Ultima Martian Dreams
04 いつもの3人

ヘラスの町で有益な情報は手に入ったが、肝心の大シルチスに行くことができないのは相変わらずだ。
運河に沿って歩いてみても、どうしても越境できるポイントが見つからない。



そこに行かなくては始まらないというのに困ったものだ。
オリンパスの門番を殺してしまうこともウルティマならばできるであろうが、さすがにそんなことをしたら先々でどんな不都合が起こるか分からない。

仕方がないので、考え方を変えて反対方向の東へ行ってみる。
この火星では、従来のウルティマと同じく東経と西経のそれぞれ0度と180度が繋がっているようだ。
当たり前だが火星は球体になっているのである。
つまり、反対側にひたすら歩けば、そのうち惑星を一周して目的地に辿り着くということだ。
海の無い火星ならではの移動方法というわけさ。
偉大な科学者達は、こんな方法はたとえ思いついても実行しないだろうがね…!


こうして、アバタールは徒歩による火星一周に敢行したのであった。
以前に行ったノクティスの迷宮をさらに東に進むと、ここにも同様に運河がそびえている。
しかし、こちらは運河の南端を迂回して、向こう側に行くことができた。



ちなみに、この南端部分は火星の南極付近らしく、一面に氷が張っていた。
さすがに氷の上は歩けないようで、これ以上南に進むことはできない。
しかし、コートやマフラー程度の防寒具で、よくまあこんな所を歩けるもんだよ。


そこからずっと東に向かって歩いて行くと、どうやら無事惑星を一周したらしく、目標地点の大シルチスの座標が近づいてきた。
そして、いよいよ到着かという少し手前で火星の都市が見つかる。



座標からすると、ここはおそらくエリシウムの町。
火星人に乗っ取られてしまったパーシヴァル・ローウェル達が拠点にしていると言われている都市だ…。







恐る恐る町の中に踏み込んでみると、そこかしこに虚ろな表情の人間がいる。



こちらに襲いかかってくる様子はなかったので、とりあえず話しかけてみると、彼らは全員が流暢な人間の言葉で応答してくれた。
しかし、皆が奇妙な名前を名乗り、聞いたこともないような風習の話をする。
彼らは本当に火星人によって体を乗っ取られているようであった。

といって、体を乗っ取ったからといって地球人に敵対的だというわけではない。
どうにも、彼らは彼らなりに深い事情があるようであった。
ここで聞いた話はいずれも驚くべき内容のものだったので、以下に簡単にまとめておく。



まず、彼ら火星人は地球人とは異なり、植物から進化した種族であった。
土から苗木が育ち、それがサヤとなり、そして、そのサヤを破って産まれ出たものが火星人の本来の姿だと言う。
その最も大きな特徴は、成長過程にある。
彼らの苗木が育つ際に、堆肥として死んだ火星人の残骸や葉・枝などを使用するのだが、そうすることによって、その者の持つ知識や情報を継承できる。
火星人達は、代々そうやって知識を受け継いできたと言うのだ。
生まれた後に学習しなくてはならない地球人よりも遥かに効率的なので、ここまで進化することができたそうだ。

この星では動物と言えば地中に蠢く虫のようなものばかりで、植物に比べると劣等な種族なのだ。
よって、彼らはアバタール達地球人を虫ケラ呼ばわりするのだが、特に悪意があるわけではない。
逆に、動物でここまでの知性を持っていることに驚嘆し、こちらの質問にもほとんど好意的に応対してくれた。

しかし数世紀前、アルギレのラクサチュクという火星人が火星全土に疫病を振り撒いたため、彼らの種族は滅び、新たに生まれ出るための土壌も汚染されてし まった。
ここエリシウムの僅かな者達だけがドリームマシンに逃げ込み、今まで意識だけが生き残った状態だったのだ。
彼らの目的は、再び本来の植物の体を取り戻すことで、そのために一時的に人間の体を乗っ取っていると言う。
自分達の新しい体を作るべく、現在は土を培養したり苗木を育てたり、必要な材料を集めたりしている所なのだが、なかなか成果はかんばしくないようである。

続いて、火星の都市について。
火星の都市は『森(Grove)』という単位で呼ばれ、エリシウム、オリンピア、ヘラス、アルギレの4つの都市が、彼らの言うところの4大森となってい る。
森には『地者(Agrarian)』という指導者がおり、このエリシウムの地者はローウェルの体を乗っ取ったテカペシュという者だ。



他には、新しい苗木を育てるための土壌に混合する堆肥を集める『収集者(Gatherer)』、植物人の健康を管理する『樹木者(Arborist)』、 他の森と外交や交易をする『大使(Ambassador)』といった役割の者がいる。

 

皆それぞれ、植物学者ワシントン・カーヴァー、ワイアット・アープ保安官、宝石商ルイス・ティファニー、作家マーク・トウェイン、映画監督ジョルジュ・メ リエス、ニコライ・レーニン、といった面々が乗っ取られている。

ローウェル達を助け出すためには、まずはドリームマシンで夢の世界に行き、囚われた彼らの意識を解放しなくてはならない。
そして、今現在彼らの肉体を乗っ取っている火星人達を何とかしてやらなくてはならない、ということだ。
うむ、ようやく概要が見えてきたぞ。







エリシウムの町で衝撃的な話を聞いたが、とりあえず今は大シルチスに行かなくてはならない。
そこで署名を貰ってオリンパスの町に入り、電力を復活させるための技師を探さなくては。
何だか驚くようなことばかりだから、当初の目的をすぐに忘れそうになる。


さて、六分儀を頼りに目標地点へと歩いて行くと、トロッコやレール、そして鉱山や小屋といった景色が見えてくる。
そして、鉱山の入口付近には1人の男が立っている。



彼こそが、探していたイェリンという男である。
名前を聞いたときから薄々分かってはいたが、この顔は言うまでもなくブリタニアでのアバタールの友人イオロ。
前作Savage Empire同様、このような形でのゲスト出演である。
今回は人類学者デヴィッド・イェリン博士というそうだ。
ブリタニアでの記憶はなく、アバタールのことも知らないようだが、彼らならば快く署名してくれるだろう。
これでミッションコンプリートだ。

…が、なにやら様子がおかしい。
どうやら、彼の仲間のデュプレイとシャーマンが鉱山の落盤に巻き込まれ、中に閉じ込められてしまったらしい。
早く助けてやってくれ、とのことだ。
当然ながら署名は3人分必要であるので、
まったく、いいタイミングで事故るもんだ…。


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そんなワケで、俺は命知らずの3人の冒険者を連れて、シャーマンとデュプレイが生き埋めにされている大シルチスの鉱山へと向かった。
あいつらとは知った仲ではあるが、まさか火星にブッ飛ばされたあげくに落盤事故に巻き込まれて生き埋めになっているだなんて、まったく人生とはいつ何が起 こる分からないものだ。
スペクターは、こんな奴らを助けたら俺達までツキが落ちてしまうと皮肉を呟くが、イーオドンの谷以来、俺はこの男と一緒にいてもあまり良い目に遭ったこと がないことを付け加えておかなければならない。

とはいえ、俺は奴らの安否については大して心配はしていない。
ネリーとディブスは早く救助に行くよう急かしてくるが、それほど慌てる必要はないだろう。
あいつらはサイクロプスに踏み潰されようが、火薬入りの樽を抱えて暖炉に飛び込もうが、しぶとく生きてるようなタフな奴らだ。
だから、こんな鉱山の落盤程度じゃ何ともないさ、と俺はネリーに解説してやった。
その証拠に、イェリンの奴も救助に行かずに鉱山の外でのんびりと応援を待っていたほどだ。
つまるところ、俺達はそういった信頼関係にあるのさ。
あいつらなら自分で何とかするだろう、とイェリンの奴も心のどこかで思ってたに違いない。


ネリーが俺の話をいぶかしげにノートに記録し終えると、まず俺達は鉱山の入口付近にある小屋に行った。



イェリンによると、ここには岩盤を掘削するための工作用ドリルがあるそうだ。
こいつを持っていけば救助活動もはかどることだろう。
キャスター付きのモーターに接続すれば、押して運べるようになった。


こうして、俺達はドリルを押しながら意気揚々と鉱山に入っていく。



それでまあ、なんと言うか、このドリルは最高だったぜ!
岩盤をも砕く破壊力はサーベルやライフルの比じゃねえ。
俺はアバタールと呼ばれるだけあって、過去には様々な種類の武器を手にしたことがあるが、ここまで頼もしく感じる武器は初めてだったね。
見ての通りの貫通力に加えて、後ろから操作していれば完全に前方をガードできるから、ちょっとした戦車のようだった。



俺達はこいつの無慈悲なまでの回転と振動を存分に楽しんだものさ。
ネリーとディブスがサーベルで敵を追いやって、俺がそいつをドリルで粉砕し、その合間にスペクターが拳銃で合いの手を入れる、といった具合だ。
次から次へと敵が肉塊に変わっていった。
圧倒的な力を手に入れた快感と、金属と火薬のリズミカルな轟音とに酔いしれて、俺達はすっかり我を忘れていたのかもしれない。
ディブスなんかは興奮してドリルの前に飛び出しやがったから、俺はうっかり敵と間違えてスイッチを押してしまったほどだった。
最悪の事態にはならなかったが、とりあえず皆がこれで正気に返ったのは確かだ。
こいつは少し悪のりするケがあるようだが、まあ兵士ってのはこれくらい元気な方がいいのかもな。


鉱山の奥に進んで行くと、天井からの落盤で完全に塞がれていた通路を見つけた。



なるほど、こうも隙間なく塞がれていては、たとえシャーマンとデュプレイがナメクジように柔らかくても、ここから脱出することは難しいだろう。
ツルハシやショベルなんかでほじくっても埒が明かないから、俺は例のドリルをこのクソッたれな岩に試してみることにした。
さすがにこれだけの岩を掘ることは無理なんじゃないか?とスペクターが陰鬱な声で呟くが、そんなことはやってみなくちゃ分からない。
俺はただ黙って笑顔を浮かべながら、やや大袈裟にそいつのスイッチを入れてやった。
すると、見る見るうちにドリルは岩を穿って道を切り開いていく。
まったく、惚れ惚れするような鋼の'相棒'だ。
我が家の庭にも1台欲しいくらいだね。


岩を粉砕して通路をすっかりキレイにしてしまうと、岩の向こうから見知った顔の男が出てきた。

 

よう、喉が渇いた頃だと思って、お気に入りの小さくて丸いのを持って来てやったぜ。
俺が酸素石を取り出して投げつけると、デュプレイとシャーマンはそいつをキャッチして、にっこりと笑って親指を立てる。
まあ、俺達は始終こんな調子だ。


ひとしきり再開を喜んだ後、俺はシャーマンとデュプレイに署名を貰った。
あとは外にいるイェリンにも同じように署名を貰えば、今回の任務もおしまいだ。
しかし、こんな便利なドリルがあれば1人でも問題なく岩を掘り進めることができたはずだが、何故イェリンはそれをしなかったのか。
俺達の救助活動にも加わらず、鉱山の外で待っていたのは何故なのか。
昔のあいつならば来るなと言っても、古くさいクロスボウを片手について来たところだろう。
あいつは人類学者だなんて大層な肩書きが付いて変わってしまったのか、それとも火星の過酷な環境があいつを変えてしまったのか。
そんなことを思い巡らせながら、無邪気に喜ぶデュプレイ達を横目に俺達は帰路についた。


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さて、長くなりましたが、こうしてイェリン博士、デュプレイ少佐、シャーマンの3人からの署名を入手。




そして、この中の1人、シャミノことリチャード・シャーマンがパーティーに加わる。



ファーストネームからしても明らかだが、今作では一層リチャード・ギャリオット氏を思わせる風貌になっている。
まあ、彼の分身ですからね。

イオロことイェリンは、上でも書いたように仲間には加わらない。
デュプレイ少佐はアメリカ陸軍第7連隊・第3騎兵隊に所属していた軍人という肩書きだが、こちらも同様に仲間には加わらない。
この2人は完全にゲスト出演のようで、ここに残って採掘を続けることになる。

ちなみに、彼ら3人がなぜこの鉱山にいたかというと、新しい宇宙砲を建造するために、鋼鉄王カーネギーに派遣されて鉄鉱石を集めていたのだ。
ドリルで鉱脈のあるポイントを掘ると本当に鉄鉱石が出てくるため、いずれまたここに鉄を集めに来ることになるのかもしれない。


ともかく、これでようやく署名が手に入ってオリンパスの町に入れるようになった。
再び火星を大回りして、星の裏側にあるオリンパスへと向かう…。



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