Ultima Martian Dreams
13 夢の終わり


そんなワケで、俺はクソッたれな悪夢の迷路を抜け出して、ついに夢の世界の深層 に辿り着いた。
このガラス戸の向こうに、大きな筒状の容器と、ラスプーチンみたいな火星人が見える。



こいつがラクサチュクの野郎だ!
そして、あの筒こそが宇宙砲の燃料、フロギストナイトに違いない。

ヘイ、このカビの生えた農産物野郎、観念してフロギストナイトを渡すんだ!
と俺はガラスの外から言ってやったが、もちろん奴はそんな取引には応じなかった。
まあ、俺もそう簡単にいくとは思っていなかったがね。

悔しいことに、奴を囲んでいる強化ガラスは俺の力じゃビクともしない。
すぐそこにフロギストナイトがあるってのに、これではどうしようもない。
俺にできることと言えば、このガラスを爪で引っ掻いて嫌な音を立ててやるくらいだ。

仕方がないから、俺はラクサチュクの野郎を刺激しないように得意の話術でもって解決しようとした。
俺はこれまでに、頑固な憲兵や凶悪な殺人犯、さらには悪魔みたいな奴まで(いや、そいつはまさに本物の悪魔だったね!)、この話術で懐柔したことがある。
火星人だって、きっと話せば分かってくれるはずさ。
まずは名前、それから仕事、と順を追って聞いていくのが肝心だ。
一見回りくどいように思うが、俺の経験上これで腹を割らなかった奴はいない。

そうやってしばらく話すうちに、どうも奴はこの夢の世界に1人でいることに退屈していることが分かった。
俺はすかさずそこを突いた!
じゃあ、どうやったら退屈じゃなくなるのか教えてくれよってね。
すると奴は、自分を楽しませてくれたらフロギストナイトを返してやる、だなんて言い出した。
奴の出した条件は、俺がラクサチュクの用意する相手と戦い、3回勝利することだった。
こうなったら、しめたもんだ。
この哀れな作物は、俺がかつてドラゴンやバルロンともサシで戦った勇者だということを知らないと見える。
もちろん、俺は二つ返事でOKした。


その瞬間、俺は別の部屋にワープさせられた。



周囲にはソラマメみたいな小虫がわんさか飛んでいる。
こいつは、火星の地表でたまに見かける虫で、よく木の実の近くを小うるさく飛び回っている。
この虫を全部やっつければいいってことみたいだ。

まったくナメられたもんだ、と俺は肩をすくめ、足元に落ちていたドリームパウダーでナイフを具現化する。
この粉は、夢の世界ならではの物質というやつで、手に取って何か物質をイメージすることで、それが実体化するっていう代物だ。
それは食器だったり弾丸だったりネジだったり、自分がイメージできる物ならば何だって出てくる、まさに夢のような粉さ。
とりあえず、ナイフがあれば間違いなく勝てる相手だろう。


そして数分後、全ての虫を切り刻んだところでラクサチュクが俺の心に話しかけてきた。
次はもっと強い相手を出すそうだ。
オーケー、あんたの気の済むように好きにしてくれ、と俺が言うと、今度は洞窟にワープさせられた。




この中にいた相手は、アンモナイトのような虫ケラの群れのようだった。



小虫より硬くて厄介な相手だが、こいつも所詮は虫ケラだ。
俺は即座に周囲を見回して地形を把握すると、背後を取られない場所に逃げ込み、1匹ずつその背にナイフを突き立てて確実に倒していった。
まったく、こんなチンケな生物しかイメージできないとは火星のモヤシ共は軟弱だぜ。


さあ、次で最後だ。
俺はまたしても違う部屋にワープさせられた。
ここには一見して敵らしきものの姿は見えなかったが、部屋の中を少し歩いたところで…

突如、地面の中から巨大な触手が何本も突き出してきた!



こいつが最後の相手か!
うっかり敵の領域に踏み込んだ俺は、すっかり触手に包囲されちまっていた。

俺はすぐさま触手を振り切って部屋の隅に駆け出し、ドリームパウダーで具現化したエレファントガンを乱射した。



こいつは、象の硬い皮膚を貫通するための特製のライフルと弾丸だ。
ゼリーみたいに柔らかい触手は、ひとたまりもなく吹っ飛んでいく。

だが、いかんせん敵の数が多すぎる。
1本や2本吹っ飛ばしたところで、俺に襲い掛かる触手の数は一向に減らない。
さすがにヤバいかもな…と思い、俺はこの窮地の突破口を探した。
そして、よく見ると、クソッたれな触手の束の中に巨大な目のような丸い物体があることに気付いた。
おそらく、こいつが本体だ。
触手はいくら倒しても無駄だろうと判断した俺は、その下品な目玉にエレファントガンの銃口を向け、ありったけの弾薬をブチ込んでやった!

どうやら俺の読みは当たったらしく、目玉が吹き飛ぶと同時に俺を囲んでいた触手は全て引っ込んだ。
やれやれ、間一髪だった。


その時、勝利した俺に向かって、ラクサチュクの奴が話しかけてきた。
いいヒマツブシになった、ってな!



まあ、どうせこんなことだろうと思っていた。
これで遠慮なく、このサラダ野郎をブチのめすことができるってもんだ。
俺はエレファントガンを手に取り、野郎を囲むガラスに向けて発砲した。

…だが、この銃の威力をもってしてもガラスは割れなかった。
ラクサチュクの野郎が笑い出す。
地球人の想像力なんかでは、このガラスを破壊するほどに強力な武器はイメージできないだろう、ってな。
おまえらにはあと100年はかかる、だなんて言いやがる。
奴の言う通り、俺がこの火星で見た最強の武器エレファントガンであっても、このガラスは到底破れそうにない。
だが…奴の言うことが本当であれば、まだ方法はあるはずだ。


俺はドリームパウダーで具現化した木の実を食べた。
これは、食べると超能力が身に付く火星の木の実だ。
ちょっとばかり気分が悪くなるから毎朝食べたいとは思わないが、身に付く超能力は本物だ。

この超能力を使って、奴のガラス部屋の隣にある閉ざされた空間を透視してみると、内側の壁にスイッチが見える。
そしてテレキネシスの力で、このスイッチを壁越しに操作すると、入口の扉が開いた。



部屋の中には、ドリームパウダーが巨大に集積した塊、ドリームスタッフ<夢物質>があった!
これだけの量の夢物質があれば、どんな物でも具現化できるはずだ。

俺はサイコメトリーの超能力を使って、ドリームスタッフに込められた全てを読み取り、イメージの限りを尽くして具現化を試みた。
あのガラスを壊せるほどに強力な武器…思い当たる物は数多くある…。
かつて魔女ミナクスを斬ったクイックソード、エクソダスの炎の城で怪物と戦ったエキゾチック、アバタールに与えられた伝説のミスティックソード、全ての生 命を一刀で断つグラスソード…。
どの武器であれば、このガラスを破壊できるのか…?
失敗は許されない。


俺は決意を固めて目を開き、ドリームスタッフを具現化した。
そして、空間に現れた武器は…



M60機関銃だった。
俺の経験上、こいつならば可能だ!


俺はこの祖国のマシンガンを手に取るや、ガラス壁に沿って乱射しながら駆け出した。
砕け散るガラスの音は、この銃の圧倒的な威力を証明している。
そして、ラクサチュクの正面に風穴が開いたところで俺は立ち止まった。



こいつで永遠に夢でも見てな!




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