
  しかめ面の太った男だ。危ない目をしている。
  まるまると太った男が、魔物にとりつかれたような目つきでキミを睨み、唸っている。
  「なに、またアンタなの」
  名前
  彼はキミの目の前で手をヒラヒラさせたかと思うと、いきなり2本の指でキミの両目を突いた。「ツマッシュ。忘れちゃいや!」
  ツマッシュ
  「よく憶えたわね!」
  仕事
  彼は、ボロの服をまくって2本の棍棒のような武器を取り出した。「ツマッシュ、太鼓と太鼓のバチ、作るの」デモンストレーションのつもりか、彼はキミの頭にバチを振り下ろした。すると、ポコンといい音がした。
  「太鼓、作って欲しい?」
  →はい
  「小さな太鼓?それとも、大きな太鼓?」
  →いいえ
「ツマッシュは、忙しいのよっ!」彼は太鼓のバチでキミの頭を叩いた。
  小さな
  彼は自分のオデコに10回ほど突っ張りチョップをかまし、足で地面を掻きむしった。「もう一度聞くわよ。小さな太鼓?それとも、大きな太鼓?」
  大きな
  彼は2本の太鼓のバチをキミのオデコに叩きつけ、ポンポコリンとメロディーを奏でた。「大きな太鼓? それとも、すごーく大きな太鼓?」
  大きな
  突然、彼は狂暴になり、バチでキミの腹を突き、身をかがめたところへ、もう1本のバチでオデコを叩かれた。「なんてお利口さんなんでしょ!ツマッシュは、も、ずーっと、ただの大きな太鼓を作ってきたのよ。もう一度聞くわよ。大きな太鼓? それとも、すごーく大きな太鼓?」
  すごーく
  彼はキミの顔に自分の顔を押しつけて、ガルルルと唸り声をあげて言った。「ただのすごーく大きな太鼓でいいの?一番大きな太鼓じゃなくていいの?」
  すごーく
  彼はキミの耳たぶをつかんで、円を描くようにキミをグルグルと引きずり回した。そして、キミの顔に自分の顔を押しつけて、ガルルルと唸り声をあげて言った。「ただのすごーく大きな太鼓でいいの?一番大きな太鼓じゃなくていいの?」
  本当に
  彼は目を細め、猫が絞め殺されたような奇声を発した。またまた彼は足で地面を掻きむしり、憎しみの眼差しをキミに投げかけ、怒りに顔を紅潮させた。
  「ちがーう! ダメー!そんなモンは作んないのっ!あっちへ行って!」
  一番大きな
  「最初から、そう言えばいいのよ。ちょっと、考えさせてね」
  彼は、ちょっと考えることに苦労していた。「考えてみたけど、何も思いつかないわ」
  さんざん苦労したあげくに、考えるのをあきらめてしまった。
  「そう! わかったわ! 太鼓に張るための獣の皮がいるのよ。それを持ってくれば、ツマッシュは一番大きな太鼓が作れるわ」
  彼はあたりを見回した。「一番大きな太鼓が作れる場所は、ただひとつ。どこかわかる?」彼はキミの目の前で手をヒラヒラさせた。しかし今度は、キミの目玉を突っつこうとする彼の試みを阻止することができた。
  「そう。太鼓の丘。ここよ。この太鼓の丘に皮を持ってきてちょうだい。そうしたら、一番大きな太鼓を作ってあげるわ」
  
  (二度目以降)
  「太鼓に張る皮は持ってきた?」
  →いいえ
  「どーして?」
  →はい
  
  (持っていない時)
  彼はしばらくキミの持ち物を調べると、数歩下がってキミを睨んだ。「皮は? どこにもないじゃないの。もっとマジメにやりなさい!」
  「やり直し」
  
  (持っている時)
  ツマッシュは皮を受け取ると、それをキミの顔に投げつけて、しばらくホレボレと見とれていた。(キミの顔じゃなくて、皮に見とれていたんだよ)
  「いいわよ、いいわよ」彼は猫なで声で言った。「ボク、頑張っちゃうわよ」彼はキミの顔から皮を取った。
  彼は仕事にかかった。デブっちょの変人とばかり思っていたが、その動きは想像を絶する速さだ。何本かの骨を使って、丸い胴の形に組み上げた。皮を水に湿らせて胴にかけて強く張った。\\bそして、皮に紐を通してきつく絞め上げた。
  「これでよし。叩いてもいいけど、このまま、もうちょっと乾かしたほうが、いい音になるわよ」
  太鼓
  「太鼓、大好き! 太鼓すばらしい!太鼓はボクの命!作って欲しい?」
  部族
  「ツマッシュは、ディスキキ族の人間だった。ヤツらの話はしないで。ツマッシュ、知能をなくしたから、ずっとひとりで住んでるの」
  ディスキキ
  「ヤツらの話はしないのって言ったでしょっ!」彼は太鼓のバチでキミの頭を叩いた。
  知能
  「昔はツマッシュにも知能はあったわ。でも、他の部族から来た強いシトーキじゃなくて……、キシートじゃなくて、とにかく、そのアレが取り除いてくれたのっ」と彼は得意そうにツルリと禿げ上がった頭を指差した。
  骨
  「いらない。今、食べたばっかりだから」
  皮
  「皮だって?近くに猛獣がいるのね?」彼は着ている毛皮を首までまくって、頭を隠してしまった。
  丘
  「太鼓の丘よ。石の町ナフアトラが、すぐそばにある。ここは、ナフアトラの北西にあたるの」彼は東を指差した。しかし、ちょっと考えて、南に修正した。
  「いや、違う。ここがその丘よ!ややっこしいこと言わないの!」
  さらば
  「あー、とっとと消えてちょーだい」
  その他
  「あ?」
  
  
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