Ultima 7 プレイ記録 13 名工オーウェンの船

前回に話を聞いた、カールという男に会いに行く。
彼はオーウェンの船による船舶事故で兄弟を失っていると言うので、オーウェンの過去についても何か知っているかもしれない。
どうやらミノックの町の中には住んでいないようなので、郊外を探してみることにした。





「この郊外の家にでも暮らしてるのかな?」








「ごめんください、あんたがカールさんかい?」


 グレゴール

その屈強な体格によく似合った、傲慢な気性の老人だ。
「俺の名はグレゴールだ。ブリタニアン・マイニング・カンパニーのミノック支部の責任者だ」




「あ、違った。こりゃまた失礼を…。かの有名なブリタニアン・マイニング・カンパニーとは、ここだったのか」


 グレゴール

「ブリタニアン・マイニング・カンパニーは、ブリタニアの発展に不可欠な、数々の鉱石を生産している。
ここミノックには、ブリタニアで最大の採掘場の1つがあり、製材所、宿屋、アーティストギルド、そして造船所があるんだ」




「あんたは、この町について詳しそうだな。色々と教えてくれないかい?」


 グレゴール

「ここミノックでは、我らが船大工オーウェンの記念碑を建造しているんだ。彼は偉大な職人で、その名はすぐにブリタニア中に知れ渡るだろうぜ。また、とても活動的なフェローシップ支部もある。
製材所は、もう長いことやっている収益性の高い事業だ。恥ずかしいことに、そこでの素晴らしい仕事よりも、殺人事件の方で有名になっちまうだろうがね。
チェッカード・コルクの宿は、その退廃的な個性と雰囲気で有名だ。素敵な場所だぜ。あの不潔さを嫌悪するのは、いけねえ。
アーティストギルドってのは、職人達が集まって、つまらねえ品物を売ってるような、小さな集団だ。彼らは、何事にも反対することに誇りを感じてるんだ」




「オーウェンの記念碑については、何か知らないか?」


 グレゴール

「俺は、バーンサイド市長が記念碑を建造するのを手伝っている。こいつは、我らの鉱山から出る最高の鉱石で造られる、巨大な記念碑だ」




「特に目新しい情報は無かったな…。殺人事件やロック湖の汚染の話も聞けなかったし、そろそろ行くとしようか」











「ん…?こんな野原に人がいるぞ…」





 カール

長い間、野外で暮らしていたような身なりの山男だ。
彼は君をじっと見て、鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
「何の用だ?俺を1人にしておいてくれ!」




「もしかして、あんたがカールさんか?」


 カール

「俺は余所者とは話さねえと決めてるんだ。だが見たとこ、あんたはそんなに賢そうじゃねえから、俺が可愛がってやろう。俺の名はカール、以前はミノックにいた」




「賢そうじゃないとは、どういうことだ!あんた、こんな所で何の仕事をしてるんだ?」


 カール

「仕事!?あんたはイカれてるのか、アバタール!?第一に、あんたが俺に仕事を斡旋してきても、俺はそんなモノに興味はねえ。第二に、あんたが俺の力を何かしらの目的で借りたいとしたら、強くお断りするね。第三に、あんたが俺の仕事を聞きたいと思っていたら、俺に仕事は無いから、そんなこと思うだけ無駄だ。最後に第四だが、何故仕事をしてないのかと思うのならば、あんたには関係の無いことだから、余計なお世話だ!」




「(こいつは相当な偏屈オヤジだな…)以前はミノックにいたと言っていたが、今は住んでないのか?」


 カール

「俺にミノックの事は聞くんじゃねえ。フェローシップのバカ共がいる、汚ねえチンケな町だ。最近では殺人事件と無意味な記念碑だな。俺はもう、そこには住んでねえし、金を貰っても住まねえぞ!」




「とか何とか言いながら、最近起こった殺人事件の情報は知ってるじゃないか」


 カール

「フン、何で俺がそんなことを気にしなくちゃならねえんだ?人間は、毎日のようにお互い殺し合ってるぜ。おお、あんたは事件の調査をしているのか!じゃあ、俺をそんな事に関わらせないでくれ。あんたが殺人犯を捕まえたら、そいつの銅像でも建ててやりな」




「銅像で思い出したが、オーウェンの記念碑…いや、オーウェンについて、あんたに聞きたいんだ」


 カール

「船大工のオーウェンが、自分の記念碑を建てようとしてやがるんだとよ。きっと、それは絞首台みたいな形をしてて、そいつで自分を吊るすに違いねえぜ!」




「…あんたは、兄弟を船舶事故で亡くしたらしいな」


 カール

「俺の兄弟…この世界で俺のたった1人の家族は、オーウェンの造った船の中で働いていた。その船は、多くの船と同様に沈んだ。3年前に、初めて嵐に遭遇した時に沈没したのさ。兄弟は、そいつと一緒に沈んで、二度と帰って来ねえ。
俺は、この事でオーウェンに立ち向かった。だが奴は、船が沈んだのは自分の船の出来とは無関係だって否定しやがった。その夜、俺は奴の書いた設計書を盗み出した。だから少なくとも、そんな船はもう建造されてねえはずだ。だが、その出来事で俺は怒り心頭になっちまって、もう二度と人間とは暮らせねえと思ったのさ。そして俺は山で暮らすようになった。俺が町に行くのは、ちょっとした物を売りに行く時と、ルザーフォードの所の旨い酒を時折飲みに行く時だけさ」




「その時に沈んだ船は全部、オーウェンの設計によるものなんだな?」


 カール

「他にもオーウェンが基本設計をした3隻の船が、進水した最初の年に沈没している。大勢の人の命が、あの自惚れ野郎のせいで失われたんだ!」




「あんた、設計書を盗み出したとか言っていたが、それはどうしたんだ?」


 カール

「俺の小屋の中に、まだそいつは残ってるぜ。何度か、そいつを解読しようともした。オーウェンを除いて、町の奴等は誰も理解できないと思うぜ。いや、鍛冶屋のジュリアなら、いくらか解明できるかもしれねえな。だけど、彼女は俺のような山男の言うことなどは聞いちゃくれねえだろうさ」


 ジュリア

「私は聞くわ、カール!あんたは自分を低く見積もりすぎよ!元気を出して!」




「そういうことだ。設計書を見せてくれないか?」


 カール

「ジュリアに設計書を見せるつもりなら、あんたにくれてやるよ。ブリタニアン・マイニング・カンパニーの事務所の南東の小屋にあるぜ」




「わかった、じゃあ見させてもらおう。色々とありがとう」


 カール

「いつか俺は熊になっちまうと思うよ。俺の本質は、怒りっぽくて嫌な奴だと思うんだ。だが、俺は数少ない友人は大切にしているし、あんたもその一人だと思う。気をつけてな、アバタール」




「…行ってしまった。偏屈なオヤジだが、根はいい奴なんだな、きっと」




「さて、小屋は南東にあるとか言ってたな…もう随分と歩いて来たが…」








「おお、このアバラ家のことだな!見るからにムサ苦しくて汚らしい住居だが、設計書は…」




「あった!床の上というか、地面の上に置きっぱなしじゃないか。こんなボロ家の中じゃ、野ざらしにしてるのと変わらないぞ」







「ふーむ…俺にはサッパリ分からんが…ジュリア、これを見て何か分かるか?」


 ジュリア

彼女は設計書の一文一文を注意深く説明した。
「ひどいデザインよ。こんな仕様で造った船は、簡単に転覆して沈むわ。この設計書を市長に見せるべきよ」




「なるほどな…」


なんと、オーウェンの船の設計書は、一見して分かるほどの設計ミスがあった。
ということは、船舶事故の責任を問われてもよさそうなものだが…。












「町に戻る前に、ブリタニアン・マイニング・カンパニーの鉱山を覗いてみるか。鉱山ってからには、金塊でも見つかるかもしれん」









「モンスターとか出てこないだろうな…まあ、人が働いてる鉱山なら大丈夫だとは思うが…」


 ミコス

冷笑した男が、君が近づくのを見ていた。
彼の目は胡散臭そうに、あちこちを見回した。




「やあ、鉱山会社の人かい?」


 ミコス

「ミコスだ。俺はミノックの鉱山の監督だ。
この鉱山は、ブリタニアン・マイニング・カンパニーが経営している。かつてはコブトのダンジョンだった所にあるんだ。鍛えられた鉱夫と特殊な採掘機を使って、鉄鉱石や鉛、その他の鉱石を掘っている」




「え!ここは、あのコブトのダンジョンなのか!?時代は変わったものだなぁ…」


 ミコス

「現在は機械を修理しているから、ほとんどの鉱夫は出払ってるぜ。今は、オウィングスとマローイという2人のエンジニアが、主坑道を降りて行っている。彼らは特別な計画に関わっているから邪魔をするんじゃないぞ。また、ガーゴイルのフォドゥスもいる。彼は、鉱山の通常業務のようなことを、やっているな」




「今は休業中ってわけか。機械ってのは、どんな物なんだ?」


 ミコス

「操作法を知らないと危険だぞ。近づき過ぎた奴に、掘削の仕掛けが、どんな作用をするのかなんて、見たくもねえだろ!?」




「う…まあな…。だが、従業員はほとんど不在だってのに、あんたは町に戻らないのか?」


 ミコス

彼は地面に唾を吐いた。
「けっ、あいつらか!俺はここに居れば、あいつらの争い事とは無関係だ。そのうち、あいつらはお互いで殺し合うぜ」




「(やはり、ミノックの町の住民は、お互いに仲が良くないようだな…)」




「さっきの機械の話といい、そこら中に火薬樽とか物騒な物が置いてあるから、迂闊に触れない方が良さそうだな……うわっ!
……って、ガーゴイルか…暗がりで、いきなり驚かすなよ…」



 



 フォドゥス

酷い皮膚病にかかった、羽の無いガーゴイルだ。
彼の顔は衰えて斑に見える。




「…おい、なんだか調子が悪そうだが…ここの鉱夫か?」


 フォドゥス

「鉱山を掘って探している。鉄鉱石と鉛と、そして…」




「そして…?」


 フォドゥス

「秘密の鉱石だ…」

ガーゴイルの意識が混濁した。
「戻って…仕事をしなくては…ミコス!…一生懸命働く…他には何もいらない…あの銀色の液体だけで…」




「おい、大丈夫か?秘密の鉱石ってのは何だ!?」


 フォドゥス

「…ブラックロックと呼ばれている…この鉱山の隠されたエリアには、鉱脈がある…」
ガーゴイルの目がグルグルと回った。彼は明らかに病気だ。




「ブ…ブラックロックだと!?」


 フォドゥス

「毒液が欲しい…もっと毒液が…もう仕事に戻る、ミコス…」 




「毒液というのは…!そうだ!あのポウズの村で見た、シルバーサーペントの毒液のことだ!商人のモーフィンを問い詰めた時、ガーゴイルを働かせるために、ブリタニアン・マイニング・カンパニーに流してるって話を聞いた…!」




「おい、ミコス!お前がガーゴイルに毒液を使ってるのか!?」


 ミコス

君がフォドゥスが言っていた言葉をミコスに告げると、彼は驚いて君を見た。
「何のことだか分からねえが、そいつはガーゴイルには、よくあることだ。おおかた、仕事をサボろうとしているんだろう。あんた、仕事の邪魔をするつもりなら、ここから立ち去った方がいいぜ!」




「…シラを切るつもりか…!」


 ミコス

「あまり、この辺をウロウロするんじゃないぞ、アバタール。すぐに立ち去るんだな」



この鉱山は奥が深そうなので、今は引き返して町に向かうことにした。
だが、ここで鉱夫のガーゴイルに投与されていると思わしきシルバーサーペントの毒液、そして、フォドゥスの言っていたブラックロックの鉱脈…。
後に、この鉱山の奥にまで行くことになりそうだ。











「日が暮れる前に、市長にオーウェンの設計書の話をしなくては!」






 バーンサイド

君は市長に、オーウェンの設計書を見せ、ジュリアの見つけた欠点を注意深く指摘した。
市長は仰天した。
「これはまずい!誰にも見せてはいけない!オーウェンが、このような死亡事故を引き起こしていたのが知れたら、彼の船大工としての名声は破滅し、我らの町も取り返しのつかない損害を受けてしまう!」




「真実が究明できて良かったな。これもひとえに俺の尽力の…」


 バーンサイド

「だが、ごく少数の人は、死亡事故はオーウェンの設計によるものだと疑っているようだ。この設計書を破棄して、真実が決して外に洩れないようにしなくては!これは、町を不名誉と荒廃から守るためなのだ!」




「え?破棄って…ちょっと、あんた…」


 バーンサイド

「再度、オーウェンの建造した船は沈み続けるだろう。そしてミノックは『死の船』を造る町として知られ、名が傷つけられてしまう。無能者の記念碑を建てた町として…。
記念碑は中止しなくては!他に方法はない、私は銅像の建造をキャンセルすることにしよう」




「記念碑を中止するのは賢明だと思うぞ。さすがに、これだけの不祥事を起こした人物の記念碑ってのもないだろう。だが、真実を闇に葬るってのは…」


 バーンサイド

「ああ、それで…その、アバタール…この事をオーウェンに知らせに行ってくれませんか?」




「…え!?」


 バーンサイド

「思うに、あなたから聞いた方が、彼にも良いと思うのだよ」




「いや、ちょ…ちょっと待て!どういう理屈だ!何で俺がそんな嫌な役目を!?」


船舶事故を起こした設計書を表に出さないばかりか、記念碑の中止を告げる使者をアバタールに任せるという、とんでもない市長であった。
まさに、己の保身しか考えていない男である。











「…とりあえず日も暮れてしまったから、オーウェンに伝えに行くのは明日にして、今日は最後に町の北にある鉱山に入ってみよう」







「こっちも、ブリタニアン・マイニング・カンパニーが管轄してるのかな?」




ということで、鉱山の中を探検してみることにした。
中は坑道となっており、ツルハシやシャベル、そして火薬樽などが、至る所に置かれている。












坑道の一角に、鉱夫と思わしき白骨死体があった。
その傍らにあったバックパックを調べてみると…何と、シルバーサーペントの毒液が入っていた!
ということは、この白骨死体はガーゴイルなのか…。
この毒液はブリテインの薬剤師が買い取ってくれるという話を聞いたので、一応持っていくことにした。











更に奥に進むと、何度かヘッドレスと戦闘になった。
ヘッドレスは弱いし、たまに金も落とすので、よい稼ぎ相手だ。
今回は、経験値の量も従来よりも多めに手に入るようである。











一番奥には魔法で施錠された扉があり、『危険 入るな』と看板に書かれていた。
今は扉を開錠する手段がないので、ここらで探索を切り上げることにした。














 イアナ

「起きて!冒険を続ける時間よ!」




「うーん……もう朝か…」







「このベッドロール、よく眠れるんだけど、やはり伝説の聖者が町の片隅で野宿してる姿は、どうにも冴えないな…」



ルザーフォードの経営する酒場、チェッカード・コルクで朝食を済ませる。
6人分ともなると食費も本当に馬鹿にならないので、そろそろ安定した収入を得るために、何とかしないといけない。









「さて、食事を済ませたら、オーウェンの所へ行こう。あ〜あ、気が重いな…」






 オーウェン

高価なシャツを着た、とても真面目そうな若い男だ。 
オーウェンは君を見て鼻であしらった。
「また私と、お話しがしたいと見えますね」




「ん…まあ、話はしたくないんだが、少々お伝えしなくてはならない事があってな…」


― そして、オーウェンに記念碑の建造が中止となった経緯を話した。


 オーウェン

「…私は、この恩知らずのチンケな町のために何年も骨を折ってきたが、もう止めだ。生きてるうちは、もう船は造らないと決めた!思い知らせてやる!あいつらが、どんだけ謝ろうが頼もうが、二度と造るもんか!」




「(そりゃまあ、こうなるわな…)」


 オーウェン

「私が航海史上で最も偉大な船を造り、ミノックに十分に尽くしたのは明らかだろう!思い上がったマヌケな市長のおかげで、私が受けて当然の賞賛が拒否されてしまった。私には受けるだけの価値があるというのに!デザインの欠陥だと!?ハッ!あのバーンサイド市長がチンケな人生の中で、何隻の船を造ったって言うんだ!?」




「…だが、死者も出ているんだ、仕方ないだろう」


 オーウェン

君は、多くの罪なき人がオーウェンの造った船で命を落としたことを話した。
オーウェンは、ゆっくりと首を振った。
「どうして、そんな事が起こったのか私には分かりません。この世界にとって、それだけの多くの命の損失が、世界にもたらした被害というものを想像するのは難しい。…だが、私は船を造る時にはベストを尽くした。彼らに死んでほしいと願っていたわけではない。私を信じてくれ!」


オーウェンは苦しんでいるように見えた。
「私への賞賛は、もはや墓標しかないのだろうな」




「墓標?どういうことだ?」


 オーウェン

「友よ、私の人生が終わりを迎える時が来たようだ。私はずっと、吹雪に飲み込まれ、深い闇の中にいるような気持ちだった…
我が仕事は、我が記念碑に記されましょう!我が名は、あらゆる銅像が風化した後にも残りましょう!人々は私のことを忘れないでしょう、きっと、お約束します!」

劇的な麗句と共に、オーウェンはダガーを取り出した。




「お…おい!ちょっと待て!」


 オーウェン

そして、君が阻止する前に、彼は自分の胸を突いた。

彼は激しく咳き込み、口から血を吐いた。
彼の上質な亜麻糸の上着が、ワインレッドの罪に染まる。
そして、全てが終わった。

史上最も偉大なる船大工オーウェンは、死んだ。








「そんな…オーウェン…!」









 グラドストン

「……結局、町の中央の無意味なコンクリートの話は、無くなったらしいのです。そして市長が、あの空っぽのスペースを何かで埋めるようにと、我々に委託してきました。素晴らしいことだと言う他にありません。かつてのように、すぐに準備ができるというわけではありませんが、あなたがミノックに戻って来た時には、何か見られるようにしていたいと思います。それでは、また!」




「そうか…アーティストギルドは、これで存続できそうだな。だが…」


こうして、船大工オーウェンの記念碑に関する騒動は終わった。
仕方のない結果だったとはいえ、釈然としないものが残る。
オーウェンの死は、町では大きなニュースとはならず、皆はいつものように諍いを起こす毎日を過ごしていくようだ。

とりあえず、ミノックのフェローシップ支部所への届け物も渡したので、この後は再びブリテインへ戻ることにした。
連続殺人事件、鉤爪の男、フェローシップ…おそらく、全ては繋がっている。



←プレイ記録12へ   プレイ記録14へ→