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Lord British Journal

Lord British Journal(ロード・ブリティッシュ冒険記)

137年 第11月 第27日
これより、ロード・ブリティッシュ国王陛下の大冒険記を、宮廷書記官レモーが詳細に記録する。
未知の地下世界探検に同行いたしたる騎士の名は、アリオニス、メリディン、ゲラシ、シャアナ、ノイン、ロインの6名である。



第一日目

夜明け、スピリットウッドの森の東に流れるメルストーム川より、ボートを漕ぎ出す。
滝の手前にて、我らは船を停め、この地下世界への入口を発見した偉大な冒険家たちに祈りを捧げる。
かくして我らは暗黒の水路へと突入したのである。
地下世界にて、我々は大きな湖の西岸より上陸する。
洞穴の低い天井が頭上を圧迫するように広がり、湿気が体にまとわりつく。

アリオニスとゲラシが我らの探検開始を記念する標識を立てる。
残りの者たちは、地下河川の急流にもまれた損傷した船の補修にあたる。

我らは再び船に乗り、南の川を下る。まもなく、東に分かれる支流を発見するも、そのまま南下を続行する。
川の両岸は高く切り立った壁となり、松明の光をほのかに反射している。

流れが速くなる。
激しく水のぶつかり合う音が次第に近づいてくる。
突然、川は急激に角度を変え、水音が絶頂に達すると同時に、大きな滝に船は飲み込まれた。
滝を落ちる間、食料の樽は潰され、メリディンが振り落とされる。
船内には水が満ちるも、奇跡的に転覆を逃れた我々は、辛うじて穏やかな水面に着水する。
意識を失い漂うメリディスを船上に引き上げ、散乱した樽を回収する。
船を西へ進め、南へ分かれる支流を過ぎたころ、メリディンは息を吹き返した。

また別の支流に遭遇するころ、流れは次第に遅くなる。
斧で割られたように水に侵食された石の壁を右手に見つつ、我々は北へ向けて漕ぎ続けた。
流れが南西に向きを変えるころ、またしても接近する滝の音を聞く。
我々は急いで船を南の岸につける。
ゲラシが岩の間を南東に抜ける道を調査する。
戻ったゲラシによれば、天然の岩の裂け目が急な下り坂になっているが、その先は危険な滝の下を流れる川に出るという。
我々は船を担ぎ上げ、思ったほどの困難もなく、みごと滝を回避し、船旅を続行。我らの頭上数百メートルで日が暮れるころ、川は穏やかな湖に出た。
急に開けた視界は、彼方の濃い暗闇に消えている。
我々はそのまま、岸に沿って南南東へ進む。

押し殺したような悲鳴と大きな水音。これが不吉な前兆となった。
全員が船尾を見る。
黒髪の騎士、シャアナが座っていた場所である。
メリディンが急いで2つの呪文を唱える。
すると我々の周囲の湖が強い光に包まれた。
一瞬、目がくらむも、そこに見えたものは、無気味な白い怪物。
体の大きさは我々の船の2倍はあり、1本のぬめぬめした触手には、シャアナが握られていた。
それはすでに数十メートル船から離れ、心臓がひとつ打つごとに数メートルという速度で遠ざかって行く。

そのとき、ロード・ブリティッシュが船尾に歩み出で、怪物が消えた方角に両手を伸ばし、水晶のごとく清らかにして、風のごとく鮮烈なる7つの言葉を唱えら れた。
我々には、その言葉の意味はわからぬものの、言葉が引き起こす衝撃ははっきりと見て取られた。
遠方の闇より、突如として巨大なイカの怪物が引き寄せられ、不気味な金切り声が黒い空気を引き裂いた。
大きなうねりが我々の船を持ち上げる。
イカはその場で息絶えた。
同時に、メリディンの魔法の光も消え、この騒動で水中に落とした松明のかわりに、新しい松明が点灯された。
シャアナが船上に引き上げられ、船尾の彼女の指定席に横たえられた。
まだ意識は戻らない。
我らが国王陛下も目を閉じ、深い徳の瞑想に入られた。
我々は静かに船を進めた。

やがて湖の南岸に到達すると、そこから出ていた2つのまったく同一に見える川の西側の流れに入った。
途中、いくつかの陸地を調査したが、どれも行き止まりであった。
川は流れを北に変え、しばらく行くと、今度は南に向きを変えた。
ここで、第一日目の冒険を終えることにした。



第二日目

月のないいちばん暗い夜のような漆黒の朝を迎える。
焚き火は湿った灰の山と化していた。
夜の間に川の水位が上昇し、地上から持ってきた貴重な乾いた薪は湿ってしまった。

再び川に戻り、我々は南に船を漕ぎ出す。
1時間も経たないうちに、またしても滝に遭遇する。
今度は迂回路が見つからない。
滝の手前の砂地に船を停め観察すると、滝はほんの数メートルで終わり、その向こうには静かな流れがあった。
選択の余地はなく、我々は船の中で足を踏ん張り、滝に突入した。
船は一瞬で滝を通過し平らな水面に降りたが、安心する間もなく川は急カーブし、次なる滝に吸い込まれた。
激しい水流にもまれながらも、我々はなんとか舷側にしがみついたかと思うと、さらに、第三の奔流に飲み込まれた。

流れが静まりかけたところで、第四の滝がやってきた。
これは比較的短く、すぐに静かな小さな湖に放り出された。
南の岸に船をつけ、あたりを探索する。
切り立った岩壁には大きな裂け目があり、南に向かって洞窟が伸びている。
洞窟の中には、船が通れるような川はない。
選択の余地はない。
我々は残りの荷物を分配して背負い、岩の裂け目へ歩いて入ることにした。
激しい滝の流れは、もうひとつの選択肢を完全に奪ってしまったからだ。
もしブリタニアへ戻ることができたなら、二度と決して同じ道を進んだりはしなかっただろう。

足元はぬかるみ、大変に歩きづらかったが、湖から離れるにつれ、次第に乾燥していった。
道はすぐに北に折れ、大きな洞穴に出た。
岩の天井は、数階建ての建物ほどの高さがあった。
足元には、黄色い草のようなものが一面に生えている。

アリオニスが突然立ち止まった。
我々が武器を構える間もなく、人の足ほどの太さの巨大な触手がアリオニスに巻きつき、彼を地中の巣へ引きずり込もうとした。
ノインが愛用のマインゴーシュを触手に突き立てると、触手は傷口から粘度の高い緑色の液体を噴き出し、地中に逃げ帰った。
振り落とされたアリオニスが地面に足をつけるや、彼はノインに向かって大声をあげた。
ノインが振り返ると、彼の裏をかかんとばかりにもう1本の触手が地中から伸びあがっていた。
しかし、一瞬速く、ノインはそれを切断した。
我々が歩いてきた草地を振り返ると、さらに多くの触手を持つ地底怪物が追いかけてくる様子が見てとれた。
我々は急いで洞穴の北側に逃げ、岩の裂け目に飛びこんだ。
そこからは、東へ道が伸びている。
しばらく歩くと、道は南に向きを変えた。

道はやがて、広大な洞穴に出た。
周囲の岩壁も天井も、松明の光が届かないほど遠くにある。
我々は、自分たちの声がこだまして戻ってくるのを待ったが、あまりの広さにこだまも途中で息絶えたと見え、この洞穴の広さを音で推し量ることはできなかっ た。
右を向くと、南側の岩壁が見える。
水の淀んだ川が発する腐臭があたりに満ちている。
少し歩くと、足元は泥地から砂地に変わった。
川から数キロ歩いた地点で、キャンプを張った。



第三日目

眠りについて数時間も経たない頃、苦痛の叫び声に全員が飛び起きた。
メリディスが2音節からなる呪文を発すると、恐ろしい光景が光の中に照らし出された。
騎士ゲラシがダガーを手に立ちつくしている。
そして、6匹の巨大なミミズに似た生物が彼女を取り巻いていた。
彼女が繰り出すダガーに対して、ミミズは素早く身をかわす。
彼女は左腕を自分のチェストに押し付けている。
大きな傷口からの出血を止めようとしているようだ。

ロード・ブリティッシュが杖を振り上げ、呪文を唱えた。不思議な冷気があたりを包む。
すると、虫たちはゲラシのことを忘れ、互いに互いを攻撃しだした。
メリディスも魔法を使ってゲラシの体から虫の毒を抜きとり、我々は彼女の腕の傷に包帯を巻いた。
そして急いで荷物をまとめ、南の岩壁に沿って東に向けて出発した。
我々が立ち去るとき、まだ2匹の虫が互いを噛み合っていた。

南の壁が北に曲がる頃、北東に伸びる洞窟を発見した。
足元はごつごつとした岩地だったが、道幅は3人が並んで歩けるほどの広さがある。
隊列のしんがりを守っていた双子の騎士、ノインとロインは、くすんだ茶色の毛皮に覆われた、翼と鋭い爪を持つ大型の生物の第一発見者となった。
我々は立ち止まり、しばらく観察していたが、それはそのまま飛び去っていった。
30分後、あの怪物が2匹現われたが、我々が振り返ると、また飛び去っていった。
さらに1時間後、あれが3匹、我々に近づいてきた。
前の3匹よりも度胸があると見え、かなりの距離まで接近し、また向きを変えて飛び去っていった。
我々は歩調を速めた。

道はやがて、大きな洞穴に出た。
足元は草地で、高い土の天井に覆われている。
休憩をとろうと立ち止まったところへ、突然、耳をつんざく雄たけびと共に、12匹ほどのあの空を飛ぶ怪物が襲いかかってきた。
頭上からの攻撃してくる彼らは、我々の背後から鎧を引き裂き、肉を切った。
剣を振り回し、ダガーを投げつけるも効果がない。
辛うじて、2匹を落としたにとどまった。
残る10匹は、まだ我々の頭上を飛びまわっている。
そこへ、ロード・ブリティッシュ国王陛下が立ちあがり、神秘の言葉を唱えられると、4匹が墜落した。
だが、失った味方の数はそれを上回る。

私も戦った。
その視界の端にメリディンが見えた。瀕死の状態から彼は立ちあがると、最後の力を振り絞って両手を天に突き出した。
そして、4つの音節からなる呪文を発すると、彼の両手からは強烈な炎が噴き出し、上空を舞う怪物を1匹ずつ焼き落としていった。
最後の、もっとも大きな1匹が火の球となって墜落したのは、メリディンの遺体のすぐ脇だった。
それが、偉大なる魔道師、メリディンの弔いの火となった。



第四日目

生き残った我々3人は、勇敢なる騎士、アリオニス、メリディン、ゲラシ、ノイン、そしてロインを、彼らの最後の戦場となったこの地底の地に埋葬した。
明日は、故郷へ帰る道を探そう。
悲惨な冒険の旅は、ここで終わらせることにした。



第五日目

朝、恐ろしい亡霊が現われた。
それは3体いた。
岩の中から歩み出てきたのだ。
全身は彼らの体が半分溶けこんでいる闇よりもさらに黒く見えた。
亡霊は、シャアナと私の存在を無視するかのようにロード・ブリティッシュ国王陛下に近づいた。
陛下は、亡霊たちに睨みつけられながらも、生命力と治癒と防御の呪文を口の中で唱えていた。
それでも、彼らは立ち止まる気配すら見せず、中の1人が片手をあげ、国王陛下に向けると、そこから銀色の矢が飛び出し、我らが不死身の国王陛下の御身を貫 いた。
陛下は冷たい地面に倒れこまれた。

シャアナは動かない。
陛下を貫いた矢に射抜かれていた。
私はなんとか前に転がり出て、彼らのクロークに手をかけたが、反射的に身を引いた。
とてつもなく、不吉なものを全身で感じたからだ。
彼らは国王陛下を連れ去った。
私には何もすることができなかった。
ヤツらの前では、誰であろうと、同じであったろう。


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