Ultima 7 プレイ記録 09 大評議会と租税評議会



「もう少し、この城を見回ってみるか……おや、ガーゴイルがいるぞ」





 ウィズレム

見事な翼を持った、堂々たる態度のガーゴイルだ。

「私はウィズレムと知られている。『賢き男』との意味だ」




「ガーゴイルの名前ってのは、みんな言葉に意味があるんだよな。あんたは、この城に仕えてるのかい?」


 ウィズレム

「ロード・ブリティッシュのアドバイザーであり、この国の我が種族を代表するよう勤めている。王のアドバイザーを長く勤めるのは、名誉なことだ」




「側近ってことか…ガーゴイルが、そんな地位に就いているとは、正直驚きだな」


 ウィズレム

「ガーゴイル族のことを聞いてもらうよう努めている。ブリタニア社会に統合され、受け入れられるため、長き道のりを歩んだ。
お前が最後に訪れた時から少し後に、ガーゴイルはターフィンという南東の島に住み着いた。そして、本島に少しずつ移動していった。
ほとんどの地で受け入れられたが、悲しいことに、我らを受け入れない町が、いまだに存在する。だが我らの王、ドラクシヌソムは、まだ健在であり、偉大な仕事を行っている。ここに生きるガーゴイルのことを知り、そして助けてほしい」




「ドラクシヌソムが、まだ生きているのか!そりゃ会いに行かないとな!
…ガーゴイルが殺された事件のことも話さなとならないだろうしな」


 ウィズレム

ウィズレムは、君からトリンシックで起きた殺人事件の話を聞いた。
「悲しいことだ。ターフィンにいるロード・ドラクシヌソムに会い、イナモのことを教えてやってくれないか?彼ならイナモの両親も知っているだろう。なるべく早く、この知らせを伝えてほしい。すぐに、ドラクシヌソムにイナモのことを伝えに行ってくれるか?」




「ああ、すぐにってワケにはいかないが、彼には会いに行くよ」


 ウィズレム

「おまえは頼りになる」




「じゃあ、そろそろ行くとしよう。ボケたニスタルの代わりに、側近の仕事を頑張ってくれ」


 ウィズレム

「さらばだ」




「お、こっちの部屋にもガーゴイルが…」





 インウェスロクレム

見るからに知的な有羽ガーゴイルが、君を興味深く見ている。
「ブリテインへようこそ、アバタール!
私はインウィスロクレムと呼ばれています。あなたがたの言語の通訳者という意味です」




「この城で通訳でもしているのか?」


 インウェスロクレム

「実際、私は故郷では通訳者です。現在は大評議会にて、我らが高貴なる君主、ロード・ブリティッシュに仕えております。評議会の2人のガーゴイルのうちの1人であることを名誉に思います」





「ガーゴイルを評議会のメンバーに加えるとは、ブリティッシュ王も、ちゃんと考えているんだな」


 インウェスロクレム

「私は長寿なるガーゴイルの1人です。我らが遺産を保護することが、私の生涯の仕事です。我らの種族は、遥かなる昔にブリタニアへ移住し、ターフィンという名で知られている島に落ち着きました。
孤独で、寂れた地です。人間が『居心地が良い』というような場所ではありません。私は、ブリタニアにおけるガーゴイルの新しい生き方を確立し、我らの種族が人間に抱く憎しみや誤解を消滅させたいと望んでおります。無知は偏見を育てます。私は、これらを正す者の1人です。このブリタニア社会で、人間とガーゴイルが共に平和に平等に生きてゆければと願っております」




「これらを正す者の1人…?」


 インウェスロクレム

「彼らはフェローシップと呼ばれています。善良な意思を促進させ、全国で信頼されています。すぐにでも、この団体への加入をお考えください!」




「あんたもフェローシップのメンバーなのか!?ガーゴイルにまで浸透しているとは……
…で、大評議会の仕事ってのは、何をしているんだ?」


 インウェスロクレム

「領土の法を作ります。紹介しましょう、こちらは我が同僚のミランダです。我々が現在何をしているかを、より多く教えてくれるでしょう。不運なことに、評議会のほとんどは、今は出払っています。
ミランダは知的な女性で、全ブリタニア市民の現状に、大きな関心を持っています。ロード・ブリティッシュの最も信頼するアドバイザーの1人です」



 ミランダ

愛らしく、気取らない女性が、やさしく微笑んでいる。
「あなたの来訪は瞬く間に広まりました。ようこそ、アバタール!」




「やあ、こんにちは」


 ミランダ

「ミランダよ。大評議会に勤めているわ。今は、法案の仕事をしています。お城にいない時は、幼い子供の世話で忙しいの」




「まだ、お若いようだが、あんたも大評議会のメンバーなのかい?」


 ミランダ

「大評議会は、ブリタニアの立法を行ってロード・ブリティッシュを支援しています。私は、評議会に勤める3人の女性のうちの1人であることを名誉に思います。
私は特に、この国での女性の義務と権利と機会について心配しています。我々の歴史では、概して女性に対して優しかったのですが、まだ改革の余地があります。 




「あれか、ジェンダーフリーとか、男女共同参画とかいうやつか。ブリタニアには、まだ早いんじゃないか?」


 ミランダ

「もっと多くの女性が公的な職に就けるはずです。そして、私は個人的に、ファンタジーヒーローの絵画から、ボロ服を纏った女性を取り除きたいと思っています」 




「まあ、そのくらいなら出来るかもしれんがな」




「…で、そこのインウィスロクレムが言ってた、今やってることってのは何なんだ?」


 ミランダ

「インウィズロクレムと私は、法令の草案を起こしています。これは、コーブ付近にあるロック湖への、あらゆる産業廃棄物の投棄を違法にするというものです。あの湖は、非常に汚れています。
この先、コーブへ行く予定はありますか?」




「え?そうだな…これからミノックへ行くから、途中で寄ってもいいかもな」


 ミランダ

「よい知らせね!頼み事をお願いしてよろしいかしら?この法案を、コーブのロード・ヒーターに届けていただきたいんです。彼は、これを読んだら賛成のサインをしてくださるはずです。あなたには、こんなお使いよりも重要な仕事があるとは存じておりますが、届けてくださるのでしたら、非常に感謝いたします。どうでしょうか?」




「まあ、いいよ。そんなに重い物でもないし、物のついでだ」


 ミランダ

「素敵!これが法案です。サインを貰ったら、また持って来てください。御礼をいたします」




「これが法案か…美しかったブリタニアに環境汚染まで起こっているとは、何とも言えない気分だ…。
そういえば、ロード・ブリティッシュが言っていた、コーブの魔術師ルディオムにも会う必要があるな」






「じゃあ、戻るのがいつになるかは分からないが、忘れずに持って来るよ」


 ミランダ

「またお会いできることを願ってますわ、アバタール」




「さて、隣の部屋にいるのは……おお、お前は!えーっと…見覚えある顔だな」






 ジョフリー

君の友であり、かつての仲間だった、親衛隊長のジョフリーだ。

ジョフリーは声を出さずに笑った。
「ジョークのつもりかい?俺はジョフリーだよ!」




「そうそう、ジョフリーだよ!元気か?」


 ジョフリー

「最近は、親衛隊長の職務に就いている。俺は、ロード・ブリティッシュのボディーガードで、城内の安全を任されているんだ。今は、冒険に出かける時間はないな」




「む…早々と、お断りの言葉を述べやがったな…」


 ジョフリー

「この200年で、俺も少し年を取った。申し訳ないが、今となっては、あんたに加わるべきじゃないと思っている。だが、俺の気持ちは、いつでもあんたと一緒だ。何か手助けが必要なことがあれば、喜んで手伝うよ。
俺のアドバイスとしては、可能な限り早く経験と技術を磨くことだ。あんたは、ブリタニアから長い期間離れていた。最後にここで冒険した時と、同じ感覚ではいかないと思うぜ」




「確かに、俺は以前はブリタニアで最強だったはずなのに、今は子供や老人と大差なくなってしまったよ」


 ジョフリー

「俺達の2つの世界は、明らかに異なっている。戻って来たのがいつであれ、身体は、あたかも初めてここに来た時のようになってしまう。俺達の仲間が、年を取ってしまうにもかかわらず、ブリタニアで暮らすことを選んだのには、そんな理由がある」




「へ〜、なるほどな。若さを保つのがいいか、力を保つのがいいか…難しいところだ」


 ジョフリー

「そうさ、俺が元の世界に居た時から、ブリタニアの換算では長い時が経ってしまった。あんたが仕事を終えたら、また戻って来て、俺達の元の世界で起こったニュースを教えてくれよ」




「ああ、分かった。お前も達者でな、ジョフリー」


 ジョフリー

「勇気を持て。自信を持て。強く、そして賢く…」


ジョフリーは残念ながら仲間にはならなかった。
かつての8人の仲間の中では、国王の親衛隊長になった彼か、あるいは商売が上手く行っているイオロが、最も社会的に成功しているのかもしれない。
後のメンバーは、どうにも萎びてるんだよな…シャミノとか…。









「おっと、そうだ。忘れないうちに、このブリテインの市長に会いに行こう。確か殺人事件について知ってるんだっけな」




「ここが市庁舎のようだな。こういう建物は、どこに行っても無駄に豪勢なんだよな〜」





 パターソン

40台くらいの高貴な男だ。
政治家か、着飾った商人のように見える。

「アバタール!あなたが現在、我らの公平なる町にいらしている事を伺いました。お会い出きるのを楽しみにしておりました!」




「やあ、あんたが市長さんかい?」


 パターソン

「私はパターソン、父の名を継いだ」
彼は君と固く握手をした。

「アバタールにお会いできて、この上なく嬉しい!
ええ、私が市長です!このブリテインの市長です!ご存知かと思いますが、選挙では圧勝でした!対立候補には、もうチャンスはありませんよ!私は、ブリタニア租税評議会の代表も務めております」




「やけに威勢のいい市長だな…租税評議会ってのは何だ?」


 パターソン

「国土には、恒常的な収入を得る方法が必要です。税金が、その唯一の解答です。全ての商人も農民も課税されます。生きるために働いている者は皆、課税されているのです。ブリタニア税金評議会の事務所は、王立造幣所の中にあります」 




「なるほど。市長の他に、そっちの職務もやっているってことか。なかなか忙しそうだな」


 パターソン

「市長選挙は2年前に行われました。私は84%の投票をいただきましたね。自身でも認めますが、衝撃的な勝利ですよ。もちろん、その背後には、フェローシップのような団体がいましたがね…」
対立候補はブラウニーという名の年老いた農民です。キャンペーンに多額の資金を使うことはしなかったようです。いなか者ですら、彼を支持しませんでしたね」




「いなか者?」


 パターソン

「おっと、そのように言いましたかな?そういう意味で言ったのではないのですよ。ブリタニアや、全ての地域には、もはや階級制度のようなものはありません!私が言おうとした『いなか者』というのは、立派な家柄ではない者…ブラウニーのような者のことですよ。彼らでさえも、ブラウニーを支持しませんでした。彼らは、誰が一番のリーダーなのかを知っていたのです!」




「立派な…家柄…?」


 パターソン

「おっと、そのように言いましたかな?そういった意味で言おうと思ったわけではないんですよ。私が言いたかったことは、他者よりも良い立地の家族から出身した人々がいる、ということです。そして、ブラウニーは、そうではありませんでした!しかし、誤解しないでいただきたい。続けて言いますが、ブリタニアの階級制度は滅びました!」




「…フェローシップのミーティングで、あんたの姿を見たが、あんたもメンバーなのかい?」


 パターソン

「フェローシップに加入してから、私の人生は大きく飛躍しました。私の誠実さは非の打ち所がなく、私のリーダーシップは不動であり、我が愛する妻は申し分がない、ということに気付かされましたよ」




「誠実ねえ…」


 パターソン

「私は、このブリテインで最も誠実な人間でしょう!ムーングロウへ行くべきだと思いますよ!ハハハ!
妻の名前はジュディスです。音楽院で音楽の教師をしています。もう、お会いになっているかもしれませんね。我々は、素晴らしい関係ですよ」




「(こいつ、博物館の館長と不倫をしてるんじゃなかったか…?)キャンディス館長とは、仲がよろしいようで…」


 パターソン

パターソンの目が見開かれ、しばらくの間、怯えたように見えた。
しかし、たちまち彼は落ち着きを取り戻した。
「キャンディス?ええ、彼女は友人ですよ!フェローシップの『兄弟』です!それだけの関係ですよ!」




「…(また今度、証拠を掴んでやるか)それはともかく、ブリテインで起こった殺人事件について聞きたいんだ」


 パターソン

君はロード・ブリティッシュから聞いた、数年前にブリテインで起こった殺人事件のことを話した。

パターソンは頷いた。
「よく覚えております。身の毛もよだつ事件でしたよ。フィンスターという、民間事務所の経営者がいました。彼は、歯に衣着せず自身の意見を話す男でした。思いますに、そのことが、彼をトラブルに巻き込んだのでしょう。彼は様々な社会変革をしようとしていました。大評議会とブリタニア税金評議会に、より大きな権力を持たせ、そしてまた、フェローシップを解体しようとしていました。フィンスターは高貴な男でしたが、野望が大きすぎました。とにかく、彼の信条は、彼に敵を作ったのです」




「その敵というのは?」


 パターソン

「どうして私が知りましょうか?とにかく、彼の死体は廃屋の中で見つかりました。もう建っていませんが、その建物は城の近くにあり、倉庫か何かとして使われていました。何年か前に取り壊されたのです。彼の死体は、想像を絶するくらいに引き裂かれていました。あたかも、何者かが彼を杭に縛りつけ、彼の臓物を全て切り取ったかのようでした。フィンスターの首は刎ねられていました。そう、それはまるで…何と言うか…儀式的でしたね!これが、私の覚えているすべてです。この犯罪では、まだ誰も逮捕されていません」




「ふーむ…色々とありがとう、参考になったよ。じゃあ、そろそろ行くとしよう」


 パターソン

パターソンは、君に向かって頭を下げた。



ブリテインでの殺人事件は、パターソンの話からするに、トリンシックで起こったものと酷似している。
この時の犠牲者であるフィンスターという男も、トリンシックで殺されたクリストファーと同じく、フェローシップと対立していたようだ。
これは、どう考えてもフェローシップが怪しいだろう…。





「ついでに、パターソンが言っていた租税評議会ってのも見てこよう。市庁舎と同じ建物の中にあるのかな?」






 シンシア

有能で役立ちそうな女性だ。
「何かお困りですか?」




「ああ、どうも。ここが造幣所かい?」


 シンシア

「私はシンシアと申します。造幣所で出納係をしております。ブリタニア租税評議会のメンバーもしております。
ここ造幣所では、金を集めて貨幣を鋳造し、王国が現在どれだけのお金を使えるかを正確に計算しております。その用途は、農業、道路建造、新鮮な水源の開発、市民の健康、軍隊の設立、そしてロード・ブリティッシュの法令の布告など、ですね」




「前みたいに、金を持って来れば通貨と交換してくれるのか?」


 シンシア

「我々は貨幣の質を一定に保つため、一定量の金を持って来てくださった方に対して兌換を行っています。ご持参いただいた金の量と等価の通貨をお渡しし、その金から、より多くの貨幣を鋳造します。お分かりのとおり、とても効率的なシステムなのです」



「そうか。じゃあ、冒険の途中で金塊を見つけたら、ここに持ってくるよ。
で、租税評議会ってのは、何をしてるんだ?」


 シンシア

「ブリタニア租税評議会は、税金の会計、賦課、徴収を行っております。あなたが、ここブリタニアで収入を得たら、この紙をお持ち下さい。
そして中を記入して、税金を支払う年の終わりに再度ご提出ください。」







「なに!?ちょっと待て、アバタールでも税金の確定申告をしなくちゃならないのか!?」


 シンシア

「ご存知とは思いますが、7年間の干ばつで、王国の農業は大混乱しました。干ばつは数年前には終わりましたが、食物価格は高騰しております。ですが、国庫支出による支援がなければ、より高騰していたでしょう。

他にも、荷馬車の使用が増えるにしたがって、ブリタニア全土に通る道路は急速に悪化しております。新しい道路を整備して修理し続けることには、多くのお金が必要となります。

また、人口密度の高い王国の町に、綺麗な水を供給することは、この上なく重要なことです。これにはまた、新しく新鮮な井戸が必要とされます。

そして、近年200年で、ブリタニアの人口が大幅に増加し、伝染病のリスクも出てきました。シルバーサーペントの毒液の服用による、謎の皮膚病などがあります。王国で必要とされるヒーラーの数は劇的に増えています」

さらに、軍隊の訓練は、サーパンツホールドにて行われています。ブリタニアの町や市を守る衛兵は、ここで構成されているのです。これは、国庫の基金で設立されています」




「あー!分かったよ!だから税金が必要だって言いたいんだろ!まったく役人って奴は…」


危うく税金を支払わされそうになったので、そそくさと出て行った。
ブリタニアの社会制度は、この200年で一気に近代化したようだ。
剣と魔法の世界の出来事とは、とても思えない。









「ふう、この町は人が多すぎるな…。キリがないから、この郊外に住む農民と話したら、町を出てコーブへ向かうとしよう」






 マック

大きな目を興奮気味に見開いた農民だ。




「やあ、こんにちは。ここの農園の人かい?」


 マック

「俺はマック、農民だ。町の奴等は、俺のことをイカレてるとか言うがね」




「イカレてる…?(そういえば、ファーマーズマーケットの老夫妻から、マックという農民の話を聞いたな…)」


 マック

「あんたも、そう思うのかい?だが、俺の話は真実だぞ!ここらには、別の星からやってきた生物がいるんだ!俺は、そいつらを見たことがある!」




「別の星から…?そりゃ、どういうことだ?」


 マック

「巨大で醜いライオンタイガーのような奴だ!いや、タイガーライオンかな?奴等は凶暴で、俺達を食べようとしている!ブリタニア中で、奴等の船のような物を見かけるんだ!」




「そ…そうか。そいつは大変だな…(こいつはヤバイな…あまり関わっちゃならんタイプのようだ…)」


 マック

「俺はこの目で、異星の生物と、そいつらがブリタニアにやって来た時の謎の乗物を見た!俺は完全に正気だ。証拠だってある!」




「証拠だって?」


 マック

「俺の農園の真中に行って見て来い!自分自身で見てくれば、俺の証拠も見つかるだろう」




「そんなに言うなら見て来るが…正直、このまま立ち去りたい気分だ……」




「やれやれ、大方、何かを見間違えてるんだろう……ん?こ…これは…!?」







「こ…これは何だ!?乗り物なのか!?」


 マック

「俺はイカレてないって、話さなかったか?いいさ、俺がどうやって、そいつと遭遇したのかって話は、もっと信じられないぜ」




「分かった、もう少し話を聞かせてくれ!」


 マック

「俺は遅くまで残って仕事をしているんだ。時々、俺は空に輝く明るい光を見ることがある。誰も、そんなことを気にかけないだろうがな。だが、ある夜、その明るい光が地面に激突したのを見たんだ。そこは、俺の農園だった。
衝突と爆発の後、俺は野原へ走った。そこで、あんたが見たような奇妙な機械を見つけたんだ。そいつは、まだ発熱していた。俺は恐ろしくなった。だが、そこで、機械の天井が開き始めたんだ」




「ゴクリ…」


 マック

「その奇妙な船が開くのを見ている間、俺は動くことができなかった。そして、その天井から、悪しきタイガーライオンが現れたんだ。そいつの目は、獰猛で飢えていた。
言い替えれば、俺を食おうとしていたんだ!そいつは、肉食動物が得物に迫るかのように、俺に近づいてきた。そいつはとても素早く、俺は動くこともできなかった。これから殺されるんだ、と思ったね。そして、そいつが俺を捕らえ、俺の目を見てきたんだ。すると、そいつは死んでしまった」




「…へ?」


 マック

「俺は気付かずのうちに、鋤を握り締めていたんだ。そいつは、かつて、通りすがりの魔術師に偶然魔法をかけられて、畑仕事でものすごい働きをするようになった鋤なんだ。俺は、ありとあらゆる事にそいつ使っていたのさ!そして、タイガーライオンは、その鋤の上に走り寄って来て、自ら貫かれちまったんだ!そいつは死に際に喋った」




「いや、あの…」


 マック

「そいつは2言喋った。『Kill Wrathy』とな。俺はそのウラシーとかいう奴のことは知らないし、なぜタイガーライオンがそいつを殺したがってるのかも知らない。だが、俺が困っているのは、次にいつ夜空で動く光を見つけられるのかということだ。
それ以来、俺は毎夜、別の兆候を探した。だが、さっき話した出来事以降には、何も見ることはできなかった。
俺は、いつも夜空に動く光を観察している。それが、町の奴等が俺のことをバカ呼ばわりしている理由だ。だが、それは彼らが天球儀を覗いてやってることと、どう違うって言うんだい?」




「ちょっと待ってくれよ!話が突拍子も無さすぎるぞ!だいたい、鋤に貫かれたってなんだよ!?あの農耕具の鋤のことか!?」


 マック

「あんたも、世界中の魔術師がバカになっちまう疫病にかかってることは知ってると思う。何年か前、俺はムンバという魔術師の元へ、自分の壊れた鋤を持って行ったんだ。彼は物を修復するのが得意だった。ムンバの所には、他にも戦士達がいた。彼らは、自分の剣を強化して『死の剣』に変えてもらおうとしていた。だが、後になって戦士が引き返して来て、ムンバを殺してしまったんだ。哀れなムンバは混同してしまったのだと思うのだが、戦士の剣は草しか刈れない剣に変えられてしまっていたからだ。俺には、何が起こったのか確かなことはわからない。だが、ムンバ老人は、俺の鋤を『破壊の鋤』へと変えてしまったみたいだなんだ!だが不幸なことに、その鋤は失ってしまったよ」




「『破壊の鋤』か…そんな物騒な物を失くしたとは…」


 マック

「ああ、本当に失くしたわけじゃない。そいつは俺の納屋の中に保管してある。だが、その納屋の鍵を失くしてしまったんだ!多分、俺がロック湖に釣に行った時に、釣針と間違えて使ってしまったんだと思う。だから、今は俺の納屋には入ることができない。俺の事をバカだと思うかもしれねえな」




「納屋ってのは、この建物のことか…確かに鍵がかかっている」







「それより、その異星から来た獣だよ!いったい何者だったんだ?死体はあるのか?『kill Wrathy』って何だ?」


 マック

「確か、そんなようなことを言ったと思う。とにかく、そのタイガーライオンは、とっても美味かったぜ」




「く…喰ったのか…」


…というたオチの、農民マックのエイリアン激闘記でした。
実は、このエイリアンはオリジン社から発売されていた『ウイング・コマンダー』という別ゲームに登場するものらしいです。
内輪なネタなので、本編のストーリーとは関係ないと思われます。



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