Ultima7 Serpent Isle プレイ記録08 奇妙な客



「女将さん、ここの料理は旨いな!」

デブラ
「ムーンシェイドじゃ、こんな料理は見つからないし、見つかったとしても高価よ。ポーションなら沢山見つかるかもね。 私はアンガスと結婚する前、ドナルに雇われていた時から、ここで料理をしているわ。言わせてもらうと、腕前は結構お褒めいただいてるのよ」


「ドナル?ああ、この宿屋の先代の亭主か」

デブラ
「ドナルはアンガスの父親で、海賊シルバーペイトの息子よ。ドナルは私がまだ少女だった頃に、料理人として雇ったの。その時、アンガスの目を奪ったのね。ドナルは、彼の無能な父親みたいに突然いなくなってしまうような素振りは見せなかったわ。だから、私はアンガスに求婚したのよ…。冒険の血は、あの老いぼれ海賊と一緒に消えてしまったんだと思うわ」


「海賊シルバーペイトか…。アーガスも話していたな。財宝を隠したらしいけど、全然見つからないんだってな」

デブラ
「まったく無意味よね!私達は2世代もの間、親戚やご近所で、怪しい所をそこら中を探し回ったのよ。最初は期待したけどね…。でも、これだけ探し回っても何も見つからなかったとしたら…。あんたも、時間は無駄にするんじゃないよ」


「そうか…。早く旦那さん、アンガスが見つかるといいな」

デブラ
「私達には2人の子供が産まれたから、あの人は自分が年老いた時にどっちかを後継ぎにしようと思ってたみたい。でも彼は失踪したわ。あのシルバーペイトのように…」


「失踪したのはバトリン達の仕業だ。海賊の血筋のせいじゃないさ」


「ところで、もう1つの町ムーンシェイドは、どこにあるんだ?ファウンの町は、ここから西に行けばすぐ着くみたいだが」

アーガス
「俺は行ったことは無い。魔術師はそんなに好きではないし、彼らの反目もあるからな。だが、あんたが魔法の呪文や道具が欲しいのだったら、行った方が良いだろう。魔術師の町へ行きたいのなら、ボートが必要だ」


「歩いては行けないのか」

アーガス
「魔法の嵐が、この岸にあるボートを1つを除いて全て破壊してしまった。残ったのはキャプテン・ホークのボートだけだ。彼を雇おうなんて考えは無意味だぜ。ホークはここで騒ぎを起こし、少しばかり物を壊したんだ。槍兵の司令官に打ってかかって、引き連れて行かれたよ」


「なに?それじゃあ、今はムーンシェイドに行くための船が使えないということか」

アーガス
「そうさ、避難所から遠く離れた場所に迷い込もうなんて奴は、この頃では少しだけだ。ホークでさえも、嵐のせいでここに止まり、動くのを拒んでいた…。乗客は、彼の決断には少なからずホッとしたがね。そして、俺達のお手伝いも、この辺の建物よりは安全だろうってことで、全員が町へ逃げ出してしまったんだ」


「そうか…。槍兵ってのは、モニトーの騎士のことだろう。誰かが呼んだのか?」

アーガス
「俺が呼んだのではない。俺は子供の頃からホークのことを知っていたし、俺自身も槍兵だから、どうしたもんか少しばかり困ったよ。確かに、彼は乱闘をして物を壊したけれど…。だが、彼はいつも目覚めたら壊した物を弁償してくれたよ。誰かが引き連れてきたに違いない」


「いったい誰の仕業なんだ?」

アーガス
「この剣を賭けてもいいが、きっと商人のフリンドだ。ホークは嵐が止むまでムーンシェイドへ航海するのを拒んでいたから、彼はひどく苛立っていたんだ」


「なるほど。しかし、この嵐で船を出せというのも無理な話だしな…」

アーガス
「ホークが再び動くまで、ここに留まっている乗客が2人いる…あいつが槍兵に保証金を払えばの話だが。1人はオウムを連れた奴で、確かケインという名前だったと思う。もう1人はフリンドという横柄な商人だ。客は他に4人しかいないから、喜んでここに留めているよ」


「他には、どんな客がいるんだ?」

アーガス
「そう…ここには、ムーンシェイドから追放されたエンソルシオという魔術師がいる。他にはセリナという女もいる。彼女は、まだそんなに長居はしていないが、この嵐をとても恐れているんだ」

デブラ
「アハハ、おまえよりは恐れていないさ!あの女はおまえに着いてきたんじゃないの。嵐のせいじゃないよ!」

アーガス
「お袋!」

アーガス
「ビリンがいてくれるのは、ありがたいことだ。嵐の間の退屈な時間を過ごすには、吟遊詩人がいてくれると助かる。そして、新しい客のミギンだ。彼については、俺もよく知らない。ほんの数日前にやってきて、部屋からほとんど出ないんだ」


「へえ、嵐のせいで皆がこのスリーピング・ブルに足止め状態ってことか。大きい宿屋でよかったな。しかし、スリーピング・ブルというのも変わった名前だよな」

アーガス
「確かに、珍しい名前だ。かつて、ここにあった村と関係しているようだ。うちの家族に伝わる話だと、かつてこの国は、全ての人々を憎む魔術師が支配していたそうだ。その魔術師は巨大な石の雄牛を造り、国に入る者を殺していたと言われている。そして、その雄牛が倒されて、村にその名前が与えられた。それが今、この宿屋の名前となっているんだ」


「ふーん、そんな由来があったのか」

アーガス
「ある日、この地方の貴族の息子が雄牛を倒すと名乗り出たいう話を、その魔術師が聞いた。いつでも来い、しかし失敗したら死が賜れるだろう、と魔術師は少年に言った。もし勝ったら何を授けてくれるのかと少年が聞いたら、魔術師は自分の国を賭けたんだ」


「ほう、よく聞くような冒険譚だな」

アーガス
「ある夜、少年が雄牛の鼻に付けられた輪を盗むと、雄牛はただの石に戻った。そして、その村は市場の中心の位置に石の雄牛が立っていたこともあり、その名前が付けられたんだ。その雄牛に何が起こったのかは、俺は分からない。子供の頃にそこら中を探し回ったが、それらしい物は見つからなかったよ」


「魔術師が造った石の雄牛か…。ここにそんな由来があったとはな」


「寝る前に、もう少し他の客とも話してみよう」





「あのー、少しお話を…」

エンソルシオ
「また別の暴君か!槍兵よ、すぐに立ち去るんだな。私はおまえのような奴らに用は無い。おまえは、俺が苦しめられている不正に対しては、何もできんだろう。だから、このアデプト・エンソルシオの怒りを買う前に立ち去れ!」


「アデプト(熟練者)・エンソルシオ…?こいつが、女将さんの言っていた魔術師か。ムーンシェイドから追放されたと聞いたが、たしかに面倒くさそうな飲んだくれだな…。いきなり人を暴君呼ばわりするとは…」

エンソルシオ
「そう、暴君だ!アーガスにも言ってやらなくちゃならん!おまえら槍兵は顔に勇気の印を入れている。皆に見えるようにして、足元に跪かせるつもりだろう! おまえは王のような賛美を求めているのだろうが、おまえにお似合いなのは軽蔑だ!」


「この顔の刺青を見たのか。俺はまだ騎士になったばかりで…」

エンソルシオ
「寄贈と言った方がいいかな!島中で、道路を安全に使うためだけに貧しい者からも法外な税金を課すことの、どこに名誉があるかね?実によく弱者や貧者を守っているな!


「こいつ、モニトーの騎士を相当に嫌っているようだな…」

デュプレ
「おまえが話しているのは普通の槍兵ではない!アバタールだぞ!」

シャミノ
「この印だけを見て判断するな!」

イオロ
「あんな風に言わせておくんじゃないぜ、アバタール!」


「しかし、この男にアバタールとか言っても分からんだろう…」

エンソルシオ
「おまえは背伸びしたがっているようだな。私は何か悪いことを言ったか?それで、どうするんだ槍兵よ?おまえの同僚がホークにやったように、私を牢獄にぶち込むか?」


「ホーク?さっき聞いた船長のことか。あれは俺達とは関係ないぞ。アーガスも何とかしたかったと言っているし…」

エンソルシオ
「あいつはデブラの息子というだけの奴だ。単なる犬だな!デブラがウィルフレッドじゃなく、あいつを家に呼び戻してくれたことに礼を言わなくてはならんな。だが、あの2人は同じ布の切れ端だ。全てが似ているんだ…。くそっ、あの思い上がった自惚れ屋め!」


「世話になっている宿屋の亭主にすら悪態を…」

エンソルシオ
「ウィルフレッドはデブラの下の犬コロだ。私が言った以上の例えは見つからないだろうよ。態度は良い奴なんだがね…。ウィルフレッドは、兄貴よりも自分の方が優れていることを証明するために世に飛び立ったのさ。実に優れたゴロツキで、優れた悪党で、優れた殺人者だよ」


「まあ、少し落ち着け。いったい何があったんだよ、あんた…」

エンソルシオ
「まだ話は半分だ!このアデプトたる私が、人生の全てであった魔法の地から追放され、この悲惨なあばら家にいるのだぞ!評議会は長らく私を彼らの身代わりにしようとしていた。そして、後ろ盾をフィルベルシオに変えたのだ。やつらのやり口だ」


「権力闘争に敗れて追放されたということか…」

エンソルシオ
「ムーンシェイド!奇跡の都市!そしてペテン師の都市! 革新的なことをしようなどと思うなかれ!そこはフィルベルシオと、彼の息のかかった魔術師評議会に率いられた無能の馬鹿によって危機に晒されている!」


「そのフィルベルシオってのが、今のムーンシェイドの実権を握っているのか?」

エンソルシオ
「フィルベルシオは、自らムーンシェイドのメイジロードを名乗る、ずうずうしい蛆虫だ!蝋燭に火を灯す魔法も使えるか疑わしい!だが、奴は評議会の後ろ盾があり、奴を支援する自由の山の脅威もある!フィルベルシオは、ムーンシェイドの美しさを守ろうとする者を常に尾行しているんだ!奴の取るに足らない魔法の知識は、寝室で女性を口説く程度のものさ」


「自由の山?」

エンソルシオ
「そう、自由!なんという茶番だ!自由の山は監獄さ!魔法の罠が一杯に仕掛けられた監獄からは、何者も抜け出せない。そして、フィルベルシオを怒らせた者や対立した者は、皆そこへ送られるのだ。私がそこで死ななかったのは、ちょっとした謎だな…」


「なるほど、名前とは裏腹に恐ろしそうな場所だな…。評議会というのは?」

エンソルシオ
「魔術師評議会には、メイジロードが力を乱用するのを防ぐ目的で、多くのアデプトがいる。しかし、この場合ではメイジロードが行うべき決定を彼らが行っているということだ。だが、私を除いた彼らは、フィルベルシオがあの娯楽を続けるのを甘んじている。運がよければ、奴は自分の愛人の誰かに殺されてくれるだろうがね」


「聞いた限りでは、そのフィルベルシオという男はロクでもなさそうな奴だな…(こいつもロクでもないが)」

エンソルシオ
「フィルベルシオは町中のベッドというベッドを飛び回っている。あらゆる強硬手段を使ってな。この哀れなエンソルシオは、魔法を使ってアデプトの娘の心を掴もうとしていたものだ。だが突然、私は物言えぬ身となったのだ!この屈辱は、おまえには分からんだろう。故郷から追い出され、戻って来るようにも言われず、苦しんで死んでいくのだぞ!自分の不正行為を皆に吹聴されるという、この燃えるような恥辱が分かるか。どこに行っても、『エンソルシオはムーンシェイドから追放された魔術師なんだって?』と言われるんだぞ!」


「それはけしからんな!…で、その強硬手段というのを参考に聞かせてもらいたいのだが…」

エンソルシオ
「私が聞いたのは恐喝だ。他にフィルベルシオが、どうやって性欲を満たすことができよう?だが、詳細は知らん。そんな話を聞いたら私は酷い発作を起こしてしまうから、聞く気にもならなかったよ…。どこか別の所で聞いてくれ…」


「そうか…。しかし、あんたも魔法を使って女の心を掴もうとしていたと言っていたが…」

エンソルシオ
「ああ!その名を出さないでくれ!このエンソルシオをぬかるみに引きずらないでくれ 私は彼女に振り向いてもらおうと、彼女に魔法をかけていた。彼女の名を貶めるつもりはない、全ては私が行ったことだ!」


「どちらも、あまり変わらないような気もするな…。ところで、あんたは魔術師なら、この魔法の嵐について何か知っているか?」

エンソルシオ
「私に聞くよりも見た方が早い…。なかなか見事なものだぞ。まあ、全体的にでたらめすぎる嫌いはあるがな。もちろん、どの魔術師がそれらを操っているのかは、私には分からん。あの裏切者バトリンが何かしら関係しているのかもしれん…。奴がここから去ってから、あの嵐が起こったのだ」


「バトリン!そうか、あんたはこの宿にバトリンが来た時に、少し話をしたらしいな」

エンソルシオ
「おまえも、彼のことを知っているようだな。バトリンは少し前にここに来た。彼の従える悪魔と共にな。彼は私の話に興味を持っている感じだったから、幾夜もの間、神秘の知識を交換し合った。そして、彼は何らかの用件でここから去った。再び戻ってきた時には、別の2人の殺し屋を連れていて、落ち着かない様子だったな。だが、我々は何事も無かったかのように議論を続けたのだ。私は、彼は友人だと思っているよ」


「悪魔?そんなのを連れ歩いていたのか…」

エンソルシオ
「非常に巨大で…醜い奴だった!バトリンは彼をパロスと呼んでいたな。そいつは主人の命令に従順で、ローブとフードを身に纏っていた。非常に印象深かった。あのロトランシアが抱えていた問題を思い起こさずにはいられなかったよ」


「ロトランシア?ムーンシェイドの仲間か?」

エンソルシオ
「ロトランシアがフィルベルシオの遊び友達になってから、彼女は自分の時間を使い何かに没頭していたようだ。そして、私が聞いたところでは、それは悪魔だったそうだ…。おそらく、彼女は復讐の計画をしていたのだろう。フィルベルシオの奴が悪魔の腹の中に入ることを、私はいつも想像しているよ。だから、彼女はあの太った魔術師のペットの悪魔に、大変興味を持つだろう。彼女の元に送ってやりたかったな…」


「最初に悪魔を連れて来て、次は殺し屋を連れて来たと言っていたな。そいつらは、どんな奴だった?」

エンソルシオ
「あの2人を見た時、バトリンは何らかの怪しい事に関わっているんじゃないかと思った。きっと、私の師匠が残した骨を盗むために、連れてきたのだろうと思う。あの愚か者のブラントと、片目の海賊デッドアイの間にいて、私はよく生き残ったものだ…」


「ブラントとデッドアイ…モニトーで聞いた話と同じだ。骨を盗むとは、どういうことだ?」

エンソルシオ
「それは、私の師匠がそのまた師匠の狂魔術師から譲り受けた巨大なサーペントの顎の骨だ。魔法の品のようだったが、何に用いるための物かは私には分からなかった。いずれ秘密を解明したいと思っていたが、ただの形見だったな。私が思うに、バトリンはその秘密を見つけ、そしてあの忌々しい嵐を呼び起こしたのだろう」


「なんだと!それじゃあ、こいつの持っていたアイテムのせいで、あの嵐が…!」


「それを持っていた狂魔術師というのは、何者なんだ?」

エンソルシオ
「彼の本当の名はエルスタンだ。多くのムーンシェイドのアデプト達を教えていた。こうして熟練者や入門者を教えることで、最終的には皆、彼の技を凌駕していったのだ。だが、老魔術師は、徒弟達が次第に自分に従順でなくなり、狂気に走っていくのに耐えられなくなった…。そして、彼は徒弟達を、自分の秘技を盗みムーンシェイドの島から出てゆく盗人だと思うようになった。今では、ムーンシェイドの何にも携わろうとせず、自分の島で生命を造る方法を探している」


「エルスタン…。モニトーの近くの洞窟で見つけた古代サーペント文明に関する文書の著者だ…。まだ生きているのか…」


「それで、その骨を盗まれてから、どうしたんだ?」

エンソルシオ
「実に悲劇的なことだ。あの朝、私は彼女のところへ泥棒のことを報告しに行ったが、彼女は慌てふためいていて、私の苦情に耳を傾けなかった。まったく、あれでもプロかね。私は金を払っている客だというのに」


「そういえば、デブラもそんな話をしていたな。メチャクチャになった倉庫の整理をしているのに、酒を飲んでばかりで手伝いもしないエンソルシオが喚いてたから無視したって…」

エンソルシオ
「どうやら、アンガスにはシルバーペイトの血が少しばかり残っていたのだろうな。彼は失踪してしまったんだ。このことから考えると、彼が私の顎骨を盗んだのかもしれん…。なぜ、そんな物に興味があったのかは分からんがな」


「ええ?いや、盗んだのはバトリン達だろう…?あんたもさっき言ってたじゃないか」

エンソルシオ
「アンガスは、デブラの夫…だった。見たところは良い奴だ。夜には酒を1杯か2杯飲んで、一生懸命に働いていた。だが、彼女が口うるさかったから、彼は一生懸命働かざるを得なかったんだろうな!あんな風に失踪してしまうような奴だとは、考えたこともなかったが、男は皆、彼のように息抜きが必要なのだと思うよ…」


「いや、だからバトリンが…。シルバーペイトは関係ないと思うが…」

エンソルシオ
「シルバーペイトは、アンガスの曽祖父だ。血に飢えた海賊だったと言われている。有名な話だと、彼は改心した後、不正に得た金を使ってこの宿屋を建てたと言われている。だが、ムーンシェイドのアデプト達の話とは異なる」


「アーガスやデブラは、財宝をどこかに隠して突然失踪したと言っていたが、違うのか?」

エンソルシオ
「シルバーペイトはエルスタンを雇い、この宿屋で何かをしようとしていたみたいだ。おそらく、あの名高い財宝を隠すためだろう。いずれにせよ、あの海賊はエルスタンへの代金を踏み倒すために、彼を欺こうとしていたようだ。だが、エルスタンはそれに気付き、その裏切者の宿屋を悪魔の穴に閉じ込めた。それから、誰もシルバーペイトを見た者はおらず、人々は魔術師に近づくのを恐れるようになったと言われている」


「エルスタンって、さっき話に出てきた、あんたの師匠の先生か。師匠の方はどんな人だったんだ?」

エンソルシオ
「とても偉大な男だった。彼の名はヴァスクリオ。不幸なことに、ヴァスクリオは慣習にとらわれないような男だったから、魔術師評議会は彼を脅威とみなし、要望を拒んだ時には殺そうと試みていた。だが、彼は心臓石を研究したことで、残忍な運命を回避する呪文を手に入れたのだ。今では、彼は知識の鎖を引いて何処かに去ってしまった」


「うーむ、この男に社会性が無いのも、この師匠達の影響が強いような気がする…。心臓石というのは何だ?」

エンソルシオ
「おお、なんという不可思議!それは自由の山の奥深くにある、実に希少な物だ…。評議会はその力を恐れ、心臓石の所有を禁止していた。だが、ほんの小さなものが巧妙に隠されていたのだ。それだけで、どれほどの呪文が使えると思う?


「なんだよ、勿体ぶらず教えてくれよ」

エンソルシオ
「これは非常に価値のある情報だぞ。いくら払うかね?」


「なに、金を取るのか!じゃあ、ほら5ゴールドでどうだ?」

エンソルシオ
「この情報を告げるのは私も危険なのだよ。私の健康と引き換えにするには、少なすぎる額だな…」


「強欲な奴だな…。金もあまり無いから、それならいいよ。必要になった時に聞くことにしよう。じゃあ、またな」


「バトリンは、モニトーでも彫刻家からサーペントの遺物を盗んでいたな…。いったい何が目的なんだ…?」


「それにしても、この宿屋の中には鳥が飛び回っていて騒がしいな」




「おい、こいつは、あんたのペットか?」

ケイン
「何か面倒なことかい?俺は何もしていないぜ!俺はケイン、羊飼いさ…。ムーンシェイドへの航路が戻るのを待っているんだ」


「足止めを喰らっている客の1人か」

ケイン
「デブラから聞いたが、キャプテン・ホークがムーンシェイドへの船便を出していたそうだ。だが、彼は波止場に来てから、この嵐が止むまでは二度と船を出さないと決めたらしい。彼を責めるつもりは無いが、ムーンシェイドの魔術師と話す方法が何か無いものかな」


「ああ、しかし今はそのホークも牢獄の中らしいな…」

ケイン
「キャプテン・ホークがアラベラを操舵する。そいつが波止場にある船だ。彼は喧嘩騒ぎを起こして、槍兵に連れて行かれるまで、ここにいた。あんたはここにはいなかっただろう?俺は喧嘩なんてしていない。キャプテン・ホークとフリンドの旦那が言い争いを始めた時は、テーブルの下に隠れていたんだ」


「大体の顛末は聞いたが、 喧嘩をして逮捕されたんだって?」

ケイン
「フリンドの旦那が数人の槍兵と共に来て、キャプテン・ホークに何かを言ったのを聞いた。そうしたら、2人が叫び始めて、誰かが喧嘩を始めた。誰が始めたのかは見ていない。ずっとテーブルの下にいたからな。 誰かがキャプテン・ホークを激しく殴りつけて、槍兵達が彼を引きずり出したんだ。アーガスの旦那は、彼を離すように叫んでいた。だが、あんたには悪いが、槍兵の奴らは宿の仕事に戻るようにと言っただけだった。アーガスの旦那はひどく怒って、奴らを追っていこうとしたが、デブラに止められた。彼は何か言っていたが、俺には聞こえなかったな…」


「アーガスやエンソルシオから聞いた話と同じだな。フリンドという男にけしかけられて、逮捕されてしまったのか」

ケイン
「フリンドの旦那は何かの商売をしているんだ。いけ好かない奴さ。彼はキャプテン・ホークにムーンシェイドに船を出させようと説得してばかりだ。彼は、キャプテン・ホークはもっと金が欲しいだけだと言っているが、キャプテン・ホークは金を積まれても拒否している。俺が思うに、キャプテンは俺達を危険に晒したくないんだろうな。キャプテン・ホークは槍兵に連れて行かれてしまったから、フリンドの旦那はとても不満だよ」


「アーガスがもう少し上手く槍兵を説得すれば、ホークは逮捕されずにすんだかもしれないのにな。一応は元モニトーの司令官だったんだし」

ケイン
「彼は大きくて強いと思わないかい?俺の兄貴だって持ち上げられると思うぜ。エドリンも、大きな雌羊を2頭持ち上げられるがね!アーガスの旦那は…槍兵だったんだ。顔にその印がある。だが、なぜ奴らが彼をあんな風に扱ったのかは分からない。おそらく、彼の母親の前で、あんな口を利かれたのに腹を立てたんだろうな」


「彼も母親のデブラには頭が上がらない様子だからな。まあ、旦那が失踪したというのに気丈なもんだよ」

ケイン
「ああ、彼女は素敵な女性さ!俺がここに来た時に、金を数えるのを手伝ってくれた。その一部を小さな袋にそれを入れて、これをキャプテン・ホークに渡せば船便を出してくれると教えてくれたんだ。残りの金を数えたところ、キャプテンが安全に船を出せると決定するまで、ここに居ることはできないと言われた。だが、薪割りを手伝ってくれたら、ここに留まっていてもいいと言ってくれたんだ。とても親切だろう」


「この嵐で宿の使用人が逃げ出してしまったとか言っていたから、ちょうど良かったんだろうな。しかし、この嵐は災難だったな」

ケイン
「まったく、血をも凍りつかせるぜ!あの時、エドリンは俺から5歩以内の所にいたんだが、姿を消してしまった。あの雷が落ちた後、ほんの1分か2分くらい目がくらんで耳鳴りがしたんだ。すぐに彼を探しに行ったが、髪の毛すら見つからなかった」


「エドリン?」

ケイン
「エドリンは俺の兄貴だ。あの奇妙な嵐が空に轟いた夜、俺達は羊を囲いに入れていた。俺は探しに探したんだが、兄貴は見つからない。見つかったのは、このオウムだけだ。こいつを拾って、ムーンシェイドへの旅のお供に連れてきたんだ」


「なるほど、それでオウムなんて連れていたのか」

ケイン
「俺は1日強、エドリンを探していた。そして、このオウムが木の下で惨めに座っているのを見つけたんだ。それから、俺はエールが他の奴よりも賢いことに気付いた。エールというのは、こいつの名前さ。エールが大好きなんだ。エドリンも、俺がエールを飼うのを許してほしいよ。エドリンは水晶を持っているけど、俺は何も持っていないからな」


「水晶?」

ケイン
「俺が年端もいかない頃、親父がエドリンを連れてムーンシェイドに行ったんだ。確か、俺は泣きわめいていたんだが、幼すぎるから行けないと、お袋には言われたっけ。次は連れて行ってくれると約束してくれたよ。だが、親父が死んで次は無くなった。それから、エドリンと俺は羊飼いの仕事で忙しくなったんだ。だけど、俺が時々夜に怖がっていると、エドリンが俺の手に水晶を握らせてくれたんだ。俺が寝付くまでね。それから、俺は何の夢も見なくなったんだ。今のように、俺が1人でムーンシェイドへ旅するだなんて、思いもよらなかったよ」


「ふーん、何かしらの魔法のアイテムのようだな…。ともあれ、消えた兄を探すためにムーンシェイドへ旅しているというわけか」

ケイン
「ああ、俺の推測では、あの嵐が自然のものでないなら、それは魔法で作られてものに違いない。そして、誰もが知っているが、魔法について何か知りたいなら、ムーンシェイドへ行くべきだ。あの嵐が魔法によるもので、エドリンを連れ去ったのであれば、魔術師達の誰かが彼を探す方法を教えてくれるだろう。俺がすべき事は、そこへ行って尋ねることだ…。デブラは、エンソルシオの旦那なら手助けになってくれるかもしれないと教えてくれた。彼は魔術師だと言うんだ。だけど、少し不思議に思うんだ…。なぜなら、全ての魔術師はムーンシェイドに住んでいると、誰もが知っているからな。だけど、それでも尋ねないと…」


「エンソルシオか…。あまり当てにして良いような奴では無さそうだが…」

ケイン
「俺は人と話すのが苦手なんだ。特に、エンソルシオの旦那は、俺が見た中でも最悪の癇癪持ちだ!あんたは魔術師なのか、そして俺を手伝ってくれないかと聞いただけなんだけど、俺のことをカエルにするって脅してくるんだ!彼は俺に、あっちへ行ってろと言うだけさ。俺も、彼をこれ以上煩わせるつもりは無い。悪い子にしてたら魔術師が来てさらわれるぞって、よく親父が言っていたんだが、今になってその理由が分かったよ。ともかく、エンソルシオの旦那には礼儀を教えてくれる父親がいなかったんだな」


「まあ、そうなるだろうな…。素直にムーンシェイドへ言った方がいいと思うぞ」


「では、そろそろ夜も更けてきたことだし、今夜はここで泊まって、明日ファウンへ旅立つか…」





スリーピング・ブルは、宿屋の周辺に家が少しばかり建っている小さな集落であった。
おそらく今は嵐の影響で皆が宿屋の中に避難している様子で、外には住民は見当たらない。
宿の近くには波止場もあり、そこに小さな船が1隻だけ停泊していた。
おそらく、これがキャプテン・ホークのアラベラ号であろうか。












「さて…まだ宿には話していない人もいたが、とりあえずはファウンへ急ごう」


「この主要街道を北西へ進むとファウンに着くそうだが…毒で体力を消耗しないうちに辿り着きたいところだ」


「おや、街道に誰かがいるぞ。旅人かな?」




「こ、こいつはゴブリンだ!戦わなくては!」

街道に突然現れたのはゴブリンの一群であった。
遠距離から投槍で攻撃してくるため、なかなか手強い相手だったが、イオロのクロスボウや、モニトーの騎士の試験で手に入れたツーハンドソードのおかげで、何とか勝利することができた。


「ふう、危ないところだった…。このゴブリン達、スワンプブーツや食糧を持っているから剥ぎ取って持っていこう。何の肉なのか非常に気になるところだが…。生きるか死ぬかの冒険の中では気にしてはならない」




「よくよく見ると、これは塔のようだな。モニトーの警備隊がゴブリンに襲われて全滅し、ファウンの塔を占領されたと聞いたが、この塔のことか…」




「ということは、このまま道沿いに進めば、間もなくファウンに到着するな。かなりダメージを受けてしまったから、塔に突入するのはまた別の時にしておこう…」


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