いませんか?彼女の素敵な姿を見ると、いつも興奮してしまいますよ。しかし!」
彼は人差し指を立てた。

「私と彼女とは、相互に魅力を共有していないのではないかと思っています。それに、彼女は厳格過ぎるあまり、私には提示し難いものがあるのです」




「(なんだか回りくどい言い方だけど、それは片思いだってことか…?)」




「ああ、そうだ。ライキュームの館長なら、この町に詳しそうだな。色々教えてくれないか?」


 ネルソン

「私は、この島も人々も好きです。特に人々が好きですね。
私の双子の兄弟には、お会いになりましたか?彼は、ここの天文観測所の所長です。そして、ライキュームのどこかで、マリアも見つけられるでしょう。悲しいことに、彼女は通暁しておりませんが」
彼は自分の頭に触れた。

「賢者のジリアンもまた、このライキュームで学んでいます。ムーングロウに住む、その他の素敵な人々は、『フレンドリー・ネイブ』のバーテンダーですね。フェーシーは、この島のほとんど全ての人について知っています。ああ、そして、あの伝説のピナンブラを忘れてはいけません。200年前、彼女は自身に魔法を唱え、深い眠りにつきました。彼女は、自分を目覚めさせる者を予言しましたが、それはアバタール、あなたなのではないかと、私は思います。急いだほうがいいですよ、アバタール」
彼はククッと笑った。




「ピナンブラだと?200年前に、このムーングロウに住んでいた、あの魔女ピナンブラが、まだ居るのか?」


 ネルソン

「おもしろいことに、誰一人として、彼女の家に入る方法を見つけられませんでした。私が思うに、扉の不思議な印には、何か特定のアイテムを看板の隣に置かなくてはならないのではないでしょうか」




「自分に魔法をかけて眠っているとは…。いったい、何故そんなことをしているんだ…?あ、そうだ、魔術師といえば、マリアのことなんだが…」


 ネルソン

「彼女は、かつては熟練の魔術師でした。しかし、魔術師達が、その、能力を失い始めてからというもの、彼女も先例に倣ってしまいました」




「それは、つまり…他の魔術師達と同じく、頭をやられてしまったということか…。気になるから探してみよう。どうもありがとう。」


 ネルソン

「もちろん、この建物ではご自由にしていってください。ですが、その前に」
彼はにっこり笑った。
「これを見ていってください…」




「え?何を?」


 ネルソン

「この頑丈な真鍮の本立ては、燭台にまで伸びているため、夜中に文学の世界へ旅立つのに最適です。私が考案したんですよ」




「へぇ」


 ネルソン

「これは」
彼は、楓の葉の形をした、固い金のシートを手に取って言った。
「オークションで、半額で購入したものですよ」




「ほぉ」


 ネルソン

彼は、サーペントの形をしたオーク材製の羽ペンと、それに合ったスクロールオープナーを君に見せた。
「これは、私が旅行をした時に拾ったものです。あなたも、お分かりかもしれませんが、サーパンツ・ホールドですよ」




「ふーん…」


 ネルソン

彼は用心深く、革装の書物を取り出した。
そしてローブの中からハンカチを出し、丁寧に誇りを払った。
「これは、ロード・ブリティッシュ本人からいただいたのです。ご覧ください。これは初版ですよ」
君の手に注意深く置かれた本は、非常に古く、金で縁取られたタイトルは、ほとんど磨り減っていた。本の右側をめくり上げると、タイトルが現れた:『見知らぬ地の迷い人』」




「(うーむ…こいつ、収集した物を見せびらかすクセがあるみたいだな…)」


ちなみに、ここで彼が自慢している小物は、その他の一般のアイテムと同じく、動かしたり持って行ったりできる。
手元に該当のアイテムが無い時は、彼のセリフが若干変わります。









「2階には、本が沢山並んでるな…さすがライキューム」







「あ!マリア!」


 マリア

昔の友人のマリアだ。




「おい、マリアだよな?俺が分かるか?」


 イオロ

「まさか、昔の仲間を忘れてしまったのか、マリア?」


 マリア

「ええ、私が分からないの?」
彼女は言葉を止めて君を睨みつけた。




「ホッ…どうやら、多少は意識があるようだ」


 マリア

「で、あなたは誰?私のパイはどこなの?ええ、あなたの名前を教えてください」

彼女は周囲を見回しながら言った。
「この沢山の本、美しくない?」




「……」


 マリア

彼女は微笑んだ。
「私は、とっても大事な仕事をしているの。この本棚、可愛いくない?きっちりと整列してるわ」

彼女は君に振り返った。
「気をつけて!インク入れは一杯なのよ。それに、羽ペンも、とっても鋭いわ」
彼女はケタケタ笑った。




「本棚…?インク入れ…?羽ペン…?」


 マリア

「最高にきっちりしてて、とっても整列してるわ。この整った本棚、あなたも見た?彼らは、自らを維持するという、素晴らしい仕事をしているわ!」




「おお…なんてこった…」


 マリア

「ええ、そうよ、彼らはとっても鋭いの!文書を書く時に必要とされる物よ。彼らは即座に使えるように準備していて、とても素晴らしい仕事をしているわね!」




「彼らって…物じゃないか…。どうしちゃったんだ、マリア…」


 マリア

「ええ、彼らよ!」

彼女の顔が悲しげに変わった。
「でも、私は売るだけ」




「売る…?」


 マリア

「ええ」
彼女は相槌を打った。

「私は売るわ。呪文でさえもね。そう、私は呪文でさえも売るわ!でも、もし秘薬が欲しいのだったら、運が悪かったわね。私は1週間のうち1日しか秘薬を売ってないの。何曜日か知りたい?あら、あなた、何て可愛らしい本を持ってるの!私、あなたの棚にピッタリのアイテムを持ってるわ。…ポーションよ!呪文や秘薬を買うのだったら、ポーションも売るわよ。それも、たったの定価でね!」




「まったく話にならない…。やはり、この魔法を何とかしないといけないな…」


と、言いつつも、彼女から呪文のスクロールを買っていった。
金も随分と溜まっていたので、今後必要になるであろう呪文を、いくつか見繕っておいた。
ブリテインのニスタルや、コーブのルディオムと同じく、おかしくなっていても取引はちゃんとしてくれる。














「この人が、図書館の館長の助手かな。…館長の片思いの」


 ゼルダ

冷たい視線で君を見つめる女性だ。
「ゼルダです」




「やあ、あんたがライキュームのほとんどの仕事をしているって聞いたから、色々と教えてほしいんだが…」


 ゼルダ

彼女はギロリと見つめた。
「ライキュームとは、あなたが立っている建物のことです。豊富な知識の家としてデザインされた、素晴らしい図書館です。過去200年で、建物は少々変化しましたが、学問の本質は変わっていません」




「そ…そう」


 ゼルダ

「私の仕事は、ライキュームを管理し、規則正しくすることです。そして」
彼女は付け加えた。
「ここムーングロウの人々に、必要な時に助力を与えることです!
私は読書エリアの管理の責任者です。また、新しい本の入荷も行っています。さらに、ジリアンの講義の特別グループ授業を開いたり、教育的で楽しめるプログラムを組んだりもしています」




「へ〜、意外と色々な仕事があるんだな。町の人についても教えてくれないか?」


 ゼルダ

「そんな事に構っている暇はないんですがね」
彼女は溜息をついた。
「私はライキュームの館長と、彼と双子のブリオンしか、よく知りません。ライキュームでは、トレーナーも勉強しています」

彼女は、あたかも頭上の見えないリストを読むかのように天井を見上げた。
「あなたはピナンブラについては既に知っていますね。あと、ここにはマリアもいます。フェローシップのメンバーについて知りたいのだったら、そこの書記に尋ねてください。そうでなければ、」
彼女は君を冷たく見た。
「私を仕事に戻らせてもらえますか」

思い直して、彼女は付け加えた。
「あと、声を小さくしてください。読書をしている人がいます」




「は…はい…すいません…。その…マリアは、もうずっと、あんな感じなのか?」


 ゼルダ

「ええ、彼女は熟練の魔術師だったと言われています。ですが私には、そこらを歩き回って家具を褒めているだけの女性に見えます。お望みでしたら、彼女と話してみてください。でも、彼女と話が通じるとは思えませんけどね。あと、彼女を探す時に、本棚を乱さないように!」




「あー、もうちょっと聞きたいんだ。あの学者の女性は何者なんだ?ジリアンって名前だっけ?」


 ゼルダ

「ジリアン?彼女はとても行儀が良いわ。静かでキレイ好きです。彼女はとても素晴らしい学者だと思いますわ。彼女を探しに行くつもりでしたら、棚をひっくり返したりしないでくださいね。ちょうど新しい本が何冊か届いたところで、まだ整理していないんですから」




「新しい本…」


 ゼルダ

「ええ、届いたのは、そんなに前じゃありません。最近発見された、デ・マリアとスペクターの作品の写本と、『アバタールの冒険』です。あなた、邪魔をしないでいただけるのでしたら、そうしていただきたいのですけど」




「『アバタールの冒険』?それは気になるタイトルだな」


 ゼルダ

「これを話したら、もう行ってくださいます?私を仕事に戻らせてくださいます?
この書物は、地下室の深くで発見されたんです。年代を正確に特定することはできませんが、ここに記されている出来事と、最近のブリタニアの歴史での出来事との間に、多くの一致事項がありました。この本は、約200年前にアバタールが最後にブリタニアに来た時に書かれた日記の写本です」

彼女は冷笑した。
「もちろん、これには他者によって注釈がされていました。これは大衆に勇気と自信を与えるために、近年出版されたものです。では、そういうことなので、さようなら」




「あ、あ、ちょっと待ってくれ!まだ話を聞きたいんだよ。魔女ピナンブラについては、何か知らないか?」


 ゼルダ

彼女は首を振って呟いた。
「どうして、この人は私の時間を浪費させるような事をするの?」

彼女は君を振り返って言った。
「ピナンブラは2世紀前に、自身で眠りについた賢者です。噂では、彼女を目覚めさせることができるのは、アバタールだけだと言われています」




「そうか…ネルソン館長から聞いた情報と、あまり変わらないな」


 ゼルダ

「ネルソンは、少々奇抜ですが、とても適任です。ここに来た人皆に、自分の小物のコレクションを見せびらかすようなことを謹んでいただければいいんですが。いつも、こういった動揺をもたらしますわ」




「ああ、彼のコレクションには、まいったよ。彼の双子の兄弟は、天文観測所にいるらしいね」


 ゼルダ

彼女の冷徹な表情が解きほぐされた。
「ブリオンは」

彼女は微笑んで言った。
「とても心が広くて理想家です。彼は天体にとても詳しいんです」
彼女は『天体』という言葉を強調していたかのように見えた。




「(おや…?今までと様子が違うぞ…?)」


 ゼルダ

「彼は、とても魅力的です。でも、私は自分の気持ちを、どうやって伝えたらいいか分からないんです」
彼女は恥ずかしそうに向こうを向いた。

「もしかしたら、あなたがお助けになってくれるかしら?」
彼女は期待して尋ねた。




「(これは意外な…)」


 ゼルダ

「彼に、私の事をお話ししてくださいますか、アバタール?」




「ああ、構わないが…」


 ゼルダ

「ご親切ありがとうございます。前に地下室を整理していた時に見つけた、このホワイトポーションを差し上げます」




「ホワイトポーション…また随分と色気のない御礼だな…」


どうやら、彼女は天体観測所の所長ブリオンのことが好きらしい。
しかし、ライキュームの館長ネルソンは、彼女のことが気になっている。
そして、ネルソンとブリオンは双子である。
これは、なかなか難しい関係だ。











「ふぅ、すっかり長居してしまった。それにしても、学者っていう人種は、どうしてああも冷淡なんだろうな…」




「案外、こういった素朴な民家の方が、町の実情は知っているのかもしれないな」





 エフレム

苦々しい表情を浮かべて赤ん坊を抱いた男だ。
君をみると、彼の顔が輝いた。




「やあ、こんにちは。お邪魔するよ」


 エフレム

「エフレムです、ムーングロウの一住人ですよ。あなたのお名前は?」




「ああ、俺はアバタールという者だ」


 エフレム

「ああ、アバタール、そうですか。あなたが何を考えてらっしゃるのか…」

彼は赤ん坊の方を向いた。
「この可哀想な人は、アバタールになりたいらしいでちゅよ。アバタールは1人しかいないのに、お気の毒にねえ、ミハイル?」




「……そりゃ、すまんね。あんた、まだ昼間なのに、仕事はしていないのか?」


 エフレム

「私?仕事はしていませんよ。妻のような仕事はね。一日中やっていることと言えば、このミハイルの世話をすることだけですね」

彼は赤ん坊を見て、恩着せがましく言った。
「そうだろ、俺がおまえの世話をしてるんだよな?そう、俺が、俺がやってるんだ」

彼は子供にキスをして、恥ずかしそうに君を見た。
「私はどこに居たかって?ええ、私は子供の世話しかしていませんよ。私がやるべきことは仕事のはずだ、家に居ることじゃない。それはジリアンの仕事のはずだ。彼女が家に居るべきで、それは私ではない」




「ジリアン…ああ、ライキュームにいた女か」


 エフレム

「私の妻?ジリアンですか?彼女は学者です。とても良い女性ですよ。私が出来ないからではありません。私の方が良くできますよ。まあ、そんなことは、今議論することではありません。彼女には職があります。私でさえも無いのにです。ですが、私は仕事をしなくてはなりません。あなたも、そう思いませんか、アバタール?家に居て子供を育てたりすることなどは、男がやるべき事ではありません。これは恥辱です!」
彼は幼児の小さな産毛の頭を撫で始めた。




「今話題の男女共同参画ってやつか。さすが、学術の町ムーングロウだな」


 エフレム

「ムーングロウとは何でしょう?」
彼は肩をすくめた。
「ここは素敵な町ですが、最近は少しばかり混雑してきました。ムーングロウがライキュームと分離されていた時代は、もっと良い場所だったと聞きます。ここは広すぎて、本当に他人と知り合えません。家に居て息子の世話をしているので、そのような機会もありません」
彼は子供を見下ろして微笑み、その鼻をくすぐった。

「これは男の仕事ではありません。妻が、この子と一緒に家に居るべきだ。私ではない。私は外へ稼ぎに出るべきなんだ。それが、私がするべき事なんだ!」




「(なんだか、鬱憤をぶつけられそうだな…)じゃあ、子育て頑張ってくれ。俺は、そろそろお暇するよ」


 エフレム

「もう行ってしまうのですか?ああ、分かりましたよ、アバタール。あなたには、本当の男がやるべき事があるのですね」


ブリタニアの社会は、こういった細かい所でも変化している。
しかし、それが良い変化なのか、悪い変化なのか、ということ結論付けるのは難しい。

さて、次は天文観測所に行ってみることにした。
ジプシーの占師からも、ここに行くようにと言われている…。



←プレイ記録24へ   プレイ記録26へ→