Ultima5 マニュアル
The Book of Lore

Ultima V Warriors of Destiny :
The Book of Lore(知識の書)



序文

本書は、ブリタニア第五世代の幕開けにあたって、国王、ロード・ブリティッシュの命により編さんされた現代知識の大系である。今日の我が国の繁栄と発達 が、三悪の滅亡とアバタール倫理観の定着という、ふたつの歴史的出来事によってもたらされたのは言うまでもない。本書はまさに、この発展の時代の求めに応 じて制作されたものである。本書の目的とするところは、過去から現代に到るまで営々と培われてきた知識を留め、未来への更なる発展の道標となろことであ る。本書はまた、若い世代や旅人にとって、ブリタニアを理解する上での貴重な手引き書とならんことを望むものである。


民間伝承

その昔、ロード・ブリティッシュの支配が全土に及ぶ以前は、ソーサリア大陸は多数の都市国家によって分割統治されていた。その頃の最大規模の都市国家が、 今日、ブリタニアの8大都市として残っている。都市国家は、それぞれ異なった君主と法律を持つ独立した国家であった。そのため、富や支配をめぐる紛争が絶 えず、小国は大国の軍靴に踏みにじられることがしばしばあった。

伝説:ある若者の渡米
ソーサリア大陸が都市国家間の争いに明け暮れていた頃、どこか、こことはまったく別の世界で、理想を追い求めるひとりの若者がいた。そこでは、人々はみな 欲深く利己的で、目にするものといえば、富と権力の奪い合いばかり。そこには、正義と繁栄のために戦う英雄もなく、皆が幸せに暮らせるよりよい社会を作ろ うと立ち上がる指導者もいなかったという。若者は、そんな世界の惨状を見るにつけ、未来に対する希望を失い、絶望に心を痛めるのであった。
彼は山を歩くのが好きで、数日間を山の中で過ごすことも珍しくなかった。それが起こったのは、いつものように山の散策を楽しんでいた秋の日のことである。 オークの巨木が密生する森の小道を歩いていくと、突然、円形の空き地に出てしまった。なぜか不自然に、そこだけポッカリと木が生えていないのである。しか も、大きな石が円形に並べられている。見ると、その円の中心あたりに何か小さなものが太陽の光を受けてキラキラと輝いていた。彼は注意深く光るものに近づ き、落ち葉の聞からそれを拾い上げた。手にのせて見ると、それは蛇をかたちどった金属のメダルであった。不思議なことに、メダルはほんのりと温かかった。
そのときだ。彼の鼻をかするように、足元の地面から、突然青い光の筋が立ち上った。光は彼の頭より少し高いところまで伸びると、今度は横に広がり、青い光 の面となった。まるでどこか別の次元に通じるドアのようだ。突然のことに少々あわてはしたものの、なぜかその光のドアには強く惹かれるものがある。入って みたいという衝動がはたらき、体は無意識のうちに光の中へと踏み込んでいたのである。
光のドアを抜ける。彼の背後でドアは消えた。それと同時に、それまで彼を包んでいた秋の森も消えてしまった。そこは、見渡す限り緑の草原が広がる別世界で あった。遠い木立から、ひと筋の煙が立ち上っている。あそこに人がいるに違いない。木立に向かって歩いた。煙の主は、そこで薪を割っている、すらりと背の 高い金髪の男であった。若者が茂みの聞から顔を出したのと、男が斧を振り下ろそうとしたのが同時であったため、一瞬、若者に気を取られた男の手元が狂い、 斧は男の足を直撃してしまった。
若者はあわてて駆け寄ろうとしたが、金髪の男は苦痛の表情を浮かべながら手を上げてそれを制止した。男はその場で目を閉じ、精神統一をしたかと思うと、ひ ざまずき、傷に手を当て、もう片方の手で複雑な模様を宙に描きながら、口の中で何やらつぶやいた。するとどうだろう、ピタリと血は止まり、男の顔は、うそ のように穏やかな表情に変わったのである。男は立ち上がり、ひざの木くずを払うと、若者に満面の笑みを投げかけ、低い声で語りかけた。
「足ハモウ痛マヌ。大丈夫、傷モ治ッタ。薪割リハヤメダ。トコロデ、オヌシハ、イズコヨリ来ラレタ」
若者が初めて聞く言葉であったが、なぜか意味は通じた。
「でも……、どうやって治したんですか」
若者は、一瞬にして傷を治した男の行動が、不思議でならなかった。
「ナニヲ申ス。コレシキハ最モ簡単ナ呪文デアロウガ」
男の名前はシャミノと言った。その晩、若者は、シャミノの家にやっかいになることにした。
若者はシャミノに、自分がどこから来たのかを説明したが、いくら話してもシャミノにはまったく理解できないようであった。しかし、著者がでたらめを言って るのではないことは、シャミノには通じたようだった。
「おぬしの故郷はなんと申されたかのう」
「ケンブリッジです。ブリティッシュ諸島の」
シャミノはしばらく考えてから、こう言った。
「ふん、よい響きだ。これからおぬしを、ブリティッシュと呼ぼう」
なんとも奇妙な名前だ。若者は笑いをこらえることができなかった。しかし、どことなく親しみのあるこの名前を、ありがたく受けることにしたのである。
しばらくの間、ブリティッシュは故郷に帰る方法を懸命に採したのだが、時が経つにつれて、あとに残してきた人々への未練も薄れていった。その方法がわかっ たのは、故郷に対する思いをすっかり断ち切った後のことだった。
ブリティッシュはそれから、何度となく旅に出ている。そのつど、この世界での新しい友人を連れて帰ってきたと言われている。吟遊詩人のイオロ、騎士のデュ プレなども、その当時からの友人である。その頃には、ブリティッシュはすっかりこの国の人間になっていた。しかし、友人たちとの生活を通して、彼はこの国 の人間と、年のとり方において決定的な違いがあることに気がついた。ブリティッシュの故郷での1年は、我々の世界の約10年に相当するということだ。つま り、ブリティッシュも彼の故郷の人々も、我々が10歳年をとる間に、1歳しか年をとらないのである。


歴史

第一暗黒期
ブリティッシュがシャミノと出合ったちょうどその頃、ソーサリア大陸の片隅で魔法の修行を積む少年がいた。どことなく陰気な影のあるその少年は、突然激怒 したかと思うと、急にふさぎ込んでしまうという、非常に情緒不安定な性格の持ち主だった。気分が落ち込むと、少年は短剣を握りしめて、狩りに出かけた。し かし、動物を殺すことだけが彼の狩りの目的であったため、狩った獲物はその場で腐るままに放置されたのである。そうして気分を晴らし家に帰ると、生き物の 生と死を繰るという、恐ろしい実験に没頭したのであった。
少年の名はモンデイン。彼の父は、当時大変な尊敬を集めた大魔道士であった。それだけに、モンデインの残虐な行為やその他の奇行は、父の頭痛の種だった。 モンデインが15歳になったとき、ついに父は彼を呼びつけ、こう申しつけた。
「モンデイン。これから1年の間、お前に魔法の使用を禁止する。修道院に入り、心を入れ替え、己の徳を磨くのだ。修道院長様には、私からよく頼んである。 慈悲と謙虚の心を学ぶのだ。そこでの修行を終えたなら、私はお前に、太陽の力を手にすることができるルビーの宝珠を授けようぞ」
モンデインは何も言わずに部屋に下がった。その夜、彼はルビーの宝珠を盗み出し、家を出た。もうすでに、彼は権力の野望に燃えていたのである。それはも う、父親であろうと、どうすることもできなかった。
その頃、ブリティッシュは、公正で偽りのない政治家として活躍し、領民の信頼と人気を集めていた。彼の斬新で独創的なアイデアは、常に話題の的であった。 一方、モンデインの恐怖の実験も同時に進んでいた。彼は、父から盗み出したルビーの宝珠の力を宝珠自身に作用させることで、黒宝珠なるものを作り出してい たのである。これにより、モンデインは永遠の力を手にし、暗黒世界での支配力を、着々と絶対的なものにしていった。
日増しに、モンデインの及ぼす影響力が、ソーサリア大陸の人々の心に恐怖を植えつけていった。そしてその危機感が引き金となって、ロード・ブリティッシュ が提案し続けてきた全部市国家共和制のアイデアが、実現へ向けて加速していったのである。
しかし時は遅く、ソーサリア大陸の支配権は、すでにモンデインの手の中に落ちていた。信じられないほどの圧倒的な悪の力の前に、都市国家共和制化もままな らず、ソーサリア大陸は今にもモンデインに屈服せざるを得ない状況に追い込まれてしまった。何か特別な力が必要だ。ロード・ブリティッシュは、無意識のう ちに胸にさげた蛇をかたどったメダルに手を当て目を閉じた。モンデインと渡り合うことのできる勇敢な人間が現わる。ロード・ブリティッシュは瞑想のなか で、そう心に描いていた。
その数日後、ソーサリア大陸にひとりの流れ者が現われた。彼は善と真実に身を捧げ修行を積むことによって、みるみる成長し、モンデインと対決しうるだけの 力を身につけていったのである。そしてついに、流れ者は、モンデインの黒宝珠を発見し、モンデインもろとも破壊することに成功した。かくしてモンデインの 悪の支配は終わりを告げたのであった。

第二暗黒期
しかし、人々の勝利の喜びは束の間であった。モンデインには優秀な弟子がいたのである。美しい少女で、名をミナクスという。若さのために、彼女の本当の力 は、かなり見くびられていたようだ。彼女は、師モンデインを失ったことに激しい怒りを覚えていた。また、以前からその存在を知り、密かに研究を重ねてきた 黒宝珠を破壊されたことに村しても、怒りを感じていた。彼女は、いつか自分でも同じものを作り、この世界を我がものにしようと思っていたからである。しか し、彼女の怒り狂う執念は、黒宝珠などなくとも世界を支配できる強力な力を彼女に与えたのだった。かくしてミナクスの復讐が始まった。ここぞとばかり、ミ ナクスの怒りが嵐のようにソーサリア大陸を襲い、破壊と殺りくに荒れ狂ったのである。
ロード・ブリティッシュは、再びメダルに手を当て、勇者の召喚を試みた。すると、再び勇者が現われ、暗黒の破壊者を叩き潰してくれた。またしても、ソーサ リア大陸は救われたのであった。

第三暗黒期
それからの数十年は穏やかだった。ロード・ブリティッシュは都市国家の統治者たちからも尊敬を集め、彼らの相談役としても信頼を集めた。そうして、世界は ロード・ブリティッシュのもとに、ひとつにまとまっていったのである。
そんなある日、ひとりの船乗りから、これまでに見たことのない島が出現したとの報告が、ロード・ブリティッシュのもとに届いた。それは真っ赤な炎を噴き上 げ、えも言えぬ恐ろしい雰囲気を辺りに漂わせているという。また、地上でも、人間技とは到底考えられない恐ろしい事件が、相次いで報告されるようになって いた。
ロード・ブリティッシュは3度めの召喚を試みた。すると今度は4人の勇者が現われた。彼らは数多くのダンジョンをくぐりぬけ、時の神の力を借りて、ついに モンデインとミナクスの遺志を受け継ぐ最後の存在=エクソダスを謎の要塞島につきとめ、これを破壊したのである。
3度ソーサリアを襲った恐怖が去った。盛大な祭は何ヵ月も続いた。このときを記念して、人々はこの新しい平和な世界、新しい統一国家を、ブリタニアと名づ けたのである。

アバタールの時代
ブリタニアの奇跡的な繁栄と発展は、人々を聖者アバタールの時代へと導いていった。学問、芸術、心身の鍛練などを追求する文化が開花し、愛と真実と勇気の 原理を研究する学問の府が設立されていった。かつて繁栄を誇った8大都市国家の中心地は、今では、8つの徳の精神をひとつずつ継承し、それを掘り下げ、広 く教えるという使命を担う徳の町になっている。こうして、徳の精神は一般に広がっていったのである。また同時に、科学の発展も目覚しく、ブリタニアは物心 両面において、大きく発展した。
そこでロード・ブリティッシュは、ブリタニアの国民の手本となるひとりの人間を召喚した。彼は、類まれなる情熱と献身の心をもって、グレート・スタジア ン・オブ・アビイスより、人類の究極の智、コーデックスの写本を持ち帰ったのであった。


地理

ブリタニアの自然は変化に富んでいる。白砂の砂漠、巨木が密生する森林、ふもとを氷河に覆われた高山と、美しい景観が見る者の目を楽しませてくれる。

陸地
ブリタニアで最も広い面積を占めるのは、草原である。見渡すかぎりの緑の平原はまた、この国でもっとも肥沃な土地であり、農作物の宝庫である。柔らかく平 坦で見晴らしがよいため、非常に歩きやすく、旅人にはありがたい地形ではある。しかし、同時にそこは、草原に棲息する狂暴な動物から身を隠す場所に乏し い、ということも忘れてはならない。動物たちは、いつでもそっと近づき、こちらが気づく前に襲いかかってくる。のどかな草原においでも、旅人は気が抜けな いのである。
低木ややぶが海のように広がっている地域もある。ここも比較的見晴らしがよいため、動物に襲われる可能性がある。しかも、草原と違って歩きづらいという点 で、より危険性が高い。よほどのことがない限り、このような場所を歩くのは避けるべきであろう。
ブリタニアの北西部は、森林に覆われている。静かでひんやりとした空気、柔らかい腐葉土、甘い木の香り。人は森に魅了され、ここがブリタニアで最も危険な 場所であることを忘れてしまいがちになる。森の本性は、暗く不気味で危険な所なのである。そこはまた、あらゆるどうもうな生物の温床となっているのだ。森 の生物は、何の前触れもなく人に襲いかかる。身構えることすらできず、命を奪われる者が跡を絶たない。
北東部に広がる広大な砂模地帯は、猛暑と乾燥の土地である。行けども行けども砂ばかりで、方角を見失いやすいばかりか、照りつける太陽に幻覚を見せられ て、ありもしない目印へと導かれ、二度と帰らなかった旅人は数多い。
山岳地帯のふもとに広がる高地地帯は、起伏も比較的緩やかで、枯れたおもむきのある美しいところだが、ここを通過するには相当な時間がかかる。
山岳地帯は、まさに大自然の障壁である。特別な登山用具がなければ登ることができない。しかし、こんなところにも危険な生物が棲息しているから、油断はな らない。
ブリタニアの沼地は、ほとんどが毒沼である。狂暴な怪物でさえ、ここには入ろうとしない。しかし、毒沼にのみ生える薬草もある。沼の毒を利用して外敵から 身を守っているのだ。また、毒沼にはまった生物を捕って食う怪物もすむと言われている。いずれにせよ、腰まで潜る泥と格闘して歩くことは、困難きわまりな い。

海、川、湖
山あいの湖や沼に源を発する川の流れは、やがてブリタニアの海に流れ込む。ブリタニアには、大きな潮がふたつある。ひとつは“ロストレイク”。ブリタニア の中西部に位置し、その水は、“ロストリバー”を通って大陸の西北の海岸に注いでいる。ロストリバーの流域は網の日のように細かく分岐し、無数のデルタ地 帯を形成していることでも有名である。もうひとつは、ブリタニアの中北部に位置する“ロックレイク”。かつて海の入り江だったところが、地殻変動によって 海から分断されてできた湖で、現在でも水質は淡水と海水が入り混じった状態にある。ブリタニアには、ジェネラスティー湖と呼ばれる、もうひとつの大きな湖 があった。それはそれは美しい湖であったが、ブリタニア東北部を突然装った大かんばつによって干上がってしまい、今では砂漠と化している。
これらの水域は、水上交通の重要な航路となる場合がある。海の沿岸水域は、大きな船が航行できる程度の深さがあり、小さなボートも使えるほど波は穏やかで ある。しかし、海の浅瀬はもちろんのこと、川や湖の浅く波が泡立っているようなところは、ボート以外の大型艦船は航行できない。反対に沖へ出ると、波が高 くなり、フリゲート艦以外の小型艦船では、航行ができなくなる。


政治

ロード・ブリティッシュの提案により、ブリタニアの政治は、専制君主主義から共和制君主主義と呼ばれる議会制民主主義へと大改革がなされた。国王ロード・ ブリティッシュの単独統治に代わって、8つの都市から選ばれた評議員からなる大評議会とロード・ブリティッシュの協力によって、ブリタニアが治められるこ とになったのである。評議員は選挙で選ばれることになっているが、最初の代表者だけは、ロード・ブリティッシュが面接の上で選出する一時的な方式をとっ た。ロード・ブリティッシュは、最初の大評議会評議員にふさわしい人物を選出するために、自ら8つの都市を訪問し、各地で尊敬を集めている人々に合い、長 い間語り合ったのである。
歴史的な第1回大評議会は、2部構成になっていた。第1部では、ロード・ブリティッシュと大評議会評議員とがあいさつを交わし、直接参加制政府の実現のた めのガイドライン作成の話し合いがなされた。この内容は、次のようなものであった。
まず、人間性と社会の現実を踏まえ、人権を最重要視した憲法を制定すること。ロード・ブリティッシュは、8つの徳の精神を憲法の柱とすることを強く望んで いた。これが制定され承認されると、ロード・ブリティッシュを含む全ブリタニア国民に適用されることになる。
次に、評議会の運営に関する法案について話し合われた。評議員は、毎年8つの都市から1名ずつ選出される。評議員は、町が抱える問題を探り、人々の要求や 希望を聞き入れるために定期的に集会を開くことが義務づけられる。そこで取り上げられた問題や要求は、ブリテインで開催される大評議会にかけられる。大評 議会では、それが大評議会の議題にふさわしいものであるかどうかが協議され、ふさわしいものであれば、法律の制定、改正、廃止など、政府としての対応策が 検討される。
こうして決議された議会の提案は、ロード・ブリティッシュに提出され、ロード・ブリティッシュの承認をあおぐ。ロード・ブリティッシュがこれに異義を唱え た場合は、ロード・ブリティッシュ自身が新しい提案を大評議会に提出し、全員が納得するまで議論される。もしここで、決着がつかないと判断された場合は、 ロード・ブリティッシュは拒否権を発動することもできる。
以上のことがロード・ブリティッシュから大評議会評議員に提出されると、大評議会に協議をゆだね、ロード・ブリティッシュは席をはずした。
数日後、大評議会は結論に達した。大評議会は全員一致でロード・ブリティッシュの提案に賛成し、それを制定したのである。
第1回の大評議会は1ヵ月間続けられた。この期間のうちの半分は、新しい憲法を考えるために費やされ、あとの半分は、どのような形で通常の大評議会を開催 するかの話し合いに費やされた。その結果、第2回からは、大評議会は年4回、春分、夏至、秋分、冬至の日に召集されることが決定された。
君主制は、象徴的な形で受け継がれることになった。たとえば、“王の宝石”は、象徴的な意味においても、また、実際に魔法の力が宿っているという点におい ても、君主の印として継承される。この他にも、純粋な太陽光を宝石に封じ込めて金で封印して作られた紋章、不思議なカを秘めた水晶球を頂いた純金の杖(つ え)、異世界からもたらされたと言われている伝説の大蛇をかたどった銀のアミュレットなども、君主制の象徴として、その時代の君主に受け継がれることにな る。


経済

ブリタニアの主要産業は農業であるが、その豊富な農作物は、流通や商業をも発達させた。旅館や酒場は、ブリタニアのいたるところで賑わっている。武器や防 具を作る職人の腕も、冒険家たちの間では、非常に評判がいい。また、傷ついた体を癒すヒ−ラーや、薬草と秘薬の業者も、大変に繁盛している。

農業
大きな都市以外の、ほとんどの地域では、農業が産業の中心になっている。主な作物は、小麦、大麦、とうもろこし、それに、ブリタニア人には欠かせない新鮮 な季節の果物や野菜である。

商業
一口に商業と言っても、ブリタニアには多種多様な商店が存在している。それぞれ、順番に紹介していこう。
武具店では、武器と防具の両方を扱っている。たいていの店では、中古の武器や防具の下取りを行なっている。これは正規の業務というよりサービスであるた め、下取りの値段はまちまちであり、取り引きを断られたらそれまでである。世の常として、下取り価格はあまり期待しないほうがよかろう。品揃えは、店に よって異なる。目的の商品が見つからない場合は、置いてある店を自分で探して歩くしかない。
馬が欲しいときは、城や個人の屋敷によく見かけられる厩(うまや)を訪ねるとよい。交渉しだいで、馬を売っでもらうことができる。そこで手に入るのは、力 の強い農耕馬や、毛足の長い山馬や、草原で捕えられた足の速い馬などがほとんどであるが、ごくまれに、重装備の騎士を乗せて走ることができる優秀な戦闘馬 と出会えることもある。
市場やレストランで売られている食糧は、味は一級品だが、日持ちしないため、長旅の携帯には向かない。市場では、それとは別に旅行用の携帯食糧を売ってい る。値段は町によって様々である。
市場や旅館には、たいてい酒場がある。そこでは、柔らかいマトンの足、新鮮なキジ、肉汁したたるビーフなど、ブリタニアが誇る自慢の肉料理も楽しめる。も ちろん、料理によく合うビールも冷えている。冗舌なシェフの噂話を肴に杯を傾けるのが、常連客のしきたりとなっている。
少々高級なレストランなどでは、吟遊詩人が音楽を奏でている。彼らには、気軽に声をかけて音楽をほめてやるとよい。親しくなれば、面白い話も聞かせてくれ るだろう。また、人情のあつい彼らは、よき協力者になってくれる場合もある。
酒場のオーナーは、気さくな連中ばかりである。客に声をかけるのが好きで、話上手でもある。チップをはずめば、思いがけない話も開けるかもしれない。
ヒーラーは、町や村のみならず、城や砦の中に店を開いていることがある。冒険には危険が伴う。重い怪我や毒に冒されることは日常茶飯事である。今日の医学 の進歩なくしては、冒険も何もあったものではない。しかし、医は仁術。治療の代償をいくらに決めるかは、非常に難しい問題である。そのため、ヒーラーに よって治察の代金は様々に異なっている。安くて知られるヒ−ラーもあれば、高くて有名なヒ−ラーもある。そんな中で、スカラブレイのヒーラーは、財力のな い患者に対しても、手厚い治療を施してくれることで知られている。
病気であれ怪我であれ毒であれ、ヒーラーに治せないものはない。真偽のほどは定かではないが、死んだ人間を生き返らせることさえできると言われている。死 者の蘇生に関しては、ある魔術師の秘密結社も研究を重ねているらしい。倫理的な観点から見て、死んだ人間を蘇らせることは果たして許されることなのかどう か、論議の絶えないところではあるが、ロード・ブリティッシュはこれらの研究に対して、多額の援助を行なっているとのことである。
薬剤師は、魔法に使用される薬草や秘薬の製造、調合の専門家である。一般に薬剤師が経営する薬草店には、その地方特産の薬草や秘薬が置かれているが、中に は手広く商品を揃えた大規模な店もある。価格は、季節や気候によって大きく左右される。店によって価格設定が様々であるため、慎重に価格調査をすることが 賢明である。
旅館は、ブリタニアのいこいの場である。快適で料金も安く、一晩で旅の疲れをすっかり取り去ってくれる。中には、島の町スカラブレイの旅館のように、すば らしい景色を堪能できるところもある。旅館では長期滞在も可能である。よんどころない事情で旅の仲間を町に置いて行かなければならないような場合は、1カ 月単位で部屋を借りて、仲間をそこに滞在させておくこともできる。
船が必要なときは、港町によく見かける船大工の店へ行くとよい。大型の外洋船であるフリゲート艦や小型のボートを造っている。船の建造が主業務であるた め、販売店の営業時間は都合によってまちまちであり、概して短い。人気の船種は、小型のボートを装備したフリゲート艦である。小型のボートだけを購入する こともできる。
かつて、盗品の売買を専門に行なっていたギルドは、いまだにその頃の看板を掲げてはいるが、現在では、冒険家に欠かせない小道具を扱う店として営業してい る。鍵を外す道具、肉眼では見えないものを見る眼鏡、暗いところで人知れず活動するための道具など、その多くは泥棒の七つ道具ではあるが、経験豊かな冒険 家も、これらを大いに利用している。
王冠と正義のはかりを象徴したマークは、ブリタニア政府機関の印である。政府そのものはロード・ブリティッシュ城の中に置かれているが、日常の行政業務を 行なう機関は、正義の町、ユーに置かれている。最高裁判所と刑務所も、ユーにある。


生活

城、寺院など

ロード・ブリティッシュ城
ブリタニー湾に面してそびえるブリタニアの政治の中心であり、ロード・ブリティッシュの邸宅である。聖者アバタールへの道を探求する者ならばお馴染みの場 所であろうが、城はアバタールの時代のものから、すっかり様変わりしている。建物は地上4階地下1階の巨大建造物に大改築され、中には2つの高級食堂、高 級武具店、屋上天文台、ブリタニア最高の設備を誇る厩などが完備された。

ライキューム天文台
べリティー島の西北の端に位置する学問の舘である。常時星の動きを観察し続ける天文台は、ライキュームの象徴とされている。この天文台からは、はるか海の 彼方まで見渡せる。ここには図書館、研究所、執筆室、会議室などが完備され、真実を見極める道具があることも、広く知られている。
エンパス・アビー修道院
ユーの西南に広がるディープフォレストの森の中に、ひっそりとたたずむ愛の舘である。ここへは、やさしい心を持つ者ならば、誰でも自由に出入りできる。さ わやかな海風にあたりながら瞑想を重ねる修道士や修道女たちの表情には、すべての人々に恩恵をもたらす人生の答えに、少しずつ近づいていく喜びが浮かび上 がっている。

サーパンツ・ホールド城
ディーズ島の港を守る、堅固な砦である。ここは、山と川が自然の防壁をなすという地理的条件に恵まれ、古くから悪と戦った者たちの勇気を称える記念碑とし ても知られている。ここには、体を鍛えるジムや、様々な戦闘技術を磨くトレーニング場も完備されていて、疲れを癒すヒーラーや、太陽に満ちた海岸も近くに ある。戦士たちの間では、ここはいわば同志の舘である。経験豊かな戦士たちが集い、名誉と勇気と勝利と鍛練の経験談に花を咲かせている。彼らの話は、若い 冒険家にとってはこの上ない教訓であり、また大いなる勇気を与えてくれるものでもある。


都市や村

ブリテイン 
ブリタニアの地理的中心地であり、ブリタニー湾に大きな港を持つブリタニア最大の都市である。ロード・ブリティッシュ城に近く、そこを訪れる数多くの人々 が立ち寄ったり、ここに宿をとったりするために、大きく栄えている。ブリテインは、慈悲の心の徳を信奉するバードの本拠地でもあり、彼らが奏でる音楽は、 ここを訪れる者たちの旅に疲れた心を慰めてくれる。ブリタニア最大の都市にふさわしく、宿泊や食事の施設も一流と言えよう。また、ブリタニアで最も優れた 弓を生産しているのも、ブリティンである。

ブリタニー
ロード・ブリティッシュ城に農作物を納める農民や出入りの業者たちが城の周りに居住するようになり、それがいつしか、ブリタニーと呼ばれる3つの村に発展 した。イースト・ブリタニーは、船大工とヒーラーの村。ノース・ブリタニーは農業と馬の村。ここには、小さいながら旅館がある。ウエスト・ブリタニーは専 農の村で、ロード・ブリティッシュ城と、近郊の村や町に農作物を納めている。

バッカニーアズ・デン
ポーズの町の東の海上に浮かぶ島に、バッカニーアズ・デンはある。盗賊や悪党が集まる危険な町だと言われているが、旅館、レストラン、武具店、船大工のほ か、珍しいものを売る店などもあって、大変に栄えている。

コーブ
ロックレイクの南の山々に囲まれた魔法の町。この町のヒーラーと薬剤師は、ブリタニアで一番の腕を誇っている。ここには、聖者アバタールへの道を歩んだ冒 険家たちを称える、徳の神殿がある。

ジェローム
ソーサリア大陸から遠く離れたブリタニア最大の島、バロリアン島の中央部の山岳地帯にある、勇敢さの徳を信奉する戦士や武術の修行者たちで賑わう町。宿泊 や食事の設備も整っていて、一般の旅行者も大いに歓迎される。また、武具店はもちろんのこと、大陸までの安全な旅を約束する船の店もある。

ミノック
ブリタニアの中北部に位置する、美しい金属加工製品と防具で名高い町。献身の徳を追求するこの町には、救いなき者の家と呼ばれる、住む家を持たない貧しい 人々のための慈善施設があり、医療施設も整っている。ソーサリア大陸の北部海岸に面しているため、金属加工と並んで造船技術の優秀さにも定評がある。

ムーングロウ
この町に住む魔術師たちは、誠実さを至上のものとして信奉している。不実を許さない厳格な雰囲気に、不正直な人間は、まったく身の置きどころがないであろ う。べリティー島の南の端に位置するこの町の名物は、うまい食べ物と安くて質の高い薬草、それに大きな天文台である。ここからは、未来が見えるのだとい う。

ニューマジンシア
旧マジンシアの廃墟の跡に、謙虚さの徳を持ち、利己的な自尊心の危険性を十分に理解する人々によって再建された新しい町。質素な畑と果実園が点在し、レス トランとヒーラーが店を開いている。

ポーズ
ブリテインとトリンシックのほぼ中間、死の沼フェンズ・オブ・デッドの南端の入り江近くにある小さな村。旅の宿、食事、それに馬の乗り換えの設備がある。

スカラブレイ
崇高な心の徳を追い求めるレンジャーたちの本拠地。この町は、スピリットウッドの森の西の海上に浮かぶ3つの島の、一番南の島にある。住民はみな親切で思 いやりがあり、寛大な心の持ち主である。料金は安いが清潔で快適な旅館があり、大きな秘薬の店もある。ヒーラーは、医学、魔法、心霊に通じ、あらゆる疾病 や怪我に対処できる。治療代が払えない場合でも、ここでは完璧な治療が受けられることも、特筆すべきことであろう。

トリンシック
ソーサリア大陸の西南海岸地方に広がる草原地帯にある、パラディンの町。ここを訪れる者はみな、誇り高きパラディンたちの、真実に身を捧げる勇気ある姿に 驚かされる。太陽の光に満ちた大理石の建物と緑豊かな公園の町には、美しい池があり、武具店、ヒーラー、厩が軒を連ねている。

ユー
古代より公正さの徳を信奉するドルイド僧が集まる町。ここには、ブリタニアの最高裁判所があり、ここで法律や公正な精神を学ぶ者も多い。裁判所や刑務所や 刑場といった、堅苦しい雰囲気とは対照的に、ここはブリタニア屈指のレストランがあるところとしても有名である。また、酒場や武具店や秘薬店もある。木の 多い町としても知られるユーは、ブリテインに次ぐ人口を誇る、ブリタニア第二の都市である。

キープ(砦)
キープは、人里離れた地域によく見受けられる、砦のような屋敷。その多くは個人所有の建物であるが、若者や修道士のための修行の場として、公共的に使用さ れているものもある。

灯台
ブリタニアに平和が訪れてから、各地に灯台が建設されるようになった。灯台ができたおかげで、夜間や嵐のときでも、船の座礁事故が激減したのである。


人々

物事の真理を求めてブリタニアを歩き、ときには、超法規的な問題の解決に身を捧げる者たちを、冒険家と呼ぶ。冒険家は主に、メイジ(魔法使い)、バード (吟遊詩人)、ファイター(戦士)の3つの職業のカテゴリーに分類される。大自然の力を操るドルイドと魔法の呪文を自由に操る魔術師はメイジ。道具の製作 や修理にみごとな腕を振るって町から町を渡り歩くかたわら、歴史を語り伝えるティンカーは、バードの仲間と見なされる。そして、パラディン、羊飼い、レン ジャーは、バロリアン島で武術を身につけ、名だたるファイターたちと共に勇敢に戦ってきたことから、ファイターの部類に入ることとなる。
もちろん、これらの人々は、いつも冒険に出ているわけではない。彼らも普段は、商人、役人、道化師、農民、物乞い、衛兵などの町の住人に交じって、普通に 生活しているのである。

メイジ
高い魔法の能力を持ち、魔法で生計を立てているブリタニア人は、すべてメイジと呼ばれる。ムーングロウはメイジの町として名高い。魔法に携わる人間は、 ムーングロウに住むことをステイタスとしているのだ。知識の宝俸であり学問の舘であるライキュームに近いということも、メイジには魅力となっている。英才 教育が盛んなメイジの社会では、子供を幼いうちからライキューム周辺で活動しているメイジのグループにあずけて、専門教育を受けさせるという習慣があるか らだ。メイジがみな、こうしているわけではない。彼らとは少し系統の違う自然派のメイジは、自然の力を学ぶためにユーに移り住むことが多い。
魔法修得のために学ばなければならないことは、非常に多い。メイジが概して肉体的に脆弱なのは、幼いころから、ほとんどの時間を机に向かって過ごしてきた ためだ。だからと言って、彼らが不健康だというのではない。他の職業と比較すると、意外にもメイジが一番長生きであるという調査結果が出ているのである。

バード
詩人、射手、錠前師、そして稀にティンカー(金属加工師)など、器用さと身軽さを売り物にする職種がこれに含まれる。敏捷性と平衡感覚に優れ、戦闘におい ては命知らずの勇気を表わし、作戦を立てると同時に体が動くという、すばらしい能力を発揮する。魔法の能力も多少はあるが、マジックパワーはメイジの半分 程度しかない。
バードはブリティンの町を本拠地としている。ただしティンカーだけは、ミノックが本拠地である。

ファイター
海の彼方の辺境の地、バロリアン島は、戦士のトレーニング場である。強靭で恐れを知らぬジェロームのファイターは、負けるということを知らない。そこで は、あらゆる武器、あらゆる防具の使い方を学び、様々な武術の鍛練を積む。戦士に最も人気のある武器は、ソードを始めとする手に持って振り回すタイプのも の。その中でも最も重要な武器、ツーハンデッド(2H)・ソード(両手用剣)を操り、一撃で敵を倒すというのが彼らの共通の憧れである。
ファイターは、ジェローム以外の町にもいる。トリンシックのパラディン、スカラブレイのレンジャー、ニューマジンシアの羊飼いたちだ。
ごくまれに、魔法の能力を示す戦士もいる。しかし、一般にファイターは魔法に興味を持たないとされ、魔法の能力を伸ばそうとする戦士は、非常に珍しい存在 と言える。むしろ、彼らは動物とのコミュニケーションには魔法とも言うべき能力を発揮する。馬の調教や怪物の識別において、戦士にかなう者はいない。


交通

ブリタニアの旅は、徒歩が基本である。どんなに道が険しかろうと、時間がかかろうと、危険だろうと、ブリタニア人はひたすら歩く。だが、徒歩以外の交通手 段もないわけではない。以下、経済的に余裕のある者のために、それらの手段を紹介しよう。


特別な訓練なしに、誰にでも乗れる足の速い交通手段である。ブリタニアを徘徊する危険な動物たちには馬に追いつけるものがいないため、安全な乗り物とも言 える。しかし、馬といえども、人間と同様に水を渡ることができない。また、下りるときは、しっかりとつないでおかないと、人の目を盗んで逃げ出すという習 性があるため、気をつけなければならない。

帆船
海の向こうの島に渡るためには、帆船が必要になる。現在最も高速で長距離の移動に適した乗り物である。近頃、巨大な飛行船がものすごい速度で天を走ってい くの見たという人が増えでいるようだが、確たる証拠もなく、噂の域を出ない。海上でよく見かける帆船はフリゲート艦である。波をかき分けて進む3本マスト の姿には風格がある。フリゲート艦の構造は、前後にひとつずつの上甲板と中央にひとつの下甲板があり、前方に船室、中央に貨物室、後方に寝室が配置されて いる。また、両舷側には、大砲と渡し板用のゲートが2つずつ装備されている。
帆船のスピードがもたらす利点は大きいが、それだけ危険性も高い。特に、日が暮れた後の沿岸部での帆走には注意が必要である。深海に棲む怪物や海賊の襲撃 に対する準備も、怠ってはならない。

ボート
フリゲート艦にも非常用として搭載されているボートは、泥沼などのきわめて浅い水域を除けば、たいていの水上を進むことができる。そのため、川をさかの ぼったり山の渓谷を探検するときなどに、大変に重宝する。地上からは到達できない場所へも、水路さえあればボートで行くこともできる。また、町の池など で、娯楽用としてボートが活躍していることもある。とにかく、何かと役に立ってくれる。ただし、波の高い沖の海ヘボートで漕ぎ出すのは、大変に危険であ る。

海上航行の方法
外洋ではスピードが非常に重要である。足の遅い船は、探海に棲む怪物の餌食にされてしまうからである。最高速が出るのは、風向きと直角の方向に船を進める ときである。反対に最も遅くなるのは、向かい風の場合である。もちろん、風が無ければ船はピクリとも動かない。そのようなときは、オールを使って漕いでゆ くしかない。
陸に近い海域を高速で帆走するのは、非常に危険である。暗礁や浅瀬に全速力で船を乗り上げ、船もろとも多くの乗組員の命を失う愚かな船長が跡を絶たないの は、実に悲しむべきことだ。沿岸海域では、帆を下ろしオールで慎重に航行するという常識を、必ず守るよう忠告しておく。もし万が一、このような事故によっ て船が破損した場合は修理が必要である。修理にはかなり長い時間がかかるため、なるべく安全な港に停泊させて、船上でキャンプを張ったほうがよい。


天文学

天文学の分野で、最も権威ある著書は、ライキュームの天文学者であり、ジャーナリストとしても高名なジョン卿の“ブリタニアの天界”であろう。ジョン卿自 身の科学的発見と、近代科学の発展の鍵となったブリタニアの宇宙理論が実に克明に記されているのである。この章は、“ブリタニアの天界”からの抜粋によっ て構成されていることを、お断り申し上げておく。
この世界の空よりも、さらに高い天界には、無数の星が輝いている。その中で、世界を明るく贈らす太陽と8個の惑星と2つの月は、正確な軌道を措いて、我々 の世界の周りを回っている。
双子の月、トラメルとフェルッカは、太陽の光を反射させて、満ち欠けを繰り返す。同様に、太陽の光を反射して輝いている8つの惑星には、伝説の中で演じた 役割にちなんで、アバタールの徳の名前が与えられている。一番近い軌道を回るものから順番に、オネスティー(誠実)、コンパッション(慈悲)、ベイラー (勇敢さ)、ジャスティス(正義)、サクリファイス(献身)、オナー(名誉)、スピリチェアリテイー(崇高さ)、ヒューミリティー(謙虚)となっている。
伝説では、町から町へ、または海の彼方から、光る壁を通って旅をする冒険家の話がよく登場する。いわゆる、ムーンゲート旅行である。その可能性を立証する 確かな報告は非常に少ないのだが、信頼できると思われる情報をもとにムーンゲート旅行のシステムを考察すると、次のような事実が浮かび上がる。
毎晩、一番日の月、トラメルが天項に達すると各地に8つのムーンゲートが出現する。青く輝く四角い光の壁が地面から立ち上るのである。そして、二番日の 月、フェルッカが天項に達すると消滅する。ムーンゲートが輝いているうちに、その中に足を踏み入れると、次の瞬間には、別のところにあるムーンゲートに出 るのである。
どこのムーンゲートに出るかは、その時、天頂に近いほうの月の形によって決定される。ムーンゲート旅行は速くて安全であると言われているが、2つの月が天 項から等距離にあるときの行き先はどこになるかなど、いまだに解明されない不確かな要素も多分に含まれているため、用心するにこしたことはない。
炎の星、彗星が天を裂いて現われると、世界が破滅するという言い伝えがある。彗星は、暗黒王モンデインが世界を危機に陥れる直前、魔女ミナクスが復讐を開 始する直前、地獄の使者エクソダスの島が出現する直前に、それぞれ姿を現わして、危険を予告しているのである。
彗星と破滅の関係が、単なる偶然なのか、本当に破滅を予告しているのか、それを立証する手立てはない。しかし、天下泰平の今、またしても彗星がブリタニア の空に現われているという事実は、なんとも不気味なかぎりである。

言葉

ブリタニアの言葉は、響きの美しさは詩のごとくであり、表現力は実に豊かである。今日広く使われているブリタニア標準語の原型は、古代ソーサリア語であ り、表記方法は、古代ルーン文字であった。今でも、地方によってはルーン文字が残っている場合がある。全国的に標準化の動きは活発になってきているとはい え、旅人がルーン文字で書かれた文章を読む必要に迫られることも、しばしばであるから、ひととおりの知識は持っていたいものである。ルーン文字は、最も古 い文字とされている。下に、現代のアルファベットとの対応表を載せておくので、参考にされたい。


音楽

ブリタニア人は、無類の音楽好きである。家にハープシコードを置くのが、裕福な家庭でのステイタスにもなっている。気のきいた酒場では、専属の吟遊詩人が リュートの演奏で客を喜ばせてくれる。
ブリタニア民謡の分野で第一人者といえば、イオロ・フイッツオーエンであろう。フイッツオーエンの妻、グェンリアン・グァルチジーフの詩のために作曲され た“ストーンズ”は、ずいぶんと長い間、吟遊詩人たちに好まれ歌われている。かのロード・ブリティッシュも、この歌が大好きであったと言われているほど だ。不思議な神殿のことを歌ったこの歌は、ブリタニアが誇る傑作である。

むかし太陽は、夢見る人を照らしたり。
勇気と意志と力を照したり。
我は立つ。彼が掘り、削り、川を通したる
ウィルトシャーの平原に。

いずこより来たりし人か、いかにして建てたるものか。
かくも磐石の柱をば。
我が陰下にて、何をなし、何を祈りたるや。
このウィルトシャーの平原に立ちて。

嗚呼、答えを待つ君に、何を語らん。
黙して待てども、暮らせども、
答えを教える者はなし。
ウィルトシャーの乎原に声はなし。

時は移り、我は霧の中。
しかし我は叫ばん「彼等はこれにあり」と。
我を生み、知られざるまま世を去りぬ、
彼等を守りて立つウィルトシャーの平原に。


戦闘

過去の暗黒世界との戦争は、3つの教訓を我々に残してくれた。第一は、魔法と、戦う勇気と、純粋な精神の3つがあわさって、初めて悪を倒す力となること。 有徳の精神による武器と魔法の上手な使い分けが、勝利をもたらすのである。第二は、基本の大切さである。訓練と経験によってのみ、戦う勇気が養われる。第 三は、罪なき者に暴力を加えると、それは必ず、災いとなって己に返ってくるということである。
ここ数年の間の武具の進歩には、目覚しいものがある。以前にはできなかったことだが、今日では、戦闘の状況に応じて武器や防具を選択することができるよう になった。魔法の指輪やアミュレットなどの特殊な装備も、身につけることができる。戦闘の前に、パーティーの装備の中から、鎧、兜、盾、様々な武器など、 各自が必要と思われるものを選び、装着するのである。戦闘中にも装備の交換はできるが、生きるか死ぬかの状況で、そのようなことをしている余裕があるかど うかは、少し考えればわかることである。
これといった戦術もなしに腕力と耐久力だけを頼りに戦っても、勝敗は目に見えている。勝てたとしても、それは幸運以外の何ものでもない。戦闘にたけた者 は、常に敵の弱点を見抜き、それを活かした作戦を立てる。また、よきリーダーは、パーティーのメンバーの長所短所をよくわきまえ、それをもとに、全員が効 率よく協力できる作戦を立てるものだ。これから説明する各職業の特徴を踏まえて、適切な戦術を立てられんことを願う。
ファイターは、頑丈な重い鎧をつけ、大型の武器を振り回すことができる、ということは誰もが知っている。しかし、それだけ知っていたところで、パーティー の一員としてのファイターの役割を理解していなければ、彼の能力は十分に発揮されない。一般に、攻撃力と耐久力の高いファイターは、パーティーの最前列に 配置し、他のメンバーの盾がわりにするのがよいとされている。また、例外的に、敵の数が非常に多い場合などは、ファイターに敵陣を突破させ、まず敵のリー ダーを倒すという役割も負うことがある。
ファイターほどの力はないが、鋭い視力と敏捷性を誇るバードには、ボウ(弓矢)を持たせるのがよい。1回の攻撃で、何本もの矢を放つという早業は、バード が最も得意とするところである。
腕力に乏しいメイジは、あまり戦闘を好まない。どちらかと言えば、静かに本でも読んでいたいという人種である。しかし、うまく説得して、正義と平和のため に戦う気を起こさせたならば、これほど強い味方はない。熟練した大魔術師ともなると、たった一言の呪文で、巨大な怪物の群を全滅させてしまうほどの力を発 揮する。
ボウやボウガンなどの飛び道具、または魔法による攻撃は、敵に接近しすぎてしまうと使えなくなる恐れがある。直接体が触れあうほど接近してしまった場合、 飛び道具を構える余裕も空間もなくなるばかりか、飛び道具を使わせまいと、敵がそれを押さえ込むことが十分考えられるからである。メイジは、敵につかみか かられると、呪文を唱えるどころか、精神統一もままならない。このような事態を避けるために、飛び道具を使う者とメイジは、ファイターの後方から参戦する のが望ましい。ただし、広範囲の敵に対する強力な呪文を唱えるときには、メイジは勇気をふり絞って、パーティーの最前列に出なければならない。さもなけれ ば、敵ばかりか、味方も呪文の巻添えにしてしまうからである。


武器

防具
勇敢で経験豊かな冒険家ほど、適切でしっかりとした防具を身につける。甲冑、兜、盾、魔法の指輪、魔法の宝石などなど、高級な防具になればなるほどしっか りと身を守ってくれるが、それだけ値段も高くなる。防具には様々な種類があり、効果も様々である。

布の服(クローズ)
一般には本格的な鎧の下着として用いられる、厚手の布で作られた服である。値段が安く、着心地がいいため、これだけを着用する者も少なくないが、防具とし ての防御力は、あまり期待できない。

革の鎧
クローズよりも一段階上の防具である。値段も比較的安い。ロウで煮固めた厚手の革で作られている。

スケール(鱗状鎧)
約10センチ四方の金属板を布や革の服に縫いつけたもの。金属板がちょうど魚の鱗(スケール)のように見えるところから、こう呼ばれている。体を動かすと チヤラチヤラと音がしてうるさいが、防御力は高い。

チェーン(鎖かたびら)
小さな金属のリングをつなぎ合わせて、金属の服のように仕立てたもの。高級なものになると、ひとつひとつのリングが、しっかりとビョウで固定されている。 防御力は高いが、値段もかなり高い。

プレート(甲冑)
着る者の体に合わせて金属の一枚板から打ち出される、最も強力な防具である。当然、値段は非常に高い。また、かなり強靭な肉体の持ち主でなければ、これを 着こなすことは難しい。


体につける防具と同じ素材の兜を装着するのが一般的であるが、ビョウを打ち出すなど、攻撃的な要素を持たせた兜もある。


これにも様々な種類がある。シールドは、必ずしも戦闘で必要とされるというものではない。両手を使う武器を使用する場合、シールドはむしろ邪魔になる。ま た、ある程度の腕力がなければ、シールドを使いこなすことはできないが、これに命を救われた戦士は数知れない。


武器
冒険家にとって、最も大切な道具のひとつである。様々な種類があるから、慎重に選ばれよ。

ダガー(短剣)
ダガーには2種類ある。一般のダガーは、隠し持つ武器として重宝されている。また、敵に投げつけることもできる。マイン・ゴーシュは、ダガーよりも威力が あり、セカンドウェポンとして使用される。

ソード(剣)
昔から、最も人気の高い武器である。ロング・ソード、ショート・ソード、ツーハンデッド(2H)・ソードがある。

飛び道具
熟練した冒険家は、愛用の武器の他に、必ず飛び道具を用意している。敵の攻撃がこちらに及ぶ前に、遠く離れたところから、かたをつけてしまえるのが、飛び 道具の最大の利点である。
スリング(投石布)は、最も安くて簡単な飛び道具。弾となる小石は、どこにでも転がっている。弓矢は、固くて弾力に富むイチイの木から、森の職人が製造し ている。これをより強力にしたのが、クロスボウ(いし弓)である。射程距離も長い。弓の類は、弓に矢をつがえる手間がかかるため、接近戦のような切迫した 状況では使用不能になる恐れがある。
機械的な道具に頼りたくなければ、ダガー、スピア(槍)、アックス(手投げ斧)、フレームオイル(火炎びん)などの、手投げ式の武器を選ぶとよい。

ほとんどの武器は、それを扱う者の敏捷性によって、威力が変化する。大型の武器の場合は、敏捷性よりも強さのほうが重視されることもある。大型のソードな どは、敵の防御の隙を突いて攻撃するというよりは、防御も何も力で叩き切るといった性格の武器だからである。
ソードのように手で振り回す武器の最古の形が、クラブ(棍棒)である。クラブは天然の武器とも言える。しかし、使いようでは、かなりの働きをしてくれる。 クラブをよりスマートにして、破壊力を増すよう計算された形をしているのが、メイス(つちほこ)である。このメイスに鎖を付けたのが、モーニングスター。 自分の前に味方がいても、その頭越しに敵を攻撃できるという利点がある。これをまともに食らったら、少なくとも次の朝までは目を回していることだろう。そ して、この種の武器で最大の威力を誇るのが、ツーハンデッド(2H)・ハンマー(両手用ハンマー)。かなりの腕力がなければこれを振り回すことができない が、この破壊力は絶対的である。
ポールアーム(棒状武器)は、強い腕力を必要とする武器であるが、それだけに、その効果は大きい。人気が高いのは、ハルバード(槍斧)である。長い棒の先 に鋭い斧の刃が付いているというもので、モーニングスターと同様に、剣などの通常武器の2倍の距離の敵まで攻撃できる。


生物

ブリタニアの野生動物には、知能の低いものから、高いものまで様々あり、どれも主に人里離れた地域や海に棲息している。暗黒世界で生まれた邪心を持つ生物 は少ないが、空腹や身の危険を感じた場合は、人を襲うことがある。


陸と空の生物

ハチ
力も知能もない小さな生き物であるが、すばしっこい動きで、いつまでもつきまとってきて、なんともうるさい。ハチの武器は針である。これとて、刺されたか らといって瀕死のダメージを受けるというものでもない。一発の攻撃で容易に退治することが可能であろう。ただし、この大群に襲われた場合は、非常に危険で ある。

コウモリ
夜、群で行動する。これも、動きが素速いという点を除けば、さして手強い相手ではないが、昆虫同様につきまとわれるとうるさい。一度攻撃を始めると、相手 が倒れるまで攻撃をやめない執念深いところがある。彼等の接近は、独特の甲高い声で知ることができる。

大ネズミ
彼等の最大の武器は、すばしっこい動きと鋭い歯である。それほど力のある生物ではないが、彼等が媒介する有毒物質や病原菌で命を落とす冒険家は少なくな い。大ネズミと遭遇したパーティーのメンバーは、必ずと言っていいほど、何かしらの毒に冒される。最悪の事態は、伝染病をうつされることである。

スライム
緑色をした粘度の高い液状生物である。1匹だけをとってみれば、非力で動きの鈍いものだが、彼等は常に集団で棲息していて、攻撃によって1匹が2匹に分裂 することがあるため、なかなか手を焼かせる。スライムを倒しても戦利品はない。

大グモ
動きはのろく、力も強くはないが、体に毒を持つため大変に危険である。直接体を接することがなくても、毒を吐きかけることがあるから、注意されたい。大グ モは、貴重品を身につけていると言われている。


非常に強い毒を持ち、遠距離まで、正確な狙いで毒を吐きかける能力がある。
だが、さして狂暴なこともなく、簡単に退治することができる。
オーク
経験豊かな冒険家にしてみれば、オークは恐ろしいと言うより、うっとうしい生き物である。しつこく集団で襲いかかってくるわりには、戦う相手としての手ご たえがない。しかし、旅慣れないものは、その群の大きさや他の動物と徒党を組んでいたりすることに、恐怖を感じるかもしれない。ごくまれに、貴重品を身に つけているオークがいる。

トロル
姿は醜いが、力が強く動きも素速い巨人である。攻撃を受けた場合のダメージは大きい。しかし、耐久性に乏しいため、うまく攻撃すれば、それほど恐ろしい相 手ではない。地下に棲むのを好む習性があるが、茂みに身を隠し、通りかかる人間を襲うことも多い。トロルは宝石などの貴重品が好きで、よくそれらを身につ けている。

エティン
双頭の巨人。大変な力持ちで、大きな岩を投げつけてくる。これに当たっては、ひとたまりもない。戦う相手としては、かなりしぶといほうであろう。エティン は、いろいろと面白いものを持ち歩いている。

グレムリン
グレムリンの攻撃は、ほとんど体に感じない。だが、彼等はわざとそうしているのだ。彼等の目的は、相手を倒すことではなく食糧を盗むことなのである。常に 大きな群で移動し、人間の食糧を盗んでは猛烈な食欲でもって片っぱしから食べてしまう。貴重な食糧を奪われることが、いかに危険であるかは言うに及ばない だろう。グレムリンは、常に貴重品を持ち歩いている。

ヘッドレス
頭がなくて、いったいどうやって物を見て、音を聞き、考えるのか、まったく謎である。しかし、ヘッドレスは高い攻撃力と耐久力で人間に襲いかかってくる。 彼等も、何かしらの貴重品を持ち歩いている。

ゲイザー
宙に浮かぶ巨大な目玉の塊。もちろん、魔性の生き物である。ゲイザーは、己に襲いかかる敵に催眠術をかけ、敵同士を戦わせる。体力的な弱さを、高い知能と 特珠な肉体構造で補っているのである。

ミミック
物真似の天才である。特に宝の箱に化けるのが得意で、騙されて近づく人間に毒を吐きかける。しかし、性格が非常に臆病で忍耐力もないため、怪しいと感じた 宝の箱があったら、少し離れたところに立ち、しばらく様子を見てみるとよい。それがミミックであれば、すぐにしびれを切らして蓋を開け、自ら正体をばらす であろう。そうしたら、蓋を押さえつけて叩きのめすだけである。あとには、本物の宝箱と同様に、すばらしい宝が残っている。

リーバー
攻撃力、耐久力ともに非常に強く、鞭のように振り回す触手は、大変に危険である。また、敵に向けて稲妻を落とすという、恐ろしい魔法も操る。しかし、この 魔性の生き物にも決定的な弱点がある。リーパーは移動ができないのである。この弱点を利用して根気強く攻撃し、倒すことができたなら、それなりの戦利品が 手に入るであろう。

ウィスプ
その正体はまったく不明である。夜の聞に輝く青い光の玉は、一見、無害な自然現象のようだが、高い知能を持ち、集団で現われては冒険家のパーティーを襲う のである。攻撃力はそれほどではないが、瞬間移動の能力と、パーティーの1人を仲間に引き入れてしまう魔法はあなどれない。意外に手強い相手である。

サンドトラップ
普投は砂漠の砂の中に潜っているため、どこにいるかはわからない。しかし、生き物がそばを通りかかると、突然、砂の中から姿を現わし、強い力で砂の中に引 きずり込んでしまう。攻撃力も耐久力もかなり高い。サンドトラップを倒した跡には、財宝が埋まっていると言われるが、これを1匹倒そうと思ったら、パー ティーのメンバーを1人失うぐらいの覚悟が必要である。

ドラゴン
最強最悪の生物。遠くの空からファイアーボールを投げつけてくるため、こちらが応戦できる距離に近づく前に、かなりのダメージを受けてしまう。しかし、ド ラゴンはかなりの財宝を持っていると言われている。


海の生物

フカ
その姿を見ると、誰もが恐怖におののくが、知能は低く、さほど強い相手ではない。水中では素速い動きを見せるが、陸にいる者に危害を加えることはない。ひ とたび戦いになると、フカは死ぬまで戦い続ける。

タツノオトシゴ
美しい姿とは裏腹に、性格は狂暴で陰険である。力は強く、動きが柔軟で、知能も高い。遠くの海上から噴きかける海水による攻撃は意外に強力で、戦闘になっ た場合は、かなりの被害を覚悟しなければならない。

大イカ
長い触手による攻撃もさることながら、大イカが吐きかける毒墨は非常に強力である。知能は高いほうではないが、実に手強い相手である。

ウミヘビ
深海から突如現れて船を襲う。そのファイアーボールは強力で、島ひとつ隔てた反対岸の船にまで攻撃が及ぶ。ウミヘビを発見したときの最良の作戦は、逃げる ことである。知能が低いため、簡単にまくことができる。どうしても逃げられないときは、なるべく早く接近戦に持ち込み、ファイアーボールによる船への被害 をなるべく最小に留めるようにすることだ。


地獄からの使者

ゴースト
この世に恨みを残す未浄化の霊。肉体を持たないため、体力というものがない反面、敏捷性はずば抜けており、姿を消すという技も備えている。通常の攻撃では 効き目がないため、頭を使った作戦が必要となる。

スケルトン
ブリタニアで最もよく見かける死霊の仲間である。攻撃力と知能は低いが、並外れた耐久力には悩まされる。貴重品を身につけていることがある。

デーモン
非常に強力で動きは素速く知能が高い。また、数々の魔法も操る。中でも、仲間の召喚と、敵を思うままにあやつる魔法を得意とする。デーモンの息の根を止め ることは、非常に難しい。空を飛べるため、小さな川や浅い海などは、難なく飛び越えてくる。だから遠くに見えても気を許してはならない。デーモンが魔法に よって人間や他の生物を操作するときは、自らの魂をそれに乗り移らせるため、デーモン自身の姿は消えてなくなる。乗り移られた生物を倒しても、デーモンの 痕跡は何ひとつ残らない。


長年に渡る瞑想と研究の末に、また、平和と繁栄に通じる心と体と魂の道を探る幾千もの旅の末に、人はアバタールの8つの徳を極めることができるであろう。 では、平和と繁栄に通じる心と体と魂の道とは、どこにあるのか。己の心に潜む悪と、外界の害悪が及ぼす力に抵抗している限り、人はその道の上を正しく歩ん でいるのである。
アンクは、平和と、すべての生命への博愛の象徴である。かつて、アバタールへの道に一生をかける魂の旅人は、アンクを身につける習わしになっていた。アン クは、勇気と、善に対する忠誠心を高め、8つの徳を求めて歩く者を危険から守ると信じられていた。
8つの徳とはすなわち、以下のとおりである。

誠実さ  真実に対する無条件の尊敬。己も他人も決して裏切らない精神。
慈悲の心  あらゆる生命に対して区別なく共感する心。
勇敢さ  己の信念に基づいて行動する勇気。
公正さ  愛に裏付けされた、真実に献身する心。
献身  愛の名のもとに身を捧げる勇気。
名誉  何ものにも惑わされず、真実のために立ち上がる精神。
崇高な心  内なる存在に目を向け、真実と愛と勇気をいかに受け止めるべきかを考える心。
謙虚さ  与えられた価値観によらず、持って生まれた価値を見抜くことで、人のありかたを知る心。

ブリタニアの8つの主要な町は、それぞれがひとつの徳を信奉し、徳を称える神殿を建立している。神教は完全な静寂の中に建てる習わしになっており、町から 遠く離れた辺境地にあることが多い。そのため、かなり厳しい旅を覚悟しなければ神殿に詣でることができない場合がある。
神殿に詣でるには、それぞれの神殿に祀られている徳のマントラを唱えられなければならないという条件がある。マントラとは、瞑想の間に繰り返し唱える言葉 である。マントラを唱えることによって、心が清められ、精神が集中される。8つの徳に、8つの異なったマントラがあり、正しいマントラを唱え、正しい瞑想 をする者には、すばらしい知恵が授けられると言われている。マントラは、8つの町の住人が知っている。


魔法

魔法の起源を探ることは難しい。太古より魔法は人間の潜在的能力として存在し、ごく原始的な形ではあるが、それを意図的に操る人々がいた。しかし、その超 自然の力が公に研究されるようになったのは、近代になってからのことで、それまで一般の人々は、魔法に対しては半信半壊であった。魔法がブリタニアの重要 な学問のひとつとして確立されるようになったのは、数々の大発見が話題になり、大規模な魔法が相次いで公開されるようになってからのことで、これは、太古 よりの地道な研究の結果といえよう。今日ではもう、魔法の存在を疑う者はいない。
しかし、学問としての魔法の研究は始去ったばかりである。魔法の知識や実践に関して、わかっていないことが多く、魔法を大系的に教えることのできる学校も 数少ない。魔法の修得は、いまだに困難を極める。魔法を志す者は、辺境の地に住む著名なメイジに弟子入りするのが、いまだに一般的とされているのだ。それ とて、魔法を敢えてもらえるという保証はどこにもないのである。

魔法言語
魔法で最も研究の進んでいる分野は、言語である。7年間にわたる、ブリタニア全土に伝わる魔法の呪文などをもとにした調査の結果、少なくとも今日知られて いる魔法の呪文は、すべて24種類の音節の組み合わせによって構成されることがわかった。それぞれの音節には、特殊な力が備わっていると言われ、確かな知 識のない者が不用意にこれを組み合わせて口にすると、非常に危険な状態を招く恐れがある。
ここに24の音節を列挙する。それぞれの意味と発音を伴記しておいたので、参考にされたい。
音節 意味 発音
AN 否 アン
BET 小 ベト
CORP 死 コアプ
DES 下 デス
EX 自由 エクス
FLAM 炎 フラム
GRAV 力 グラブ
HUR 風 フア
IN 創造 イン
KAL 求 カル
LOR 光 ロア
MANI 生 マニ
NOX 毒 ナクス
POR 動 ポア
QUAS 幻 クワス
REL 交換 レル
SANCT 防 サンクト
TYM 時間 ティム
UUS 上 ウス
VAS 大 バス
WIS 知 ウィス
XEN 生物 ゼン
YLEM 事 アイレム
ZU 眠 ズー

魔法の調合
秘薬とは、薬草を魔法の調合用に精製した物質である。ほとんどが、秘薬店で簡単に手に入れることができるが、珍しいものになると、入手がかなり困難であ る。以下に主な秘薬の名前と、その一般的な効能を紹介する。

黒真珠……推進力
一般の真珠貝から、ごくまれに採取される黒い真珠。物を遠くへ飛ばす推進系の魔法に用いられる。

血の苔……運動力
森の奥深く、または温暖な湿地帯に生息する苔類。物体の動きを強める運動系の魔法に用いられる。

にんにく……防御力
ごく日常的な香りの強い薬草。悪霊を退散させる効能がある。

高麗人参……治癒力
古くから、広範囲の治療に効果のある薬草として利用されている。

マンドレイク……力
沼地にのみ生息する、大変に貴重な薬草。魔法の効力を増幅する。

ナイトシェード……毒、幻想
2つの月が、正確に、ある地点にさしかかったときにだけ現われるという、大変に珍しい毒性の菌類。満月の深夜にある特定の場所へ行くことができれば、これ を安全に採取できると言われている。幻想を生み出す魔法に用いられる。

くもの糸……拘束力
ニワクモが出す糸。強い結合力や牽引力を必要とする魔法に用いられる。他の種類のくもの糸には、この魔力は備わっていない。

硫黄の灰……エネルギー
火山活動の跡に残される物質。特に、強力な魔法に必要なエネルギー源となる。

呪文
呪文は、その難易度によって分類される。これは裏を返せば、危険度による分類とも言えるのである。そこで近年、より安全に段階を踏んで修得できるよう、呪 文はその難易度や危険度などから8段階に分類された。それぞれの段階をサークルと呼び、第1サークルから順に、段階が上がるごとに難易度が高くなる。
何をもって呪文の難易度とするかには、いろいろな規準があるが、最もわかりやすい規準として、マジックパワーの消費量がある。サークルが高くなればなるほ ど、マジックパワーを多く消費するのである。個人のマジックパワーは、知性の高さによって決定される。メイジの場合は、知性の高さがマジックパワーに相当 する。吟遊詩人は、知性の半分がマジックパワーとなる。ちなみに、戦士には魔法の能力はほとんどない。マジックパワーは、呪文を唱える毎に消耗されるた め、続けて使用できる魔法の回数には限度があるということを覚えておく必要がある。消費されたマジックパワーを回復するには、休息をとることである。
次に、サークルごとに段階分けされた呪文の一覧表を掲載した。簡単な用法や使用条件、使用する秘薬なども伴記しておいたので、参考にされたい。
一覧表を見るにあたっての注意を、いくつか述べておこう。
秘薬表は、調合表ではないから間違えぬように。ここには使用する秘薬を列記したまでで、それぞれの分量などは書かれていない。秘薬の分量を間違えると、思 わぬ危険を招くから、注意すべし。
すべての呪文が、あらゆる条件のもとで使えるわけではない。一瞬たりとも気を抜くことができない戦闘の最中に、高い集中力が要求される呪文を唱えることな どは、物理的に不可能である。そんな状況では、戦場の空気を応用した速攻的な呪文の使用のみが許される。このように、それぞれの呪文と、使用状況の関係 を、よく把握しておくことが大切である。
一覧表の“使用制限”の欄には、呪文が使用できる場所や状況が限られている場合、それを記している。何も記されていない場合は、いつでもどこでも使用でき ることを表わしている。「ダン/戦」と書かれたものは、ダンジョン内と戦闘中に使用できることを表わしている。

呪文一覧表
呪文 効果 使用条件 秘薬
第一サークル
AN NOX 解毒   人参、にんにく
AN ZU 覚醒 戦闘 人参、にんにく
GRAV POR マジックミサイル 戦闘 灰、真珠
IN LOR 光 戦闘以外 灰
MANI 治療   人参、糸

第二サークル
AN SANCT 解錠   灰、苔
AN XEN CORP 解呪 戦闘 にんにく、灰
IN WIS 所在 戦闘以外 ナイトシェード
KAL XEN 動物召喚 戦闘 糸、マンドレイク
REL HUR 風向 戦闘以外 灰、苔

第三サークル
IN FLAM GRAV 炎の壁 ダン/戦 真珠、灰、糸
IN NOX GRAV 毒の壁 ダン/戦 ナイトシェード、糸、真珠
IN POR 瞬間移動   糸、苔
IN ZU GRAV 眠りの壁 ダン/戦 人参、糸、真珠
VAS FLAM 火の玉 戦闘 灰、真珠
VAS LOR 強光   灰、マンドレイク

第四サークル
AN GRAV 解壁   真珠、灰
DES POR 下降 ダンジョン 苔、糸
IN SANCT 防御   灰、人参、にんにく
IN SANCT GRAV 防御壁 ダン/戦 マンドレイク、糸、真珠
UUS POR 上昇 ダンジョン 苔、糸
WIS QUAS 霊視 戦闘 糸、ナイトシェード

第五サークル
AN EX POR 魔法錠   灰、苔、にんにく
IN BET XEN 蜂軍 戦闘 苔、糸、灰
IN EX POR 魔法解錠   灰、苔
IN ZU 催眠 戦闘 人参、ナイトシェード、糸
REL TYM 加速 戦闘 灰、マンドレイク、苔
VAS MANI 強い治癒 戦闘以外 人参、糸、マンドレイク

第六サークル
AN XEN EX 誘惑 戦闘 真珠、ナイトシェード、糸
IN AN 魔法封じ   にんにく、マンドレイク、灰
IN VAS POR YLEM 地震 戦闘 苔、灰、マンドレイク
QUAS AN WIS 混乱 戦闘 マンドレイク、ナイトシェード
WIS AN YLEM 透視 戦闘以外 マンドレイク、灰

第七サークル
IN NOX HUR 毒風 戦闘 ナイトシェード、灰、苔
IN QUAS CORP 恐怖 戦闘 ナイトシェード、マンドレイク、にんにく
IN QUAS WIS 鳥瞰 戦闘以外 ナイトシェード、マンドレイク
IN QUAS XEN 分身 戦闘 マンドレイク、糸、苔、人参、灰
SANCT LOR 透明 戦闘 マンドレイク、ナイトシェード、苔
XEN CORP 殺傷 戦闘 真珠、ナイトシェード

第八サークル
AN TYW 時間停止   マンドレイク、にんにく、苔
IN FLAM HUR 火風 戦闘 灰、苔、マンドレイク
IN MANI CORP 蘇生 戦闘以外 にんにく、人参、糸、灰、苔、マンドレイク
IN VAS GRAV CORP 消精 戦闘 マンドレイク、ナイトシェード、灰
KAL XEN CORP 召喚 戦闘 マンドレイク、にんにく、苔、灰
VAS REL POR ゲートトラベル 戦闘以外 灰、真珠、マンドレイク



The Spell Book of the Eight Circles
8サークル式呪文教本

第1サークル
AN NOX:解毒
古代から、人々は毒の恐怖と戦ってきた。そのため、この解毒の呪文は、比較的早くから知られていたのである。使用する秘薬はにんにくと高麗人参。どこにで もある、ごく日常的な薬草である。この呪文は、1度に1人に対してしか唱えることができないため、複数の人間が毒に冒された場合を考えて、人数分以上を調 合しておくことをお薦めする。毒に冒された者は、かなりの体力を消耗している。残念ながら、この呪文では体力の回復までは行えないので、解毒したあとは、 しばらく静かに休ませるか、治癒の呪文で体力を与えてやる必要がある。くれぐれも、解毒後すぐに体を動かすような無茶は避けるべし。

AN ZU:覚醒
眠っている仲間を起こすための呪文である。使用する秘薬は高麗人参とにんにく。実に単純な呪文であるが、いくつかの使用上の制約がある。まず、1度に1人 に対してのみ有効であること。次に、同じパーティーのメンバーにしか使えないこと。そして、予防効果がないことである。つまり、眠ってしまいそうなときに これを唱えても、眠気を取り除くことはできないということだ。

GRAV POR:マジックミサイル
実戦において第1サークルのメイジは、まだ魔法よりも、武器を使用した攻撃のほうが効果が高い。この呪文では魔法攻撃のコツと感覚を学んでいただきたい。 最初のうちは、敵に与えるダメージをあまり期待してはならない。入門用の呪文ではあるが、精神の集中度によっては、大きなダメージを与えることができる。 また、将来においては、さらに大きなダメージを与える手軽な武器となる。経験を積めば、それにつれて威力が増すのである。
使用する秘薬は、目標にダメージを与えるエネルギー源となる硫黄の灰と、目標に向かってエネルギーを射出する推進力となる黒真珠である。

IN LOR:光
光を生む呪文である。短い時間ではあるが、どのトーチよりも明るく輝いて闇を照らしてくれる。注意していただきたいのは、これはトーチの代りとなっても、 火の代わりにはならないということだ。そもそも火とはまったく性質の違う現象であるため、この呪文によって生み出された光は、熱を発しないのである。
使用する秘薬は、硫黄の灰のみである。身につけるものでも何でもよい、光源にしたい物の上に硫黄の灰をひとつまみ乗せ、IN LORと唱えながらリズミカルにそれを手でこする。間もなく、まばゆい白い光が指の間から洩れ出よう。

MANI:治療
最も初歩的な治癒の呪文である。解毒の作用はないが、極度に体力を消耗し危険な状態にある仲間の急場をしのいでやるには、十分な効果がある。また、レベル の高いメイジの間でも、この呪文は重宝がられている。精神集中などもほとんど必要ないほど単純な呪文であるため、戦闘中でも使用できるからだ。
使用する秘薬は、くもの糸と高麗人参。調合、使用とも、特に気をつけるべき点はない。

第2サークル
AN SANCT:解錠
闇の生物たちは、人間から奪った金品を宝の箱に入れて持ち歩いている。ブリタニアの人間は、元来、物欲というものに縁がない。盗られた物の所有権を主張す る人間などはいないのである。その証拠に、闇の生物を退治して得た宝の箱の中身は、退治した人間に帰属すると認められている。これが冒険家の、公の報酬に もなっているわけである。
しかし、宝の箱には、罠が仕掛けられている場合が多い。よく見かけるものに、強酸を噴き出すもの、毒ガスを噴き出すもの、爆弾、毒ガス爆弾などがある。先 の2つは、箱を開けた者ひとりを狙ったものであり、後の2つは、箱の周りにいる人間全員を狙ったものである。
使用する秘薬は、血の苔と硫黄の灰。内側に仕掛けられた罠に秘薬を染み込ませ、罠を無力化するのである。この呪文は、機械式の錠を開ける効果もあるため、 宝の箱ばかりでなく、錠の掛かったドアなどの解錠にも使用できる。

AN XEN CORP:解呪
闇の力を持つ者は、死霊を操る術に長けている。腐敗した死骸や朽ちた魂を、あたかも生きているかのように操作し、善に属するあらゆるものを破壊するための 徴用兵として利用しているのである。
彼等は、生きているのではない。悪の意志に操られるまま、己の置かれた惨めな境遇に気づくこともなく、ただ動かされているだけなのだ。それゆえ、どのよう な強い敵に対しても、ひるむことなく立ち向かってくるのである。そこでこの呪文を唱えることによって、彼等に痛みと恐怖の感情を与えてやる。すると、元 釆、勇気や忠誠心といった高級な精神を持ち合わせていない彼等は、一目散に戦場から逃げ出すことであろう。
高い知能を有する者であれば、これは決して難しい呪文ではない。秘薬の調合も、実に簡単である。にんにくと硫黄の灰を同量、生命と美を賛美しながら混ぜ合 わせればよい。

IN WIS:所在
近年になってブリタニアに定着した、緯度と経度による位置の表示方法に基づいて、己の現在位置を示す呪文である。いわば、旅のナビゲーターである。使用す る秘薬はナイトシェードのみ。ただし、ナイトシェードは、使用直前までガラスの瓶の中で樹液に浸し、生きたまま保存しておかなければならない。

KAL XEN:動物召喚
メイジのレベルもこのくらいに上がってくると、戦闘において、パーティーがメイジに寄せる期待は一気に大きくなる。責任も重大になり、意志の弱いメイジ は、つい逃げ出したくなることだろう。しかし、そんなときにちょうどいい攻撃の呪文がこれである。
動物召喚とは、ネズミやヘビなどの小動物を呼び集め、敵を襲わせることを言う。この手の動物に嫌悪感を持つ者も多かろうと思うが、召喚された動物たちは、 こちらの命令に絶対服従してくれる。敵は、この動物たちによってかく乱されることであろう。
使用する秘薬はマンドレイクとくもの糸。これらを、動物たちの忠誠心を信じつつ混ぜ合わせる。召喚される動物は、マンドレイクを採取した場所によって異な る。

REL HUR:風向
海を航行することが多いメイジは、これを頻繁に使用する。船の航行を左右する風向きを、一定時間、思う通りの方向に向かせるという呪文である。
使用する秘薬は血の苔と硫黄の灰。まず、板切れに血の苔で一文字の線を引く。その板を、木かマストに立てかける。硫黄の灰が風に吹かれて板に降りかかるよ うに、風向きをよく見ながら灰を少しずつ手から落としていく。そうして、望む方向に向かって呪文を唱えると、風はその方向に吹きはじめるのである。

第3サークル
IN FLAM GRAV:炎の壁
これを含めて、エネルギーの壁を出現させる呪文が3つある。これはなかでも、任意の場所に、真っ赤に燃える炎の壁を出現させるという、最も強力なものであ る。この壁が現われた地点にいる生物は、たちどころに炎に包まれてしまう。また、この壁を通り抜けようとする者も、高温の炎に焼かれてしまうのである。
敵に対しては非常に強い防壁となってくれるが、同時に味方にも炎の熱は影響するため、あまり味方の近くに出現させないようにすることが肝心である。
使用する秘薬は、硫黄の灰と黒真珠とくもの糸である。灰と真珠は、ひと塊になって特定の場所で燃える炎を生み出し、糸が炎の持続性を高める役割を担ってい る。炎の上で秘薬々調合すると、いっそう強力な炎の壁を作ることができる。

IN NOX GRAV:毒の壁
これも、エネルギーの壁のひとつ、強い刺激臭を伴う毒ガスの壁を任意の地点に出現させる呪文である。ここを通る者は、みな毒に冒される。炎の壁と同様に、 その威力は敵にも味方にも区別なく及ばされるので、厳重な注意が必要である。
使用する秘薬は、猛毒のナイトシェードとくもの糸と黒真珠である。ナイトシェードと真珠がひと塊の濃度の高い毒ガスを形成し、糸が特定の位置にそれを留ま らせておく。

IN POR:瞬間移動
パーティー全員を、特定の方向に一定の距離だけ瞬間移動させる呪文である。行き先が開けた場所でない場合や、町やダンジョンの中では、この呪文は使用でき ない。移動のエネルギーを空中から引き出すために、狭い空間からは十分なエネルギーを得ることができないからだ。また、戦闘中の使用は、移動の効果を激減 させる。成功しても、呪文を唱えた本人ひとりが、かろうじて戦闘地域内を移動できるにすぎない。
使用する秘薬は、くもの糸と新鮮な血の苔。目を閉じて、今いる場所からパーティーが姿を消す状況を強く念じる。すると次の瞬間には、念じた通りにパー ティーの姿は消え、別の場所に姿を現わしていることであろう。

IN ZU GRAV:眠りの壁
エネルギーの壁のひとつではあるが、殺傷能力は持たない。紫の霧状の壁を通る者を、深い眠りにつかせてしまうという催眠の壁の呪文である。しかし、戦闘中 に眠ってしまうことが何を意味するか、これは言うに及ぶまい。
これも、他のエネルギーの壁と同様、敵にも味方にも効果を及ぼすので、注意されたい。
使用する秘薬は、高麗人参と、くもの糸と、黒真珠。濃縮したあくびの息と、眠くなると日の中でゴロゴロする眠りの塵を混ぜると、効果は倍増する。

VAS FLAM:火の玉
大きな炎の玉を作り、敵にめがけて射出するという攻撃の呪文である。比較的単純な呪文ではあるが、狙った敵は外さず、相当なダメージを与えることができ る。
使用する秘薬は、硫黄の灰と黒真珠。灰と真珠ひと粒を火にかけ、真珠のまわりに灰を焼き付けるのである。これひと粒が1回分である。たくさん作って保存し ておくとよい。

VAS LOR:強光
IN LORとは光の明るさも質も同じだが、より長持ちする明かりの呪文である。使用する秘薬はマンドレイクと硫黄の灰。貴重なマンドレイクが、光の寿命を格段 に伸ばしてくれるのである。マンドレイクと灰を混ぜて、あとはIN LORと同じ作業をすればよい。

第4サークル
AN GRAV:除壁
エネルギーの壁によって行く手を阻まれるという状況は、冒険家にとってはよくあることである。この呪文は、エネルギーの壁からエネルギーを抜き取ることに よって、壁を消滅させるというものだ。
使用する秘薬は、硫黄の灰と黒真珠。灰がエネルギーを中和し、真珠が特定の場所に存在するエネルギーを吸い取る。この2つの作用によって、エネルギーの壁 はきれいに消え去るのである。

DES POR:下降
UUS POR:上昇
冒険には危険がつき物であるが、パーティーのリーダーが勇敢であればあるほど、危険に巻き込まれることが多い。特に、逃げ場のないダンジョンでは、危険は 倍増する。そこで、この2つの呪文を数多く準備しておく必要が出てくる。DES PORは、ダンジョンのひとつ下の階へパーティーを瞬間移動させる呪文。UUS PORは、ひとつ上の階へ瞬間移動させる呪文である。それぞれ、今いる地点の真下と真上に移動するため、移動先に壁などがある場合は、移動は失敗に終わ る。また、この呪文は、多少の時間を必要をするため、戦闘中に唱えることは不可能に近い。
使用する秘薬は、血の苔と、くもの糸。苔が移動力を生み、糸はパーティーが固まって移動できるように、メンバーをしっかりとまとめてくれるのである。

IN SANCT:防御
己よりも遥かに強い敵と対戦しなければならないことも、長い旅の間にはある。これは、そんなときに、パーティーのメンバー全員の防御力を一時的に高め、敵 と対等に戦えるようにする呪文である。この呪文の効果は、戦闘中のみであり、それもあまり長く続かない。そのため、呪文の効果があるうちに、できる限りの 攻撃を加えることが大切である。
使用する秘薬は、硫黄の灰と高麗人参とにんにく。人参には体の動きを速くする作用がある。これらを、メイジとパーティーで一番強い戦士の2人で混ぜ合わせ ることによって、高い効果をあげることができる。

IN SANCT GRAV:防御壁
非常に強力な防御壁を作り出す呪文である。青く輝くこの壁を通過することは、誰にもできない。ダンジョンの通路をふさぐのにちょうどよく、ダンジョン内で しばらく安全な時間が欲しいときなどには、大変に便利である。
使用する秘薬は、マンドレイクと、くもの糸と、黒真珠。マンドレイクは、なるべく年をとったしっかりしたものが望ましい。糸は壁の強さを保ち、真珠は壁の 位置を定める。

WIS QUAS:霊視
姿を消すマントを着て肉眼では見えなくなっている敵を、霊的な視界で発見する呪文である。
使用する秘薬は、ナイトシェードと、くもの糸。ナイトシェードは細かく刻んで、紙のように薄く延ばす。このとき、形が崩れないように糸を混ぜるのである。 延ばしたナイトシェードにレース状に切れ込みを入れて、太陽の光で乾操させると、キラキラと輝く細かい結晶になる。これを、呪文を唱えながら空中に振りま くと、姿を消している敵が見えてくるのである。

第5サークル
AN EX POR:魔法錠
ほぼあらゆる種類のドアに使用できる、魔法の錠である。この呪文をとなえることで、通常の機械式の錠も魔法の錠にすることができるため、鍵の持ち主にさ え、ドアを開けられなくしてしまうことも可能である。
使用する秘薬は、硫黄の灰と血の苔とにんにく。低く雲がたれ込める日に、1年中日のささない谷川のほとりで、灰と苔を混ぜ合わせる。この世のどのような生 物も聞いたことがないような旋律を作り、それを唱えながら、灰と苔の混合物に、にんにくを練り合わせるのである。これによって、解錠の呪文以外のどのよう な手段をもってしても開かない、この世にふたつとない魔法の錠ができるのである。にんにくを練り合わせるときの旋律が、鍵のパターンに相当するため、でき れば、旋律は毎回変えるほうがよい。

IN BET XEN:蜂軍
体は小さいが攻撃力の強い蜂の大群を4つ呼び出すという、攻撃用の呪文である。それぞれの群は、己のターンになると、こちらが指示を出すまでもなく自ら敵 に襲いかかる。その蜂の数の多さに、敵は息もできなくなる。
使用する秘薬は、硫黄の灰と、血の苔と、くもの糸。灰は生命を生み、苔は群を作る。糸は蜂の忠誠心を養うのである。蜂の攻撃力を増すために、日の当たらな い沼から汲み出した淀み水を少し混ぜてやるとよい。

IN EX POR:解錠
魔法の錠を開ける呪文である。この呪文の原理をわかりやすく説明すると、錠の構造を調べ、それを破壊するのに必要な道具を生み出すということになる。
使用する秘薬は、硫黄の灰と血の苔。これらを、誰もいない、漆黒の闇の中で混ぜ合わせるのである。

IN ZU:催眠
複数の相手に効果を及ぼすものとして初めて開発されたこの呪文は、かぐわしいケシの香りで、たいていの生物を眠らせてしまうというものである。人間でも、 相当に意志が強くなければ、簡単に眠らされてしまう。
使用する秘薬は、ナイトシェードと、高麗人参と、くもの糸。満ち潮と新月が重なる深夜に採れたナイトシェードに、人参と糸を混ぜ合わせ、塩水で湿り気をつ けて、砂を少々混ぜてやる。これを月の光で乾操させるのである。この呪文は、敵味方の区別なく効果を及ぼすため、唱える場合は、十分に注意する必要があ る。

REL TYM:加速
いつでも、どこでも、パーティーの行動速度を2倍にする呪文である。特に戦闘においては、敵が1回攻撃をしてくる間に、こちらは2回攻撃できるようになる のだから効果は高い。また、見張りの目を盗んで何かの行動をとらなければならないような場合にも、大変に有効である。
使用する秘薬は、硫黄の灰と、血の苔と、マンドレイク。灰はエネルギーを生み、苔は動きを生み、マンドレイクは効果を高める。

VAS MANI:強い治癒
失われた体力を完全に回復させる呪文である。この奇跡の呪文を唱えることができるのは、十分に魔法の経験を積み、そのうえ解剖学の知識を持つメイジだけで ある。解毒の作用はないが、近くのヒーラーにたどり着くまでの間、体力を維持させることができる。
使用する秘薬は、マンドレイクと、高麗人参と、くもの糸。マンドレイクが効果を非常に高いものにしているが、マンドレイクの使用には、同時に高度な調合技 術を必要とする。この呪文を唱えるには、強く治癒を念じることが大切である。ときとして長い時間を要するため、戦闘中の使用は不可能である。

第6サークル
AN XEN EX:誘惑
戦闘において、敵の心を操作して敵どうしを戦わせるという呪文である。戦術として、これほど効果的なものはないであろう。特に、己よりも数段強い敵や、悪 魔系の、狡猾、残忍で非常に高い知能を持つ敵を前にしたときなどには、この呪文は最大の効果を発揮するはずである。ところが、世の中はそう甘くない。その ようなレベルの高い相手には、この呪文はほとんど効果がないのである。せいぜい、頭の悪い雑魚どもを混乱させる程度である。しかも、それとて、誘惑した敵 のコントロールは完全ではなく、困難を伴う。
ただ、これが確実に効果を示すのは、敵に誘惑の呪文をかけられてしまった仲間の心を取り戻すときである。そのような状況を考慮すると、この呪文が非常に必 要度の高いものであることがわかるはずである。
使用する秘薬は、ナイトシェードと、黒真珠と、くもの糸。ナイトシェードは敵の心を惑わし、黒真珠は敵の体をコントロールし、くもの糸は、敵にこちらへの 忠誠心をもたらす。これらを丁寧に混合すること。

IN AN:魔法封じ
附近一帯に、魔法の力を押さえ込む空気を満たす呪文である。これが作用している間は、敵であろうと味方であろうと、魔法がまったく使えなくなってしまう。
使用する秘薬は、マンドレイクと、にんにくと、硫黄の灰。まずマンドレイクを採取し、その根ににんにくをすり込む。これを湿った黒い布に包んで数時間寝か せ、深夜に、細かい粉状にした灰と混ぜる。これを羊皮紙の上で乾燥させ、乾いた頃に、混合物をのせたまま羊皮紙を円錐状に折り、そのまま保存する。呪文を 唱えるときに、羊皮紙の円錐の先をちぎって大きく振り回し、混合物が広い範囲に飛び散るようにする。

IN VAS POR YLEM:地震
戦場に大きな地震を起こす呪文である。かなり広い範囲を強く振動させるため、物陰に隠れていようとも、何をしていようとも、敵はこの災いから逃れることは できない。
使用する秘薬は、マンドレイクと、硫黄の灰と、血の苔。マンドレイクは、外的制限をまったく受けずに、伸び伸びと成長したものが望ましい。そうして育った ものは、この呪文で大変に重要な意味を持つ繊維がしっかりしているからである。それに灰と苔を加えて、すり鉢ですり合わせる。どの材料も、まったく見分け がつかなくなるまで、入念にすり合わせることが大切である。

QUAS AN WIS:混乱
戦闘において、敵の理性に働きかけ、作戦や忠誠心を忘れさせる呪文である。これによって敵は、思考に混乱をきたし、近くにいる者を手当たり次第に攻撃する ようになる。この呪文がはっきりと効果をあらわすのは、大ネズミやオークなどの下等な生物である。知能の高い相手には、ほとんど効果がないと思っておくの が無難であろう。
使用する秘薬は、マンドレイクと、ナイトシェード。実戦経験の豊富なメイジにのみ使用可能な呪文である。

WIS AN YLEM:透視
パーティーの一員としてメイジは、戦闘能力と治癒能力のほかに、パーティーを安全に目的地へ導くという能力も大いに期待される。これは、そのための呪文で ある。深い森や、高い山や、建物の壁などにさえぎられて、普通では見えないところが、ほんの短い時間ではあるが、見えるようになる。どんなに厚い壁も、ど んなに頑丈なドアも、どんなに暗い夜も、この呪文の前にはガラス同然である。
使用する秘薬は、マンドレイクと、硫黄の灰。十分に成熟したマンドレイクと灰を、澄んだ雨水で煮る。湯気が昇り始めたら、その湯気を小さなガラスの箱に封 じ込める。呪文を唱えるときに、箱を開けるのである。この呪文が作用する時間はほんの一瞬であるため、かなりの高い集中力が要求される。

第7サークル
IN NOX HUR:毒風
呪者の手から前方約45度の角度で、猛毒の風を発生させる呪文である。この風が吹く範囲内にいる者は、敵味方を問わず、毒に冒される。毒の力は非常に強い ため、使用には十分に注意を払うべし。また、高度な熟練度も必要である。さもなくば、仲間の命をも奪いかねない。
使用する秘薬は、ナイトシェードと、血の苔と、硫黄の灰。ナイトシェードは大量に使用する。血の苔はよく潰し、灰はよく乾壊されたものを用いること。

IN QUAS CORP:恐怖
戦闘において、幻想は大変に強力な武器となる。これは、敵の目にうつる味方の姿が、身長4メートルの巨人になるという呪文である。剣が振り下ろされる様 は、あたかもギロチンのように感じられ、スタッフは大木に見えるであろう。敵は度胆を抜かれて退散する。ただし、この呪文が通用するのは、幻覚と実物の区 別がつかない程度に知能の弱い生物に対してのみであることを、お忘れなきよう。
使用する秘薬は、マンドレイクと、ナイトシェードと、にんにく。ナイトシェードには幻覚を起こさせる作用があり、にんにくはそれに恐怖感を加味する。マン ドレイクには、それらの作用を高める働きがある。

IN QUAS WIS:鳥瞰
ブリタニアには、地上数百メートル上空からの世界の鳥瞰図、つまり、空を飛ぶ鷲の目から見た世界の姿を映し出す魔法の水晶玉があると言われている。それは 幻想であり現実である。つまり、水晶玉に浮かび上がる像は虚像ではあるが、そこに見える世界の姿は本物なのである。この呪文は、水晶玉を用いることなく世 界が鳥瞰できるものである。
使用する秘薬は、マンドレイクと、ナイトシェード。マンドレイクは特に薬効の強いものを選び、ナイトシェードは螺旋状の柄の部分だけを用いる。深夜、これ らに冷たい湧き水を7滴加えて混ぜ合わせる。そのまま乾燥させてできた細かい粉末を布の袋に入れて保存する。呪文を唱えるとき、鳥瞰したい地点にこれを撒 くのである。
この呪文を、町や建物やダンジョンなどの構造物の中で唱えると、その呪者がいる階の平面図が、目の前に浮び上がる。

IN QUAS XEN:分身
幻想の呪文の一種で、仲間や敵の分身を作る。生み出された分身は、本物と寸分違わぬ姿をしていて、自ら考え行動し、戦い、血を流す。味方の分身を作ること は、味方を1人増やすということであるから、戦闘においては大変にありがたい呪文なのであるが、その前に、分身と元の者との奇妙な関係を、よく理解してお く必要がある。分身は、元の人間とは関係なく独自のターンを持ち、独立した行動をとる。しかし、分身が受けたダメージは、そのまま元の人間に影響し、分身 が死ぬことがあれば、元の人間も死んでしまうのである。
これが、敵の分身であった場合は、また違う。敵の分身は、それぞれ独自に行動するところまでは味方と変わりないが、ダメージを受けても、死んでしまって も、元の者には一切影響がない。まったく別個の生き物として行動できるのである。このことにも、十分に注意を払っておくべきであろう。
使用する秘薬は、マンドレイクと、くもの糸と、血の苔と、高麗人参と、硫黄の灰。糸と人参が、幻想に肉体を与える。灰は活力を与え、苔は行動を起こさせ る。これらを混ぜ合わせて、乾操させ、粉末にしておく。
呪文を唱えるときは、粉末を静かに風に乗せる。風に来った粉末が最初に接触した者の、分身が出現するのである。

SANCT LOR:透明
光の道筋を曲げて、人間の体を迂回させることによって、その者を見えなくしてしまう呪文である。つまり、透明人間だ。
使用する秘薬は、マンドレイクと、ナイトシェードと、血の苔。ナイトシェードは漆黒の闇の中で採取したものを用いる。苔は、光を屈折させるために欠かせな い材料なのである。呪文を唱えるときに注意しなければならないことは、その素振りを誰にも見られないようにすること。そして、口を動かさずに呪文を唱える ことである。

XEN CORP:殺傷
敵の強さ、大きさ、耐久力に関わらず、ほぼ確実に命を奪う恐ろしい攻撃の呪文である。これから逃れることができるのは、高度な呪文の知識を持ち、それに対 抗できる強い意志と高い知性のある者だけである。それとて、確実に逃げられるという保証はない。
使用する秘薬は、ナイトシェードと、黒真珠。一度も光に当たらずに育ったナイトシェードと真珠を混ぜ合わせ、鉛のカプセルに詰め、黒い蜜蝋で封印する。呪 文を唱えながら、このカプセルを敵に投げつけるのである。

第8サークル
AN TYW:時間停止
時間を止めるという、おそらく最も困難な呪文であろう。かつてブリタニアの科学者は、宇宙の力を自由に操る研究に没頭していた。しかし、宇宙について知れ ば知るほど、その力の絶大さを知ることとなり、それを操ろうとする考えが、いかに無謀であるかを身に染みて感じたのであった。この呪文は、そんな勇敢な科 学者たちに贈る、宇宙の力の操作に関するひとつの答えである。実際に、時間を止めることなく、そこにいる者の行動を、ある一定時間だけ凍結してしまうとい う、まったく別の角度からの時間への挑戦である。
呪文を唱えると、すべての生物は、その場で動きを止める。しばらくたって呪文の効力がなくなると、すべては元通りに動き始めるのだ。時間が止まってしまっ たのと、結果的にはまったく同じことである。もちろん、呪文を唱えたパーティーだけは、自由に行動できる。そうでなければ、このような呪文の意味はないで はないか。
使用する秘薬は、マンドレイクと、血の苔と、にんにく。苔は保存状態のよいものを用いるべし。

IN FLAM HUR:火風
高温の炎が風の状態となって、呪者の手から前方約45度の角度で扇状に噴出される呪文である。この風に当たったものはみな、全身を焼かれて死ぬ。たとえ生 きていたとしても、重度の火傷のために、長くは生きられないであろう。
使用する秘薬は、マンドレイクと、硫黄の灰と、血の苔。これらを、鉄鍋に入れ、高温で煮詰めるのである。

IN MANI CORP:蘇生
数々の困難を切り開き、厳しい修行を重ねてきたメイジに対する報酬は、いかほどのものであろうか。8つのサークルを極めた者に対して、ここにひとつの報酬 を授けよう。死の反転、蘇生の呪文である。ただしこれは、極度の集中力と心の平穏を必要とするため、決して戦場では行なわないように。
使用する秘薬は、マンドレイクと、にんにくと、くもの糸と、高麗人参と、硫黄の灰と、血の苔。よく晴れた日にマンドレイクをザルに入れ、澄んだ湧き水に浸 す。そして、病原菌や悪霊を払うにんにく、生命をつなぎとめる糸、体力を蘇らせる人参、生命を復活させる灰、魂に再び活力を呼び起こさせる苔を、ひとつず つ加えていく。
湧き水からザルを上げ、そのまま乾燥させると、その中に小さな透き通った結晶ができる。それを、倒れた仲間の額に来せ、静かに呪文を唱えるのである。息を ふき返した仲間は、即座に治癒の呪文によって体力の回復をはかってやる必要がある。

IN VAS GRAV CORP:消精
最も強力な死の兵器である。己自身の体力と生命力によって生きている生物の精力を一瞬のうちに消費させ、確実に死に致らしめるという呪文である。そのた め、自然の法則に逆らって生きる死霊の類や、高度な知能でもって呪文を跳ね返すことのできる生き物には、この影響を受けないものもいる。
使用する秘薬は、マンドレイクと、ナイトシェードと、硫黄の灰。雷雨の深夜に採取されたマンドレイクを、ボウフラの湧いた沼に発生したスライムに漬け込 み、漆黒の闇夜に採取したナイトシェードでくるむ。これに灰をまぶして、墓の上に一晩寝かせる。誰にも発見されずに夜を越すことができたなら、そこにはネ バネバと糸を引く、死と恐怖の塊ができている。

KAL XEN CORP:召喚
動物召喚の呪文と基本的には同じものであるが、こちらが召喚するものは、ヘビやネズミではなく、本物の悪魔である。悪魔を味方に引き入れ、悪と戦うように 仕向けるには、かなりの力量が必要とされる。召喚された悪魔は、本来持てる力を100パーセント発揮することはできないが、うまくすれば、強力な火の玉の 呪文を操り、敵に立ち向かってくれる。
使用する秘薬は、マンドレイク、にんにく、血の苔、硫黄の灰。ダンジョンなどの地下深くにまで通じている穴のそばで採取されたマンドレイクに、にんにくと 苔と、できるかぎり強い糸を加えて混ぜ合わせる。水分をある程度蒸発させたら、それで翼のある悪魔の像を作る。呪文を唱えるときに、この像を高々と掲げる のである。するとどこからか、悪魔の叫び声が聞こえてくる。

VAS REL POR:ゲートトラベル
ムーンゲートのある場所へ瞬間移動するこの呪文を使用する場合は、魔法の知識とは別に、月とムーンゲートとの関係についても、正しい知識を持っている必要 がある。
使用する秘薬は、黒真珠と、マンドレイクと、硫黄の灰。真珠をよく磨き、それをきれいに洗ったマンドレイクの中に埋め込む。それに灰をまぶして、一晩、月 の明かりに照らしておく。翌朝には、それは銀色の粉になっているはずである。
呪文のあとに、目的のムーンゲートの近くにある町の名前を唱え、銀色の粉をその方向にまく。すぐに地面に座り、目的のムーンゲートを表わす月の形を念じ る。次の瞬間には、目的の場所に姿を現わしていることであろう。


編集者注
本書のゲラ刷りが上がってきた時点から出版されるまでの間に、ブリタニアの地下に発見された地下大陸の冒険に出られたロード・ブリティッシュが、消息を絶 たれるという事件が発生しました。印刷に入る直前、ロード・ブリティッシュの代行を務めるロード・ブラックソーンが、国王不在のブリタニアの混乱を避ける 目的で、国中に戒厳令を敷かれました。それと同時に、当編集室に、臨時政府からの要請があり、ロード・ブラックソーンの新政策推進のための、“倫理のペー ジ”を設けることになりました。ここに、臨時政府から送られてきた原稿を、そのまま掲載いたしますことを、お断り申しあげます。


倫理
ブリタニアの倫理とは、アバタールの徳の精神に根ざした、国民の正しい生き方を規定した国民生活の基準である。しかし近年、我等が諸先輩アバタールが残さ れた数々の教訓は、ねじれた解釈によって真の意味を失いつつある。また、多くの国民がアバタールの道に関する解釈を発表してはいるが、その中に、徳を信奉 するために最善の努力をせよと訴える意見がないのは、実に残念なことである。
そこで、ブリタニアの新国王、ロード・ブラックソーンは、ここに徳の掟を定めるものである。これにより、徳とアバタールの道に関する誤った解釈が、国民を いたずらに混乱させぬよう願うものである。
1.嘘をつくなかれ。嘘をつきし者は舌を扱く。
2.困る者を助けよ。助けぬ者は、同じ苦しみを味わうべし。
3.挑戦には命をかけて応えるべし。どちらかが死ぬまで戦わぬ者は臆病者として辱めを受けるべし。
4.罪を犯したる者、すみやかに自首して罰を受けるべし。自首せぬ者には終身刑を課す。
5.収入の半額を貧しき者に与えるべし。与えぬ者は、収入を差し押える。
6.名誉に傷を負いし者は、恥を知って命を絶て。
7.徳の掟を進んで実践すべし。実践せぬ者は異端者として生きる資格を失う。
8.己の長所を見せるなかれ。長所をひけらかす者は、それを長所とせぬ者の恨みに苦しめ。



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