Ultima Martian Dreams
05 光の石

オリンパスの入口を守るナザニエルに署名を見せると、ようやく一行を信用して町の中に入れてくれた。



こんな状況だというのにテリトリー争いを始めてしまう人間の下劣な性分を見せつけられたようだ。
地球に帰りたいのか、ここに残りたいのかどっちなんだ。



ともかく、これでようやく、オリンパスの町に来た目的の1つであるコンベアベルトの修理ができる。
町の中にいたこの男、トリペットが壊れたベルトの修理をできるとのことだ。



しかし彼に話を聞いてみると、その壊れたベルトを見てみないと何とも分からないと言う。
まあ、もっともな話だが、それって発電所から持って来いってこと?


仕方ないから、もう一度発電所に行って、ベルトの壊れている部分を引っぺがして持ってきた。



こんな物を持ち歩けるとは普通思わんだろうに。

で、それを彼に見せると、その場で即座に修理してくれた。
これでコンベアは直り、石炭を炉に入れることができる。
しかし、それだけで電力は復活するのだろうか?



発電所にベルトを戻しに行く前に、他の住民とも話してみる。
ここでは第一遠征隊に加わっていた数々の偉人に会うことができた。
まずは、かの有名な物理・化学者のマリ・キュリー、通称キュリー夫人。



彼女は最近巷で話題の放射線研究の先駆者であり、ラジウムやポロニウムなどの放射性物質を発見した偉人です。
なんと彼女は、この火星でラジウム鉱石を発見している。
おそらく火星人達は、ラジウムの強大な放射線エネルギーを利用して様々な機械を動かしていたと言う。
火星人も原子力を使っていたとは驚きだ。

そしてもう1つ重要なことは、火星には、このラジウム鉱石に引き寄せられる虫がいるということだ。
虫はおそらくラジウムの放射線を養分にしており、それを吸収することで急速に成長する。
現に、彼女の研究所にはサンプルとして小さなラジウム鉱石が置かれていたが、これに引き寄せられて小さな虫がひっきりなしに現れると言っていた。
つまり、この虫が現れる所にはラジウムがあり、ラジウムが大きければ大きいほど、巨大な虫が現れるということだ。
指でつまめる程度のサイズなら問題ないが、この虫は非常に強力な牙を持つため、大きくなると非常に危険であると言っていた。


なお補足ですが、19世紀末の時代には放射線物質が人体に与える影響について、あまり良く知られていません。
この研究所でラジウムが剥き出しで置かれているのは、そのような背景があってのことで、スペクターともそのようなやり取りがされます。
そして、このラジウムは強大なエネルギーを発散しているからか、直接触れて持つことができないため、トングで挟んで持たなくてはなりません。
しかも、持った者は毒状態となってHPが徐々に減っていきます。
恐ろしいほどただちに健康被害が現れるので要注意です。



続いてこちらはトーマス・エジソン。



誰もが知っている発明王である。
彼によると、この火星の地表にちらほらと散見される塔が、どうやら送電塔の役割を果たしていたそうだ。
発電所で電力を起こすことに成功しても、それぞれの施設に送れなければ意味がなく、この塔も同時に動かす必要があるのだ。
そして、この塔はラジウムを動力としていた形跡があるとのこと。
何かがつながりそうな感じである。

また、彼はこの町にあったドリームマシンを調べていたのだが、リーダーのジャック・セガールの命令でマシンは破壊されてしまったため、その解明はできな かったらしい。
しかし、わずかにコントロールパネルの部分だけは解析しており、同様の部品があれば作ってみせると言う。
その同様の部品というのが、この町の地下にあるとのことだ。
さすがは発明王と言ったところ。



続いて、こちらは初めて北極点に到達した男、探検家ロバート・ピアリーだ。



彼はこの火星でも北極点の探検を行っているという、とんだ北極好きだ。
彼が北極の氷原をみた感じだと、おそらく火星人達はここの氷を溶かして水にして使用していたと言う。
この火星全体に掘り巡らされている巨大な運河は、当然水を満たしておかないと運河として機能せず、その水は北極から引いていたという仮説だ。



お次はセオドア・ルーズベルト。
後にアメリカ合衆国第25代大統領となり、20世紀アメリカの栄光の歴史の土台となる数々の業績を残した人物で、軍人・探検家としても同時に名高い。
この時代はまだニューヨーク市警の部長であることから、この町の治安維持に当たっているようだ。



彼はこの時代に発展した犯罪科学である指紋照合を用い、宇宙砲を1日早く発射した犯人を捜していた。
砲に付着していた指紋を採取しているため、同一の人物を見つければ犯人と断定できるとのことだ。
とりあえず、この町にいる全員の指紋は取ったそうだが、彼はラスプーチンが怪しいと睨んでいるようだ。

また、彼はこの町のリーダーであるジャック・セガールにも不信を抱いている様子。
具体的に何かあったわけではないが、とにかく信用できないらしく、彼を見張ってなければならないと感じているそうだ。



そのジャック・セガールは、町の隅の屋敷に閉じこもっている、このいかつい顔の男だ。



この名だたる偉人達の集団を束ねるリーダーなのに、こいつ誰だ?って感じですが、彼は歴史上の人物ではなく、イオロやシャミノ達と同様のゲストキャラで す。
ウルティマ5・6、そして前作Savage Empireにもセガリオンという名前で登場し、おそらく俳優がモデルとなっていると思われます。

さて、このジャック・セガールは、これまでに会った人からの話からも聞いた通り、火星人に乗っ取られたローウェル達を発狂したものと見なして隔絶し、オリ ンパスの町にあったドリームマシンも破壊してしまった人物だ。
何か悪企みをしているといった感じではないが、所々で傲慢な態度が目立つ男であった。
セオドア・ルーズベルトが不信に思うのも無理はない。


彼が破壊したドリームマシンは今でも町の建物の中に安置しており、そこは厳重に警備されている。
このルグランという男が、その警備を担当とうしている者だ。



なぜ泣いているのかと言うと、彼の兄のジャンという男が鉄鉱石を探しにオリンパス山に行ったきり帰ってこないからだそうだ。
ジャンを見つけ出してくれれば、この中に入れてあげてもいいと言う。
ふむ、これが次なるクエストというわけですか。


他にも、女優のサラ・ベルナールも暮らしていたが、彼女からは今の所あまり有益な話は聞けなかった。



何となくだが、この町はフランス系の住民が多いようだ。







とりあえず、オリンパス山に行ったジャンという男を探すため、地下通路を通って町の外に出る。



ついでに、ここにあった機械の中からコントロールパネルをゲット。
これをエジソンの所に持っていけば、ドリームマシンに接続できるように改造してくれるはずだ。


地上に出ると、先発隊の1人が暮らしている家があった。
彼はウィリアム・ハースト。



新聞記者であり、ネリー・ブライのワールド紙とはライバル関係にある、サンフランシスコ・エグザミナー紙の経営者である。
ハーストは地球に持ち帰る特ダネのために、ここで火星人の遺物を収集しているらしく、酸素石を出せばいくつか売ってくれる。
火星のスプーンやら太鼓やらロウソクやら、あまり役に立ちそうもないガラクタばかりであるが、中にはアジュライト鉱石という非常に貴重な宝石がある。
その宝石だけは特別らしく、彼の頼みを聞かないと交換してくれないようだ。
頼みというのは、建造中の大砲の写真を撮影しに行ったベイジンストークという男を探すことであった。
地球に帰って記事を書くために、どうしても写真が必要だと言うが、ベイジンストークはオリンパス山の頂上に行ったきり帰ってこないらしい。
ベイジンストークはいなくてもいいから、せめて写真だけでも探し出してほしいなどと、人としてどうかと思うようなことも言う。

それにしても、何かと行方不明になってくれるものだ。
オリンパス山と言えば、これからジャンを探しに行く鉱山だ。
ついでに彼も見つかるものだろうか。







ハーストの家からしばらく南に歩くと鉱山が見つかる。

 

ここがジャンが鉄鉱石を探しに行った鉱山のようだ。
なんだか火星に来てからというもの、鉱山ばかり行ってる気がする。



中に入ってすぐの所で、かの鋼鉄王アンドリュー・カーネギーが宇宙砲を建造していた。

 

彼によると、あと荷車一杯分の鉄鉱石があれば砲は完成するらしいが、この鉱山の鉄は掘り尽くしてしまって、たったそれだけも出てこないと言う。
デュプレイ少佐達がいる大シルチスの鉱山では鉄が発見されたが、そこからここまで運搬する手段が無いらしく、こっちはこっちで手立てを考えなくてはならな いようだ。
話を聞くに、電力と運河を復旧させれば何とかなりそうな気はする。

とりあえず、この鉱山の探索を続けてみようか。



………………………………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………………………


そんなワケで俺は命知らずの4人の冒険者を連れてオリンパス鉱山の奥深くへと潜っていった。
この19世紀には『できることなら、夜空に浮かぶ星さえも併合したい』なんてことを言った帝国主義者がいたらしいが、ここにいる連中は本当にそれを実現し ちまいそうなほど開拓精神に溢れている。
火星の鉱山で鉄を採掘したり、先住民の遺品を掻き集めたり、勝手に商店をおっ立てたりと、そんな姿を見るにつれ、俺達が助けに来る必要はなかったように思 えてくるほどタフな連中ばかりだ。
地球に連れて帰らずに、ここに残って火星の開発を続けさせた方が、俺達の未来に取って有益なんじゃないかい?

なんて、ちょっと知的な話題で談笑していると、不意に目の前の地面から巨大な虫が飛び出してきた。



そいつは先頭を歩いていた俺に向かって、勢いよく首を伸ばして噛み付いてきた!
俺は俊敏な動作でそいつの牙をかわすと、同時にサーベルで斬り付ける。
それを合図に、後方からネリーのデリンジャー拳銃とシャーマンのライフルが火を吹いた。
こいつらは狭い通路だろうが、お構いなしに俺の背中ごしから銃を撃つものだから、危なっかしくて仕方ない。
まあ、俺もよく散弾銃を味方に命中させてしまうことがあるから、このことに関してはお互い様ってやつだがね。

この虫はキュリーから話に聞いた、ラジウムのエネルギーを吸って成長する虫じゃないのかと、ネリーが銃を撃ちながら言った。
だが、あの時に見た虫は、か弱いマダム・キュリーでも指でつまめる程度のサイズだった。
ここまで大きく育つということは、こいつらは相応の放射線を養分としているってことで、ここにはそれだけのラジウム鉱石が眠ってるってことだ。
俺は虫よりもソッチの方が恐ろしいから、とたんに背筋が凍るような思いをしたものさ。
あの家に行った時、そこに置いてあった石がラジウムだと知らずにうっかり手に取ってしまってからというもの、俺は体の調子がおかしくなっちまった。
幸い、この星で見つけたケバケバしい色の植物を飲んだら回復はしたが、クスリの効果が強すぎたらしく、しばらくの間はフラフラになって歩くこともできなく なっちまったほどだ。
あの一件で、確実に俺の寿命は縮んだね。
ここがニューヨークだったら、今ごろ俺は腕利きの弁護士を呼んで、キュリーに対して訴訟を起こしていたところだ。


ウジャウジャと沸いてくる虫ケラを全部蹴散らすと、その陰に誰かが倒れているのが見えた。



おお、なんてことだ!
彼こそが、俺達の探していたジャンという男だった。
さっきの虫にこっぴどくやられたらしく、息も絶え絶えの状態だ。
俺達は必死に呼びかけたが、彼は身に着けていた奇妙な模様の記章を俺の手に握らせて、間もなく意識を失った。
シャーマンは彼の様子を見て無言で十字を切る。
どうやら、俺達はここに来るのが一歩遅かったようだ…。


仕方なく町に戻ろうとした時、通路の奥で何かがボンヤリと光っているのが見えた。
まだ何かいるのかと思ってよくよく近づいて見てみると、俺は思わず悲鳴を上げそうになった。
キュリー夫人の家で見たようなラジウム鉱石の塊が、そこにゴロゴロしていやがったんだ!
俺は一刻も早くここから出たかったが、スペクターの奴は、後々の冒険のためにもラジウムを持って帰った方がいい、なんてことを陰鬱な表情で言い出した。
もちろん、スペクターは19世紀の連中と違って放射性物質の危険性はよく分かっているから、自分では触れようともしなかったけどな。

俺はそれとなくディブスに持たせようとしたが、このイギリス野郎は、何故かさっきから必死の形相でジャンの遺体を担いでいるから、もう石1つだって持てな いような状態だ。
なんでも、地球に連れ帰って埋葬するんだそうだ。
おいおいディブス、気持ちは分かるが、せっかく眠りについた魂を起こすのは良くないぜ。
それに、きっと地球よりも火星の方が天国に近いさ。
なんたって、ここは俺達の故郷の空よりも遥か上にあるんだぜ!
そう言って俺はディブスを説得して、無理矢理にでもラジウム鉱石を持たせようとしたが、こいつは遺体を降ろそうとしない。
ネリーとシャーマンはディブスの義勇に感動して彼を褒め称えると同時に、荷物に余裕のある俺が石コロの2、3個も持たないことを非難し始めた。
こうなってしまったら、もう何を言っても俺の立場は悪くなる一方だ。
そうさ、嫌な予感はしていたんだ。


結局、ラジウムは俺が持ち歩くことになった。



目に見えない強烈な何かを全身に浴びながら、俺は冷や汗を流して帰路を歩いた。
ディブスは遺体を運びながらも爽やかに微笑んで、これが英国紳士の義務ってやつさ、とクールに言い、ネリーとシャーマンは彼の英雄的行為に声援を送る。
しかし、どっちが真の勇者なのかを知っているのは、こわばった表情をしながら、俺と必要以上に距離を開けて歩くスペクターだけだ…。



………………………………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………………………



…というわけで、オリンパス鉱山の奥深くでラジウム鉱石とジャンの遺品を入手して持ち帰った。
このご時勢ではシャレにならないような内容ですが、本当にラジウムっていうアイテムなんすよ。
放射線でステータス異常になるんですよ。

そしてジャンの形見とは、定規とコンパスのモチーフが彫られた記章…フリーメイソンのシンボルであった。
そう、ジャンとルグランの兄弟はフリーメイソンのメンバーだったのだ。
何故、ここでフリーメイソンが出てくるのであろうか…?
この2つが、後の冒険でどのような役割を果たすのか…?



←プレイ記録04へ   プレイ記録06へ→