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プレイ記録07 巡礼の旅 〜霊性 謙譲〜



「徒歩での旅も辛かったが、船旅も辛かった。風向きに左右される帆船では、思ったように進まなくて苦労したものだ。ただひたすら長く退屈な航海…。無数に 襲い来る怪物…。海は男を逞しく、そして孤独にするものだ」


「たった6人や7人で帆船航海しようなんて普通じゃ考えられないですよ」


「航海の末に辿り着いた先は、デシートとシェイムのダンジョンだった」

 


「デシート(欺瞞)は誠実の反対で、シェイム(恥辱)は名誉の反対というわけですね」


「正直、もうダンジョンは飽き飽きしていたんだがな…。だがここで青と紫の石を探さないわけにはいかなかった」




「結局、何のためにこの石を集めていたんですか?」


「ただ集めろと言われたから集めただけだ。用途が分かったのは大分後のことだったな」


「そんな不確かな情報を、よく鵜呑みにできたものですよ…」


「石を手に入れた後は、崇高な心の町・スカラブレイへ向かった」




「す…崇高な心?あまり聞きなれない言葉ですね」


「霊性、スピリチュアル、とも言う。言葉に表すのは難しいが、人間の精神力そのものを指すような概念だ」


「ふーむ、それはまた理解するのが難しそうな…」


「スカラブレイには、この徳を学ぶ哲人達が大勢いたものさ」

 


「東洋の古の偉人までいるじゃないですか!すごい町だなぁ」


「他には、ここで旧友のシャミノも仲間に加わったな」




「彼はレンジャーという剣も魔法も万能に使いこなす職業だった。まあ、俺に言わせれば中途半端な奴だがね」


「どちらも苦手な羊飼いに言われたくはないと思いますが…」


「あ、そうだ。もう1つ大事なことがあったんだ。さっき話した崇高な心の徳の神殿のことだ」


「神殿というのは、ルーンを持ってマントラを唱えて瞑想するとか言ってたアレでしたっけ?」


「他の徳の場合は、その町にルーンガ隠されていて、町の近くに神殿が建てられているんだが、このスカラブレイにはルーンも神殿も無いんだ」


「それでは、この徳の瞑想をする時はどうするんですか?」


「まず崇高な心のルーンは、何故かロード・ブリティッシュ城の宝物庫の隅に隠されていた。大量の宝箱は全てダミーで、床を調べないと見つからないんだ。間 違って宝箱を開けたら徳が下がるというオマケ付きだから、探し出すのに苦労したよ」




「ロード・ブリティッシュもアバタールの使命を与えるくらいなら、そんな極悪な仕掛けをせずに最初からルーンを渡せばいいのに…」


「そして次に神殿だ。存在しないわけではなく、行き方が少々特殊なんだ。ブリタニアの2つの月が共に満月になった夜に、ムーンゲートに入ると…」

 


「そこが崇高な心の神殿に通じているという仕組みさ」


「へえ、ムーンゲートを使わないと絶対に行けないんですか?」


「そうだ。あの神殿は、どうもブリタニアとは異なる空間に存在するらしい」


「崇高な心という徳の性質も少し特殊ですよね。いったい、何でこんな仕組みになっているんでしょうか」


「8つの徳は全てが同列の直線状に並んでいるわけではない。ここからが徳の核心的な部分だ」






「シャミノを加えた後はコブトのダンジョンへ向かった」




「コブト(=貪欲)は献身の悪徳ですね」


「それまで同様に、奥まで潜ってオレンジの石を探した。このダンジョンは殊更に敵が多くて苦労したよ」




「でも、8人パーティーになったのならば、戦闘は大分楽になったのではないですか?」


「いや、その逆だ。あいつら俺が指示しないと動かないし、すぐにダンジョンの狭い通路でつっかえて動けなくなるし、とにかく面倒だったよ。俺は始終イライ ラしっぱなしだったね」


「仲間なんですから、それくらい我慢しましょうよ…」


「オレンジの石を回収した後は、最後の徳の町に向かった」


「おお、いよいよ8つの徳もこれで最後ですか!」


「次に向かったのは、俺がブリタニアで最初に来た町…マジンシアの町だ」




「最初の町?ああ、あの毒の沼に踏み込んで力尽きた…。でも、そこは既に廃墟だったと言ってませんでしたか?」


「そうだ。色々な所で聞いた話からすると、マジンシアは滅亡してしまったらしいんだ」




「それで町中に悪魔や亡霊がいたんですか。しかし滅んでしまっては、もう徳を学べないじゃないですか。ここは何を象徴していたのですか?」


「マジンシアは“誇り”…自尊心の町だったそうだ」


「誇り…やはり人間、自分に誇りを持つのが大事、ということですね。ふむ、分かりますとも。これが最後の徳ということですか」


「ところが、その“誇り”というものは徳ではなかったんだ。それゆえマジンシアは滅ぼされてしまった」

 


「え…?そ、そうなんですか?」


「誇りとはプライドのことだ。己の力を過信して他を蔑み、自己中心的に生きることにつながる。それはアバタールに必要な徳ではないということだ」


「では、本当の徳は何だったのですか…?」


「“誇り”の反対の概念、それは“謙譲”だ。マジンシアは本来“謙譲”を徳とする町で、かつては謙譲のルーンも町にあったそうだ」




「そして、謙譲の徳を象徴する職業こそが羊飼いなんだ。ただ1人生き残った少女カテ リーナや、他の町に脱出した人々は、皆羊飼いだった」


「なるほど…。“誇り”に染まらなかった人々だけが生き残ったということですか」


「力も知恵も特技も持たない羊飼いだが、全てに慎ましく生きること、それ自体が徳だったということだ」


「ふーむ、力強いものや輝かしいものばかりが徳というわけではないんですね」


「俺もそのことを悟った時、己の生きるべき道が分かっ た気がしたよ」


「そのわりには、今もあまり慎ましく生きているようには見えませんが…」


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