ウルティマ4について

自分はかなりの面倒くさがりで、ゲームでメモを取るとか、地図を作るとかいったことが昔からできなかった。
大抵は得た情報をそのまま暗記してゲームを続け、詰まってしまったら手当たり次第あたりを探る、といった感じでプレイしていた。
パスワードなども、15文字くらいなら暗記していた。
小学生くらいで覚えた事というのは、大人になっても大抵覚えているもので、今でも我が頭には5個くらいのRPGのパスワードが記憶されている。
貴重な脳の記憶容量をファミコンのパスワードなんかに使うなんて、無駄にも程がある。
ゲームに限らず、学校の授業や講義、会社の会議などでノートやメモを取ったことは、今までに10回もないと思う。
ものぐさな上に整理整頓ができないタイプの人間なので、ノートやメモの類はすぐに無くしてしまうからだ。


そんな自分が、「自主的に」メモを取ったのが、このウルティマ4であった。
確かに、このゲームは説明書にも書いてあるが、相当な記憶力がない限り、メモを取らないとクリアは不可能に近い。
が、クリア不可能とかを別にしても、このゲームに関してはメモを取ることが全然苦痛ではなかった。
むしろ、重要な情報だけでなく、どうでもいいような会話の内容までもメモし、気付いたら町の人の全セリフを記録していたくらいだ。
それくらい、このゲームは魅力に溢れていた。


1985年に発売したウルティマ4は、数あるRPGの中でも極めて特殊な内容を持っている。
ゲームの目的は、悪を倒して世界を救うというものではなく、徳を極めた存在「アバタール」になり、世界中の人々の精神的規範となる、という一風変わったものである。
この「徳」というものは、単純にゲームを進めていくだけでは決して身に付けることができない。
敵ボスと戦ったり、異国の町に行ったり、洞窟の奥に宝として眠っていたり、といった類の、いわゆるイベントをこなして身に付いていくという類のものではないのだ。

徳を極めるには、世界中を旅して自力で学び実践する必要がある。
さすがに大昔のゲームであるため、その行動内容が分かってしまうと作業的になってしまう部分もあるが、聖人になることをゲームの目標にし、その過程を含めて非常に説得力のある形で表現しているのは、他では思い浮かばないような斬新さだ。


今作で人々との会話のシステムが一新され、「なまえ」「しごと」といった単語を入力することによって、人々はそれに応じた答えを返してくれるようになっている。
この会話システムが徹底して作り込まれており、従来のゲームなら町の名前を教えてくれるだけのような人でさえも名前や仕事があり、もしかしたら重要な情報を持っているかもしれないのだ。
当然、然るべき質問をしないと答えてくれないため、誰にどんな質問をすればよいのかが非常に入り組んでおり、圧倒的な数の人々と話すだけでも途方もない時間がかかる。

しかし、その一つ一つが世界を構築する要素となっており、ブリタニアに暮らす人々の習慣や思想などが、自然と分かってくるようになる。
この作り込まれたブリタニアの世界を冒険するのが非常に心地の良いものであり、思わず全てを知りたくなってメモを取ってしまったわけだ。

ウルティマが今作以降も、ほぼ同じマップのブリタニアを舞台としているのは、ウルティマ4で築いた世界観が確固たるものであったからであろう。
マップの他にも、登場人物やイベントなどの多くがつながっているため、後に続くウルティマをプレイする上で、今作での経験はかけがえのないものになった。
今となっては操作性に難があったり、面倒くさい部分があったりするが、是非ともPC版のウルティマ4に挑戦していただきたいと思う。


現在ではウルティマコレクションに含まれる、PC98版のウルティマ4が、とりあえずのお勧めです。
実機のROMがないと音声が出ないのが難点ですが、PC98版はグラフィックが綺麗なのでプレイしやすいかと思います。




写真は、DOS版のウルティマ4(英語版のみで日本語版は存在しない)非公式のグラフィック改造パッチをあてたため、グラフィックは大幅に改良されている。
こういった改造が容易な点と、DOSBoxやXu4などの優れたエミュレーターも多いので、日本語でなくてもよいのであれば、こちらが一番のお勧めです。